467 名前:7の1[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 10:38:40 ID:mpEKBUMv
468 名前:7の1[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 10:39:19 ID:mpEKBUMv
469 名前:7の1[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 10:40:46 ID:mpEKBUMv
470 名前:7の1[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 10:41:51 ID:mpEKBUMv
471 名前:7の1[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 10:46:18 ID:mpEKBUMv
472 名前:7の1[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 10:47:20 ID:mpEKBUMv
473 名前:7の1[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 10:49:39 ID:mpEKBUMv

第二章 本局食堂
 午後の予定をキャンセルしたユーノは、マテウスから渡された二枚のディスクのデータにざっと目を通すと、
久しぶりに暗い穴蔵である無限書庫の司書長室を出て本局の食堂で食事をとることにした。
 食堂に続く廊下を颯爽と歩くユーノと行き会った女性局員たちが、あこがれの視線を送るが、2枚のディスク
の内容を頭の中で反芻し続けるユーノは、女性局員たちの熱い視線に気づくことなく足早に通り過ぎていった。
「あのクールさが良いのよね」
「それでいて、優しいのよ。この間なんか、うちの部署から請求した資料を取りに行った娘が、別の部署の資料
も持ってきちゃって、あわや資料紛失って騒ぎになったの。課長がその娘と一緒に謝罪に行ったのよ」
「うん、うん、それでどうなったの?」
「それでね。土下座しようとした課長とその娘にバインドをかけて椅子に座らせてから、翠屋製のケーキと紅茶
を振る舞ってくれたのよ。課長とその娘、涙流して喜んでたわ。普通なら二人とも怒鳴りつけられて減給処分が
当たり前だけど、ユーノさん、間違えは誰にでもあるからって不問にしてくれたそうよ」
「優しすぎるよ。特に翠屋のケーキのところ」
 ユーノの後ろ姿を目で追う二人の女性局員の熱い会話は、いつ果てるともなく続いていた。
「それ間違ってるよヴィータちゃん!そんなんじゃ皆、私の二の舞になっちゃうよ。もっと厳しく教導しないと
 駄目だと思うんだ」
「でもよ。なのはのやり方じゃ、怪我人だらけになるぞ。現に午前中の教導でBランクの武装局員が3人もシャ
 マルの世話になってるんだぜ」
「だから〜なに?私の言うこと間違ってるかな」
 食堂の入り口から昼のランチもそこそこに逃げ出す職員たちに苦笑しながらユーノは、修羅場と化しつつある
食堂に足を踏み入れた。
 食堂の中央にある円卓型のテーブルで対峙している白い魔王と深紅の鉄槌鬼が繰り広げる論争が醸し出す殺気
が、周囲の空気を絶対零度のレベルに引き下げテーブルの周囲20mには人っ子一人いない状況が現出していた。
 ユーノが本日のおすすめと書かれているスタミナ定食A`sとホットチョコレートのカップ三つをトレイに載
せて、二人の方に軽い足取りで歩いていった
「なのは、話に夢中でランチに手を付けてないようだね」
「ふぇぇ、ユ、ユーノくん」
「ユーノ、どうしたんだ。無限書庫で火事でもあったのか」
 ユーノを見たとたん白い魔王から白い教導官殿にもどったなのはを見て、ほっと一息ついたヴィータは、1年
近く本局の食堂で食事をしたことがなく、出前を無限書庫の司書長室に届けさせているという都市伝説の持ち主
が、救世主として現れた事態に面食らっていた。
「火事はひどいなヴィータ。僕だってたまには明るいところで食事をしたいときもあるさ。なのは、ホットチョ
 コレート飲むかい」
「う、うん」
「ユーノ・・・」
「ヴィータの分もあるよ。どうぞ」
「ありがと、お、おい・・・なのは、ちょっ」
 ユーノからホットチョコレートの入ったカップを受け取ったヴィータは、再び白い魔王化したなのはを見て
震え上がった。
(だいたいプログラム生命体のあたしがユーノに手を出すはずがないだろうに。シャマルか、シャマルなのか?
 あいつ昼ドラマニアだから、治療を受けに来たなのはにいろいろ吹き込んでじゃねーだろーな)

 深紅の鉄槌鬼の面目なんぞ、かなぐり捨て席を立って逃げだそうとしたヴィータを救ったのは、ユーノの一言だった。
「なのは、手がお留守だよ。ちゃんと食べないと午後の仕事に差し支えるよ」
「そ、そーだね。ちゃんと食べないと教導ができないね。よしちゃんと食べるぞ。ユーノ君、そのソーセージくれない」
「どうぞ、その代わりにトマトをくれないかな。無限書庫で暮らしてると太陽の恵みが、無性にほしくなるときがあるんだよ」
「それじゃ、どーぞ」
「ありがとう」
 トマトを器用にフォークに載せてユーノに渡すなのはとソーセージをなのはの皿に移すユーノの間に、糖度
200%を超えるスイーツな雰囲気が漂い、桃色のオーラが先ほどの殺気と違った意味で、テーブルの周囲から
人影を遠ざけていた。
「お前ら仲良いな」
 ぼそっとつぶやいたヴィータは、周囲のテーブルはおろか食堂内に人がほとんどいないことに気がつき愕然とした。
(長い春が終わったと思ったら、今度は暑い夏かよ。)
 今でこそ周囲に桃色の結界魔法を張り巡らせる二人だが、長い春とか友達以上恋人未満とかクロノ提督に至っては、
フェレットもどきに心底同情すると言わしめた、二人の関係が進展したのは、JS事件終結に伴う六課解散後からだった
なと、なのはから惚気話を聞かされていたヴィータは思い返していた。

 六課解散以降、執務官であるフェイトは多忙を極め、ヴィヴィオの保護者と言っても名ばかりだけのため、
ヴィヴィオの育児に関するなのはの負担は、教導官の重責もあいまってかなりのものになっていた。
 ちょっとしたヴィヴィオのわがままを許せず、手をあげてしまった自分に恐怖を覚えたなのはは、このままで
はヴィヴィオも自分も駄目になると感じ、ある日無限書庫にユーノを尋ねにきた。
 たまたま暇だったユーノは、なのはを快く迎えたが、司書長室に入るやいなや涙を流して抱きついてきたなの
はに思わず面食らってしまった。
「ユーノくん助けて、このままじゃ私もヴィヴィオも駄目になっちゃうよぉ」
 今までこらえてきた感情が堰を切ってあふれでて、子供のように泣きじゃくるなのはを落ち着かせるために
背中に回した腕に力を込めたユーノは、涙にぬれるなのはの顔を正面から見つめると
「僕が君の杖になるよ。ヴィヴィオの保護者には僕がなろう。ヴィヴィオに一度合わせてくれないかな」
「ユ、ユーノくん、それってプ、プロポーズみたい」
「みたいじゃなくてプロポーズだ。僕は君が好きだ。友達としてじゃない。一人の異性としてだ。なのは」
「・・・・・」
「でね 突線の告白に驚いて黙っちゃった私の沈黙に耐えきれなくなったユーノくんは、今のは忘れてくれと
言い出しそうになるのを必死に抑えたんだって後で告白されたの」
 緩みきった顔で惚気る白い魔王の顔を思い出したヴィータは、なのはと笑顔で話し合うユーノを見ながら、
勇気を出して長い春を乗り越えた男の笑顔は爽やかもんだなと感じていた。
「今日の午後、学校が休みなんでヴィヴィオがユーノパパに逢いたいって言うんだけど良いかな?」
「そうだね。今日の午後、珍しい口碑を積み込んだ船が入港してるんで鑑定してくれって話があるんだけど
 ヴィヴィオを連れて行って良いなら引き受けるよ。どうかな?」

「その船、大丈夫なの?」
 船という言葉で、ゆりかごの中でヴィヴィオと戦った記憶を呼び起こしたのか、なのはの眉がひそめられた。
「デートリッヒっていう時空管理局の船だよ。第三管理世界の遺跡で見つかった口碑の鑑定を依頼されてね。
 ヴィヴィオも無限書庫で本を読むばかりじゃ退屈するよ。たまには実物教育も必要だと思うんだがどうかな?」
「うーん・・・・」
 考え込むなのはの表情を見て困惑するユーノを見かねたヴィータは思わず口を挟んだ。
「なのは、午後の教導代わってやろうか」
「そ、それは駄目だよ。教導を休むなんて、訓練生に悪いよ」
「なのは、たまには休むことも必要じゃないかな。ここ半月ばかり土日も休みなしで働いてるんだろう。
 ヴィヴィオも心配してたよ。なのはママ、お家に帰ってきてからもずっと仕事してるって」
 ヴィータに助け船をだしたユーノの一言が効いたのか、なのはは、ヴィータに手を合わすとヴィヴィオを
迎えに行くと言って席を立った。
「ユーノ君、ヴィヴィオを連れて2時に無限書庫に行くから待っててね」
「ヴィヴィオ向けの絵本も無限書庫で見つけたから、コピーしておくよ。この間みたいに無限書庫で
 迷子になられたら大騒ぎになるからね」
 空になったトレーを手にしたなのはを見送ったユーノは、ヴィータの方を向かずに尋ねた。
「いつから、ひどくなった」
「5ヶ月ほど前からかな。妙にテンションが高くなったと思うと、翌日には落ち込むって繰り返しで、行き詰
 まると教導で切れまくって訓練生を壊しまくるって繰り返しだ。あたしが補助に付くようになったのも、それが原因だよ」

 5ヶ月前、自分がなのはに告白した時期と前後していることを確かめたユーノは、マテウスのディスクに記録
されている症例を思い浮かべた。
「レベル3か」
「なんか言ったか」
「このホットチョコレートも飲まないかって聞いたんだが」
「ありがとな。これで午後の教導、がんばれるぜ」
 ホットチョコレートを受け取ったヴィータは、午後の教導が楽しみだぜと不適な笑顔を浮かべた。
(午前の魔王に、午後の鬼か、どっちにしても訓練生には地獄だな)
 定食のミニハンバーグを食べながら、以前、見学したヴィータの教導で訓練生があげていた悲鳴を脳内再生
したユーノは、訓練生に同情の念を覚えた。
 司書長室のモニターに、夢中でチリコンカーンを食べているマテウスが出た瞬間、ユーノは顔をしかめた。
「すみません。食事中だったみたいですね。後でかけ直します」
「いやぁぁ、お気になさらず。時は金なりですから」
 あわてて、食事を片付けたマテウスだが、唇の端にソースが残ったままだったことに本人は気づいていない
らしい。
 ユーノの話を聞いたマテウスは、額に手をやって俯くと1分間ほど考えていたが、ユーノの視線に気がつい
たのか、ひょいと顔を上げた。
「まあ良いでしょう。ヴィヴィオ様に口碑を見せても問題ないと思います。封印は3重にかけてますし、口碑
 の周囲にAMFも展開しておきます。問題は・・」
「なのはですか、彼女がなにか?」
「あなたの診断ではレベル3ですか、感情の起伏が激しいんですね。発掘隊との会談は別の日にしませんか?」

 盗聴されることを考慮しているのかマテウスは、盗掘者たちを発掘隊と面接を会談と慎重に言い換えながら
提案した。
「理由は?別に彼女を連れて行っても問題ないと思いますが」
「発掘隊の中にラーナって女性がいましてね。どうしました? 顔色が悪いようですが、やはり別の日にしますか?」
「いや、やりましょう。この際、はっきりさせた方が良いこともありますし、なのはにとっても良い効果を生むかもしれません」
「ふむ、勇気がありますな。では、デートリッヒでお待ちしております」
 通話が切れたモニターを閉じながらユーノは、長年、置き去りにしてきた問題に決着を付ける時が来たのを
感じ、ため息をついた。



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目次:再び鎖を手に
著者:7の1

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