509 名前: ◆K17zrcUAbw [sage] 投稿日:2008/09/17(水) 18:32:31 ID:SSgCc8A0
510 名前: ◆K17zrcUAbw [sage] 投稿日:2008/09/17(水) 18:34:03 ID:SSgCc8A0
511 名前: ◆K17zrcUAbw [sage] 投稿日:2008/09/17(水) 18:35:32 ID:SSgCc8A0
512 名前: ◆K17zrcUAbw [sage] 投稿日:2008/09/17(水) 18:37:41 ID:SSgCc8A0
513 名前: ◆K17zrcUAbw [sage] 投稿日:2008/09/17(水) 18:39:02 ID:SSgCc8A0
514 名前: ◆K17zrcUAbw [sage] 投稿日:2008/09/17(水) 18:40:37 ID:SSgCc8A0
515 名前: ◆K17zrcUAbw [sage] 投稿日:2008/09/17(水) 18:41:51 ID:SSgCc8A0
516 名前: ◆K17zrcUAbw [sage] 投稿日:2008/09/17(水) 18:43:43 ID:SSgCc8A0
517 名前: ◆K17zrcUAbw [sage] 投稿日:2008/09/17(水) 18:45:16 ID:SSgCc8A0

『犯人が……私…?』
犯人だというキャロの主張に会議室にいた人全ての目線がルーテシアに向く。
あまりに突然の出来事にルーテシアも驚きを隠せない。
『どうして……私が…?』
『あなたはエリオ君の許嫁…エリオ君を愛していた……そして、私がエリオ君と仲がよさそうなのが許せなかった……』
そう言ってキャロが鍵の束を取り出した。
それは職員室に置いてある各教室の鍵であった。
キャロはそれを見せながらさらに話を続ける。
『……これは最近知った事ですが…ルーちゃんは私と同じで召喚のスキルを持っている……召喚した虫に鍵を盗ませ、薬品の入れ替えをさせれば彼女が犯行を行う事は可能です!!』
その一言に一同がざわめく。
ルーテシアは首を振って否定する。
『私じゃない……やってない…』
『ルー……酷いよ…自分の為にキャロや僕を…』
『なんて娘だ……』
『怖い子だ…』
しかしエリオや他の先生が次々とルーテシアを非難する。
『嫉妬したからって殺害まで考えるなんて……』
『挙げ句キャロを呼び出してまで殺そうとするなんて……』
『早く捕まえないか!!』
次々とルーテシアに浴びせられる罵声。
それはどんどん大きくなっていく。
しかしルーテシアの一言で会議室は静まり返った。
『……どうして知ってるの?』
一同がルーテシアを見つめる。
表情を変えずにただ一点を見つめるルーテシア。
そしてキャロは口を開いた。
『どうして……こんなことを…信じたくなかったのに………』
キャロは涙を流している。
そして顔を上げ、ルーテシアと同じ場所を見る。
そこには、一人の女性が立っていた。
『どうして私が呼び出された事をあなたが知っているんですか……』
赤き瞳、金色の髪。
『答えてくださいっ、フェイト先生!!』
キャロの担任、フェイト・T・ハラウオン。
口に出た言葉、キャロが呼び出された事実。
それはキャロがクロノに頼んだ事だった。
『私が突き落とされたのを知っているのはここにいる私達と犯人だけです……ですからこの事を誰にも言わないでください………犯人は絶対に口を滑らせます』
キャロはフェイトにもう一度聞く。
『どうして…あなたが…』
『み、見掛けたのよ……キャロが街でバスに乗るのを!』


フェイトから弁明の言葉が出る。
しかしキャロはさらにフェイトを問詰める。
『私だけを見掛けたんですか?』
『え…そ、それはそうよ!!だって呼び出されたのはキャロだけ…』
『残念だが、フェイト先生………バスには私も乗った』
さらに弁明するフェイトの言葉をクロノが遮る。
そう、クロノはキャロの後をつけていた為気付かれないようにあのバスに一緒に乗り込んだのだ。
もしフェイトがキャロを見掛けていたのなら後をつけていたクロノも目撃しているはず。
しかしフェイトはキャロしか見ていないと言った。
フェイトの言葉は嘘だった。
フェイトは直立不動のまま震えている。
『思えば私の勘違いからこの事件は誰にも不可能なものと思い込んでいました…けど、ある部分の勘違いを正すと………フェイト先生にしかこの犯行は不可能なんです』
そう言ってキャロは足下から箱を取り出す。
中から体操服の袋、教科書とノート、学院の鍵(ゼスト所有)、すり替えられた薬品、そして三通の手紙を取り出す。
キャロはそれを順番に見せる。
『まずはこれです』
そう言って体操服の袋を持ち上げる。
『事の発端はこの体操服が盗まれた事から始まりました。これは二時限目前に発覚……次に教科書とノートが破られていた事件……これは二時限目の間に起こった…』
そう言って教科書とノートを持ち上げる。
ここまでは普通の嫌がらせに過ぎない。
しかし事件はここからエスカレートしていく。
次にキャロは一通目の手紙を取り出す。
『そして、その日の放課後にエリオ君の名で私は体育倉庫へ呼ばれて閉じ込められました……これが一日目の出来事です』
ここでキャロは一息置いた。
『犯人はこれで私が塞ぎ込んでくれればいいと思っていました……けれど、私はエリオ君のおかげで立ち直った。だから犯人はその日の内に次の犯行を仕掛けた』
そこでキャロはスカリエッティを見る。
スカリエッティはその日の事を説明してみせる。
『私は翌日に行う予定の実験の準備は放課後すぐにすませる事にしている……私の準備した薬品に細工するなら翌日までに充分な時間がある』
そして鍵と薬品の瓶を持ち上げた。
キャロは再びフェイトに向き直る。


しかしフェイトは反論する。
『けどそれはさっきキャロが言った方法でルーテシアにだって可能なはず!!』
『いえ、無理です……この犯行はあなたにしか出来なかった』
キャロはスカリエッティから鍵と薬品の瓶を受けとるとそれをフェイトにみせた。
『爆発事件……その犯人を示すのはこれとは違う三つ目の証拠』
『三つ目の証拠!?』
そう言ってキャロは再び箱に手を入れる。
取り出したのは数十枚の紙の束。
それを見たクロノが呟いた。
『自由選択科目の希望書か……』
『そうです……ルーちゃんがこれを知る事は出来ない…私が科学を受ける事を知っていたフェイト先生にしか犯行は不可能なんです』
キャロの言葉にフェイトの表情が曇っていく。
そして話は二日目から三日目の事件に移る。
『あの爆発事件で一つだけ誤算が起きたんです…それはエリオ君が私とルーちゃんをかばって怪我をした事……これにあなたは激昂した。けど、その日はシャマル先生が私の側にいたから犯行を諦めた……』
そしてキャロはクロノを見た。
クロノは申し訳なさそうに話を切り出す。
『しかし……私がフェイトにキャロの帰宅警護を依頼した事で事態は変わった』
キャロはそこで三枚目の手紙を取り出した。
『それによってフェイト先生は私が部屋に帰る時間を把握していた……だから私を呼び出す為の計画を練った』
事の推移はこうだ。
まず件の手紙を用意し、紙飛行機をつくる。
それを持ってフェイトはキャロの部屋に向かった。
管理人のレジアスに事情を説明し、着替えをとる名目でキャロの部屋に侵入。
あらかじめ窓をあけ、隙間に紙飛行機を挟んだ後何食わぬ顔で着替えを持ってキャロを迎えに行った。
そして約束の時間に黒いローブを着てキャロを殺害しようとした。
『これもあなたにしか出来ない犯行です……』
『……甘いわ』
キャロに追い詰められたかのように見えたフェイトだったが、逆にキャロに問い掛ける。
『キャロはこの事件が私一人によるものだと言ってるの?』
『はい』
『なら、最初の体操服はどう説明するの?あなたの鞄に入っていた体操服をどうやって盗んだの?私は授業をしていたのよ?』


あの日体操服は朝からキャロの机にかけられた鞄の中、誰も触っていない。
なのになぜ、体操服は消えたのか。
フェイトはその疑問をキャロにぶつけた。
『そう、あの日誰も体操服を盗む事は出来なかった』
『なら、私にも…』
『あの日、私は体操服を忘れていたんです』
フェイトの肩がはねる。
キャロは体操服の袋を持ち上げる。
『私、めったに忘れ物はしないんです。そして、それを知っていたクラスメイトの言葉で私は体操服を《盗まれた》と思い込んでいました…けど、本当は体操服は忘れていたんです。そしてフェイト先生はある方法で体操服を手に入れた…』
その時、一匹の竜が会議室に舞い込んだ。
キャロの召喚竜フリードリヒだ。
キャロはフリードリヒを撫でながら話を続ける。
『フリードは私が忘れ物をすると必ずそれを届けてくれる癖があるんです』
そう、あの日もフリードリヒは体操服を咥えて学院を訪れていた。
そしてそれをいつものように『担任』のフェイトに渡して帰って行ったのだ。
『こうしてあなたは体操服を手に入れた…これで全ての犯行はあなたにしか出来ない事になる……』
全ての推理を聞かされ、一同の目はフェイトに向けられる。
しかしフェイトそれでもなお表情を崩さない。
まだ、完全に追い詰めてられていなかった。
『確かに……それなら私にしか出来ない。けど、それは机上の空論…確固たる証拠がないのに私を犯人と呼ぶ事が出来るの?キャロ』
未だに出てこない証拠にフェイトはキャロを問詰める。
キャロにチェックをかけた、はずだった。
しかしキャロは再び箱に手を入れ、透明な袋を取り出した。
『これが証拠です』
その中に入っていたのは金色の長い髪が数本。
まさしくフェイトのものであった。
『フリードのもう一つの癖……他人にすり寄ること………あなたが体操服を受け取った時にあなたの髪が付着していたのをさっき見つけたんです……盲点でした』
『ちなみに部屋からフェイト先生の髪と思わしきものも見つかったようだ』
『………そう、この竜が』
チェックメイト、フェイトは証拠まで押しつけられてフッと笑う。
『どうして……あなたが』
『プロジェクトFって知ってる?』
フェイトは唐突に切り出す。
そしてそれにエリオが反応した。


『私はね……昔モンディアルグループによって生み出されたプロジェクトFの人造生命体…』
『え!?』
突如として出て来るモンディアルグループの名。
それに一同は驚く。
そう、フェイトはモンディアルグループの人造生命体を作るためのプロジェクトで生み出された人造生命体であった。
その後フェイト自身は養子に出され、毎日を過ごしていた。
とてつもない枷を背負いながら。
『私は優しくされたわ…みんな愛してくれた。でもそれは嘘、仮初の愛』
フェイトは自分が人造生命体である事に負い目を感じていた。
そしてそれは次第に人間に対する恨みに変わっていった。
『そんな時に…エリオの存在を知った。エリオも私と同じ…作り物』
『やめてくださいっ!!』
エリオが叫んだ。
しかし、フェイトはお構いなしに続ける。
『私は生まれながらにして誰にも愛されてはいなかった……でもエリオなら…同じプロジェクトFの人造生命体であるエリオなら…私を愛してくれるはず………だからあなたが疎ましかった』
そう言ってキャロを睨み付ける。
キャロは微動だにせずフェイトの目を見つめる。
『あなただけじゃない……ルーテシア、あなたもいずれ始末する予定だったのよ……』
そう言ってフェイトは懐から金色の三角形の何かを取り出した。
『予定は狂ったけど……あなた達を殺してエリオを手に入れる事に変わりはないわ……バルディッシュ』
瞬間、フェイトの手には黒い杖のような物が握られていた。
しかしすぐに剣のような形に変形し、金色の刃を展開する。
フェイトはキャロに向き直る。
『あなたがいたから私の計画は失敗した……まずはキャロ…あなたから』
そしてフェイトは跳んだ。
キャロに向かって一直線に飛び込む。
しかし、刃はキャロに届く事は無かった。
『ストラーダ!!』
自身の槍型デバイス、ストラーダの加速で間に割って入るエリオ。
フェイトのバルディッシュはエリオのストラーダとの鍔競り合いになる。
『どうして……エリオ…私はあなたの』
『あなたは間違っている!!こんなことをしても僕はあなたのモノにはならないっ!!』
その一言にフェイトは僅かに動揺した。
その隙を見逃さずエリオはストラーダを打ち込む。
『かっ……!!』


脇腹に強烈な一撃を受けたフェイトが吹き飛ばされる。
この騒動で会議室にいた一同が次々に逃げ出していく。
『クロノ教頭、ルーを!』
『わかっている!!』
クロノが駆け出し、ルーテシアを保護する。
しかし、フェイトはすぐに体勢を立て直しルーテシアに狙いを定める。
『逃がさない!!プラズマランサー!!』
複数の魔力弾を形成し射出。
高速で撃ち出されたプラズマランサーにクロノは反応出来なかった。
しかし、プラズマランサーは届かない。
『クロノ、早く!!』
『ユーノか、すまない!!』
ユーノが咄嗟に結界を張りユーノとルーテシアを守る。
クロノはルーテシアを抱えて会議室の外へ駆けて行く。
それを見つめながらフェイトは呟いた。
『どうして……どうしてみんな邪魔するの?』
ゆっくりとエリオに歩み寄るフェイト。
エリオはキャロをかばいながらストラーダを構える。
フェイトの目には涙が浮かぶ。
『私は愛されたいだけなのに……同じ人造生命体のエリオなら私の気持ち、わかるよね…?』
『わかりません…』
『…っ!!』
エリオはフェイトを睨み付ける。
『例え愛されていなくても僕はあなたのように他人を恨んだりはしない!!この学院のみんなが…僕を僕として認めてくれているからっ!!』
エリオが飛び掛かる。
バルディッシュで受けるがエリオの力は先程の比ではない。
『あなたは愛されていないなんて言ってるけど……違う!!みんなあなたを慕っている!!人造生命体のフェイト・T・ハラウオンではない、この学院のフェイト先生を!!』
『けどっ、私達は人造生命体である事にかわりない!!』
激しい鍔競り合いに部屋中が軋む。
キャロは事の成り行きを見守るしか無かった。
『なんで人造生命体である事に拘るんですか!?それでもあなたはあなただ!!』
『うるさいっ!!』
『うわっ!!』
フェイトがエリオを弾き跳ばす。
フェイトはそのまま一直線にキャロに向かう。
『キャロ、あなたがいなければエリオは!!』
『先生!!』
『やめろぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』
そして、刃は止まった。
ストラーダの加速で間に割って入ったエリオの腹を貫いて。
床が赤く染まって行く。


『く……うぅ』
『エリオ君!!』
『どうして…どうして』
形成された魔力刃が消え、フェイトはバルディッシュを離す。
バルディッシュが血溜まりの床に落ちる。
エリオは膝をついたがフェイトを見上げる。
『僕は…確かにプロジェクトFによって作られた人造生命体…親の言う事を聞いて生きていくだけの存在だった……でも、違う…』
エリオは薄れ行く意識の中言い放った。
『キャロに出会って…僕は変わった……僕は初めて親に逆らった……許嫁であるルーよりキャロの事を好きになっていた…』
どんどん溢れ出る血が床を染め上げる。
しかし、エリオは言葉を止めない。
『僕は……僕だから…だから決めた……僕は…僕はキャロを守る騎士だ!!……ごほっ、げほっ』
口から血を吐くエリオ。
しかしフェイトもキャロもルーテシアも、誰もが動けなかった。
遮ってはいけない。
この言葉だけは遮ってはいけない。
エリオは倒れながらフェイトに言い放った。
『だから…あなたは……あなただ……みんなに慕われる…この学院の………フェイト先生…だか…ら』
『エリオ君ーッ!!!』
『シャマル先生!!』
『はいっ!!』
すぐさまシャマルが応急治療に入る。
出血量が多く命も危うい。
放心状態のフェイトは取り押さえられ、キャロも保護された。
応急治療を終えたあとすぐさまユーノが転移魔法で病院へとエリオを連れて行った。
ショックを受けて放心状態のキャロにルーテシアが声を掛ける。
『行こう』
『え……?』
『エリオは死なない。それにキャロがいないと悲しんじゃう』
『ルーちゃん……』
恐らくルーテシアも相当なショックを受けているはず。
しかしそれでもルーテシアは気丈に振る舞う。
キャロは涙を拭って立ち上がる。
そしてルーテシアと二人で病院へと向かう。

3時間ほどたっただろうか。
手術室から担当の医師が出てきてエリオの両親とキャロ、ルーテシアに結果を告げる。
『取り敢えず一命は取り留めました。しかし出血量が多かった事もあり今日が峠でしょう』
『エリオ君……』
病室に運ばれたエリオを見てキャロは祈った。
初めて会ったあの日からずっとエリオの事を想ってきた。


朝早くから自主訓練をするエリオが眩しかった。
最初の事件の時に手を取って真剣なまなざしを向けてくれた。
爆発事件の時、自分の事も厭わずにかばってくれた。
そして、向けられた刃。
それを身を挺してかばってくれた。
しかし自分がエリオにしてあげられるのは祈る事だけ。
ただただ、エリオの目覚めを祈る事だけ。
そして、祈りは奇跡を起こす。
いつの間にか朝になっていたようだ。
カーテンの隙間から朝日が差し込む。
『ん……』
眠ってしまったキャロは朝日に照らされ目を覚ます。
はっと我に返りエリオを見る。
目は閉じている。
『エリオ君……エリオ君………』
キャロはベッドに顔を埋める。
まだ目を覚まさないエリオ。
もしかするとこのまま死んでしまうかもしれない。
キャロは泣いた。
『嫌だよ……エリオ君…』
朝日に照らされたエリオの顔が輝く。
そして、目を開けた。
『キャ……ロ………?』
『エリオ君………エリオ君!?』
『僕は……』
キャロはすぐさま医師を呼び付けた。
駆け付けた医師がエリオの容態を確認する。
『意識はしっかりしているね……回復魔法を併用した治療にシフトすれば一週間で退院出来ますよ』
『よかった……』
エリオの両親やルーテシアも涙を流して喜ぶ。
エリオはキャロに礼を言った。
『ありがとうキャロ……キャロの声が聞こえたんだ…』
『エリオ君……』
キャロの祈りはエリオに届いていた。
竜の巫女の力か、はたまた本当の奇跡なのか。
エリオは沈み行く意識の中でキャロの声を聞いていた。
そして、何者かに引き上げられるように意識を取り戻した。
『父さん……母さん…ルー……ごめんなさい…僕は』
『いいんだ……』
『それがエリオの選んだ道なのよ……』
全ての気持ちを打ち明けたエリオに両親は笑顔で答えた。
しかしルーテシアは押し黙っている。
キャロは申し訳なさそうに顔を伏せる。
元々ルーテシアはエリオの許嫁なのだ。
それを後からキャロに奪われたとなれば当然怒っているだろう。
しかしルーテシアの反応は違った。
『やっと正直になったね……』
『え?』
『私、本当は諦めてた』
諦めてた。
まさかの台詞に一同が驚愕する。


『だって…私といるときのエリオは楽しそうじゃなかった。でもキャロと出会ってからエリオは変わった』
許嫁として幼い頃からエリオを知っているルーテシアはエリオの僅かな変化に気付いていた。
そう、エリオは本当の意味での恋をしたのだ。
親同士で取り決められたモノではなく、自分の意思で。
それに気付いてルーテシアは少しずつ身を引いていった。
ルーテシアもエリオの事が好きである。
しかし、エリオはキャロを選んだ。
それをルーテシアは静かに受け入れたのだ。
『だからエリオの本当のお姫様はキャロ……あなたよ』
『ルーちゃん……』
『私はあなたを恨んだりしない。むしろ感謝してる。エリオが人間らしくなったのはキャロのおかげ……だからエリオを愛してあげて』
『うん!!』
この事件をきっかけに二人は学院全体の公認カップルとなった。
毎朝、トレーニングするエリオとそれをサポートするキャロ。
ルーテシアに料理を教えてもらい、腕も上達した。
違うクラスだが勉強は互いにしっかりと、しかし時には手を取り合い成績はトップクラス。
お昼はルーテシアを交えて三人で仲良く。
授業が終わればキャロはアルバイト、エリオは再びトレーニング。
そしてキャロのアルバイトが終わる頃にエリオが来店、気を利かせた店主が二人だけの貸し切りにするなどもあり雰囲気はラブラブ。
そしてまた一日が終わる。
そんな学院ライフが数年間続いた。
そして、エリオとキャロ…学院最後の日。
互いに18歳を過ぎて卒業式を終えた後だった。
二人はいつもの裏庭で最後の談笑をしている。
『でもよかった…二人とも管理局に入局が決まって』
『うん……ルーちゃんも会社を継ぐって』
『僕はまだ父さんに会社を任せて管理局で修行するからね……』
二人は管理局への就職が決まっていた。
配属はまだわからないが、二人一緒に過ごす事に変わりはない。
そしてエリオはポケットから小さな箱を取り出した。
『それでね、キャロ……これ』
『……指輪?』
『あれからかなりたって…それで僕は幸せになれた……だから今度は僕がキャロを幸せにする番だ…』
『エリオ君……』
『この先何があるかはわからない……けど、僕はずっとキャロの側にいたい……いいかな?』
『………うんっ!!』

最終話、『想いよ届け、小さな騎士』
終結!


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目次:召喚少女リリカルキャロ
著者:◆K17zrcUAbw

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