[31] Mago di blu senza fine 1 sage 2008/01/31(木) 23:12:48 ID:VQ8SZVJA
[32] Mago di blu senza fine 2 sage 2008/01/31(木) 23:14:18 ID:VQ8SZVJA
[33] Mago di blu senza fine 3 sage 2008/01/31(木) 23:15:16 ID:VQ8SZVJA
[34] Mago di blu senza fine 4 sage 2008/01/31(木) 23:15:54 ID:VQ8SZVJA
[35] Mago di blu senza fine 5 sage 2008/01/31(木) 23:16:35 ID:VQ8SZVJA

 フェイト・T・ハラオウン20歳、時空管理局執務官、魔導師ランク空戦S+。
 闇の書事件及び、ジェイル・スカリエッティ事件をはじめ様々な事件での活躍からトップエースの一人として名は知れ渡っている。
 魔導師としては輝かしい称号と経歴を持つ彼女、肩書きだけを見れば彼女の人生は順風満帆と言っても過言ではない。
 血の繋がりは無いにしても実の子供以上に庇護の対象として見ていたエリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエは心配なくまっすぐに育っている。
 仕事上も、シャリオ・フィニーノ、ティアナ・ランスターの二人を補佐官としており、さらなる活躍を期待されているのだが……
 この非の打ち所の無さそうな彼女にも悩みはある、それは……。

「フェイトさん、どうしたんですか?」
 執務室で盛大についた溜め息を聞かれたようで、フェイトは自分の補佐官であるティアナが書類を運んできた事に気付いた。
 近い内に別の執務官と共同で事件捜査にあたるとの事らしく、彼らのプロフィール及びに関わった事件記録の検索をティアナに頼んだのだった。
「ああ、ごめんね。少し考え事……」
「悩み事ですか? あの……図々しいかも知れませんけど、あたしで良かったらお話だけでも聞きますよ?」
 ティアナにしてみれば単純に自分の上官であるし、心配してくれるのは分かるのだが、フェイトは彼女だからこそ理解し得ない悩みであることは分かりきっていた。
「いいよ、ティアナとは無縁の悩みだから……」
「そうですか。それとすみません、再来週の祭日に休暇を頂けませんか?」
 フェイトの目付きが一瞬変わった。
「ひょっとして、ヴァイス君かな?」
 フェイトがその名を口走ると、ティアナは顔を真っ赤にして狼狽しだした。
「い、いえあの、その……べ、別に久々に休みを合わせられるかなとか、そんなんじゃなくて、ええと」
取り繕おうとして全部口に出ているのに気付かないまま、焦りの色が表情に丸出しである。
「ふふっ、入れて置いてあげる。はぁ……」
 フェイトは笑ってティアナの要望を聞き入れるや、再び現実を思い出したように盛大な溜め息を付く。その様を見て、ティアナは大方察してしまった。

「ひょっとして、フェイトさんの悩みって……」
「ティアナはいいよねぇ……。彼氏いて……」
 そう、フェイト・T・ハラオウン20歳、「彼氏いない歴=年齢」記録更新中である。
「なのはにはユーノがいて、はやてにはアコース査察官がいて、アルフにはザフィーラがいて、
今いないシャーリーはグリフィス君とデート中だし、エリオとキャロは私より先にくっついちゃったし、
A’sの終わりまでは最有力だったクロノはエイミィに取られちゃったし、
おまけに9歳の頃からずっとガチレズって噂が絶えないんだよ……」
 机に突っ伏したフェイトは、言えば言うほどしょぼーんと小さくなっていく感じがした。
 最後あたりの発言は微妙に危ない気がするが、見方を変えればそのせいで男が寄り付かないとも考えられなくは無い……。
 ティアナも一時期スバルとガチレズ疑惑が流れていた覚えはある。
 あの時は画面に出てこない六課の男性局員共に見せ付けるように、ヴァイスといちゃついた覚えがあった……。
「じゃあ、フェイトさん自身は普通に恋愛がしたいんですね?」
「別世界じゃどうか知らないけどね……」
 最早、危ない発言が何時また飛び出すか分かったものではない、ティアナはなんとか流れを変えようと戦闘時以上に頭をフル回転させて言葉を探した。
「今気になる人っています?」
 ティアナの質問にフェイトは突っ伏したまま首を横に振った。
「いてもめったに会えなくて自然消滅しそうだよ」
「男の人に声を掛けられることは?」
「それもあんまり無い……。通りかかるとコソコソ話したりしてるのは見た事あるけど、やっぱり変な噂されてるのかなぁって……」
「ひょっとして、声を掛け辛いイメージがあるんじゃないですか?」
ティアナは自分が感じた事をそのまま言って見た。
 フェイトは他人から見ればなのはやはやてに比べて、口数は少なく物静かでどことなく気品を感じる凛とした雰囲気を纏っている。
 加えて有能な魔導師とくれば色々とイメージを持たれたとしてもなんら不思議ではない。
 彼女の持つ雰囲気が、易々と並の男を近づけさせないと感じさせている可能性はありそうだとティアナは思った。
 もっとも実際話してみれば、そう言ったイメージとはかけ離れて、話しやすい人ではあるのだが、先入観のせいで話しかけるまでに至らないのだろう。

「アリシアが羨ましい……」
 微かに残った記憶だけが印象に残る、今亡き姉の事がフェイトの頭をよぎった。
 アリシアは人見知りなどしない明るい女の子で、誰とでもすぐ打ち解けて仲良くなってしまうような姉だったはずだ。
 同じ遺伝子を持っているのにフェイトとは真逆(まぎゃく)の性格、せめて自分に少しでもアリシアのような快活さがあったならと思ってしまう。
 フェイトは内心年下(しかも彼氏持ち)の部下に相談している現実が無償に嫌になった……。
「そ、そんな凹まないでくださいよ。きっと、フェイトさんみたいな物静かな人が好みの人だっていっぱいいますよ!」
「それが同じ女の子ばっかりだったら?」
「うっ……!」
 なんとかフェイトを励まそうとするティアナ、しかし女性にばかり憧れの目を向けられる光景を何度も目にした覚えがあり、これ以上言葉が見つからなかった……
「ふー、やっぱり当面は無理かも。仕事の続きしよう」
 いつまでも机に突っ伏しているわけにもいかない。どの役職も忙しい事に変わりは無いが、執務官は任務に於いて単独行動が多い分だけ事務仕事の比重が大きいのだ。
 先ほど報告書の作成をようやく済ませ、次に当たる任務の概要を確認して置こうとした(大いに脱線していたが)所であった。
 次の任務は他の執務官と共同で行う予定だ。その為にティアナに書類を持って来させた事も危うく忘れてしまう所だった。
 フェイトがその資料に目を通そうとしたその時、来客を告げるインターホンのブザーが鳴る。
「あの、どなたでしょうか?」
 入り口側に近かったティアナが自動ドアの脇にあるスイッチを入れて来客を確認する画面を呼び出した。
『フェイト執務官はこちらですか?』
 画面に出たのは、セミロング辺りまで伸ばされたシルバーグレーの髪と、深い海の様なコバルトブルーの両目が印象に残る、落ちついた雰囲気の顔立ちをした若い男性だった。
「そうですけど……」
『今度の任務に関しての事で顔を合わせに来ました、開けてもらえますか?』

 その言葉にティアナはもちろん、フェイトの方も焦る。
 他の局員との共同任務自体はさして珍しい事ではなかったが、せいぜい任務の直前のブリーフィングで初めて会う事の方が多い。まさか、直接出向いてくるなど想像だにしていなかった。
 いきなりの訪問に驚くものの、執務室は人を入れるには問題ない。
「ティアナ、入ってもらって」
「分かりました。と言う事です、どうぞ」
 ティアナが開閉ボタンを押して、自動ドアが開く。一拍置いて、二人の男性が執務室へと入って来た。
「へぇ〜、執務官の部屋ってみんなあんまり変わんないんだね」
 入ってくるや、先ほどの男声とは違う陽気な声が部屋に響いた。
 所々がはねているミディアムよりは短いくすんだ金髪にターコイズブルーの瞳、健康的に焼けた肌が目立つ、どこか少年に近い雰囲気の青年だった。
 管理局の制服ではなく、白いタンクトップの上にサバイバルベストをチャック全開で重ね着しており、所々が真横に破けたジーンズにスニーカーと言う、ストリートチルドレンのような様相が子供っぽさに拍車を掛けている。
「あまりはしゃぐな。遊びに来てるんじゃないんだ」
 子供っぽい青年の後に続いて、先ほど画面に出てきた青年が姿を現す。
 こちらは執務官仕様の黒い制服をきっちりと着ている。本人の雰囲気から見ても場違いな空気は微塵も感じない。

「次の任務を共同で当たる事になったアルバトロス・レヴェントン執務官です。こっちは俺の補佐官で……」
「ジャルパ・スタンツァーニで〜っす♪ よろしぐぼぁっ!」
 おどけた調子で自己紹介するジャルパに、アルバトロスが左肘鉄を喰らわせて顎を跳ね上げる。
「連れが失礼して申し訳ない。まぁ、態度は軽いが腕は上官の俺が保障するよ」
「アルバ、敬語敬語」
 いつの間にか口調が変わっていることをジャルパが注意する。
 おそらくは、敬語で応対する機会が少ないのだろう、とフェイトは推察した。
「ところで、あなた方はどうしてこちらへ?」
「あー、その何と言いましょうか……」
「紙一枚とにらめっこするより、直接会ったほうがいいからだよ♪ 僕らはいつもそうしてるんだ」
 返答に窮していたアルバトロスに変わって軽い調子で説明するジャルパ、それに対してアルバトロスはさらに困って顔を歪めていた。
「とにかく、勝手な来訪をして済まなかった。邪魔をしたならお引取りするよ」
 そう言ってアルバトロスはジャルパを引きずって行こうと襟首をつかむ。
「あ、いえ……。そうだ、ティアナ、お茶を用意して来てくれる? 4人分」
「はい、じゃあ少々お待ち下さい」
 ティアナは資料棚の隣にある簡素な食器棚からティーセットを出して執務室を出て行った。
「お茶飲ませてくれんの!?」
「いや、わざわざそこまでしてもらう必要は……」
「せっかく来たんですから、これくらいはさせて下さい」
 何故かフェイトはこの二人をこのまま帰すのに気が進まなかった。

 >>続く



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目次:Mago di blu senza fine
著者:三浦

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