[431] Mago di blu senza fine Act.2‐1 sage 2008/02/04(月) 22:34:04 ID:Xyrjf3pA
[432] Mago di blu senza fine Act.2‐2 sage 2008/02/04(月) 22:34:48 ID:Xyrjf3pA
[433] Mago di blu senza fine Act.2‐3 sage 2008/02/04(月) 22:35:26 ID:Xyrjf3pA

 突然の来訪者、アルバトロス・レヴェントンとジャルパ・スタンツァーニの二人を招き入れたフェイトは、とりあえず執務用の机から離れ、二人にはドア側にある低いテーブルの周りに備えられた来客用の椅子に座ってもらう。
 自分も腰を落ち着けてティアナがお茶を入れて戻ってくるのを待った。
「そちらの仕事の方は良かったのですか?」
 沈黙が場を支配していた中、アルバトロスが話を切り出した。
「ええ、報告書の作成は終わらせていますから。重要な物は殆ど片付けました。
 ちょうどあなた方の情報を、書類で確認しようと思っていたところだったんです」
「じゃあさ、タイミングバッチシだったってわけじゃん♪ アルバもそこまで気を張らなくていいんじゃない?」
 フェイトの返答にジャルパがぱぁっと表情を明るくする。それに対してアルバトロスは呆れ顔で溜め息を付いた。そして……
「いでっ!」
 ジャルパの頭にゲンコツを落とした。
「本当なら最初に連絡を入れるはずだったのだが、こちらの手違いでこのような形になってしまった」
 アルバトロスが再び頭を下げた。
「いえ、そこまで気にしていませんから。頭を上げてください」
「フェイトさん。お茶をお持ちしました」
 ちょうどいい具合に、ティアナが紅茶を入れたティーセットとクッキーの乗った皿を、トレイに積んで戻って来た。
「ありがとう。とりあえず、あなた方もどうぞ」
 さすがにこれ以上は切りがない。ティアナも戻ってきた所で、フェイトは話題を変えようとこちらから話を切り出すタイミングを窺う。
「いっただっきまーす♪ ん〜おいひ〜♪」
「じゃあお言葉に甘えて、頂きます」
 ジャルパが満面の笑顔でクッキーに手をつけ、飲み込まないうちにミルクと砂糖を多めに混ぜた紅茶を一気に飲み干した。
 アルバトロスの方はあくまで態度を崩さず、静かに紅茶をストレートのまま口へと運ぶ。
 食べ方一つで人から感じる雰囲気が分かる物だと思いながら、ティアナはレモンを、フェイトは砂糖を一さじ入れて紅茶を口に運ぶ。
「レヴェントン執務官は、どうしてわざわざこちらへ出向かれたのですか?」
 これを聞くのに、随分と遠まわしな事になってしまったと思いながらも、フェイトはようやく話題を出す事が出来た。

「さっき、こいつが言った通りですよ。
 書類を相手にデータだけを確認するよりは、直接会ってみる方が得られる情報は多いし、任務中に作戦や連携を組みやすい。
 俺の勝手な理屈にすぎませんが、持っている魔法と戦歴を見ただけで相手を知ることなんて出来ない。魔法、戦闘技術と共に戦うんじゃなく、『それを使う人間』と共に戦うんだ。
 だから、俺とジャルパは大概こうして顔を合わせる事から始めています。ランクも階級も関係ない、戦う場所に立てば一人の魔導師である事に変わりは無いはずですから」
 アルバトロスの言い分に、フェイトとティアナは素直に感嘆した。
 執務官と言うのはもっとこう事務的、あるいは作業的な姿勢で応対するような印象が前々からあった。
 と言ってもフェイトの場合、執務官と言えば義兄が真っ先に思い浮かぶわけだが、それでもアルバトロスのようなタイプの人間には出会う事が少ない。
 いたとしてもそれはクロノよりももっと人生経験の豊富な、悪く言えば老成した人ばかりだった。
 見たところ若いのにと思うが、低く見積もっても4〜50代にしては余りにも若々しすぎる義母の事が一瞬頭を過ぎった。
「ところで、レヴェントン執務官ってお幾つなんですか? 見たところ20代半ばから上あたりだと思うんですけど」
 フェイトの心を読まんばかりのタイミングで、ティアナが質問を投げかけると……。
「ぶっ……クククク……アハハハハハハハ♪」
 ジャルパが突然腹を抱えて笑い出した。椅子の上に膝立ちの状態で背もたれに頭を押さえつけながら、ドンドンと背もたれの上を叩いて、体を震わせている。
「ハハハハハひーっ! あーもうサイコー♪ やっぱアルバってそれくらいに見える?
 でもさー、ホントのトシって全然下なんだよ。まー僕のほうは、たぶん君たちが思ってるより上なんだけどねごふぁっ!」
 大笑いしながら開けっぴろげに話すジャルパの顔面に裏拳を見舞うと、アルバトロスは溜め息を付きながら口を開いた。
「別に気にはしてないけど、これでも俺はまだ二十歳だ」
『えぇっ!!?』
 二人の反応に、アルバトロスとジャルパは表情こそ違えど予想通りと言った素振りを見せた。
「フェイトさんと……同い年……」
 別におかしいと言う訳ではないのだが、やはり雰囲気的にはそう見えない。
「ちなみに僕は18〜♪」
 と、ジャルパは付け足す物の、アルバトロスほどのインパクトは無かったらしく、二人とも反応は薄い。
 ここにはいない悪ノリでセクハラをする某関西弁や、天然入ってる勇者王もどきなど、ジャルパに近いノリの人間は見慣れていると言うのも多分ある。
「とにかく年齢の話は置いといて、任務の確認だけして置きましょう」

 フェイト、アルバトロス両名に通達された任務は、武装組織の鎮圧である。
 この組織の活動が目立つようになってきたのはおよそ3ヶ月ほど前。
 J・S事件以降裏のルートより流出したガジェット・ドローン、そして戦闘機人技術を保有しており、一般の武装隊だけでは手を焼いているらしい。
「私に命令が来る事は想像が付きますけど、なぜ他のエースには命令が降りてこなかったんでしょう?」
「この組織に関してのデータは充分じゃない。不確定要素が大きすぎることからの人選だろう。失礼な言い方になるが、過ぎた破壊力はデメリットも大きい」
 仮になのはやはやてが基地ごと敵を殲滅させたとして、敵が質量兵器を保有していた場合に情報が行き届かず、最悪暴発させて都市の一つ二つが壊滅と言う可能性もある。
 非殺傷設定があっても物理的な破壊だけは食い止めようが無い。アルバトロスはそう言いたいのだろうと察した。
「しかも今回、隠密行動メインの少数精鋭でやんなきゃいけないみたいだしね〜。あと1人か2人ぐらいならいいっつってたけど、さすがに悪魔ちゃんと夜天ちゃんは論外だしー」
「そこから頭を離せ……。こちらとしては室内戦で機動力のある人材が欲しい」
 そう言われて、ティアナの頭には腐れ縁の魔導師が思い浮かんだ。
「一人、良さそうなのいますけど?」
「マジ!? やったね! 願ったり叶ったりじゃん♪」
 ジャルパが手放しで喜びアルバトロスの肩を叩いて同意を求める。
「じゃあ、連絡を頼めるかな?」
「災害救助隊に問い合わせては見ますけど、確実に捕まるとは限りませんよ?」
 フェイトが同意する物の上手く行かなかった場合の事をどうするか、それとなく聞き返す。
「その時は4人で行こう。無いものをねだっても仕方が無い。
 少なくとも君達二人は、俺たちを捨て駒にする気はなさそうだし、信頼するよ」
 アルバトロスはどこか含みのある調子の言葉を残して、あとは5日後の任務に備えると言う事でフェイトの部屋を立ち去った。
「嵐のような二人でしたね……」
 ティアナは呆れた風に呟いた。
「あの人たちからは、なにか異質な感じがする……。今度の任務、用心したほうがいいかもね」
 フェイトの言葉にティアナは無言で頷いた。全ては5日後に始まる……

 >>続く



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目次:Mago di blu senza fine
著者:三浦

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