[432]エリキャロSS 中編<sage>2007/07/08(日) 15:52:45 ID:4w5OQRX8
[433]エリキャロSS 中編<sage>2007/07/08(日) 15:57:02 ID:4w5OQRX8
[434]エリキャロSS 中編<sage>2007/07/08(日) 15:58:09 ID:4w5OQRX8

  *  *  *

「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
 広い部屋を、四人分の沈黙が支配する。誰もがこの状況をどう受け止めればよいのか、考えあぐねている。
「…………あの」
 そんな中、一番に口を開いたのはエリオだった。
「……その、フェイトさん。なのはさん。すみませんでした。……決して、勝手に部屋に入って覗いていた、訳では無いのですが」
 震えそうになる声を抑えるように、静かに語るエリオ。キャロはその手をそっと握ると、なのはと向き合った。
「エ、エリオ君は悪くないんです。私の用事に付き合って貰っただけで、その…………――――あんな事してたのも、私が、」
 必死に訴えるその瞳は、いまにも泣き出しそうな程だった。
「――そうだね。部屋のロックを外したままにしてたのは私だから、見られちゃったのはしょうがない……ね? フェイトちゃん」
 なのはは二人の言葉に頷くと、自分の後ろで隠れるようしてに二人を見ているフェイトに同意を求めた。
「う、うん……」
「フェイトちゃん……いい加減に諦めたら? 今更、もう全部見られちゃってるんだし」
「……ぅ……」
 フェイトにとって、なのはとの行為を、よりにもよってエリオとキャロに見られたという事が、かなりのショックだったようだ。
 二人の顔をまともに見る事が出来ずに、俯いてしまう。
「そんな……二人には、まだこういう事は早いと思ってたのに……でも二人ともそういうのに興味が出てくる年頃なのかしら……ああでもやっぱり……」
 何やら呟きながら落ち込むフェイトを見て、なのはも思わず苦笑いする。
 対するエリオとキャロは、判決の時を待つかのような不安そうな表情で、しかし身じろぎせずに隊長の言葉を待っていた。
「……まあ、二人とも悪気があった訳じゃないだろうし、今回は偶然の事故って事にするけど。今度からは、ちゃんと分かる所で待っててくれると嬉しいかな?」
「は……はい」
「す、すみませんでした……」
 なのはの提案を、二人は粛々と受け止める。少し甘い処置かとも思ったが、二人の性格からして、この事は誰にも言わないだろうという判断からだった。
 フェイトも、不安そうな表情をしながらも、その提案を承諾した。
 これで、この『事故』は終わりだ。
 残ったのは、今夜の事は絶対に口外しないという4人の秘密。それと――

「それじゃあフェイトちゃん、『続き』――しよっか?」
「……えっ」

 悪魔のような、提案だった。

  *  *  *

「〜〜〜〜っ……! だ、めっ……止め、て、なの、は、あぁっ……!」
 拘束魔法に両手を囚われたフェイトが、涙ながらに訴える。が、なのははそんな言葉などお構い無し、とばかりにフェイトの体を弄る。
 エリオとキャロが居る目の前でのこの行為は、フェイトにとって耐えられないくらいの恥ずかしさだった。
「駄目、じゃないの。こういう時は保護者が責任を持って、体を張って正しい性知識を教えてあげなきゃ。後で困らないように、ね?」
「責任は、分かるけどっ……別に、体を張る必要はっ……んんっ!」
 抗議の声もどこ吹く風。なのはの手は止まらない。ついさっき達したばかりの身体を責められ、フェイトは敏感に反応してしまう。
「あくぅっ……!!」
 そして、なのは以外にも二人の視線を痛い程に感じる。エリオとキャロは、この異常な状況にも関わらず、止めようとはしなかった。
「やだっ、見ないでぇっ……エリオ……キャロ……!」
 ……二人は、初めて知った快楽を中断させられている。その身体の奥では、芽生えてしまった情欲の火が燻ぶっていた。
 その二人の前で乱れる声と姿を見せているという事。エリオとキャロは、フェイトの艶姿にすっかり魅入られていた。
(……すごい。フェイトさんの体が、あんなに綺麗だったなんて――)
 思い出すのは、エリオがもっと幼かった頃、フェイトと一緒にお風呂に入った記憶。その時に見た彼女の裸とさして変わっていない筈なのに、全く別のものに見える。
 その体に抱かれたら、どんなに心地良いだろう。
(でも――)
 エリオは、フェイトとそんな関係にはならないという予感があった。何故なら――
「……ねえ、エリオ君」
 不意に、隣に座っていたキャロが口を開く。……見れば、いつの間にかしっかりとエリオの腕に自分の腕を絡ませていて。
「やっぱり――フェイトさんの方が、いい?」
 その言葉に、エリオは少しだけ苦笑いをすると、キャロの頭を優しく撫でる。
「大丈夫。確かにフェイトさんはとても綺麗だけど――フェイトさんとキャロは違う」

 自分の隣には、彼女が居るから。いつだって、隣に居てくれる、彼女が――

「だから、改めて言うよ。ありがとう――――僕も、『大好き』だよ、キャロ」

 少年は、あの時少女に言われた事を思い出し、その返事をようやくする事が出来た。そして、今度は自分からキャロを抱き寄せ――口付ける。
「エリオ、く、ン――」
「キャロ……」
 二人は、自分にとって大事なものを見つける事が出来た。いつも近くに在ったから気付くのが遅れたけれど、これからは――
 
 なのはもフェイトを弄る手を止めて、二人の姿をじっと見つめている。フェイトも一緒に見るが、その瞳に元気は無い。
(……フェイトちゃん)
(なのは……)
(やっぱり、寂しい――のかな)

 フェイトにとって、二人は我が子の様な存在でもある。いずれは自分の下を離れて立派に一人立ちをするだろう。
 そう考えてはいたが、今の二人の新しい関係は、想像も出来なかった。
 その瞬間に、フェイトは二人の姿が急に遠ざかるのを感じた。
 ――子離れ、出来てないのかな。
 そう、自分で思った。

(……うん。二人の事は祝福すべきだけど――急に大人になっちゃって、私の方が置き去りにされたみたい)
 俯くフェイト。なのははその細い体を後ろから優しく抱きしめる。
(……大丈夫。大丈夫だよ、フェイトちゃん)
(なのは……?)
(あの二人なら、どんなに遠くに行ってもフェイトちゃんの事を忘れたりなんかしない。
 それに、フェイトちゃんには私が居る。私はフェイトちゃんを絶対に一人になんかしない。絶対に)
 フェイトちゃんは、私の大切な人だから。
 なのはの言葉に、胸が熱くなる。
(ありがとう……なのは。大丈夫――私は、二人が幸せになってくれるのなら寂しくなんかないわ)
(……うん)
 触れ合う肌から、互いの体温を感じる。そのまま二人は、柔らかな口付けを交わした。
「エリオ」
 フェイトがエリオを呼ぶ。キャロから唇を離し、こちらを向いたエリオの目を、フェイトはしっかりと見る。
「キャロを、大切にしてね。『騎士』なら、大事な人を何が何でも護り抜く――エリオなら、きっと出来るわ」
「――はい、フェイトさん」
 エリオの力強い瞳に、フェイトは安堵の笑みを浮かべる。そして次に、キャロを見る。
「キャロ、エリオを支えてあげてね。戦う騎士に、安息は必要だから」
「はい。私もエリオ君の事、護りたいですから」
 二人からの、これ以上無い答え。子供達の言葉に、胸が熱くなる。
「決まりだね。フェイトちゃん」
 ぱさ、とフェイトの体に何かが掛けられる。振り向くと、バスローブを羽織るなのはの姿。
「お邪魔虫さんはここで退散。後は若い二人に任せて……なーんて、ね?」
 くすりと笑うなのは。
「……うん。私達は、別の部屋で……ね」
 なのはの言わんとする事を理解したフェイトは、渡されたバスローブを羽織る。
「寮母さんには言っておくから、部屋は好きに使っていいよ。それじゃあ二人共……ごゆっくり」
 なのはとフェイトは立ち上がり、部屋を後にしようとする。
「――フェイトさん!」
 その後姿に、エリオが叫ぶ。
「あの、その、上手く言えないんですけど――――ありがとうございました!!」
「わ、私も…………ありがとうございます!!」
 キャロも叫ぶ。その言葉には、二人の想いが沢山詰まっていた。
「私も――ありがとう」
 その言葉に、笑顔で応える。フェイトはドアが閉まるまで、二人の姿を目に焼き付けていった――

 なのはとフェイトが居なくなり、その広い部屋には二人だけが残った。もう何も、二人を邪魔するものは無いのだ。
「あ……」
 と、何かを思い出したようにキャロが声を上げる。
「結局、ハンカチを渡しそびれちゃったね」
「あ。……あ、そうだったね。はは……」
 当初の本来の目的をすっかり忘れてしまっていた二人は、苦笑いする。

 だが、今はもういい。二人きりになったのだ。止まる事は無い。

「――キャロ」
 笑いを止めて、少女の名を呼ぶ。
「エリオ君」
 少女も、少年の名を呼び返す。
 エリオの手が伸ばされ、キャロの体を抱き寄せる。
「キャロ……」
「エリオく、ん……」
 優しい口付けを交わす。夜はまだ長い。二人きりの時間は、これから始まるのだ――

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目次:My Dear
著者:20スレ303

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