子育ての失敗を広く浅く、ゆるやかに追跡。

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デブの国ノッポの国(子どものための世界文学の森18)


解説_デブの国ノッポの国

 この物語を書いたアンドレ・モロア(1885〜1967年)は、本名をエミール・エルゾーグといいます。フランスのノルマンディーのエルブーフという町の、豊かな織物業者の子として生まれました。
 高等中学のとき、この学校の教師をしていた有名な哲学者のアランから、大きな影響を受けます。卒業したあとも勉強を続けようと思いましたが、アランの意見を聞いて、父の工場を受け継ぐことにしました。
 その後、モロアは何度か軍隊の仕事をしています。そして、第一次世界大戦中に見たり聞いたりしたことをもとにして小説を書きました。この小説で、モロアは文学者として認められたのです。
 それからも、たくさんの作品を発表して、1937年にはアカデミー・フランセーズの会員に選ばれています。また、第二次世界大戦のときにはアメリカに渡って、自分の生まれた国フランスを救うために大いに活躍しました。
 モロアは、伝記、小説、歴史、童話など、いろいろな種類の作品を書いています。なかでも、すばらしい才能を見せたのは、数々の伝記です。ジョルジョ・サンドやビクトル・ユゴーなど、フランスの有名な作家たちの生涯を、たくさんの資料を調べて、面白く描いています。
 ところで、みなさんはこの『デブの国ノッポの国』を読んで、どんなことを感じましたか。
 それまで仲良しだった二人の兄弟が、太っているか、痩せているかの違いだけで、離ればなれにさせられてしまいます。そして、二つの国の間にある島の名前が決まらないからといって、敵と味方に分かれた戦争に巻き込まれてしまうのです。
 この物語の世界では、デブの国とノッポの国は、最後には「デブノッポ連合王国」という一つの国になります。見かけや生き方の違いによって人間を区別するのは、つまらないことだと思ったのですね。それに、いつもガミガミ、セカセカしているノッポ人も、我慢強く、やたらに怒ったりしないデブ人の良さに気づいたようです。
 こうした考え方が違っても、相手のいい所を学び、力を合わせるという気持ちは、今日の私たちの世界にも必要なことではないでしょうか。
 現在の世界は、平和な国ばかりではありません。争いを繰り返し、不安と悲しみと貧しさの中で生きていかなければならない人たちがたくさんいます。どうして、こんなことになってしまうのでしょうか。それは、一つには、自分の考えが、いつもいちばん正しいと思っている人がいるからです。でも、みんなが自分が正しくて、相手が間違っていると思ったら、地球のあちこちで争いが起こってしまいますね。
 いま、みんなが真剣に考えていかなければならないことは、どうやって、このたいせつな地球を守っていくかという問題です。
 人間や動物たちが住む世界が壊されているということ、毎日の生活にはかかせないエネルギーが、近い将来なくなってしまうかもしれないということなど、私たちの地球には危険があふれています。
 こうした問題と取り組んでいくために、国の考え方の違いを乗り越えて、力を合わせなくてはならない時代に、私たちは生きているのです。
 この社会は、物語の世界ほどうまくはいきません。しかし、人間の世界のさまざまな問題は、結局は、人間がお互いを愛する気持ちをもってはじめて、良い答を得られるのだということを、モロアは、この物語の中で、私たちみんなに教えてくれているような気がします。

辻昶

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