試験委員

谷本光音

白血病などの血液悪性疾患を対象として病因、病態の解析と治療への応用を中心に研究を行ってきました。主に免疫学的手法を用いて白血病の表面抗原の解析を行い、モノクローナル抗体等を解析の方法として用いた研究を行いました。抗体による研究成果では、急性リンパ性白血病細胞に対して抗CD10抗体を数種類作成し、現在も抗体による自家移植療法として患者さんの治療に用いています。また米国へ留学中に抗CD33抗体を作成し、これも現在、留学先の施設を中心に臨床治験が行われています。またDNA やRNAを用いた診断、病因解析を行っています。対象は白血病のほかに、血液凝固異常症である血友病、vWDや先天性血栓素因であるPC欠乏症PS欠乏症などの原因遺伝子の構造解析を行いました。その後、異常蛋白の解析と正常蛋白の機能解析の仕事へと展開しています。白血病では、CML, APL, ALL などを対象に遺伝子の解析や、キメラ遺伝子と免疫グロブリン遺伝子を用いた白血病の微小残存病変の解析を行い、白血病の治療との関わりで研究してきました。

分子生物学的手法を用いた白血病の診断、病因解析に関する研究は、現在ではある特定の遺伝子産物(蛋白)の解析を行っています。特に注目している事柄としては、 (1) 白血化の原因もしくは結果として、細胞内に機能的な蛋白、もしくは細胞 内の異常なシグナル伝達分子や異常な伝達様式が存在するか。 (2) 白血化の際に細胞に何らかの増殖優位性を与える因子が関与しているか。 (3) 治療に対する反応性の関連で変異している蛋白はないか。といった点です。 (1) に関連するものとしては、これまでにMAPキナーゼやサイクリンEの異常を報告しています。また (2) に関連しては、新たな転座関連遺伝子を発見し、PDGFと何らかの新たな遺伝子産物との融合蛋白の機能を現在解析中です。 (3) に関してはアポトーシスに関わる Fas受容体の発現が、AML 治療の効果や生存率と関連があることを見いだしています。
2005年12月22日(木) 23:57:21 Modified by xenon2112




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