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フリーとなった私が再びプロデューサーさんに告白して振られたのは冬。
皮肉にも雲一つない快晴の日の事だった。
引退コンサート終了後では上手く言えなかったあの想いを、私はもう一度整理して
もっとアイドルとしての実力をつけたその後で、再度彼に告白しようと決めていた。
再び765プロと一緒に仕事をする機会を得て
一段と頼もしくなったプロデューサーさん相手に
私ははっきりと自分の想いを告げた。
けれど……彼から色良い返事はもらえなかった。
「……春香が今でも俺の事を大切に思ってくれているのは嬉しいよ。
 春香はファンの皆にとっても、俺にとっても大切な存在だ。
 だけど……いや、だからこそ
 今まで一緒に育ててきたトップアイドルとしてのお前を
 余計なスキャンダルの種で壊したくないという気持ちがあるんだ」
「でも、私は……」
彼は私の肩に手をやった。その時の私には苦しいくらいに重たく感じた手だった。
「俺だけじゃない……ファンの皆が春香を見て支えてくれているんだ。
 春香には、これからも『皆のアイドル』でいて欲しい。それが、俺の気持ちだ」
「皆の……アイドル……」
私はこう返答された時に、初めてアイドルという仕事に嫌悪感を抱いた。
そして自分の心に、塞ぎきれないくらい巨穴が暗い底を見せて開いていくのを感じていた。
「仕事に身が入らない」という事はトップアイドルの誇りとして何とか抑えたが
それからの私は、一人になると必ず抜け殻のようになった。
私の中で彼に対する思慕や告白への期待は、驚くくらい大きくなっていた。
悲しさ、苦しさそして怒りよりも、酷く暗い諦観が心を覆い尽くしていく。

私は何のためにフリーになったんだろう。
私は何のために頑張ってきたのだろう。

一日中終わりのない思考が、頭の中でぐるぐると回っている。

(プロデューサーさんと出会ってこんな思いをするくらいなら……
 アイドルになんか、ならなければ良かった……)

いつしか私はそう思うようになっていた。

   #  #  #

「天海君じゃないか」
ある冬の夜。
寂しくなった駅の構内で一人椅子に腰を掛けていると聞き覚えのある声が掛かって来た。
振り返ってその顔を仰ぐと、765プロの高木社長だった。
「オシャレなのは結構だが、そんな薄着でじっとしていたら風邪を引いてしまうよ」
社長は白い息を吐きながら、私に自分のコートを着せてくれた。
その暖かさを知って、自分の体がかなり冷え切っていた事を実感し、驚かされた。
「……。……社長」
「んっ? 何だね」
「少し……私と付き合ってくれませんか?」

   #  #  #

今思えば私はその時、自暴自棄になっていたのかもしれない。
あるいは寂しい時に人肌のぬくもりに触れて、恋しくなったのかもしれない。
どちらにしてもこの衝動に駆り立てた思いは一つ
――心に空しく存在するこの大きな穴を、何か別のもので埋めたくて
誰かに埋めて欲しくて仕方なかったのだ。
「話を、聞いて欲しいんです……」
「話かね、……いいとも」
社長は笑って引き受けてくれた。
「最近天海君の元気がなくて心配していた所だ。
 君の仕事は後輩アイドルたちに良い刺激を与えてくれている。
 私で良ければ相手になろう。それで君が元気になるのなら、安いものだ」
「ありがとうございます」
電車で郊外に出た後、私は人目を上手く避けて
うら寂しい通りに立っている一つのホテルへと彼を誘った。
けばついたネオンサインが薄暗い夜道でうるさいくらい盛んに自己主張していた。
「……変わった場所で話をするんだね」
社長は最初とぼけてみせたが、個室に入って私が服を脱ぎ始めると
その大まかな意図をすぐに察したようで少し戸惑い始めた。
「天海君……」
「社長……大人ですから、分かりますよね」
私は意味深に囁くと、下着をはだけた胸元を彼に見せた。
こんな風に男を誘った事のない私の心臓は、さっきから忙しなく鼓動している。
まるで胸の下に、別の生き物が存在しているようだった。
「……なるほど。君は、寂しいんだね」
社長の手が、私の肩に掛かる。
見ると社長の顔に、普段見慣れないにやけた中年男性の表情が浮かんでいた。
「私も男だ。君の心身を慰める事は、やぶさかではない」
私は目を閉じて静かに唇を差し出した。
すると、やがて無骨な男性の硬い唇が重なって来る。
「んぅ……んっ……」
相手の舌が口唇をこじ開けて中に入って来る。
その肉舌に私は、舌を蛇か蔦のように絡ませていく。
唾液が、絡まる肉柱の表面を伝いながら混ざり、やがて一つとなっていった。
コロンに紛れて鼻をくすぐる、中年男性独特のあの匂いが今夜は何だか心地良い。

今夜はこのまま、隅々まで汚されたかった。

   #  #  #

数分後――、私たちは互いに全裸となってベッド上で戯れていた。
「んぅ……、んふ……、ちゅるっ……」
社長は私の脚を少し乱暴に開いて、隠れていた女の部分を唾液のしたたる舌で舐め始めた。
彼の熱くそしてざらついた舌肉が、男を知らない私の恥唇を執拗に嬲った。
くすぐったく、それでいて段々と癖になっていきそうな感覚。
舌が這う度に汚れていく屈折した快感――それに私はぞくぞくと身を震わせていた。
「ふふふ……私の歳になるとね、こちらに力が入るものなんだよ」
社長はニヤニヤと笑いながらそう口に出し、長い時間ペッティングを続けていた。
ピチャピチャと唾液の撥ねる音だけが部屋に響いた。
その間、私の身体には大小の快波が不規則に襲い掛かり、精神をじんわりと翻弄していった。
「あっ……! ……んっ……」
途中、彼の舌で私は三度程軽い絶頂に達した。
気恥ずかしくて私は黙っていたが、恐らく彼は気づいているに違いない。
「さて……君も暇だろう?」
社長はズボン、そして下着をも脱いで私の眼前にそれを晒した。
太ってやや膨れた腹部の下には白髪混じりの陰毛が繁茂していて
その中から、だらんと長いペニスが垂れていた。
幹の部分は全体的に黒く、先は赤みがかっていた。
まるで「女の味を知っているぞ」と誇らしげに語りかけているようだった。
睾丸は皺が多く、重たそうに股の間からだらしなく下がっている。
「どうかね。男の味も良いものだよ?」
雰囲気に押されたのだろうか。快楽に浸って酔ったのだろうか。
それほど不快感を抱かないまま、私はその醜い性器に小さく口付けをした。
肉先の割れ目から滲み出ている淫汁が、ぬめりとした感触と共に私の唇を濡らす。

「んむっ……ちゅぷ……はふ……むぅ……」

私は四つん這いになって、彼のペニスを一生懸命しゃぶった。
心のどこかでこの浅ましい姿の私を客観視している私がいた。
口に含んだペニスは嗅いだ事のない猥臭を発して、鼻腔を強く刺激した。
舌を這わせると何やら垢のようなものが胴部から転げ落ちて舌に絡みついてくる。
時間の経つのも忘れて舐めすがっていると、私の頭を彼は飼い猫にするようにそっと撫でた。
静かに見上げると、社長は満足げに微笑している。
私は咥えて舐めるだけでなく、舌先で彼の感じそうな所を小突いて刺激する。
口をすぼめ、睾丸すらもいやらしくしゃぶった。
こんなに卑猥な事が自分に出来たのか、と改めて私は驚いた。
「あっ……! いかんっ……!!」
社長が眉を中央に寄せて呻いた後、私の口内に熱いヘドロのようなものが勢い良く吐射された。
甘苦いその液汁に喉は酷く驚いて、急に嘔吐感を訴える。
「うう……っ! ……うぶぇ……っ!!」
私は口に含んでいたものを放し、口内に発射されたものを全てベッドの上に吐いた。
黄色がかった卵の白身のようなぬるぬるとした液体が糸を垂れてシーツを犯す。
鼻孔は生臭い芳香でいっぱいになった。抱えきれずに鼻穴から淫香が溢れていく。

「はは、精液を飲んだのは初めてかね?」

私は口から垂れた精液を、カバンに入れてあったウェットティッシュで拭き取った。
これが男の人の精液――尿とは違うが、汚汁である事は変わらない。
それなのに私の体はどうしてこの不快にも思える異臭にときめいているのだろうか。
それが不思議でならなかった。

「では最後に……」
社長は私の身体に覆い被さった。
ペニスを見下ろすと、先ほど見た時よりも肥大しているように見えた。
私の唾液と彼の精液が纏わりついてぬらりと鈍く光っている。
言い知れぬ恐怖を感じて、私は無意識に股を閉じて力を入れた。
しかし、彼はそれを力で強引にこじ開けた。
歳を取っているといっても男の人なんだなと改めて意識した。
「大丈夫、優しくするからね……」
社長は優しく呟いた後、二本の指で私の恥穴をクチュクチュと弄ぶ。
心のどこかにまだ抵抗感が残っているのに、既に私のその部位は
異性を受け入れる準備が出来ていた。
彼は恥部にペニスを擦り付けた後で、その風船のように膨らんだ肉先を雁首まで挿し入れた。
未通の穴に押し入ってくる男の人の感触……じわりと広がっていく鈍い痛み。
それらすら私は他人事のように感じていた。
何回かの一進一退を経て、私は彼のものを根元まで受け入れた。
好きな人に捧げるはずだった私の初めては、こうして彼のものとなった。

「安心したまえ、天海君。私が責任を持って、君に素敵な快感をプレゼントしよう」

社長が私を抱いて言った事は、嘘ではなかった。
最初は浅くゆっくりとした動きで、私の体に彼のものを受け入れる時間をくれた。
私は熱い息を声と共に漏らしながら、シーツを引っ張るように握っていた。
やがてその痛痒い感触が痒い所を掻かれている心地よさに変わり
声のトーンも桃色を帯びてきた。
それを知ったのか、彼は徐々に深く早く私を犯し始めた。
だけどその荒々しい動きに比べて、恥肉の痛みはそれほど強く感じなかった。
やはり女性経験のある男性だから、これほど上手いのだろうか。
時間が経つにつれて、まるで夜空が明るくなっていくように
私は快美を覚えていった。

「あはぁっ……! あっ、ああ……っ!」

「気持ち良いかね?」
上から社長が声をかけてきた。
「は、はい……っ! き、気持ち良いですぅ……!」
答えた後、私は何度もよがり声を発しながら、涙を目尻から溢れさせ、頬を濡らした。
それが悲観の涙か、それとも随喜の涙か――その時の私には考える余裕がなかった。
「いくぞぉ……っ! 天海君っ!」
社長は私の身体を強く抱き締め、膣内にあの粘ついた淫汁を放った。
私は宙に投げ出されたような不安とどこまでも続く淫悦を纏いながら
彼の体に爪を立てていた。

初めて感じる情事の後は、酷く気だるかった。
それでもトイレのビデで洗浄した後、股間に付いている残りの精液を何度か無心で拭く事は出来た。
「私としては、君といささか不本意な関係となってしまったが
 何分、君のふさいでいる姿を見過ごすというのも気が引けてね……」
拭いている間、彼は自身のした行為を正当化しようと言い訳がましく語っていた。
しかし私にとってそれはどうでも良かった。
途中から彼の話を聞かないで、私はただ自分の体を見下ろしていた。

   #  #  #

それからも私は、彼との関係をずるずると持ち続けていた。
元々一夜限りのつもりだったのだが、あの後彼から執拗な誘いがあって
断りきれずに仕方なく付き合っていた。
互いに脛に傷を持つ者同士、寄り添おうとする意志が働くものなのだろうか。
私は関係を清算する方法を知らなかったし、彼を放っておくと不安でならなかった。
情事が明るみに出て困るのは、彼も私も一緒のはずなのだが。

事務所にいる時の彼は、昔も今も人当たりの良い老紳士だ。
だが私だけ、その笑顔の裏に隠されたもう一つの顔を知っている。
関係が深まっていくにつれて、彼はその内奥に秘めていた
一種の変態性癖を私に向かって解放していったのだ。

「おはよう天海君」
朝に事務所へ赴くと、先に来ていた社長から挨拶をされた。
「お、おはようございます……」
「出勤したばかりの所済まないが、……話があるので社長室に来てくれないか?」
「はい……」
私は誰にも見られないようにしてそっと社長室に入った。
幸いこの時間帯は皆忙しそうに雑務をしているから、行為自体はすんなりと行えた。
「失礼します……」
部屋に入った私は改めて彼に会釈をする。
この数ヶ月間で、私の体はすっかり彼のものの形を覚え、彼の意志に順応してしまった。
もう元の、あの普通の天海春香には戻れないかもしれない。そう私は感じていた。

「喉が渇いたな」

社長は仕事の件を話すでもなくそう呟いて、ティーカップの耳に指をかけて
私の眼前にそれを差し向けた。
それが最近の私たちの間で行われている「合図」である。
私はそのティーカップを彼から受け取り、下着を脱いだ。
スカートの前をたくし上げると見慣れた隠部が目に映る。
「んっ……」
その場にしゃがんだ私は股座の下にそのカップを据えて
朝から溜めていた濃い黄尿を、零さないように注意しながらチロチロと器へと注いだ。
「……どうぞ」
「うむ」
黄色い液体の溜まったそれを差し出すと、彼はうなづいてティーカップを受け取った。
まるで普通のお茶か何かのようにその尿の匂いを嗅ぐと
ゴクゴクと喉を鳴らしながら胃へとその液を飲み干す。
「ふふ、……やはり若い娘の出すジュースは格別だな」
社長は例のいやらしい笑みを口端に浮かべた。
残尿感も手伝って、それは恐ろしい悪魔のように私の瞳に映る。
何度見てもその表情に私は薄い恐怖感を持ってしまい、体を震わせる。
「お代わりをいただけるかね」
「はい……」
途中で放尿を切り上げ我慢していた私は、やっとまた放尿できるとカップへ手を差し出した
しかし何を思ったのか、彼はティーカップを引っ込めてデスクに置いた。
「いや、カップは要らないよ」
「えっ」
すると彼は、私のスカートをやや強引に剥いだ。
靴下と靴以外を奪われた下半身わ、私は隠したい衝動に駆られた。
「あっ、あの……!」
「気にしないでいい、直で飲むからね」
社長はその場に膝をついた。
太ももの間に顔をうずめ、尿道口を執拗に舌で嬲った。
「ああっ、社長……!」
私はこらえていた尿意を再び催しながら、股に力を入れる。
「どうしたんだい。さあ、飲んであげるから早く出したまえ」
彼は口唇の全てを使って私の排尿を促す。
しばらく抵抗していた私だったがやがて尿意に負け、彼の口内に
シャアア……と恥ずかしい音を立てながら放尿してしまった。
彼はチーズが溶けたようなにやけ顔でそれを嬉しそうに飲み干した。
私は恥ずかしくて小さくなりながら、異性におしっこを飲んでもらう心地良さに心を震わせていた。

   #  #  #

「社長」

ノックが聞こえたので、半裸になっていた私は社長の手引きによって机下に身を隠した。
慌てて服を着ようとしていたらいつものように転んで
着衣が間に合わないどころか、私たちの関係もばれていただろう。
「入りたまえ」
「失礼いたします」
社長室に入って来た人は告白したあのプロデューサーさんだった。
彼は今、あずささんのプロデュースを受け持っている傍ら
私の仕事もサポートしてくれている。
彼はあれ以来告白の事は口に出さず、いつも通り私に接してくれた。

私は彼の声を机の下に潜って聞いていた。
プロデューサーさんの声を聞くと酷く寂しくなる。
こんなに近いのに彼の中に入っていけない寂しさが
半裸の私を更に寒く凍えさせた。
「何かな」
社長は彼に声をかける傍ら、ズボンのジッパーを静かに下ろして
そこから巨きくなったペニスを引っ張り出して見せた。
机下に伸びた手が私の頭を掴んで、その熱い棒状の肉塊へと顔を押し付ける。
舐めろという事なのだろう。それに気づいた私は
彼のペニスを口に含み、音を立てないようにしゃぶった。
「今朝のミーティングで発表した企画の件なんですが
 ご相談したいいくつかの事柄がありまして……。……」
「ふむ……。……それで……。なるほど……。では……」
プロデューサーさんと社長がしている会話の内容は良く分からなかった。
私はただ、二人が話をしている下で、卑しく男性器に舌を這わせていた。
体を満足に動かせないものの、唾液を舌に絡めて性器の汚れを何度も拭う。
「はぁふ……、んむ……、んっ……んふぅ……」
社長に喜んでもらおうと頭を上手く前後させ
唇をすぼめながら、隠れて一生懸命奉仕した。

「あれっ」
プロデューサーの声に私は動きを止めた。
「どうしたんだい?」
「いえ、社長。……何かどこからか、苦しがっているような声が聞こえるんですが……」
私はばれまいと声を押し殺した。
「……。私には聞こえないね、空耳だろう」
「そうですか?」
気づかれまいと口からペニス放そうとしたが、その私の頭を彼の手は根元側へと引き寄せた。
咽喉に亀頭が押し付けられて吐きそうになったが、必死に声を抑える。
「君、きちんと休んでいるかね? 若いからって
 無茶ばかりしていてはいかんよ。心にはゆとりを保たないとね……」
机の下で私は苦しさに涙を流しながら、彼の強い力によって喉奥でペニスを送迎させられていた。
乱暴に扱われているのに、どこかこの状況に対して悦んでいる私がいる。
「恐れ入ります。近々休暇を取らせていただく事になりますが
 その時は宜しくお願い致します」
「そうか。何か予定があるのかな?」
「ええ、実はこの度あずさと結婚する事になりまして……」
その言葉を彼の口から聞いた時、声こそ出さなかったものの私は酷くショックを受けた。
結婚――それは私にとっての憧れであり、夢で彼と思い描いていた一つの最終地点だった。
私の時はアイドルだからと断っていたのに、同じアイドルのあずささんとは結婚……
私は胸が痛くなり、張り裂けそうにさえ感じた。
「ほぉ! 君たちがねぇ……」
「はい。プロデューサーとして公私の別に徹する身に在りながら
 お恥ずかしい話ですが……」
「いやいや、めでたい事じゃないか! ……んうっ!」
「どうされました?」
社長はそれに対して何でもないと答えたが、何が起こったのか私にはすぐに分かった。
一瞬膨張したペニスは次の瞬間にドラムのような激しい律動を起こして
喉奥めがけて粘性の高いあのミルクを強かに放出したのだ。
私はむせて声を出すのを我慢しながら、次々と発射される精液を胃に落とし、飲み続けていった。
「しかしだ、三浦君ほどのトップアイドルとなると、きちんと記者会見をする必要があるね」
「はい。社長のご許可さえいただければ、近日中にセッティングいたします」
「勿論許可するよ。すぐに行いたまえ」
「ありがとうございます。あ、あと……出来れば
 社長には結婚式の仲人をお願いしたいのですが……」
「はっはっは! いいとも、是非幸せになってくれよ」
机の下で私は肩を落として虚ろな目でどことなく見ていた。
プロデューサーさんに対する憎しみとか怒りとか、そういった強い感情はない。
ただ、この時喉にこびりついた精液は、いつものよりも酷く苦かった……。

   #  #  #

その日の夜。
私は社長に連れられて郊外のホテルで抱かれた。
彼の腰の上で私は体を弾ませて、直立している肉柱を何度も慰めている。
プロデューサーさんとあずささんの婚約を聞いてから、私の心は酷くかき乱れていた。
私はそれを出来る限り忘れようと、ひたすら社長との性交に集中し
自分の体を快楽の海の中へと溶かしきろうとした。

「ふふ、天海君……君の気持ちは分かるよ」

社長は私の身体の下で優しく微笑んでいた。
「私も朴念仁ではない。君の挙動で、彼に好意を寄せている事ぐらい察しがつく」
私が押し黙っていると、彼は私の上体を自身の胸元に抱き寄せ
下から釘のようにペニスを何度も激しく突きまくった。

「ああっ……! はあぁ……っ!」
「恐らく彼の事だから、君には公私の別をつけて接したのだろう。
 三浦君にもそのように接していたはずだよ。彼は真面目な性格だからね。
 ただ三浦君とは男女の仲になるまで発展しただけさ。そこに至るまで彼も葛藤した事だろう」
「んああ……っ! あん……っっ!」
「……恋愛というものは上手くいかないものだ。
 小説やドラマのように相思相愛となって結ばれる、そんなカップルは実際わずかしかいない。
 好きな人間に振られたり、好きでもない人間に告白されたりもする。
 そういった事の方が、しばしば起こり得るのだよ」

社長は更に繋がったままベットの端に移動して、座った状態で私の口を吸った。
その巨きなペニスが私の熱くなった肉孔を押し広げながら犯していく。
切ない奥の入り口へ何度もアクセスして、私の心を内から満足させる。

「あんっ……、ああっ……! はあぁんっっ……!」
「天海君、彼の事はもう考えない事だ。考えれば考えるほど、君は苦しく嫉妬する。
 彼には既に伴侶がいる。彼を思い続ける事はとどのつまり、だれも幸せになれないのだよ。
 とは言っても、恋慕の糸は断ち切りがたし……すぐに忘れられるものではないだろう」

彼と私の口の間には長々としたいやらしい唾液の吊り橋が出来ていた。
彼はそのまま私の乳房や尻をそっと長めに撫でさする。

「だから今日は、君の気が済むまで心身を慰めよう。
 不安や嫉妬の特効薬は、何時の世だって快楽なのだ……」

私はそれから彼の激しい愛交に翻弄された。
彼は既に私という女体を知り尽くしていた。どこをどうすればどう喜ぶのかを熟知していた。
彼に攻められる度に私の牝は、全身に響く性悦を発して楽しんでいる。
それに釣られて、悩みに凝り固まっていた私の理性は徐々に溶け始め
深く温かい肉欲の海へと身を沈めていった。
「おほぉ……っ! で、射精る……っ!」
社長はピストン運動の最中に頂点へと登り詰め
また私の膣内へ、衰えを知らない遺伝子のミルクを強かに放出した。
痴悦の大海に頭まで浸かっていた私の体は、ただそのうねりの命じるままに
恥肉を律動させて彼の放った牡精を子宮へと収める。
奥の扉へと重い液汁が豪射される度に、刹那的にではあるが大きな充足感が私を満たしていく。
「ああ……っ、あー……あー……」
射精の余韻を味わうように、社長は声を伸ばして射精が終わるまで引き抜かない。
やっと抜いた時には、ねっとりとした淫液がどろっと膣外へと這うようにして顔を出した。
「天海君、君のオマンコは大変素晴らしい。
 ねっとりと絡みついて来たかと思えばキュッと締め上げてきてね
 非常に男を楽しませてくれる……」
彼はベロベロと私の頬や腋を舐りながら褒め称えた。
いやらしい事を言われているのに、その言葉を嬉しがっている自分がそこにいた。

   #  #  #

「天海君、私と一緒に暮らさないか」

硬度を驚くべきスピードで取り戻した社長は、私を四つん這いにして後ろから攻め立てた。
犬のように交尾し合っているこの時、背中の上から彼はこう私に話しかけた。
お尻へのストロークにひねりを入れれらたので
私は大きな声を出して悶えただけとなった。
「妻はもういないし、息子も自立している。私一人でも生活の工面は十分出来る。
 どうだね? ……私のものにならないか?」
どう返答したらいいものかと私は沈黙と嬌声を続けていた。
「ふむ、答えるのが恥ずかしいのかね? ……ならば君の体に直接聞いてみようか」
彼はそう言って力強く腰を尻肉へ叩きつけるようにして、私を暴交した。
女孔から手足の指先まで肉悦の響きが広がっていく。
体の奥が熱い。私の体はいつの間にか彼を求めていた。
彼から求められる度に、私は女の喜びを感じていた。
「ああっ……!」
「君も気づいているのではないかね、自分が男好きの淫乱である事に」
「そっ……!? そんな事……っ!」
恥肉を押し広げて彼の熱いペニスが何度も膣内を蹂躙する。
その度に私という「牝」は、歓喜の震えをもって迎え入れていた。
「さあ、その性をさらけ出したまえ……!
 君を満たす事の出来る雄は私しかいない。
 私に、『全て』を委ねるんだ……っ!」
彼の繰り出した強烈な一突。その瞬間、私は忘我の極致に達した。

――それから後の事は覚えていない。

気が付けば情事が終わった後で、私の内奥にはそれまで彼の放出したらしい
重々しい快楽の残滓が巣食っていた。海のように広く、そして深い愛感が
メイプルシロップのように甘ったるい余韻として全身に残っている。
ベッドに横たわって何度も熱い吐息を漏らしている私を
彼はシガレットの煙を燻らせて眺めていた。
その眼は深い優しさに満ちていて、私に父の腕の中にいるような安堵感を与えた。

   #  #  #

あずささんがプロデューサーさんの子供を懐妊して五ヶ月目になったという。
だけど、今の私はその事に関して特別な感情、そして感想を持たなかった。
もうそんな事はどうでも良くなっていたのだ。

「んっ、んちゅっ……! ぬむぅ……!」

私はいつものように、激しい仕事をした彼の熱いペニスを口で慰労した。
愛おしい彼の分身に舌と口唇を絡めていると
母親の乳首を含む赤ちゃんに似た幸せな気持ちになる。

「ちゅぱっ……! ちゅっ……あむっ……! じゅるっ……!」

ペニスに纏わり付いている精液を舌で拭い取り、唾液で何度も清める。
さっき出したばかりなのに、また血を滾らせて身を膨らませているペニス。
肉色のキャンディーに、私は飽きる事無く舐めすがっていた。
「おほぉぅ……っ!」
社長はブルッと震えながら私の頭を押さえて、口内にピュッピュと射精した。
重たい精液はどこまでも甘く、体の芯を温めて溶かしていく。

「もぉ、『順ちゃん』ってば……まだこんなに残していたの?」

私は愛しい彼の事を最近こう呼ぶようになった。
彼も私に親しく呼んでもらって喜んでいる。

「ははは……まだ残っていたとはね。済まない、『春香』
 ご褒美と思って飲んでくれたまえ」
「ふふっ、しょうがないなぁ……」

私は笑みを浮かべ再度頭を下ろして、彼の牡汁を啜った。
彼に愛される事が今の私の喜びであり、私の全てだ。

「そろそろ、いいかね?」
社長はベッドの脇にあるハンドカメラに手を伸ばして、それを私に向けた。
最近の彼は私との情事をしばしば写真に撮る。
「女性は桜のような物だ。人生で最も美しく魅力的な時を出来るだけ収めておきたい」
彼はこう言って、行為中繋がっている私も良く撮っていた。
最初は恥ずかしさが先立っていた私も
この頃になると被写体となる事に喜びを感じるようになっていた。
頭頂部から爪先まで、私は彼の色に染まっていた。

「今日はどんな私を撮りたい?」

「そうだな……」
彼は私の傍に寄って来て耳元で要望を囁いた。

「……嫌かね?」
「ふふ……順ちゃんってば、やらしい……」

私は彼の頼みを引き受けて、そっと頭に括り付けていたリボンを全てほどいた。
ほどいた間は、アイドルの天海春香ではなく本当に普通の女の子になった気分になるのだ。
彼の言う通り私は折り畳んだ脚を左右に開き、蹲踞の体勢を取ってしゃがんだ。
目の前でカメラを構えている彼に見せつけるように
愛液でぬめった恥唇を両手を使って、クッと左右に開く。
さっきまで彼と繋がり、底なしの愛欲を受け続けていた秘所がフラッシュの光の下に曝け出される。
膣口からはどろりとした欲汁が絶えず溢れ出して、ベッドまで一本の太い柱を形成していた。
彼は興奮して巨きなペニスを片手でしごきしながら、私を撮り続けた。
「綺麗に撮れた?」
「被写体が良いから当然だよ」
撮り終った後、私たちは湧き上がってきた愛欲をぶつけ合うため
再度肌を重ねて交わった。
また、長く深い肉欲の海に沈んで一つになっていくのだ……。

   #  #  #

後日。765プロダクション社長・高木順一郎氏は
私用で都内にあるバーへと足を踏み入れた。
ここでは彼が極秘に所属しているクラブの会合が半年毎に行われている。
通りに面した出入り口には休業中という札が掛けられているものの
裏口から入るとまばらながら客がたむろしていた。
「社長、お待たせいたしました」
一人カウンターでウィスキーの水割りを飲んでいると
新たに店に入って来た若い男二人が、彼に向かって頭を深く下げる。
彼らに体を向けて、高木氏は人差し指を小さく左右に振った。
「……君、ここでは『高木さん』と呼びたまえ。
 このクラブは会員の社会的地位や身分を問わないとはいえ
 他人行儀になってしまう人もいるのだよ」
「すっ、すみません。高木さん」
高木が優しくたしなめると、社長と呼びかけた男は再度頭を下げて言い直す。
しかし彼らが社長と呼んでしまうのも、無理のない事だ。
何故なら、件の二人は765プロに所属しているプロデューサー。彼の部下なのだ。
彼らは高木氏と同じくこのクラブの会員であり、つい数年前に入会した者たちだ。
別口の紹介で入会した彼らは、寄り合いの場で表社会の上司と鉢合わせして大層慌てたという。

   #  #  #

このクラブでは、会員の各々が異性との情事を収めた写真を見せ合う事を主な活動内容としている。
写真は無修正の物に限られ、時にはバーの二階にて開催されるオークションに
写真やネガを出品物として出し、その道に通じた好事家たちが入札し合うのだ。
被写体の対象となる異性の年齢は、十三歳から五十歳までの間に限られる。
彼女たちの職業は大抵風俗嬢だが、女教師、スッチー、看護士、レースクイーンなどと撮っている者もいる。
会員の中には聖職者の女性のみを好み、尼さんとの情事を写真で公開した者までいるのだ。
このように会員の趣味の幅だけ選択肢があり、楽しみも深い秘密クラブなのである。
また血筋や間柄なども問わないため
撮影者との関係も、妻、不倫相手を含む恋人、娘の友人など様々だ。
中には義母や妹との情事を公開する者もいて、オークション会場を沸かす事だってあるのだ。

「見て下さいよ、この娘!」
先ほど高木氏に話しかけたプロデューサーの一人が
携帯を差し出し、写った画像を見せつける。
そこには男も感嘆の声を上げるほどに見事な筋肉を隆々とさせた美女がいた。
彼女は唯一女性らしさを残した一対の乳房を両腕で挟みながら
男の肉茎を根元まで挿入されて、恍惚の笑みを浮かべていた。
「お前相変わらず好きだなぁ、マッシブな娘」
もう一人のプロデューサーがニヤニヤしながら言った。
「へへっ……探すのに苦労したんだ。
 女子プロの試合を出来る限り回って、やっと巡ってきた上玉だよ。
 付き合ってみたらすげえ可愛いかったぜ」
携帯の持ち主である彼は、惚気混じりで入手までの努力を熱く語った。
職場の彼は菊地真のプロデューサーであり、真の魅せる腹筋が一番堪らないらしいのだが
社長の手前、その事はお首にも出さない。
「マイナー趣味の絵は高いが、回収率を考えるとあまり良くないね」
先ほどの男がこう口に出すと、語りかけられた彼はやれやれと頭を横に振る。
「そういうのは無粋だな。このクラブは如何に自分が楽しめるか、それが最重要事項だよ。
 もっとも同好の士がいれば、その楽しみは倍加するんだけどね」
その言葉に傍にいる高木氏も深く相槌を打つ。
「好きな事だからこそモチベーションを維持し、続けられるのだ。
 君の熱意は本当に素晴らしいよ」
「ありがとうございます」
真Pはいつもの癖が出て深く社長に一礼した。
高木氏は次にもう一人の部下に体を向けて尋ねる。
「時に、君はどのような写真を用意してきたのかね」
「ふふ、今回は和風テイストで撮ってみました」
彼は自信満々の表情を浮かべて、胸の内ポケットに入っていた写真を差し出した。
ややふくよかな体つきの女性が、麻縄でその身を縛られている画像だ。
縄は亀甲状の模様を肢体に食い込ませて、女体の豊満さを強調していた。
女性はうっとりと伏し目がちにして頬を赤らめている。
巨きいその乳房の上には、鈍く光っている精汁が纏わり付いていた。
「和服で縛りか……うむ、中々の趣だ。
 古来より存在する伝統には、完成された美しさというものがある。
 縛り方も丁寧で、職人芸を感じるね」
「好きこそものの上手なれ、ですよ。撮影中も試行錯誤を重ねて
 やっと納得の出来る作品を撮る事が出来ました」
上司に褒められた彼は、いたって上機嫌である。
職場で貴音のプロデューサーをしている彼の夢は
日々溺愛している彼女の素晴らしい肢体を美しく縛り上げて
自らの美的欲求を昇華する事にあった。
「さあ、次はしゃ……高木さんの番ですよ」
「今回はどのようなものを持ち寄って来られたのですか」
二人は期待の眼で高木氏に尋ねた。
「私かね? ふふ、最近気に入った娘が出来てね……
 まあ、さほど絵に趣向を凝らしてはいないのだが、……見るかね?」
是非にと頼む二人の前に、彼は例の写真を差し出した。
二人が覗いてみると、そこには自身の淫部を両手で観音開きして晒した少女の姿があった。
顔は口までしか写っていないが美しい少女であると誰もが想像できる。
その少女は、膣口から太く垂れている精液の柱を
撮影者の愛情の証であるとばかりに強く示し、口元に笑みを浮かべていた。
彼らは一瞬でその淫画に眼を奪われ、しきりに感嘆の声を上げる。
「何とぉ……これはっ!」
「かなりハイクォリティーな写真ですよっ!」
彼らの反応を見た高木氏は口端を吊り上げて満足そうに鼻息を吐いた。
「どうだね。中々のものだろう?」
「中々なんてものじゃないですよ、これは!」
真Pは興奮を抑えきれぬようで、鼻息を荒くして写真を見つめている。
「いやぁ、これほどセックスアピールの強い絵を拝むのは久しぶりですね!」
貴音Pは隆起しているズボンの局部を必死に押さえていた。
「一瞥しただけで急に息子が騒ぎ出してしまいましたよ。
 うわぁ……こんなにナマ中出しされているのに笑っていますよ、この娘!
 よっぽどエッチな娘なんじゃないですか!?」
「確かに。かなり淫乱の素質がある娘だよ」
「これ全部高木さんが出したやつでしょう!? どれだけ搾り取ったんですかこの娘は。
 そしてそれに付き合える高木さんも元気なんてもんじゃないですよ!
 俺たちも負けていられませんね」
「はははは……ついついハッスルしてしまってね。
 ふふっ……なにぶん非常に可愛い娘だからね」
しきりに賞賛の声を上げる彼らを気にかけて他の会員たちがその写真に群がってきた。
彼らはそれを一瞥するなり、歓声を上げて撮影者と被写体を褒めまくった。
自分にも見せろと次々と腕が写真に伸びてきて、そのうち奪い合いになって
千切れてしまうのではないかと思えるほどの反響振りだった。

「高木さん、あの写真を譲ってくれませんか!」

一人の好事家が人ごみの中から出てきて高木氏に拝み込んで交渉した。

「オークションで出すつもりなら今ここで君の言い値で買いましょう!
 お願いしますっ、私はどうしてもあの写真を手に入れたくて仕方がないのです!」

興奮してまくし立てる彼を、高木氏は何度もなだめて落ち着かせようとした。
「これは困りましたな……それにしても
 貴方がこれほどご執着なされるとは、珍しいですな」
相手の紳士は大抵一階で写真を見るだけで満足し、二階ではほとんど顔を出さない人間だった。
その彼が今、必死になってこれを手に入れようとするので高木氏は珍しく思ったのだ。
紳士はウェイターから頼んでおいたカクテルを受け取り
それを半分まで喉に流し込んだ後で、彼に告げた。

「夢中にもなりますよ。写真の女の子は、あのトップアイドルの
 天海春香ちゃんにそっくりなんですから!」

それを聞いて高木氏の眉がぴくりと反応した。
しかし彼は顔色を変えず紳士と向かい合っている。

「ほお……貴方は、彼女のファンですか?」
「そうです。遅咲きの恋という奴ですよ、笑って下さい」
紳士は照れながら話し続けた。
「彼女は素晴らしい女性です。巷ではどこにでもいる女の子だという評価を下す者もいるが
 もし彼女が傍にいたら私は平静でいられません。純真さをそのまま具現化したような娘です。
 彼女のアルバム、写真集、ファングッズは全て集めています。どれもこれも私にとっては宝物です。
 容姿に春香ちゃんの面影があるというだけで、私は『ののワさん』という
 ゆるキャラ関連のグッズも集めているほどですよ」
「それは、それは……熱心な方だ」
「病膏肓に入る……ファンというよりも狂信者ですね。それほど、彼女を愛しています。
 だからこの絵は是非欲しい! 彼女の面影を感じるものは全部自分のものにしたいのです!」
「しかし、これは……」
「写真を譲っていただけないのならば、彼女を紹介してもらえませんか!?
 頼みます! どうか……」
土下座しかねないほど熱心な彼を諭すようにして、高木氏はカウンターに座らせてしきりに酒を勧める。

「……残念ですが、期待に応えられませんな」
自身のウィスキーのロックを口にして彼は言った。
「彼女は私の伴侶となる予定ですから」

「妻に!?」件の紳士は、目を見開いた。
「彼女はどう見積もって二十代前半だ、君の子供より若い」
「恋愛に歳は関係ない……貴方もおっしゃっていたじゃないですか」
「いや、まあ……しかし……。……そうか。……残念だ」
紳士はすっかり肩を落として言った。
やがて頼んでいた酒が差し出された。
彼はカクテル、高木氏はウィスキーを手元に寄せてグラスを傾ける。
「それなら引き下がるしかありませんな。他人の妻を寝取る気にはなれないもので」
「ご理解いただけたようで何よりです」
「ただ高木さん、頼みがあるんだ。
 これからもこのクラブに足を運んで、あの女性の写真を私に見せてくれないか?
 君さえ嫌じゃなければ、どうかお願いしたい」
「良いですよ。それくらいは。
 きっと彼女も、喜んでくれるでしょう……」
眼を細めて高木順一郎は笑った。

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