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「「たっだいマンボー！」」

夕日が差し込む事務所に、元気な声が響く。しかし返事はなく、それは虚しく静寂の中に消えていった。

「…あり？」
「誰もいないの？」
「ピヨちゃーん？」

2人が小鳥の席を覗くが、やはりそこには誰もいなかった。
しかし、パソコンの電源は入っているようなので、すぐに戻って来るのかもしれない。

「無用心ですなぁ。」
「そうですなぁ。」

2人は顔を見合せ、ニヤリと笑う。
そして、まるで予め打ち合わせしてあったように、机を漁り始める。

「「抜き打ちチェーック！」」

しかし、そこには2人が期待したようなものはなく、オーディションの資料等、仕事のものしかなかった。
パソコンはデスクトップを埋め尽くす程のファイルを見たとたんに漁る気分がなくなった。
これでどこに何があるのか把握してるなら大したものである。

「どう？ 何かあった？」
「ぜーんぜん…以外と真面目に仕事してんだね。あ、クッキーみっけ。」

2人が机の下に隠されたクッキーを食べていると、後ろで物音がした。
しんと静まり返った事務所に良く響いたそれが小鳥が帰って来たのだと思い、咄嗟に物陰に隠れる。
しかし、それからまた何の物音もしなくなり、2人が恐る恐る物陰から顔を出すと、
やはりそこには何もなく、再びしんと静まり返った事務所があるだけだった。

「…帰ろっか。」
「そだね…。」

小鳥じゃなかった事に胸を撫で下ろし、散らかした机を元に戻すと、
クッキーを鞄にしまって事務所を出ようとした、その時

「ぁ…千早ちゃ…っ。」
「「！？」」

確かに誰かの声が聞こえた。2人がその方向を見ると、そっちは給湯室があった。
そう言えば、小鳥の机を漁るのに夢中で、給湯室を覗いていない。

「「んっふっふ→♪」」

どうせなら脅かしてやろうと、こっそりと部屋を覗き込む。そして、そこにいたのは

「（はるるん…？）」
「（千早お姉ちゃん…？）」

千早が春香を壁に押し付けて、キスをしていた。
顔を赤くして、息を荒くして、何度も何度も、舌を絡ませ、
唾液が零れるのもお構いなしと言った様子で、無我夢中でキスをしていた。

「千早ちゃん…誰か来ちゃうよ…。」
「大丈夫よ…誰か帰って来ても音で分かるわ。」
「「（分かってないじゃん！）」」

喋ってるんだかキスしてるんだか分からない春香と千早に、2人は心の中で突っ込みを入れる。
同時に“見てはいけないものを見てしまった”“早くここから立ち去るべきだ”と感じ取るが、
まだ幼い2人には余りに刺激的で衝撃的で、釘を刺されたようにその場から動けなくなっていた。

「（はるるん…あんな顔するんだ…。）」
「（大人しい千早お姉ちゃんが…。）」
「あっ！」
「「！？」」

突然の春香の大声に思わず首を引っ込める2人だが、どうしても続きが気になり、また覗き込む。
すると、千早が春香のお腹からスカートに手を突っ込んでいた。

「そ、そこはだめ…っ、あ、う、動かしちゃやだ…っ。」
「春香…もう濡れてるじゃない。」
「い、言わないで…。」
「ね、どうして濡れてるの？」

言いながら、千早の手がスカートの中でもそもそと動き、ぴちゃぴちゃと音を立てる。
何をしているのか2人には良く分からないが、
そんな事よりも、2人の知る春香とは掛け離れた表情と声に夢中だった。

「ね、春香、教えて？」
「ず、ずるいよ千早ちゃん…千早ちゃんが好きだから…千早ちゃんに触られたら、私…っ。」
「…ずるいのは春香じゃない。」
「あぁっ！」

千早が手を激しく動かすと、春香の体がびくびくと大きく震え、足元にぽたぽたと透明な雫が零れた。

「だめ…千早ちゃ、ああっ、来ちゃう、…っ！」
「良いわよ、春香…えっちな春香の顔、全部見ててあげる…。」

春香の体が一際大きく跳ね、千早にぐったりともたれかかる。
千早は春香を抱き締め、優しく頭を撫でてあげている。

「はぁ…はぁ…千早ちゃぁん…。」
「春香…春香…。」

すっかり隠れている事も忘れて、身を乗り出して見ていた2人だが、
顔をあげた春香と目が合った気がして、弾かれる様に事務所を後にした。



「…ねぇ。」
「…何？」
「はるるんと、千早お姉ちゃんって…。」
「…うん、そだね…。」
「…。」
「…。」
「…凄かったね。」
「…うん、そだね…。」

2人は今、自室のベッドに並んで座っている。あれからどうやって帰って来たのか覚えてない。
事務所で見た春香と千早の行為が2人とって余りにも現実離れしていて、どこか怖くて、ただずっと手を繋いでいた。

「…ね、ねぇ。」
「んぁ？」
「…やってみよっか。」
「や、やるって…何をさ。」
「その…えっと…。」
「な、何言ってんの！？」
「そ、そうだよね…ごめん。」
「…。」
「…。」
「…ちょ、ちょっとだけだかんね。」



続くと良いな