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注:2準拠で大富が登場しますが、控えめに言って酷い目に遭います。
  また、貴音の正体をサキュバスやヴァンパイア以外の人外で描写しています。

貴音は今、エンペラーレコード内で秘書の手引きにより社長室へと向かっていた。
大富社長には、仕事が全くうまくいかなかった時期
便宜を図ってもらうために何度か出入りしていた。
プロデューサーには決して言えない秘密であった。この事をプロデューサーが知れば
彼はきっと大富社長の力などなくてもいい仕事を取ってくるよと説得するだろう。
しかし当時の彼の力だけでは限界であり、終焉は目に見えていた。
貴音は彼女なりに彼とファンの力になり、その笑顔を守りたかったのだ。

「待っていたよ」
社長室の椅子に大富の醜く肥えた身体がどかりと乗っかっていた。
彼は貴音の姿を見て、いつものように卑猥な笑みを漏らしている。
「……今夜はお話があって参りました」
「奇遇だね。ワシも君に話がある」
席を立った大富は不気味な笑みのまま指を動かしている。
いつも大富は部屋に招き入れた彼女をいやらしい眼で視姦するだけではなく
ベタベタとその恵み豊かな四肢をも触った。

「大富殿、私はこれから貴方様の所へは参りません。IAは私とプロデューサーのみで受賞してみせます」
貴音は大富の眼をしかと捉えて言い放ったが、当の大富は興味なさげに目を逸らした。
「ふむ……まあ、いいじゃないか。そんな事より……」
大富は無遠慮に貴音の肩に手を置いた。芋虫が肌上で蠢いているような嫌悪感が全身を走る。
「今日も仲良くしようじゃないか、仲良くな」
「残念ですが、貴方様のお言葉にはもう応えられません。
 今夜以降、これまでの不埒な関係はなしでお願いいたします」
貴音はそう言い捨てて踵を返し、ドアを開けようとした。だがドアはびくともせず彼女を阻む。

「オートロックをしてあるんだよ」
「か、帰らせて下さい……」
大富は貴音を後ろから抱き締めた。
中年の発する独特の脂肪酸の臭いが彼女の鼻孔にツンと突き刺さった。
「私の気持ちは知っているだろう。私は君の頼みを聞いてあげた。
 今度は君が、私の想いに報いる番ではないかね」
「それは……今までの不埒な行為で……」
「ふん」
大富の手は貴音の豊乳を鷲掴みにした。

「!? やぁっ……止めて下さいっ……!」
「色を知らん小学生でもあるまいし、あんな前戯にもならんスキンシップでごまかせるものか」
男手に激しく揉みほぐされて、少女の柔らかな乳房はいやらしく形を変えていく。
大富は長い舌で貴音の白頬をレロリと一舐めして蝦蟇蛙のように笑った。
「ワシにはな、君が必要なんだ。君なしでは生きていけない軟弱な男さ」
「……」
「君のファンの誰よりもワシは、君を必要としている。愛している。
 だから……今夜もっと深い間柄になろうではないか」

その時だった。ふと部屋全体が揺らいだかのような不安感を覚え、大富は周囲を見回した。
すると背中側に、いつの間にか一人の神父が立っていた。
その堂々とした長身痩躯の風貌は古代エジプトに君臨したファラオを想起させ
また同時に名状し難い禍々しさにも満ちていた。
黒い髪、黒い肌、黒いサングラス、黒い衣服、黒い靴――
まるで切り落とされた闇夜の断片がそのまま息しているかのような全身黒尽くめの男であった。

「誰だっ! どこから入ってきた!」
大富はその怪しげな侵入者を指差して怒鳴った。部屋にはオートロックがかかっていたはずである。
本来ならば誰も入る事など出来ないのだ。一体彼はどのようにして侵入したというのか。
「どこからだろうと、私の自由だ」
黒肌の神父は動じる事無く大富を見据えて言った。
大富は手前にいる男をとりあえず追い出そうとした。
警備の怠慢だのセキュリティーの故障だの、男が侵入した経緯は後で考えればいい。
「出て行け!」
「そうはいかない。少し話があるのでね」
「話などない! さっさと……!」
大富はすぐに社内電話を握ってSPを数名部屋に呼ぼうとした。
しかし、電源が入っているにもかかわらず受話器はコール音すら鳴らない。
「くそっ、こんな時に故障とは……! おいっ! 貴様……!」
大富は男の腕をがしと掴んだ。その時、彼は原因不明のおぞましさを覚えて手を離してしまった。

(何だ、この感触は……!?)

まるで虎の口に手を入れていたような恐怖が瞬く間に全身を駆け巡った。
粘性の体液を滴らす軟体の虫にまとわりつかれたような寒気が走った。
触るだけで己の腕が存在を消すのではないかと錯覚してしまう……
いや馬鹿げた事だがそんな事が本気で起こると確信せざるを得ない異様な雰囲気を相手は帯びていた。
「……五月蝿い豚だな。お前に用はない」
床が振り下ろした鞭のように波打つ。大富の持つ平衡感覚が大いに狂い出した。
見ている世界が彼を嘲るように歪み、崩れていく。
「……少し黙ってもらおうか」
歪み狂う世界の中では一人の王が君臨していた。
円錐型の頭部に触腕と鉤爪を身体に混在させた異形の生物――その顔には、目も鼻も口もなかった。

   #  #  #

「うう……」
大富は低く呻いて目を覚ました。彼は裸の格好で床に突っ伏した状態でいた。
夢うつつのまま部屋を見渡すと、あの不気味な神父はいつの間にか消えていた。
(何だったんだ……さっきのは……)
思い出そうとすると嫌な脂汗がどっと吹き出し、強烈な頭痛がしてならない。
体全体が「それ」を思い出すのを拒否しているのだろう。
ふとドアの方を見ると、見事な銀髪をした裸の少女が
その肉付きの良い尻を大富に向けてうずくまっていた。
大富は生唾もの彼女の宝尻を凝視して舌なめずりをする。
飲んでいたスコッチが最中に回って眠ってしまったと彼は判断した。

(ワシが寝ている間に逃げようともがいたようだが、……ぐふふ)

肥満体の大富は股の下に巨きな睾玉と肉根をぶらぶらと揺らしながら
彼女の方へとじりじりと詰め寄った。

「お嬢さん、安心するといい。ワシは綺麗な娘をいじめたりはしない……」
大富の大きな影が彼女の体に被さる。
彼はそのまま膝を立てて彼女の尻を抱え上げた。
「それどころか、たっぷりと可愛がってやりたいくらいさ」
彼女の尻を掴んだ手が、柔らかな双丘の狭間を開いた。
春毛一本生えていないふっくらとした恥門と桃色の恥肛が
大人然とした彼女に似つかわしくない幼気を醸し出していた。
大富は鼻下をだらしなく伸ばして、彼女の蜜尻に顔をうずめた。
恥唇に熱い口づけをした後、舌を蛇のように動かしていやらしく舐め回した。

「んぐ、ぶちゅ、ふへへ……綺麗な顔に似合わず助平な臭いをぷんぷんさせよって……!」
ギンギンに肉根を反り返らせつつ、大富は恥唇を淫舌で挿し犯し、丹念にしゃぶり続けた。
恥唇を貫く度に、美しい貴音の顔立ちからは到底想像出来ない濃厚な恥臭が漏れ出てくる。
醜臭にやや近いそれに、大富は興奮を募らせる。
「……!! あはあっ……!? いひいぃ……!?」
異変に気づいた彼女は必死に尻を動かして淫舌を振り切ろうとした。
だが大富は彼女の腰をしっかりと抱き締めていて、抜け出す事はほぼ不可能だった。

「ふひひひ……ちゃんとオマンコは洗っておかないといかんなぁ〜。
 こんなにも濃い臭いのオマンコはなかなかないぞ。
 息をしているだけで鼻孔まで桃色になってしまうわい……ぐふふっ。
 ……どれ、一つワシが穴奥まで綺麗にしてやろうかい?」
大富は醜い笑みを浮かべてから一層激しく彼女の恥穴を舐り尽くしていった。
彼女は肉々しい巨尻をしきりに振って淫攻に抗った。
その反応を余裕綽々な態度で楽しみながら、彼は太い舌で何度も彼女の女穴を慰め続けた。
「んほぉぉぉ……っ!」
はしたない嬌声を張り上げて、彼女は全身を痙攣させて淫頂に達した。
大富の醜く歪んだ顔に熱い濃潮の飛沫がまともに降りかかる。
「ぶぢゅっ、じゅびっ、じゅるるる……!」
大富は恥潮の洗礼も構わずに、痙攣した膣穴へ舌攻の追撃を浴びせた。
肉雛を無遠慮に厚い唇でやらしくむしゃぶると、間を置かずして第二の快波が彼女の身体を貫いた。
短時間に二度逝かせた優越感を味わいながら、顔にかかった恥液を大富は大きな舌で一舐めする。
それはさながら勝利の美酒に似た味わいだった。

「ふっふっふっ……、また随分と派手に逝ったものだなぁ!
 こんなにもワシの顔にマン汁噴きまくりおって……」
「ふぅぅ……はひぃぃ……」
彼女は体を細かく痙攣させて、力の抜けた足で何とか踏ん張ろうとしている。
そんな彼女の蜜尻を、大富は肥えた腹に引き寄せる。
肥えに肥えた太鼓腹の下には、肉色の兜を天に持ち上げた淫槍が奮い立っていた。
「テレビで澄ました顔をしていても、女は皆、少し舐めてやれば淫乱になる……
 どれ、ワシの顔を汚したのだ。少しオシオキをしてやろうかい……」
溢れる唾を飲み込みながら、大富は血の熱くなった勃根を貴音の蜜唇へ、ぴとと押し当てた。
「……あっ!?」
一度溜めを挟み、次瞬、大富は一気に根元まで肉根を突き入れて彼女の女体を攻略する。
「あひぃぃん……っっ!」
不快な異物感を性穴に覚えた彼女は必死に暴れたが、大富の固いホールドがそれを許さない。
逃げようとする彼女を笑うようにゆっくり一突き、一挿し、と犯してみせた。
彼女は芯を貫かれている上に快頂の最中に在って四肢に力が入らない。

「ほっ! ほっ! ほっ!! それぇっ! それぇっ、それぇっ、それぇぇ――っ!!」
彼女の柔腰をしっかりと押さえ、大富はリズミカルに淫腰を奮う。
眼下で抵抗する女を見下ろしながら、少女の柔らかな牝膣を
堪能出来るのはこの地位ならではの役得と言えよう。
「ふふふ……本当に素直で良いムチムチヒップをしているなぁ君はっ!」
余裕綽々の大富は彼女の淫尻をベタベタと触りまくった。
マシュマロ以上の柔らかさと張りに、挿している肉茎も興奮が収まらないでいた。
「ワシの太マラをチュパチュパと美味しそうに味わっとるぞ。
 君も逃げるのを止めて大人しくワシと気持ち良くなろうじゃないか」
膣襞にマーキングするように、大富はいやらしく肉根で円を描いた。
口先から垂れた臭い唾液が彼女の背にポタポタと落ちていく。

「ワシはなぁ貴音、君のドスケベなお尻をこの愚息で突きまくるのを楽しみにしていたのだ。
 こんなスケベヒップは犯罪ものだぞ。一体どれだけテレビの前にいる男たちの
 ズリネタになっているのか、分からないのかね?」
大富はおおっぴらに彼女の尻肉を満面の笑みでこね回した。
「君のようなエロいアイドルは、皮も碌にむけてないオタク連中には過ぎた存在だ。
 ナマ膣の味も知らない青臭い奴らにとっては、むしろ毒と言ってもいい。
 だから君らアイドルは、ワシらのような手練れの紳士だけ相手にしておればいいのだ」
大富は身勝手な説教を垂れながら抜挿をせわしなく繰り返し、彼女の淫穴に肉茎の形を覚え込ませていく。
「ほぉら、中年チンポコでオマンコズプズプされるのは気持ち良いだろう?
 恥ずかしがる事はない。今までのアイドルたちもな、ワシに処女を奪われた当初は涙を流して抵抗したものさ。
 若い女の子は男をミテクレだけでしか判断しないからな。
 でも所詮娘たちは雌に過ぎん。女の肉を知り尽くした中年チンポコをハメまくり
 マン奥へビュルビュルと数回アツアツザー汁をご馳走してやると、皆気持ち良くアクメをキメおったわ。
 ワシが亀頭の先だけ浅く抜き挿しして焦らすとな、自分から腰を擦り付けてチンポコを求めてきたたもんだ。
 最後辺りになると皆『チンポぉ、中年チンポ気持ち良いぃっ!』『もっとオマンコに精子ちょうだい!』
 と言いながら涎を垂らして髪を振り乱して悦んだわい」
自慢気に語る大富の下で、淫らな結合部からは滝のように絶えず恥臭を放つ猥汁が溢れてくる。

「貴音君、ワシは本当に君を愛しておる。他のオナホ同然の牝アイドルなんかとは全く違う。
 ワシは君の身体を頭から爪先までしゃぶり尽くしたい。
 こんなに夢中になったアイドルは今までにおらん。
 ワシのチンポコ専用アイドルとなって一緒に暮らしてもらいたいのだ」
自分勝手な理屈と想いをたらたらと述べていく大富に対し、彼女は全く答えようとしない。
いや、恥穴を制圧された彼女は淫悦に悶える事しかもう出来なかったのだ。
そんな彼女の様子を察した彼は、背中から彼女の豊乳を抱きながら揉み始めた。

「君の価値をまるで分かっとらんあんな青二才なんぞに、君を渡すものか。
 君のオマンコには、ワシのチンポコの形から味まで全てを覚えてもらうよ」
大富はその肥えた巨体を彼女の背に被せたまま犯し続けた。
脂のついた太鼓腹が貴音の柳腰の上に乗る。
中年男の繰り出す肉槌の卑姦に、彼女は舌をだらしなく口外へ放って喘いでいる。
「どうだっ、若造の軟弱なチンポコとは比べものにならんものだろう?
 引き抜いてもくっきりと型が残るくらいにハメまくってやるぞ!」
大富は彼女の手首を手綱代わりにし、暴れ馬を馴らすように鼻息を荒げ浅く強く腰を前後させた。

「ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふんっっ!」
肉付きの良い貴音の蜜尻は大富の打ち込む激しい淫突でいやらしく波立っている。
あまりに肉根の出入りが頻繁なため、漏れ出てくる恥汁は全て白い淫泡となって咲き落ちていった。
彼は尻肉を指が食い込むぐらいがっしりと掴み、肥えた腰をひたすら前後させ
肉弾の応酬を更に加速させていった。

「ひぎいいい……っっ! んっひいい……っ!!」
「おうっ、おうっ、おうっっ……! まるで豚のようにヨガりおって!
 くううっ……たまらんんんっっ!! いくっ、いくぞぉっ!
 君の淫乱極楽マン穴に、しごき抜いて熟成したチンポコエキスを塗りたくってやるぞぉっっ!」
彼女の背に垂れ落ちた大富の臭涎は、脇腹を通ってシーツに身を投げていく。
限界まで射精を我慢する大富の醜い顔が一層醜く歪む。
「孕めっ、孕めっ、孕めぇぇぇっっ!!」
猛突の末、大富は目を見開いて彼女の蜜膣で果てた。
ドプドプと黄色い肉欲のエキスが鈴口を壊す勢いで爆射されていく。
肉根は大きな膨縮を繰り返し、睾丸からありったけの精子を汲み上げた。
噴き出した痴精はゼリー状に濃縮していて、ねっとりと子宮壁に纏わりつき、襞という襞に絡んでいく。
律動が完全に収束するまで、大富は彼女の肉尻を放さなかった。
貪欲なまでに彼女の蜜膣に己の遺伝子を行き渡らせたかったのだ。

「ふうう……こんなにびゅくびゅく射精たのは久し振りだなぁ……」
逸物を抜いた大富はやりきった表情でその場にどしんと尻を置いた。
「さて、もう三回はイケそうだな……んっ……?」
大富は、下半身が何やら心地悪く感じたため、自らの股間を見下ろした。
そこには黒光りしていた自慢の肉根ではなく、やけにほっそりとした奇怪なものが生えていた。
肉色のそれは螺旋状にねじれ、丁度コルク抜きのような形になっている。

「んっ!?」
大富は目を擦ってもう一度見てみたが、その奇根は変わらず股間に座していた。
「どういう事だ……!?」
状況の飲み込めない大富に更なる異変が起こっていく。
先程まで目をこすっていた腕がみるみると短くなり、先端の手が縮み上がる。
爪は硬く厚く肥大していって、最後には大きな蹄に姿を変えた。
彼は未知の体験に恐怖し顔を強張らせたまま、先程までまぐわっていた少女を見た。
ひょっとすると彼女にも同じ変化が起きているのかもしれないと思ったのだ。
だが、そこに彼女の姿はなかった。
代わりにころころと肥えた雌豚がきょとんとした顔つきで大富をじっと見ていた。

「うわああああああ……っっ!!」
狂気に満ちた叫声を張り上げる中、大富の巨体はドスンと床に横腹から倒れ落ちた。
手だけではなく足にも同様の変化が起きて、最早二本足で直立出来なくなったのだ。
やがて彼の首はみるみるうちに縮んで、終いには完全に消え失せた。
代わりに鼻が厚く広く肥大し、顔の前へ鼻穴を前にして突き出していく。

(馬鹿なっ、これではまるで……っっ!)
大富は必死に助けを呼んだが、誰もやっては来ない。
その悲痛な叫びも、低くくぐもった獣声へと変わっていった。

   #  #  #

一体何が自分の身に起こったのか――大富には皆目見当がつかなかった。
垂れた耳、前に突き出た鼻、短い手足、厚い蹄――誰がどう見ても彼は雄豚だった。
あの整然とした社長室も大富の醜悪な変貌に合わせるようにして
枯れ藁の敷き詰められた畜舎の一角になっていた。
その真ん中で肥えた雄豚となった大富は愕然としていた。

(何だこれは……っ!? また、夢なのか……っ!?)

しかし、一向にこの悪夢は覚める気配がなかった。
依然としてムッとする畜臭の中、ずんぐりとした自身の豚姿は戻らない。

(貴音、これはどういう事なんだ! 教えてくれ!)

大富は眼前にいる四条貴音と思しき雌豚を小突いて説明を促した。
しかしその雌豚はピシャリと彼の鼻柱を尻尾で叩き、呑気に草をかじっていた。
(誰かぁっ、誰か来てくれぇっっ……!)
彼女との意思疎通が不可能と判断した大富は、大きく息を吸い込んで助けを求めた。
しかし、その声は既に人間のそれではない。口から響くのは言葉にならない豚の鳴き声だった。
大富は小屋の中をグルグルと落ち着きなく駆け回って、必死にぶうぶうと鳴き続けた。
するとその悲痛な声に気づいたらしく、畜舎の扉を開けて誰かが近づいてくる。

「あっ……いたいた!」
大富の前に現れたのは無骨な作業服に身を包んだ少女だった。
健康的なショートヘアをした愛らしい顔つきと対照的に
そのあまりに豊かな胸乳からは男を発情させる甘い女の匂いを発していた。
「もぉ……どこから脱走したのかなー……」
少女は大富豚の前にしゃがみ込んだ。大富は彼女に向かって必死に訴えかける。

(君っ、助けてくれっ! ワシはエンペラーレコードの社長、大富だ!
 訳あって豚の姿になっているが、れっきとした人間なんだ!)

しかし大富の主張空しく、少女は鳴き叫んでいる豚の首と肩にリードをつけた。
「よしよし、大人しくしてね」
少女は見掛けによらずしっかりとした腕力を備えていたようで
軽々と大きな大富豚を抱え上げた。
「女の子をいじめたりしなかった、ブタ君?」
彼女は雄豚を抱えたまま、畜舎から出ていった。

   #  #  #

「お待たせしましたー」
作業服の少女は、牧場の入り口で煙草を吸っている初老の男性の前まで大富豚を連れていった。
煙草を携帯灰皿に捨てた男は少女を見るとえくぼを作って笑う。
高齢にも負けず、長年の労働で鍛えた肩の筋肉が日差しの中で照り映えている。
「おおっ、雫ちゃん! 待ってたよ」
男は連れてこれた雄豚の頭から足までじっくりと眺めて品定めをする。
「いやあ……雄豚と聞いていたけれど、ずいぶん立派だねぇ。
 脂肪もたっぷり乗っているし、美味しそうだなぁ」

(美味しいっ!? まさかこいつら、ワシを……!)

大富は豚顔に脂汗をじわっと滲ませて、雫という少女の腕中で必死にもがく。
しかし彼女の鍛えられた上腕と肉付きの良すぎる胸に圧迫されて、思うように抜け出せない。

「及川牧場の美味しい餌を一杯食べて育ちましたからね、きっと美味しいですよー
 それにしても、お孫さんの誕生日に『豚さん一頭丸々使った料理』なんて、珍しいですね。
 しかもその切り分けまで自分でするなんて!」
「はははっ、いやなに! 問屋でバラバラに買うのが面倒なだけさ。
 豚のキンタマを下さいとわざわざ駆け回るよりこっちの方が簡単で安上がりだしな。
 それに、肉屋としちゃあ命の恵みに感謝して、使える部分は全部使いたいもんよ」
肉屋の亭主らしき男はは得意げに話している。
「まあ孫にとっちゃあ、豚肉のオードブルよりも、誕生日ケーキの方が喜ぶかもしれんが」
「そんな事ありません、お孫さんもきっと喜びますよ!」
「はっはっは、じゃあ喜んでくれるように頑張って豪華な豚肉料理を作ってやるか!
 頭からキンタマまで全部使った大陸仕込みの料理を見せてやるぜ」

大富は奥歯をガチガチと打ち鳴らしながら、彼らの話を聞いていた。

(止めろぉ! 誰か、誰か気づいてくれぇっ! ワシは人間っ……人間なんだぁっっ!)

大富はぶうぶうと叫んで訴えたが、老人も少女も一向にその主張を読み取る事は出来なかった。

「ああっ。そういえばこの前のテレビで、雫ちゃん見たよ!」
「本当ですかー!?」
「ああ。また家族でライブにも行かせてもらうよ」
「ありがとうございますー! プロデューサーさんに頼んで
 チケットまた皆さんの分、用意しておきますねー」
「おう、ありがとうよ。今度は得意先にも分けてやりたいから多めによろしく頼むよ」
老人は及川雫の手から大富豚を受け取ると、小さな檻にそrを押し込んで車に積み込んだ。
勿論大富は必死に暴れたが、全ては無駄な抵抗に終わった。
「じゃあ雫ちゃん、休み明けのアイドル活動、頑張りなよーっ!」
「はーい、ありがとうございますー!」
砂利道を走っていく車の後ろで雫は大きく手を振っていた。

(嫌だ――っっ! 死にたくない――っっ!)
大富は荷台に押し込まれてもしばらくの間暴れていた。
ゴトゴト揺れる車中であちらこちらの柵に頭や体をぶつけ、痣を作りながらもがき抜いた。
(ワシを食べるだと!? やめろぉっ! ワシは豚じゃないっ!
 ワシは人間だぁっ! 人間の……っ!)
そこまで叫んだ大富は、自分の会社の名前を思い出せないでいた。
それどころか、自分の名前すら記憶から抜け落ちている。
精神まで豚に成りつつあったのだ。
(助けてくれぇっ、誰かぁ……っっ! ワシをっ、ワシを助けてくれぇっっ!!)
大富の脳髄からあらゆる単語が次々と抜け落ちては消えていった。
大富の焦りが膨らむにつれて、脳内に連なる言葉は途切れ途切れになっていく。
(誰かぁ……た、す、け……)
終いに大富は人間だった頃の言葉を忘れて、ただ鳴き声ばかりを張り上げた。
残っていた思考すら形を保てなくなり、肉屋に到着した頃には
すっかり人間としての自我は消えてしまっていた。

   #  #  #

「『ナイ』叔父様、久方振りです」
エンペラーレコード社長室では、貴音が黒服の神父に恭しく挨拶を交わしていた。
「ふふ……タカネ。君こそつつがなくて何よりだ」
ナイと呼称された神父は親しげな笑みを貴音に向けた。
「先程は助かりましたが……私を助けて、大丈夫なのですか?」
「問題ないよ。『全能にして白痴なる』我が主は、ただ失われた力を取り戻すのに腐心している。
 私の些細な戯れに一々反応している余裕はないよ。
 従者たちが曲を奏でていれば、彼はいつでも上機嫌さ」
「……大富殿は死んだのでしょうか?」
貴音は横目で床にうずくまった大富を見据えた。
彼は神父に向かい合った後にたたらを踏んでその場に倒れ伏してから、ピクリとも動いていない。
「正確には『まだ』死んでないな、意識を別の所に飛ばしただけだから。
 まあいずれにしても、これはもうただの肉人形だよ。
 シュド=メルを訪ねる時の土産にでもするか」
神父は大富の禿げた頭頂を爪先で軽く蹴った。
転がっている人形は何も言わず蹴られるがままになっている。
「ま、手に入れた地位と富をこんな詰まらない事にしか使えない人間だ。
 生きていても大して変わらん。死んで誰かに喜んでもらった方が良い」
「多少気の毒な気もします……」
「そう言うと思ったよ君は。どうもタカネは人間に感化され過ぎている嫌いがあるようだ。
 これでも私は手心を加えたつもりだよ。死ぬ前に良い夢も見せてやったしな。
 ヨグならもっと酷なやり方でオートミとやらを殺しただろう」
「……」
「それにしても、見れば見るほどヨグとは似ても似つかん姿だ」
ナイ神父はその光る瞳で貴音をまじまじと見つめる。
『門の鍵にして守護者』ヨグ=ソトースの鬼子と称される彼女に、彼は並々ならぬ関心を持っていた。
ヨグ=ソトースと人間の娘との間に生まれ落ちた子供は、いずれもおぞましい奇怪な姿を有している。
ダンウィッチ村の双子のように触腕や目玉のような球体が身体に現れる事が珍しくない。
しかし近年、例外中の例外として限りなく人間の姿に近い美しい子供が生まれた。
地上で「四条貴音」と名乗るその娘は、ヨグ=ソトースの血を受け継ぎながら
その直後に生まれた妹と違い、人間としか思えない容姿を持った唯一の存在だった。
人という存在は時に醜いだけではなく、美し過ぎても異端になり得るものなのだ。

「高貴で非凡な君ならば高位にいる者たちの覚えもいいだろうに……。
 そんなにも、付き人の男にご執心かね?」
そう尋ねられて、貴音はうつむいた。
「プロデューサーとは……その……」
「隠さなくても良い。私を相手に隠し事など無意味なのだからな。
 確かにあの男も、我ら神々の末裔ではある……血は相当薄くなってはいるが」
「……血統の濃薄は関係ありません」
貴音は神父にはっきりと言った。
「そうか。しかし……君はあのオートミという豚の愛も場合によっては受け入れようとしただろう?」
「そ、それは……」
「必要とされていれば、君は誰でもいいのか?」
貴音は気の利いた言葉を紡ぐ事が出来ずにいた。
この這い寄る混沌たる叔父には、どんな取り繕った言葉も虚言になってしまうだろう。
「確かにタカネ、君の付き人とオートミは、君に対して愛情というものが存在するらしい。
 だが私が眺めるに、細かな事に悩み苦しむあまり、君の目は若干曇っているようだ」
神父は滔々と銀髪の姪に説いていく。
「大雑把に見解を述べようか。プロデューサーという男の持つ愛は清い。
 対してオートミの語る愛は、酷く濁っている。
 両者共に、下等種族の常として愛の根幹は等しく繁殖欲求に繋がっている
 ……とはいえ、その深みは自ずと異なるものだ。
 美しい姿をした鮮魚の泳ぐ澄んだ湖も、畸形化した死魚の浮かぶ重金属で澱んだ泥沼も
 『魚のいる水辺』という観点だけで見れば、同じものには違いあるまい?
 だがそれを同じように――君の所ではクソもミソもというのかな――見なしては
 澄んだ湖も良い気はしないだろう。その考えでは、プロデューサーという人間もかなり気の毒だ」
「私は……」
「タカネ。君はどうも難しく考え過ぎている。君の抱えている問題は、至って単純なものだよ」
貴音は叔父の言葉をじっと聞いていた。人ならざる者の視点は往々にして
人間の理解可能な範疇を超えてしまうものだが、彼の語る言葉には理が通っている。
「もう一度プロデューサーとやらに聞いてみる事だ。
 四条貴音という女の事をどう思っているか、とね」
「……はい」
「ふふ、はっきりと言ったな。まあ、いいだろう。
 何だかんだ言って、結局は私も単純なものだ。
 どうせなら眷属の者と結ばれてほしいと思っているだけに過ぎない」
貴音は口に手を当て、クスリと笑った。
「……それより気になる事は、君と君の妹を襲った目出し帽の男についてだ。
 恐らく奴らは忌まわしき旧神共の息のかかった者たち……少なくとも夜鬼と関わりの深い者たちだろう。
 いずれルルイエのネボスケも眠りから目覚め、力を取り戻す。
 また我々にとって騒がしい事になるかもしれない」
「……」
「そうなる前に、君と想い人が結ばれる事を祈っている。その時は、君と共に彼も眷属として歓迎しよう」
それだけ言うとナイ神父は風のように去っていった。

   #  #  #

「あなた様……ご出立されるのですね」

IA大賞を見事手中に収めた貴音は、後日成田空港までプロデューサーを見送った。
プロデューサーは本場のハリウッドに今日から一年間留学する予定となっている。
最早貴音はプロデューサーの手に余る程の実力を有していた。
IA大賞に輝いた彼女の力を最大限に引き出すためには
プロデューサー自身も己の殻を破って成長する必要があると社長も判断した。
留学先で学んだ事を貴音にフィードバックしていけば、彼女はリミッターを解かれて今以上に輝く事が出来る。
「ああ。貴音たちを残していくのは寂しいが、俺も成長していかなければいけないからな……」
アメリカへと旅立つ航空便はあと少しで到着する。
それに乗れば貴音と彼は一年間会う事が出来ない。

「……。寂しくてなりません……」
「……それは俺も同じさ。少しの辛抱だよ貴音。
 ハリウッドから帰ってきたら、お前を更なる高みに昇らせてやれる。
 それを楽しみにしながら、最高のプロデューステクを身につけて帰ってくるからな」
「……」
飛行機が到着し、旅行客らに搭乗を促すアナウンスがロビーに響き渡った。
しかしプロデューサーはすぐには向かわず、かといって
何を話すという訳でもなく、貴音の傍にいた。
貴音も何も言わずにプロデューサーの手を握って離さない。
理屈では理解していても、お互いに別れが辛いのだ。
「……もう、時間だな」
プロデューサーは最終のアナウンスを聞いて、ぽつりと呟いた。
「ええ……そのようです」

その時、プロデューサーは貴音の身体を自身の胸板に寄せて固く抱き締めた。
いきなりの抱擁ゆえに驚くのが一瞬遅くなった。
「あ、あなた様……!?」
「貴音、少しの間でいい。ただ黙って聞いて欲しい」
腹奥から絞るような重い声で彼は言った。
「この前はうまく伝えられなかったが……これだけは行く前に言っておきたかった。
 貴音……今のファン以上に、俺は……お前が『必要』なんだ!」
彼の声は貴音の心をしかと捉えた。それは大富とプロデューサーの間にいた時
愛しているという言葉以上に貴音が一番聞きたかったものである。
「アイドルとしての四条貴音じゃない。
 この世でただ一人の、四条貴音という女の子を……俺は愛している」
貴音は彼に必要とされている喜びをひしと感じ、眼奥に熱い喜涙を呼び起こした。
しかし、自分と貴音の身体に流れる血……遥かなる古の時代より
この地球を我が物としてきた異形の神々の血を、彼は知らない。
貴音は怖かった。自身のおぞましい出自、そしておぞましい眷族の存在について
知ってしまった時、彼が自分から離れていくのではないかと。

「……あなた様」
貴音は自らの身体を預けながら彼の瞳を仰ぎ見た。
「私が……『どのような出自の者だとしても』、同じように想って下さいますか?」
「ああ、勿論だとも!」
短いながらもはっきりとした強い口調でプロデューサーは答えた。
貴音は己の全てを受け入れてくれる男との別れを惜しみ、その麗しい双眸から美しい涙を流した。

   #  #  #

「あの男は行ったようだな」

アメリカへと飛び立った飛行機を名残惜しく見送っていた貴音にある人影が声をかけた。
振り向くとそこにはあの肥満体で禿頭のエンペラーレコード社長・大富の姿があった。
だが、同族のみが感じ取れる「人ならざる者」の気を色濃く帯びている点が以前の彼と大きく異なっていた。
「……叔父様!?」
「そう、私だ」
大富の姿に扮した『這い寄る混沌』は人差し指と薬指を重ねて振り、貴音へ親しげにウィンクする。

「どうなされたのですか、その姿は?」
「いやなに、気が変わってな。折角手に入れたのだからこの男の躯を、地上での依り代として使う事にした。
 遠方からあのプロデューサーという男が帰ってくるまで、君の傍で活動のサポートをさせてもらうよ」
「またいつもの暇つぶしなのでしょう……」
貴音は伏し目で軽く吐息を漏らした。
「私は遊びにも腰を入れて取り組む性分でね。
 君だってプロデューサーが帰国するまで、空をぼんやり見上げて
 ただただ待っているつもりでもあるまい?」
試すような眼差しを剥けられた貴音は、麗眉を凛々しく正して見つめ返した。
「はい。私は、異国にいる彼の耳にアイドル四条貴音の名前が届くよう活動し続けます」
「その意気やよし! 君の才能と私の手腕があれば
 白銀の女王(シルバークイーン)の名はこの小さな星中に轟く」
禿頭を掲げた肥満体の邪神は姪の決意を聞いて顔をほころばせる。

「……ところで叔父様」
「んっ?」
「口調に気をつけて下さいませ。生前の大富殿はそのような言葉遣いはいたしませんでしたわ」
「……なるほど。ではあの豚らしく振る舞う必要があるな。じゃあ……
『貴音、ワシと一緒にンガイの森に建てた新築の別荘で一緒にまどろまないかね?』」
「……却下します」
「ふっ、手厳しいな。まあ、あの男が留学を終える頃には
 口調もとっくに慣れているだろうから問題はない。
 さて……タカネ、まずは手始めに新曲で四十八週連続チャートインを目指して行こうか」
「! それは、流石に……」
「ヨグの娘ならこれぐらいはやりたまえ。ふふ、明日から忙しくなるな……」

貴音はいつも以上に乗り気な叔父に苦笑しながら、空を見上げた。

(あなた様……今度戻られた時まで、私は輝き続けますわ)

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