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 ロケバスの後部座席は、意外にもほぼ完全な密室となりうる。特に今日の
ような場合は。
 制作スタジオに戻す大道具用のバンに頼み込んで乗せてもらった。若いスタッフが
一人で乗って帰るそうで、そのルートが事務所へ最短だったのだ。
 俺と真も手伝い、最後部のシートに空きを作った。初期からのファンクラブ会員
だという運ちゃんには疲れているから休ませてやりたいんだと説明し、発売前の
サインつきCDとオリジナル写メで交渉成立した。
 出演者用ではないから運転席は仕切られていないが、俺の巧みな誘導でバック
ミラーからは俺たちの姿だけが死角になった。
 運ちゃんは運ちゃんでさっそく真の新譜をカーステレオにかけ、運転と音楽
鑑賞に没頭している。俺の横でしばらく世間話をしていた真も、やがて体が
かしいできて、言葉がぽつりぽつりと途切れ、まぶたが下がって……。
「……すぅ」
「ありゃ、寝ちまった」
「あっプロデューサーさん、オレ音小さくしましょうか?」
「大丈夫だよ、どうやらライブの夢でも見てるみたいだ。むしろ音量上げた方が
夢見がいいかもな」
 彼としては大ファンの姫君を運んでゆく馬車の御者でも請け負った心持ち
なのだろう。へへ、じゃあ、と確かにCDは大きくなったが、それまでも無謀な
ことはしなかった運転がますます慎重になった。少々混み始めた夕刻の車の流れは、
目的地まであと小一時間といったところか。
「さて、と」
 少し大きめの独り言にも、運ちゃんは気づかなかった。俺はスーツの上着を
脱いで、真にそっとかぶせた。そして……。

 そして俺は、そっと手のひらを彼女の胸に乗せた。
 スポーツ特番のため、真は事務所からジャージで参戦していた。撮影用の
衣装からは着替えたが、今の服装もごく軽装なのは一目瞭然だ。やわやわと
もみしだく感触から、柔らかなスポーツブラしかしていないのがわかる。
 胸に届く快感に気づいたのだろう、真は飛び跳ねるように顔を上げ、俺を
見つめた。
「ふ……う……ぅんっ?」
「しっ。気づかれるぞ」
 真にはそう言ったが、運ちゃんは当然気づいていない。
 音楽に夢中、でかいダンボール箱の影、さらに上着をかぶった下での出来事
だ。よほど大きな声でも出さない限り無理というものだ。
「ぷ……プロデューサー?……こんなとこで」
「お前がすぐ横で寝てると思ったら、我慢できなくなってな」
「もう、プロデューサーってば」
 まあ真も真で、俺のこの手の悪戯も慣れっこになっている。すぐにまた目を
つぶり、眠ったふりで声をひそめた。
「こんなとこじゃなくて、プロデューサーの部屋がいいのに」
「すまんな、どう考えても週内は帰れないんだ」
「ちぇっ」
 別にやりまくっているというほどではない。俺も真も二人で一緒にいられる
だけで幸せなのだ。
 とはいえ秘密の恋人同士、人肌が恋しくなることもある。そんな時にあの手
この手を考えるのが俺の役割になっている。
「だから、せめてものお詫びにさ」
「ふぁ」
 あらためて背中側から抱き寄せ、手のひらにちょうどおさまる柔らかな感触を
楽しむ。
 初めは全体を包むようにゆっくりと力を入れて。続いて指の腹で、みずみずしい
弾力を確かめて。

 二本指でつまむと、真はびくりと体をふるわせた。
「くふっ!……ぷろ……だめ、ですよぅ」
「こら、静かにしろ」
「だってぇ……ガマン、できないよ」
「そっか。真はおっぱいが弱点だからな」
「や、言わないで……くださ、っん!」
 親指と人差し指に力を入れると、小さな悲鳴が漏れる。痛くしたつもりは
ない。歓喜が彼女の口からあふれるのだ。
 もう一方の手も動員し、二つの乳房をそれぞれにマッサージする……もちろん、
体にかぶせたスーツの下で。真は目だけはつぶり、寝ている風を必死で装って
いるが……もしバックミラーにこの姿が映れば、最前席の運転手でもなにか
起きているとわかるに違いない。
「真、まこと、右のおっぱいと左のおっぱい、どっちが気持ちいい?」
「くぁ……やっ……ぷろっ、そんなことっ……言、え、ま……せんっ」
「どうして?わかったぞ、どっちも気持ちいいからだな?」
「ちが……ぁあ!」
「しっ」

 不意に車内が静寂に包まれた。真があわてて息を呑んだのがわかる……どうやら
赤信号と曲間が重なったらしい。
「ん、どうかしましたか?」
「大丈夫だよ。ははは、真のやつ、いま夢の中でコール&レスポンスしてたぞ」
「あ!オレ行きましたよライブ!あれ気持ちよかったなあ!」
 車は再び動き出した。次の曲も始まり、車内はまたライブ会場に立ち戻る。
前方は歌声の、後方は嬌声の。

「聞こえ……ちゃってました、か?」
「大丈夫だよ、わかってない」
「もう、プロデューサー、そんなに激しくしたら」
「じゃあ、このくらい?」
「っ!」
「おお、よく我慢したな」
「プロデューサーの……ばかぁっ」
 しばらく愛撫を続けていたろうか。
「ふぅ、ふっ……っくぅ、ぅううんっ……ん、んんんっ」
「おや、真」
 真の艶声が湿り気を帯びてきた。先ほどまでの遊び半分ではない、本気の
あえぎ声だ。
「あったかくなってきたか?」
「……や」
 耳元で囁き、片手を胸から外して愛撫の対象を変えた。すなわち、ジャージの
ズボンにもぐりこませた。
「や、だ……っ」
「膝ひらけ」
「……ん」
 顔を真っ赤にしながらもそれでも目は開けず、浅い息を吐きながらじりじりと、
座る位置を直しつつ脚を開いた。
 そこは、大洪水だった。
「真、こんなに感じてたのか」
「……ひ、くっ」
「車のシートまでびしょびしょだ。あの運ちゃん、あとで気づくんじゃないか?
このシミが、真のエッチなジュースだって」
「い!……言わないで、くださいぃっ」

 シート云々は大げさに言っただけだ。しかし、下着はもう言い訳のできない
状態になっている。トレードマークの黒いジャージでなかったら、車を降りた
途端に変色を見咎められるかもしれないほどだ。
 周辺からなでるように刺激を加え、ころあいを見て中指を挿入した。
「んくっ」
「熱いくらいじゃないか」
「ひぁ」
 指を鈎のように曲げ、同時にクリトリスをこすってやる。片手は乳首を転がし、
いま真の体は俺の手で、敏感な部分だけで支えられているも同然だ。
「……っぷ、プロ……デューサー、あの」
「どうした?」
「ボク……ボク、もう、い……いっちゃいそ、で、すっ」
 俺の胴に覆いかぶさるように倒れこみ、乳房をこじる度小さく痙攣し、肉芽を
摘む度両膝に力を入れ、赤い顔で甘い吐息の愛しい少女は体を満たす快楽の波に
溺れそうになっていた。
「は、ふっ……はぁっ、ぷふぅ」
 呼吸も容易でないのか途切れ途切れに空気を求め、窮屈なスペースで小さく
体をよじる。必死で声を抑えている表情がたまらなくいとおしく、つい指先に
力がこもる。指の動きが早くなる。
「ふうぅぅ、ぷろ、ぷろ……っ」
 小さく鼻を鳴らしながら俺に顔を擦り付ける姿は、もう端から見ていても絶頂が
近いのがわかる。いや、近いというよりとうに満タンになった快感を必死で制御
しようとしている、切羽詰まった息づかいだ。
「ボク……もうっ、抑え……られ、な、っ」
「イキたいのか、真」
「は……っぁ、いぃ……いっ」
「他の人が聞いてるのに?」
「くひっ?」
「運転してる彼に聞かれたら大変だぞ?」
「あ……や、っ」
「菊地真は人の運転するロケバスの中でプロデューサーにあそこをいじられて
イッちゃう、いやらしい子だって噂が立っちゃうな?」
「やぁ……そんなの、やあっ」
「そうだな真、カーステ聞いてみろ。わかるか?」
「ん……んっ、これ、『自転車』……?」
「こいつの大サビで大きな声が出せるな」
「……くふぅ」
 俺は運ちゃんに声をかけた。
「ははっ、真の奴。なあ、聞こえたかい?」
「あ、ひょっとして一緒に歌ってるんスか?うわー、そっちの方聞きたいな」
「伴奏が消えたら起きちまうよ。アイドルに気持ちよく休息を取らせるのも、
ファンの心意気だぞ?」
「スよね、たはは」
 真には声をひそめて、聞こえているに決まっている顛末を重ねて告げた。
「真。あいつ、お前の声を全部聞いてるってさ」
「ふうぅんっ……プロデューサーの、いじ、わる、っ」
「なに言ってるんだ、口実を作ってやったんだぞ?」
 指を、一本から二本へ増やした。
「きゃふうぅっ」
「ほら、寝言の振りして歌えよ。俺がコンダクションしてやる」
 車内のスピーカーから流れる彼女の持ち歌、そのテンポに合わせて指を駆使
した。
「ん、んふ……すっ、『好き』、『だよ、声をあ』ぁあんっ……『好き、だよ』
……『速度あげ』……っ」

「そうそう、その調子」
 胸を揉みしだく動きと股間に突き立った指の刺激をメトロノームに、真の
たどたどしいリリックが綴られてゆく。運ちゃんは気分よくハンドルを握って
いて、よもやCDの隙間に聞こえてくるアイドルの声が淫らな鳴き声だなどとは
夢にも思っていないようだ。どころか、自分でも曲を口ずさんでいる。まあ好都合だ。
 俺も声を張り上げた。その分愛撫を激しくし、それにつれて真の漏らす鼻声も
さらに大きく高くなる。
「『ギュッと抱きしめたー』っ」
「おほっ!『急にゴメンねー』」
「ふぁあ……ぁんっ、んふうぅんっ」
 正直な話、それでもアイドル歌手のプロデューサーかというレベルだが
かまわない。運転席の彼も、ますます熱唱に力が入る。かくてロケバスの車内は
調子っ外れな男声二重唱に、聞こえるか聞こえないかのあえぎ声の織り交ざる
異様な混声合唱の舞台と化した。
 窓の外を見ると見覚えのある街並み。気を効かせた運ちゃんが、通り道ではなく
事務所前まで車を寄り道させてくれるつもりになったようだ。
 ならなおさら、サービスしてやらねば。
「真、もうすぐだぞ」
「んあっ……ボク……ぷろ、ボク、もう……っ」
「『好き、だよ』」
「くふっ」
「『キミがいちばーんっ』」
「『好き、だよ』」
「ふうぅっ」
「『キミひとりーっ』」
 ノリノリの運ちゃんをよそに、歌詞を借りた俺の声は真の耳元に直接、愛の
ささやきになって届いている。真のしなやかな筋肉が快感の波に飲み込まれ、
爆発をかろうじて抑えるようにびくんびくんと脈動を繰り返している。
「真、いくぞ、歌って」
「……く、ふ、いっつだ、ぁ、て、こっの……」
「『どこまーででも』」
「『だーあってキミがー』……」
 その瞬間二本の指をいったん抜き去り……三本に増やして、強く突き入れた。
真の体がこれまでになく激しく痙攣し、そして……口が大きく開いて。
「『好』」
「『き』」
「っあはああぁぁぁあああぁぁぁ……っ!」
 三者三様の絶叫がこだまするなか、ロケバスは事務所ビルの前でゆっくりと
停車した。

 車を下りしな、『あの、ごめんなさい、お恥ずかしいところを……』と
運ちゃんに告げた真の表情はきっと、本当のことをを知らないままの彼の記憶に
一生残るオカズになることだろう。





 なお、事務所でシャワールームに直行することとなった真はそのあと、俺と
三日間口をきいてくれなかった。

おわり。

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