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それは、いつもの日常。社長が帰り、残っているのは俺と小鳥さんのみ。スケジュールの最終確認や企画書の製作などの業務をこなし、気付けばもうすぐ日付も変わりそうな時間。
「小鳥さん、そっちは終わりましたか?」
「ええ、粗方。後は片付けて帰るだけですね。……プロデューサーさんの方は?」
「こっちは企画書が二つ残ってます。……あー、先に帰っても構いませんよ?さっきお茶を入れるついでにここ以外の戸締りは確認しましたし」
と進言してみるが、小鳥さんは『いえ、残ります。女一人で夜道を歩くのは危険でしょう?』と返してきた。……それもそうか。
「すみません。……それでは、すぐに終わらせますので」
色々な意味を含めた謝罪を小鳥さんに返し、画面に集中した矢先……第一の崩壊がやってきた。
「……あのー……誰かいますか……?」
「あら、春香ちゃん?どうしたのこんな時間に」
……春香だ。何故か春香が事務所に戻ってきた。……おかしい。確か定時に上がって帰ったはずでは……?
「あ、あははは……終電、乗り遅れちゃいました……」
話によると、上がった後にブラブラと町を歩いていたら高校の友達と出会い、その子と一緒に遊んでいたらすでに終電間際に。駅まで急いだが間に合わず、結局乗り過ごしてしまった……という訳である。
「もう、えりちゃんってば強引なんですよー。私家遠いからって言っても『だいじょぶだいじょぶ。何とかなるってウヘヘヘヘ』って笑って返して……」
檜里子と言う名の友達を責める春香。……なんとなくセロリが嫌いで一人称が『オレ』っぽい印象なのは気のせいだろうか?
「プロデューサーさん、春香ちゃんを送っていってあげましょうよ」
「……そうですね。まさか俺みたくここで一晩過ごさせる、という訳にも行かないでしょうし。……それに、明日は学校もあるだろ?」
「その点については大丈夫ですよ。明日から連休に入るので、学校は休みです」
……そういや、そろそろゴールデンウィークならぬシルバーウィークだっけか。いいなあ学生は休みがあって。
「……春香ちゃん、とりあえずプロデューサーさんの邪魔にならないようにこっちに来てね」
小鳥さんに呼ばれて春香が会議室の方へ。……さて、小鳥さんに気を使わせてしまったし、さっさと終わらせないと。
…………数十分後。作業も終わり、まずは一息ついた。机を片付け、部屋の戸締りを確認した後に小鳥さん達のいる会議室に入る。

扉の先にある光景が、第二の日常崩壊とも知らずに。

「あぇ、ぷろりゅーさーさぁん……?ろうしらんれすかぁ……?」
まず目の前にいたのは様子のおかしい春香。椅子に座っているがやたらと体が揺れている。その顔は赤く、目は据わっている。
「あははぁー、ぎゅってしちゃうー。ぷろりゅーさーさーん」
椅子からゆっくりと立ち上がり、よたよたとこちらに歩み寄ってくる。……この状態、どこかで見た事が……
「……な、なぁ、春香?小鳥さんは?」
と、そういえば小鳥さんの姿が見当たらない。周りを見回すと……不自然に置かれた缶の下にメモが挟まっていた。
そこに書かれていたのは――

「あんの、ピヨ助ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」

……俺をブチ切れさせるほど、酷い内容だった。

『そのままなのもアレなので、春香ちゃんにお酒を飲ませてみました。
 いやー、今時貴重ですよねwwコーラ割りのカクテルをコーラだと思って飲んじゃうなんてwww
 ……と、いう訳で♪春香ちゃんはプロデューサーさんの好きにしちゃってください。

                                     P.S 生は絶対ダ・メ・ダ・ゾ☆    』

            ***   ***

さて、時間はさかのぼり、Pがまだ企画書を作成中の時の事。会議室にいた小鳥と春香は二人して暇をもてあましていた。
「暇ですねー」
「暇ねー」
明らかに先程まで落ち込んでいた者とは思えない発言の春香に、小鳥は適当に合わせる。
「……っていうか春香ちゃん。実はあの話、嘘でしょう?」
「……あー、ばれちゃいました?」
小鳥の質問に春香が舌を出して答えた。……やっぱりね、と頷く小鳥。
「いくらなんでもこんな夜遅くまで出歩くような友達はいないでしょうし、それに、いつまで経っても親とかに連絡をしようとしないし」
「でも、親に連絡云々はここに来る前にしたって言えば大丈夫じゃないですか。……今更ですけど」
最後の部分はすでにネタばらし済みだと言う事を思い出し、付け加えた。
「それにしては、春香ちゃんの両親からの連絡がないわね?……もし家に帰る気ならば、今頃春香ちゃんの携帯は鳴ってる筈なんだけど」
つまり、いつ帰るのかを気にかけた両親が電話をするはずだ、という事だ。……しかし、春香の携帯は鳴らない。
「という事は、すでに両親を納得させる事……どこかで一泊するつもりだと言った。そしてそのどこかとは……」
「…………」
「プロデューサーさんの家。そうよね?春香ちゃん」
「……小鳥さんにはかなわないなぁ。一応両親には小鳥さんの家に泊まるって言ったんです」
観念するよといった表情で、春香がため息をついた。
「そこまでアタックかけるなんて、随分プロデューサーさんに熱心じゃないの」
「……あー、えっと、その……」
まさに『のヮの;』な顔をして視線を逸らす春香。そんな彼女を見てくすくすと笑いながら小鳥は会議室のドアに向かう。
「ちょっと、飲み物取ってくるね」
……数分後、黒い液体が入ったグラスを二つ持って、春香の下に戻ってきた。
「はい。コーラ、好きだったよね?」
「ありがとうございます。……?」
「どうしたの?」
コーラの入ったグラスを手にしたが、ふと首をかしげる春香。小鳥が問いかけると……
「いえ、何か不思議な匂いのするコーラだなーって」
……実はこのコーラ、市販されている缶カクテルの一種なのだ。その僅かな酒の匂いを感じ取ったのだろう。しかし流石は小鳥。この一言にも動じず、
「そういう種類のコーラなの」
と押し切ってしまった。そんな小鳥に少々訝しげな目を向けつつも春香はそのコーラカクテルに口をつけた。

……その後、あれよあれよという間に500ml缶数本分を飲みきり、現在に至るというわけだ。

            ***   ***

「明日は何が何でも奴を泣かせる。絶対にな……」
……そうだ、今の春香に既視感があるのはいつも酔ったあいつを見てるからだ。俺は心の中で毒づく。
「んふふ、ぷろりゅーさぁーさーん♪」
俺の怒りなど知った事じゃないという風に、春香が猫のようにじゃれ付いてくる。……まずは、こっちをどうにかせねばなるまい。
すでに上着は脱いでおり、シャツの薄布越しに下着の感触がわかる程に密着している。……くっ、OFをフルマニュアルで操作している気分だぜ……!
女の子特有の柔らかさ、うっすらと汗をかいた事による芳しい体臭の中にほのかに香る林檎のようなアルコールの匂い。
……おk、なんとなく状況を言葉に換えた事を後悔した。OFはOFでもザカートをフルマニュアルで操作してる気分だ。

「……春香?」
「なんれすかぁ?」
こんな事をしてしまって春香の両親に申し訳ないが、ひたすら謝り倒せば何とかなる……か?
「家に帰るんだろ?ほら、上着を着なさい」
「やぁー。いえにはかえれませんー。だってもうひとばんとまるってれんらくしましたぁー」
「……連絡?それは本当か?」
「とぉーぜんですよぉー!それもこれもぷろりゅーさーさんのいえにとまるためれすもん」

…………なん……だと……?

「は、春香?お前、もしかして……」
「んぁー?らーいじょーぶれすよぉ。ことりさんちにとまるっていっておきましたからぁ」
……最悪のシナリオは回避されたか。アイドルとPが同衾などという事が両親に知られればかなり危険だ。下手を打てば信頼を損なうかもしれん。
いまだにゴロゴロと喉を鳴らしそうな顔で俺に抱きつく春香。……よし、素数だ。素数を数えて落ち着こう。
「ぷろりゅーさーさん……」
「……何だ?」
「……ちゅー、して?」
お、おおおおおおちつけけけけけ、まままだああ慌てる時間じゃない。……大丈夫だ。ちょっと酔った春香のエロさに中てられてるだけだ。
くしゃ、と頭を撫で、そのまま額にキスを……といこうとしたが。
「ちーがーうーれーしょー?」
不満そうな声と共に、春香がぐいと顔をあげ……唇が触れ合った。
「!?」
慌てる俺を放さないように体全体で押さえ込み、舌を入れてきやがった。
「んんっ、んぐ!?」
「れるっ……んちゅ……」
さらに驚く俺の舌に自分の舌を絡め、むさぼるように口内を犯してくる。……それは、春香らしいまっすぐなキスだった。
「……ぷろりゅーさーさんのくちのなか、ミントあじ……」
それは仕事中に吸ってる眠気覚ましの禁煙パイポ的な物のせいだ。……いや、そうじゃないだろ俺。
「お、お前何やって……!?」
「つづきはぁ、ぷろりゅーさーさんのいえでしましょうねー」
そう言いながら、春香は俺の股間を撫で……流石にその手は払いのけた。
「いやいやいやいや!しないから!出来ませんから!」
「してくらさいよー、このぼくねんじーん!どんかーん!」
やたらとぶーたれる春香を見ながら、心中で頭を抱えてしまう。……あんのピヨ助め、春香をこんな爆弾に仕立てやがって……
それに、どうやら春香は俺の家に来るつもりらしい。……家の中で煙草、吸えないな……我が家が唯一の安全な喫煙所だってのに……
大きな絶望と本能に負けて春香を襲ってしまわないかという不安の種を腹に抱え、大荷物を連れて俺は家路に付いた。

後編

作者:16スレ152

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