当wikiは年齢制限のあるページです。未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。

「おはよー。」
ソファに腰掛けていると後ろから扉の音と美希の声がした。
周りの皆も挨拶を返す。美希はすたすたと歩いて私の隣へ。
「おはよ。でこちゃん。」
「ん、おはよ。」
美希が隣に座る。私にだけ特別に直接声をかけた。
真っ先に私のところに来るのも、隣に座るのもいつも通り。
でも、なんだろ。違和感っていうか。ちょっと距離があるような。
いつもなら肩がくっついて暑いくらいに近くに座るのに。今日はちょっと隙間がある。普通に考えたらこれでも距離は近いんだけども。
まず、美希が私に会ったら名前を呼びながら飛びついてくるはずよね。ていうか、それ以外のパターンが思い出せないくらいなんだけど。
それに、座るときは肩を擦り付けて甘えてきて私が暑苦しいって言ってもやめないのに。
よそよそしいっていうの?それは違うわよね?
機嫌も悪くなさそうだし、もしそうだったらすぐわかるしね。
なんだか目線も合わない感じがする。少しだけ顔も赤いような。
あんまりうるさくしないし。なによ、この雰囲気。大人っぽいっていうの?なんだか色っぽく見えるような。
本当なにこれ、せーり?

「二人ともラブラブですなー。」
亜美の声がして、そしてソファの後ろから私と美希をがっと抱き寄せた。
美希の肩がふれる。その瞬間彼女の身体がびくってして。
「・・・別に、いつも通りよ。」
「ん?ミキミキはなんか大人しく見えるけど。」
美希の顔が近い。けれど彼女は目を合わせようとはしない。
「なんでもないよ。いつも通り、なの。」
少し、彼女の身体が熱い気がして。ちょっと汗ばんでるような。
「そうかなー?あれ?もしかして・・・。」
はっとした顔をする亜美。
「・・・せーり?」
なんで考えることが同じなのよ。
でも、それは違うわ。そういえば先週言ってた。生理がしんどいって。
まあ、生理くらいでテンション変わるような子じゃないけど。
「デリカシーないこと言うもんじゃないわよ・・・。」
「えー?亜美達そういうこと言い合える仲良しじゃん。ね、ミキミキ?」
「でも、ミキは生理じゃないの。」
美希は私から顔を背けてて顔が真っ赤になってた。身体を離そうと動いてるようにも感じる。
「亜美はこれからレッスンだからまたねー。」
ぱたぱたとかけていった。亜美が手を離すとすぐに元の距離に美希は離れた。
彼女ははあって溜息をついた。見ると脇が汗で湿ってた。
「え、と。じゃ、ミキもレッスンだから、またね。でこちゃん。」
「ん、しっかりやんなさいよ。」
彼女はすっと立ち上がって、はじめて目があった。
「でこちゃんも、お仕事がんばってね。」
目つきの雰囲気がいつもと違ってて、女の子って感じな・・・。
その美希の表情を少しだけ綺麗だと思った。

現場から戻って事務所に入ると、目の前には亜美と真美に押し潰された美希がいた。
重いよーとか言いつつ、なんか楽しそうな美希。
なんか、三段重ねになってて。これってまるで・・・。
「あっいおりん戻ったんだー。」
「見て見てーいおりん!」
二人で声を揃えて。
「たれぱんだ!!」
そしてドヤ顔。美希は、平気そうね。重くないのかしら。
「あ、あれ?でこちゃん・・・。」
私を見つけたとたん、美希は顔を伏せた。そして顔を赤くした。だから、なんでよ。
「お、重いから降りてほしいの。」
「え、平気って言ってたなかった?」
「そろそろ重く感じてきたの!長時間はきついよ。」
「そだね。亜美も結構くるものがあるよ・・・。」
「しょうがないなー、じゃ、いおりん早く写真撮っちゃって!」
あ、やっぱり撮るんだ。自分の携帯でパシャリ。
「じゃあ、LINEで送っとくわ。」
「でかしたいおりん!」
そろそろと動く真美。結構ぐらついてて。
「うわあ!」
ソファにワンクッションおいて真美が転落した。腰をさする真美。怪我しなくてよかったわ。
「あわわ、大丈夫!?」
「痛た・・・。もーまんたいだよ・・・。」
埃をはらって立ち上がった。
「協力してくれたいおりんとミキミキのパシリになってしんぜよー。」
「オレンジジュース。」
「・・・ミキも。」
いくよーとか言いながら亜美を引っ張っていく真美。
事務所を出る直前、美希に向って親指を立ててグッてしてウインクしたのが見えた。

案の定、美希の服の背中はしわしわになってた。
姿勢を変えてソファに座る美希。膝を掴んで縮こまってて。なぜか恥じらってるような顔をしてる。
だから・・・、なんなのよ。なんで私の前だとそうなるわけ?
こないだ会った時は普通にべたべたしてたじゃない。さっきだって亜美と真美とじゃれてたし。
そういうスキンシップが嫌いになったわけじゃないんでしょ?
「でこちゃん・・・。」
ぼそって私の名前を呟いた。
私がなにかしたの?こないだ別れた時は普通だったのに。
嫌だって言ったことないじゃない。でこって言うなっていつも言ってるのにそれはやめないんだからそういうことじゃないんでしょ?
私はそういうことするの嫌じゃないのに。なのにあんたはなんでそんななのよ。
ソファの後ろにまわって背もたれに手をかけた。
「どしたのでこちゃん?」
「あんたがどうしたのよ。」
「どうって・・・。なんとも、ないの。」
嫌いじゃない。むしろ美希に抱きつかれるの好きなのに。
調子狂うわよ。
それに、こんなのって凄く寂しいじゃない。
「わ!ちょっと、でこちゃん・・・。」
美希にもたれかかって抱きしめた。あんたがいつもしてるみたいに。
「なんで、こういうことしてこないのよ。・・・嫌だって言ったことないでしょ。」
「それは、その・・・。」
少し間を置く。
「恥ずかしくて。」
「なんでよ。」
少し美希の身体は緊張してるみたいに震えてる。だんだん体温が高くなってく。
「今から言う事、ミキ、真剣なの。」
いつもの明るい感じとは真逆の小さい声。
「ミキ、でこちゃんのこと、好き。」

彼女の口からは聞き慣れた言葉だけど、声色がいつもと違ってて。意味が違うってわかった。
「それって、そういう風にとらえていいの?私、間違ってない?」
「でこちゃんが思ったので間違いないの。だから、抱きついたりとか、そういうことできなかった。」
彼女の言うとおり、美希の態度は真剣そのものだった。さっき見た美希の女の子な表情はそういうことだったみたい。
「でこちゃん・・・、ミキ、ヘンかな・・・。」
そういう好意を向けられるなんて、初めてだもの。やっぱり戸惑ってしまう。
「そんなことない。」
素直に、思った事を伝えよう。美希も頑張ってくれたんだから。
「嬉しいわよ。美希。」
普段見ないしおらしい美希はそれはそれで可愛いく見える。
美希が頭を私の方へ回して、頬が触れ合う。
あまり近くて顔がよく見えないけど、幸せそうな表情をしてるんだと悟れた。
抱きしめる力を強くする。
「好きだよ、でこちゃん。大好きなの。」
そっと美希が私の腕を撫でる。
パシリに行った二人が戻るのが、おやつを買いに行くには少し遅い。
それならもう少しだけ二人きり、それまでの間こうしていよう。
好きよ。美希。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます

メンバー募集!