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物価の優等生の卵が値上がりして困ったやよい。
卵は弟たちの好物であり、甘くした卵焼きは高槻家における数少ない甘さを堪能できる料理なのでどうにかして食べさせてあげたいが、自分の分を分け与えてもとても足りない。
そこでやよいは自分の事務所での昼食費を削ることを思い付いた。
しかし、成長期の身体は必須栄養素を求め、どうしてもお腹が減る。
もっと安くタンパク質を取るにはどうしたら良いかPに相談すると、Pは「春香がお菓子作りに黄身を使ったために余った卵の白身を使ったドリンクだ」と称して何やら白濁した飲み物をくれた。
ただしプロデューサーはやよいにそのドリンクを飲む上で、二つの約束を守ることを誓わせたのだった。

一つ、そのドリンクは一日一杯までとすること
二つ、他の人にはそのドリンクのことを内緒にし、プロデューサー以外の前でそのドリンクを飲まないこと

なぜそんな約束が必要なのかはやよいには分からなかったが、長女であるやよいには自分だけで何かを味わうという体験は少なかったため、その申し出は少しだけ嬉しかった。
何よりなにかと亜美や真美、美希などによって所有権を主張されるプロデューサーと二人だけの秘密を持ち、独り占めにしている気分になるのが嬉しかったのだ。
それは親友である伊織が、口では悪く言いながらも一番プロデューサーを独占したがっているということをやよいは知っており、お金持ちで何でも持っている伊織が持っていない『私だけのナニか』を持っているという嬉しさだったのかもしれない。

「うぅっ、なんだか少し苦くて……喉に…けふん、ひっかります……」

初めは余り好きではなかったその味にもいつしか慣れ、やよいは知らず知らずのうちにすっかりそのドリンクを常飲するようになる。
ただ、どうして春香がお菓子を作らなかった日などもPがそのドリンクを作れるのかだけはついぞ分からなかった。

「あふっ……んく、んく、ふあっ…んっ…ぷはぁ〜
なんだか少しずつ濃くなって行く気がします……
うっうー!プロデューサーは魔法使いなのかもっ!!」

冷静に考えれば、おそらくはプロデューサーが自分で材料を買って作ってくれているのだろう。
そんなことは十分予想がつく。
ただ、卵の値段が(やよいにしてみれば)まだまだ高いにも係わらず、プロデューサーが自分のためだけに『特別なこと』をしてくれるのはとても嬉しかった。

数ヶ月後、再び卵の値段が下がり、安定して買うことが出来るようになる。
しかし、やよいはプロデューサーが作るそのドリンクを飲みつづけていた。
もはや他のどんなものよりも美味しく感じるそのドリンクはやよいの生活になくてはならないものとなっていたのだ。
けれど、やよいには大きな不満があった。

「んっ、んっ……ふっ…はぁ、はぁっ、はぁ………
一日に一杯だけなんて、プロデューサーひどいれすっ。
わたし、わたし、アレがないと元気が出ないのに…」

そう、プロデューサーは最初にそのドリンクをくれた時の言葉通り、やよいに一日にたった一杯までしか飲ませてはくれないのだ。
確かにやよいがその飲み物に見せる執着心は中毒と言えるほどにまで高まっていたため、プロデューサーがそれを見越して制限しようと思っていたのであろうことも予想できる。
何しろ、初めはコップについでいたものを、コップの底に残った滴ですら指で掬いとろうとしたために、スープ皿にしてもらったほどなのだ。
(むしろ最後に残ったドロリとした粘性が強いものがやよいは好きだった)
その注がれたものを最後の一滴すら味わおうとするように、やよいはプロデューサーの前で犬のようにお皿を舐める。

「ぺちゃっ……ぺちゃ…はっ……ふっ………」
(カスミやコウジにはいつも「ダメ!!」って叱っているのに……
プロデューサーに「はしたない娘」って思われちゃうかもしれないのに……やめられないよぅ)

綺麗にお皿を舐め終わりしばし呆けた後、はっと我に返り申し訳そうに肩を落とすやよいの頭をプロデューサーは毎回優しくなでるのだった。
恥ずかしく思いつつも心体ともに満たされた時間。
しかしその時間が終わると、すぐにやよいは――いや『やよいの身体』はその液体を求め続ける。
やがて焦がれるやよいはある名案を思い付く。
プロデューサーがくれないのであれば、自分で作れば良い。
もう主材料であるはずの卵の値段は落ちているのだ。
だが……

(あれ……?違う?どうして?あの味じゃない……)

自分で何度か試行錯誤してみたが、ついぞ求める味にはたどり着くことが出来なかった。
それどころか、飛行機のジェットエンジンに軽油を注いでしまったように、渇きが癒されるどころか更に増してしまう。
その渇きを補うかのように、やよいのある部分が潤うのだった。
思いつめたやよいはそのこと――約束を破って二杯目を飲むために自分で作ってみたこと、どうしても作れなかったこと、そしてどうしてももっと飲みたいことをプロデューサーに打ち明けた。
その告白にプロデューサーは黙って微笑んだまま、やよいに両親に外泊の連絡をしてから、夜中に一人で事務所に来るように言うのだった。

(どうして一人で?それにどうして外泊の連絡を?
たぅ〜わかりません……でも)

でもきっとこれであのドリンクを飲めるに違いない。
そして、きっと新しい『二人の秘密』が増えるのだ。
そう思うとやよいの胸は高鳴り、何故か無性に身体が熱くなるのだった……

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