最終更新:ID:L65JyWGkvg 2016年06月14日(火) 02:29:47履歴
「はい、始まりました! 第零次聖杯争奪カールェエエエエエエスッ!」
謎の巻き舌で叫び上げ、勢い任せに机を叩く青巫女がいた。
「……」(テンション高いなぁ)
そしてそれを苦笑せんばかりな目線を向けるロリが
「ロリじゃないよ!!!!!!」
地の文にツッコミを入れるんじゃありません!
まあそんなわけで、冬木市はすっかりとお祭りムードなのだ。町中に旗やら店やら探偵事務所のビラまきやら。
「あれ? 一つおかしくないかな? と言うか鵺野君なにやってるのねえ!?」
「いや所長、折角だから宣伝しようかなって。困難君ノリノリでしたし」
「お祭りですることじゃないでしょう!?」
だから地の文は君たちには見えないんだってば云々。まあそうだ。
此処でぱたぱたしている正当派シャーロック・ホームズみたいな格好をしている彼女、23歳にして小学生と間違われる女、古明地ことり所長の愉快な仲間達がなんかやってる。
「累計収入期待」
「…宣伝用紙に所長の写真乗せたほうがよかったですかね」
「蒼華ちゃん!? 後鵺野君それ著作権侵害だよ!!」
「肖像権です所長」
ちなみに探偵事務所の所長の癖して頭は弱い。
「じゃあ俺の写真とかどうでしょう?」
「だめ、駄目ったら駄目、ぜったいだめ」
「おや、何故」
「駄目ったら駄目なの−!!」
そこの親子はしばらく放っておこう。
具体的に言うとビラ配りとパフォーマンス。ひたすらブレイクダンスをする永遠の高校生()利根川困難君。決して何処かの見た目は子供頭脳は大人じゃない。むしろ逆である。
常に目に黒い線が入るという業を背負っている彼は警察に何故か負われ続けているのだが、はてさて今日はいつまで…… あ、SWAT来た。
「命がけの追いかけっこですねー」
のほほんとそう宣うはゆるっとギャグ系な青巫女、海瀬夢美。通称ゆめみん。頭もゆるっとして……ああ、窓に! 窓に!
まあちょっと愉快な人である。ホントダヨインディアンウソツカナイ。
そんな彼女は出向組。ケルベロスブレイドというPBWから。
PBWって何? ケルベロスブレイド? 何それ? ってみんな!
さあその手元にある素敵なスマヒオ君で検索だ! おもしろいよ!
「「宣伝はそれくらいにしよう/しましょう?」」
はい。
「ところで夢美ちゃん喋ってるけど今実況席にいないよね? 何処にいるの?」
「ふもっほっふっっふふふは!」(現在屋台でたこ焼き食べてます美味しいです)
「なんて言ってるのかな!? と言うかハサン選手そろそろ準備して!?」
そう、屋台でたこ焼きをひたすら量産してるのはアサシンのサーヴァントハサン選手。
オカンとも呼ばれる母性と家事スキルを持つ彼はきらめく微笑みを浮かべ言い切った
「バイトでござる!」
「もうすぐ出番だから!!! バイトは後にしよう!?」
きぃんとハウリングもお構いなしに叫ぶ。ちょっと私だけじゃ収集つかないんだけど助けて守誤神。
しかし神は死んだ。というか流石に他の人のキャラ引っ張り出してはこれないから。これないから。
「ほあっんふ、んほおおおおお」(もうすぐもどりまーす)
「はやくうううう!? というかそれ多分別の人の奴だと思うんだけど!?」
がたがたと机を揺らすことりの姿はいかんせんだだっ子にも見えなくはないが今この場にまともな思考を持った人は彼女しかいない。
他の選手はもうとっくに控え室だ――
――「のうのう、迷子になってしもうたのだが」
いた。うん。一人。まともじゃないけど。
彼女は冬木に名を覇すのじゃろりあざとめサーヴァント牛鬼ちゃんである。ちなみにバーサーカー。
「……」
疲れ切っていたことりちゃんは彼女を冷たい目で見るとマイクを握った。
『あー、迷子のお知らせをします、バーサーカーちゃんの保護者、具体的に言うとライダーさんかシオンさんは速やかに引き取りに来てください』
「のじゃぁ!? 迷子じゃないぞえ!?」
ががぁんとショックを受けた表情で机の向こう側から身を乗り出す牛鬼ちゃん。
「もう迷子で良いよ…… シオンさん早く来て……」
「見た目はそんなかわらんくせに!」
「そうだね、バーサーカーちゃん1000歳超えてるもんね…… 千歳児だね……」
ハイテンションロリとローテンションロリ。二人合わせても残念ながらプラマイ零ではなかった。
「はいはい、迷子センター行こうねー、レゴあるからねー」
「のじゃあぁぁぁぁ」
迷子センターにシオンさんが来たという知らせを受け、指令を受けた鵺野が牛鬼ちゃんをずりずりと引きずっていった。
今回ばかりは助かったとハンカチをひらひら。
「ただいまですのー」
「おかえりなs……って凄い荷物だね」
其処にはフル装備のゆめみん。フル装備とは金魚すくいヨーヨーフランクフルトわたがしが揃った状態のことを言う。ついでにお面があると数え役満。
「縁日全部回ってました」
「ばかものっ!」
きりっ。ごすっばきっ
「痛い叩かないで半分あげますから」
「そんなもので許す。フランクフルトは私のね」
(許すんだ……)
チョロい探偵である。まあ巫女の方もゲームで簡単について行くチョロ巫女だからどっこいどっこい。
まあうん。これで、やっと揃ったようだ。
総文字数2028。長かった。なんとまだレースゲームのレの時も出てきていない。
最早ことり所長のTP(ツッコミポイント)は尽きそうであるが、まあ全員揃えば代替のツッコミの一人や二人は居るはず…… 多分、めいびー。
とりあえず実況する気力が溜まるまでしばらくお待ちください。
『此処でCM! 367日営業冬木のジ○スコ!
素敵で金持ちのオーナーとおっぱいでかくて凛としたお姉さんがお出迎え!!!
なんかキャバクラみたいだねしあわせー』
「なんですかあのツッコミポイントしかないCMっ!?」
今度は夢美がつっこむ。ことりにとってはほぼ日常的に聞いている物なのでスルーだ。
「そうかな? ちょっとはおかしいと思うけど」
「ちょっとどころじゃないと思うんですけど……」
まあ、これ以上尺を伸ばしても、というところだ。これ以上行くと多分真面目な短編より文字数がかさむ。
「いちいち地の文がめたいよ…… まあうん、そうだね」
じゃ、任せた。そんな感じで夢美に合図を出す古明地。
にっこりと是を示し息を吸った。
「さぁ!!! メンバーも揃ったところで車とじんぶつしょーかーい!! まずはみんなの妹! バーサーカーアイドルこと牛鬼ちゃーん1000歳児!」
「トップバッタじゃぞしおんー!のじゃっ☆」
きらっ、とポーズを決めた1000歳児はぐいぐいと自らのマスターの袖を引っ張った。
はふ、とため息をついたシオンさんも別にやる気がない訳じゃないようで。
「相変わらずテレビの前ではあざといんだから…… まあ精一杯頑張りましょうね」
「はい! 王道なコメントいただきました―! ええと、乗り物は人力…… 鬼力車?」
海瀬はちょっと戸惑った様子で言葉を続けた。明らかに人力車。ちなみに引いているのは牛鬼である。
「多分これが一番早いわ」
そうシオンはきっぱりと言い切った。
「いつでもよいぞ! 司会席!」
バーサーカーちゃんも乗り気である。というか今からクラウチングスタートの構え。気が早すぎる。
「はい、落ち着きましょうね。スタートはまだ先よ」
いつもの様子でなだめるシオンさん。特に気負いの様子も感じられない、コンディションは上々というところか。
「ありがとうございましたー、ええっと次はっと」
紙をごそごそ、あ、あった。
「次はハサンさんことアサシンさんでーす!!!! ルーデルさんは引きこもりにつきお休みと」
「マスターの分も頑張るでござるよー!!」
ぱたぱたと手を振る。きゃーかわいー!! と女の子の嬌声が飛ぶ。まったくうらやまけしからん。
ちなみにルーデル君はアサシンのマスター。ちょっと対人恐怖症の節がある引きこもりである。眼鏡を取ると変態になる。
「バイトの続きでござるな!! お仕事してバイト代もらって 優勝賞金も手にいれてマスターに恩返しするでござる!!」
こういった健気なところがモテるんだろうなぁ、聖杯戦争参加メンバーの中で2番目くらいにモテるんじゃないだろうか。
一番? もうすぐ出てくるよHAHAHA。
車は普通の車なので割愛。
「頑張ってくださいね! 健気な人は海瀬ちゃん好きです。さてさて次のお方はっと」
がさごそと箱を漁る海瀬の手が止まった。
「? どうしたの海瀬ちゃん」
きょとんとしたことりが声をかける。特に不具合はないと思うのだが。
「……ました」
「ました?」
「飽きました!」
まさかの爆弾発言だった。
「えええええ!? いや、ちょっと待って海瀬ちゃん、流石に今になってそれはないよ」
「だって疲れましたし」
「もうちょっと根性を……」
「海瀬ちゃん眠いんですけど」
「それ中身ぃ!?」
司会席の漫才ともとれるいざこざに会場はざわざわ。何となく鵺野君から生暖かい目線。
あとシオンちゃんも同類の目を向けていた。保護者的な。
なお身長は海瀬の方が上である。
「わかりましたわかりました。やれば良いんでしょう!! おっしゃやってやりますよ」
謎のガッツポーズを決めつつ(覚悟完了?)勢いよくくじを引き抜く。
「とおさかちいいいいいいいいむっ! ライダーです! 一番有利かと思われますがどうでしょう?」
騎兵。明らかにつよい。これもうユルゲーってくらい。
「すごい簡単な競馬が」
冷静な目の蒼華さん。困難君の手綱を握る唯一の制止手段。なおSっ気あり。というかドSじゃないの?
「競馬とか言わないんだよ賭けしてるわけじゃないんだから」
「オッズは1.0002くらいかな」
わいわいきゃいきゃいとした探偵事務所メンバーである。柊君は現在パシらされていていない。困難君は多分まだSWATと追いかけっこしてるんじゃないかな。
「祭り事は嫌いじゃない まあ、最善を尽くすよ、頑張ろうライダー」
「速度だけでよろしいのですか、でしたらお役に立てないことも…」
思いの外しっかりした、良い反応。 良い反応、なんだけど。
「……あの、本当にそれでいいんですか?」
二人の乗っているのは巨大なザリガニであった。地味な生臭さとかがちょっと伝わってくる。触覚もうねうね動く。うん、これはザリガニだ。真っ赤な甲殻が太陽に当たってきらめいていた。
「生物のほうが好都合なので問題はないと」
冷静な口調でライダーが応える。そう言う問題でもない気もするが。
「でもほら、馬とか」
困惑した表情で海瀬が続ける。ザリガニを用意した覚えはないので持参品なのだ。
「水陸進むことでも見越されているのかと…………すぐ慣れます、すぐ……魚類でないですし」
明らかに思い詰めてるんだけど。大丈夫この子。
「交配し間違えたキメラの一体でも紛れ込んだのか……まあ、ライダーが良ければ私は何でも構わないが 」
良さそうじゃないです。ないです。
(明らかに良さそうじゃないんですけどねぇ)
と海瀬も困惑顔だ。
ちなみに。
「お腹すいたのう……」
そんなことを呟いたバーサーカーちゃんは哀れ、「食用なわけがないでしょ」とシオンに一蹴されてしまっていた。
「えーっと、次はランサー陣営のようです。 ぽるしぇ!!!! かっこいい!!!!」
「あれでレースするんですかねあそこ」
ででーんと立つは白いポルシェ。かっこいい。けど確かに鵺野の言うとおり。レース向けではなさそうだが……?
まあ人力車やらザリガニがいる時点でそこら辺は言及すべき事ではないだろう。
「頑張りましょう、マスター。私に出来ることは少なそうですが……」
少し自信なさげ、というか恐縮したように言うのは参加者のランサー。真名を関羽。あの大英雄関羽である。ちなみにメシマズ。彼女のオムライスは紫色だったという。
「そうなのか?まぁ気楽にやったら良いんじゃないか?」
そう言って笑うのはそのマスター、シュトリヒ。参加者中一番のイケメンでありファンクラブもあるとか。因みにさっきのCMで言ってた金持ちのオーナーは此奴です。
最近ファンクラブは何者かの手によって潰されたみたいだが。いやぁ槍のかけらが残ってたらしいけど誰だろうねー。
「ところでランサーは爆死する運命らしいですけど」
青いのだけです。
「うーん、まぁその時はその時だな。なんとかなる。」
しかしこの語り口はなんか何とかなりそうな気がしてくるのがあれだ。勝者の貫禄というか何というか。
「自信満々ですね! ジャスコのためにガンバってください!
「おう、頑張るぞ!」
そうさわやかに締めて曰く。尺が押しているとの連絡を受けました。
「巻きで行けといわれました」
困り顔の海瀬ちゃん。
「ふぅむ、どうしよっか?」
ことりちゃんもちょっと思案顔です。
「……よし、とばそっかー」
「ですねー」
こうしてアーチャーセイバーの自己紹介ははぶられたのであった。え? キャスター? そんなのあったっけ?
*****準備が出来るまでキャスター好きへの焼き土下座タイム*****
・
・
・
・
・
「さぁ、げーむすたーとなのです。その前にルール説明ことりさんよろしくっ!」
「はーい、コースは冬木市一週、ショートカットは自由だけど人に見つかった場合はスタートに戻ってもらうよ。瞬間移動等々は不可、監視カメラで見てるからねー」
マイクを握り平静な口調でそう告げる。ことりの後ろでは各陣営が準備をしているのだがとりあえず見ない。ツッコミは疲れる。助けてツッコミの神。
しかしいかんせん(以下略。
まあ実際ボケとはいかずともとんでものワンダーランドだったりするのでその選択は正しい。
さぁ、イカレたラインナップを紹介するぜ!
一番、人力車。二番、ポルシェ。三番、ザリガニ。四番、乗用車。五番、列車砲。六番、ライオン。ライオン!?
ちなみに本家と違い各自自分で車を準備していることを追記しておく。
「なんか捕食せんばかりにザリガニ睨んでるライオンがいるんですけど」
「うふふ、まだ食べちゃだめよ」
にっこりとした笑顔でライオンをなでるタイバーさん。セイバーのマスターでちょっとふくよか。動物大好きというか動物キチというか。
人間より動物が好きな人である。因みに甲殻類は例外の模様。
まだというか永遠にダメです。
「いえ、マスター。このザリガニはキメラの可能性があります。ライオンの健康に悪いかと」
生真面目に言う鎧の美女がセイバー。きりっとライオンにまたがる姿は騎士を思わせるような思わせないような。
ちなみに動物除け持ちなのでライオンさんめっちゃ嫌がってたりする。
まあシカタナイネ。というかザリガニよりマシというか本家よりマシである。
100円で動くおもちゃとかおもちゃとかおもちゃとか。
「はい、レース終わるまではだめですからねー、さて。まあ時間をおいても何なのでさっさと始めていきますよー!」
元気よく言ってチェッカーな旗をぱたぱたと動かす。
『さん!』
「のじゃ」
バーサーカーが力車に力を籠める。
『にー!』
「はい……最初から、本気で。いかせてもらいます」
静かな声でそうつぶやき、ライダーがザリガニの触角をひっぱる。
『いち!』
「行こうか……。アーチャー」
「あぁ、ライザよ。では行ってくれるな?」
「はい! 総統様の仰せのままに」
壮年の男性、そして少女。笑顔で列車砲の砲台に乗り込む女の子。
それぞれアーチャーのサーヴァントヒトラー、そのマスターライザ。それに心酔している実験動物ナンバー3。
「きゃああああああああっ!! ライザ様がんばってえええええ!!」
そしてネオナチス(別名ライザフリーク)一同。筆頭ニコラさん。ガスマスクがチャーミング。
実際頑張るのは実験ナンバー3ちゃんのようだけどね。
『ぜろーっ!!』
ばさり、チェックが一気に振り下ろされる。ここに火ぶたが切って落とされた。
「先手必勝! 総統様は永遠なりいいいいいいいいいいいい!!!」
どがらどしゃらどっすううううううん!!!
ものすごい音と煙を立てて砲弾。いや人間? が飛び出す。凄い勢いなうえに優勝候補筆頭のライダーの動きさえ一瞬止めた。
そのまますっ飛んで行き……ものの数秒で折り返し地点までたどり着く。
「凄いね…… もう負けることはない」
望遠鏡で眺めていたライザが感嘆の息を漏らす。
「いや、一つ問題点があってな」
こともげもなくヒトラーが一本指を立てる。
「?」
「折り返しからは徒歩だ」
「なんで迎えを行かせてあげなかったの……」
かくりと首を落とすライザ。しかしヒトラーは悠然と言ったところだ。
「下民共へのハンデだよ、戦争というのは圧倒的勝利でなければならないが、蹂躙では面白くない。彼奴を信じろ」
そんなことを言いつつ野菜スティックをかじるナイスミドル。
「でも……」
ライザのその目線はライダーへと向かっていた。
「主様、ご命令を」
「全力で行こう。この戦いは私たちが獲る」
「……御意」
そんなライダー陣営のやり取りのあと、一気に加速。スピードに乗って走り出すザリガニ。
先に走っていた乗用車とライオン、ポルシェと序に実験体ちゃんを追い抜きどこまでも。
「おお、速いな。世界一周だってできるんじゃないか?」
「はい、お望みならば」
「ふむ、では頼もうか」
後で――と続ける前にザリガニが急加速しだした。
「御意。少しだけ速度を上げます」
「いやライダー!?」
そのままコースアウト。まっすぐにまっすぐに飛んでいく(物理)。
『おおっとライダーチームコースアウト!? というかどこいくのー!?』
走る走る走る。飛ぶ。そして水平線に――
――消えた。もう姿はかけらも見えない。帰ってこれるのかなあの二人は……。
「お土産頼むわ」
「マカデミアンナッツを所望する」
アーチャー陣営が笑いをこらえながらそんなことを言っている。
「私シチリアの生魚」
「腐っちゃうんだよ」
蒼華とことりはなんかそんなのんきな会話を続けていた。そういう問題じゃないと思うんだがこういう議題で突っ込み担当な鵺野君は残念ながら出中だ。
あとライダーちゃんの弱点は生の魚介類なんだからやめてあげなさい。
『えーあー……オッズが荒れているのです』
実は賭博も行っていたらしい。確実な場所に賭けたはずの人々が阿鼻叫喚の騒ぎだ。
でもまあ、そんなこんなで戦いは続いていく。特に見せ場もなく、騎乗スキルを持ったセイバーが強いようだ。
「ライオン号ー、がんばってー」
「少し間の抜けた名前過ぎませんか……?」
「は????? 文句あるの???? 私のペットだしあなたは私のサーヴァントよ????」
「……はい、申し訳ありません」
「それにこの名前には理由があるの。勝者にはあやからないとね」
「勝者……?」
「あなたは気にしなくていいの」
……あんまりマスターとサーヴァントの仲はよろしくないらしい。ライオンは走るのに夢中で気づいてないけど。というかわざと気がつかないようにしてる節がある。
「ござるうううううう!」
その後ろで声上げて走るミニバン。ルーデルさん家の所有である。
「ライダーには負けますが。馬の扱いに比べたら車なんて容易いものです」
「お先〜」
『あ、アサシンさんが颯爽とポルシェに抜かれた。しかもシュトリヒさん手を振ってる。これはちょっとムカつきますね』
『まあミニバンとハイブリット車じゃ馬力が違うよねぇ』
「最下位でござるか……! しかしこのアサシン! 決して最後まで諦めませぬ!」
ごう、と目に炎を燃やして。ちなみに先ほどヘロヘロになった実験体ちゃん追い抜いたのでビリ2です。
もっと言うとライダー陣営はたぶん今日中にゴールできることはないと思うのでビリ3である。
そしてライオンVsポルシェという異種格闘技戦。格闘技?
割と肉薄したけどそこまで笑えることもなかったので割愛させていただこう。
『……あれ?』
送られてくる試合中継を見ながらことりが首をかしげる。
『どうしました? ことりさん』
『あのね海瀬ちゃん、バーサーカー陣営は?』
確かに先ほどからあの騒がしいのじゃろりの声が聞こえない。どこにいたってわかるレベルの賑やかさなのだが。
『最初の砲撃で吹っ飛んだりしましたかね……?』
『ああ、そうかも』
そう納得し、捜索に人を割こうと口を出したそのとき。
「嗚呼!」
「ふぅ、やっと出番ね」
たんっ、地を飛んでゴールに飛び出したのは。
『バーサーカー!?』
「この戦い、私たちの勝利よ」
ふぁさっ、と髪をかき上げ少しだけどや顔かますシオンさん。楽しそうで何よりです。
どうやらアーチャーの爆音に紛れ狂化し、一気に飛び。カメラの影を縫ってそのまま独走。一足先に到着、といった具合の模様。
さすがバサカ、バサカ汚い。いやどっちかというとバーサーカーって真正面から戦う系だと思うけど。
実際牛鬼ちゃんはそこそこあざとくて狡猾なだけで基本脳筋だ。たぶん今回もシオンの入れ知恵である。
そのままぱぁぁんっと華麗にゴールテープを切って。優勝はバーサーカーチームの手へと下った。
ふわわわわわわわっ。
ゴールテープを切った彼女らへと舞い降りる聖杯……
見た目は象印ポッド。しかし黄金に輝いている。
≪そなたの望みを聞こう……≫
「「こいつ直接脳内に/なのじゃ」」
イメージボイスは美輪明宏でお願いします。
そんなアルセウスボイスは望みは何だと脳内でリフレイン。
わんわんわんわん。
「いや待て。五月蠅くてかなわん。ちょっと静かにしてほしいのじゃ」
≪それがそなたの望みか…… 叶えようではないか、願望機の名にかけ――≫
「のじゃっ」
「あっ」
すっ。と速やかに声は消えて。
速やかな沈黙。
――こうして。なんだったんだろうという虚しい気持ちの中第零次カーレースは幕を閉じたのであった。
ちなみにマカデミアナッツがアーチャー陣営のもとに律義に届けられたのは別の話。
謎の巻き舌で叫び上げ、勢い任せに机を叩く青巫女がいた。
「……」(テンション高いなぁ)
そしてそれを苦笑せんばかりな目線を向けるロリが
「ロリじゃないよ!!!!!!」
地の文にツッコミを入れるんじゃありません!
まあそんなわけで、冬木市はすっかりとお祭りムードなのだ。町中に旗やら店やら探偵事務所のビラまきやら。
「あれ? 一つおかしくないかな? と言うか鵺野君なにやってるのねえ!?」
「いや所長、折角だから宣伝しようかなって。困難君ノリノリでしたし」
「お祭りですることじゃないでしょう!?」
だから地の文は君たちには見えないんだってば云々。まあそうだ。
此処でぱたぱたしている正当派シャーロック・ホームズみたいな格好をしている彼女、23歳にして小学生と間違われる女、古明地ことり所長の愉快な仲間達がなんかやってる。
「累計収入期待」
「…宣伝用紙に所長の写真乗せたほうがよかったですかね」
「蒼華ちゃん!? 後鵺野君それ著作権侵害だよ!!」
「肖像権です所長」
ちなみに探偵事務所の所長の癖して頭は弱い。
「じゃあ俺の写真とかどうでしょう?」
「だめ、駄目ったら駄目、ぜったいだめ」
「おや、何故」
「駄目ったら駄目なの−!!」
そこの親子はしばらく放っておこう。
具体的に言うとビラ配りとパフォーマンス。ひたすらブレイクダンスをする永遠の高校生()利根川困難君。決して何処かの見た目は子供頭脳は大人じゃない。むしろ逆である。
常に目に黒い線が入るという業を背負っている彼は警察に何故か負われ続けているのだが、はてさて今日はいつまで…… あ、SWAT来た。
「命がけの追いかけっこですねー」
のほほんとそう宣うはゆるっとギャグ系な青巫女、海瀬夢美。通称ゆめみん。頭もゆるっとして……ああ、窓に! 窓に!
まあちょっと愉快な人である。ホントダヨインディアンウソツカナイ。
そんな彼女は出向組。ケルベロスブレイドというPBWから。
PBWって何? ケルベロスブレイド? 何それ? ってみんな!
さあその手元にある素敵なスマヒオ君で検索だ! おもしろいよ!
「「宣伝はそれくらいにしよう/しましょう?」」
はい。
「ところで夢美ちゃん喋ってるけど今実況席にいないよね? 何処にいるの?」
「ふもっほっふっっふふふは!」(現在屋台でたこ焼き食べてます美味しいです)
「なんて言ってるのかな!? と言うかハサン選手そろそろ準備して!?」
そう、屋台でたこ焼きをひたすら量産してるのはアサシンのサーヴァントハサン選手。
オカンとも呼ばれる母性と家事スキルを持つ彼はきらめく微笑みを浮かべ言い切った
「バイトでござる!」
「もうすぐ出番だから!!! バイトは後にしよう!?」
きぃんとハウリングもお構いなしに叫ぶ。ちょっと私だけじゃ収集つかないんだけど助けて守誤神。
しかし神は死んだ。というか流石に他の人のキャラ引っ張り出してはこれないから。これないから。
「ほあっんふ、んほおおおおお」(もうすぐもどりまーす)
「はやくうううう!? というかそれ多分別の人の奴だと思うんだけど!?」
がたがたと机を揺らすことりの姿はいかんせんだだっ子にも見えなくはないが今この場にまともな思考を持った人は彼女しかいない。
他の選手はもうとっくに控え室だ――
――「のうのう、迷子になってしもうたのだが」
いた。うん。一人。まともじゃないけど。
彼女は冬木に名を覇すのじゃろりあざとめサーヴァント牛鬼ちゃんである。ちなみにバーサーカー。
「……」
疲れ切っていたことりちゃんは彼女を冷たい目で見るとマイクを握った。
『あー、迷子のお知らせをします、バーサーカーちゃんの保護者、具体的に言うとライダーさんかシオンさんは速やかに引き取りに来てください』
「のじゃぁ!? 迷子じゃないぞえ!?」
ががぁんとショックを受けた表情で机の向こう側から身を乗り出す牛鬼ちゃん。
「もう迷子で良いよ…… シオンさん早く来て……」
「見た目はそんなかわらんくせに!」
「そうだね、バーサーカーちゃん1000歳超えてるもんね…… 千歳児だね……」
ハイテンションロリとローテンションロリ。二人合わせても残念ながらプラマイ零ではなかった。
「はいはい、迷子センター行こうねー、レゴあるからねー」
「のじゃあぁぁぁぁ」
迷子センターにシオンさんが来たという知らせを受け、指令を受けた鵺野が牛鬼ちゃんをずりずりと引きずっていった。
今回ばかりは助かったとハンカチをひらひら。
「ただいまですのー」
「おかえりなs……って凄い荷物だね」
其処にはフル装備のゆめみん。フル装備とは金魚すくいヨーヨーフランクフルトわたがしが揃った状態のことを言う。ついでにお面があると数え役満。
「縁日全部回ってました」
「ばかものっ!」
きりっ。ごすっばきっ
「痛い叩かないで半分あげますから」
「そんなもので許す。フランクフルトは私のね」
(許すんだ……)
チョロい探偵である。まあ巫女の方もゲームで簡単について行くチョロ巫女だからどっこいどっこい。
まあうん。これで、やっと揃ったようだ。
総文字数2028。長かった。なんとまだレースゲームのレの時も出てきていない。
最早ことり所長のTP(ツッコミポイント)は尽きそうであるが、まあ全員揃えば代替のツッコミの一人や二人は居るはず…… 多分、めいびー。
とりあえず実況する気力が溜まるまでしばらくお待ちください。
『此処でCM! 367日営業冬木のジ○スコ!
素敵で金持ちのオーナーとおっぱいでかくて凛としたお姉さんがお出迎え!!!
なんかキャバクラみたいだねしあわせー』
「なんですかあのツッコミポイントしかないCMっ!?」
今度は夢美がつっこむ。ことりにとってはほぼ日常的に聞いている物なのでスルーだ。
「そうかな? ちょっとはおかしいと思うけど」
「ちょっとどころじゃないと思うんですけど……」
まあ、これ以上尺を伸ばしても、というところだ。これ以上行くと多分真面目な短編より文字数がかさむ。
「いちいち地の文がめたいよ…… まあうん、そうだね」
じゃ、任せた。そんな感じで夢美に合図を出す古明地。
にっこりと是を示し息を吸った。
「さぁ!!! メンバーも揃ったところで車とじんぶつしょーかーい!! まずはみんなの妹! バーサーカーアイドルこと牛鬼ちゃーん1000歳児!」
「トップバッタじゃぞしおんー!のじゃっ☆」
きらっ、とポーズを決めた1000歳児はぐいぐいと自らのマスターの袖を引っ張った。
はふ、とため息をついたシオンさんも別にやる気がない訳じゃないようで。
「相変わらずテレビの前ではあざといんだから…… まあ精一杯頑張りましょうね」
「はい! 王道なコメントいただきました―! ええと、乗り物は人力…… 鬼力車?」
海瀬はちょっと戸惑った様子で言葉を続けた。明らかに人力車。ちなみに引いているのは牛鬼である。
「多分これが一番早いわ」
そうシオンはきっぱりと言い切った。
「いつでもよいぞ! 司会席!」
バーサーカーちゃんも乗り気である。というか今からクラウチングスタートの構え。気が早すぎる。
「はい、落ち着きましょうね。スタートはまだ先よ」
いつもの様子でなだめるシオンさん。特に気負いの様子も感じられない、コンディションは上々というところか。
「ありがとうございましたー、ええっと次はっと」
紙をごそごそ、あ、あった。
「次はハサンさんことアサシンさんでーす!!!! ルーデルさんは引きこもりにつきお休みと」
「マスターの分も頑張るでござるよー!!」
ぱたぱたと手を振る。きゃーかわいー!! と女の子の嬌声が飛ぶ。まったくうらやまけしからん。
ちなみにルーデル君はアサシンのマスター。ちょっと対人恐怖症の節がある引きこもりである。眼鏡を取ると変態になる。
「バイトの続きでござるな!! お仕事してバイト代もらって 優勝賞金も手にいれてマスターに恩返しするでござる!!」
こういった健気なところがモテるんだろうなぁ、聖杯戦争参加メンバーの中で2番目くらいにモテるんじゃないだろうか。
一番? もうすぐ出てくるよHAHAHA。
車は普通の車なので割愛。
「頑張ってくださいね! 健気な人は海瀬ちゃん好きです。さてさて次のお方はっと」
がさごそと箱を漁る海瀬の手が止まった。
「? どうしたの海瀬ちゃん」
きょとんとしたことりが声をかける。特に不具合はないと思うのだが。
「……ました」
「ました?」
「飽きました!」
まさかの爆弾発言だった。
「えええええ!? いや、ちょっと待って海瀬ちゃん、流石に今になってそれはないよ」
「だって疲れましたし」
「もうちょっと根性を……」
「海瀬ちゃん眠いんですけど」
「それ中身ぃ!?」
司会席の漫才ともとれるいざこざに会場はざわざわ。何となく鵺野君から生暖かい目線。
あとシオンちゃんも同類の目を向けていた。保護者的な。
なお身長は海瀬の方が上である。
「わかりましたわかりました。やれば良いんでしょう!! おっしゃやってやりますよ」
謎のガッツポーズを決めつつ(覚悟完了?)勢いよくくじを引き抜く。
「とおさかちいいいいいいいいむっ! ライダーです! 一番有利かと思われますがどうでしょう?」
騎兵。明らかにつよい。これもうユルゲーってくらい。
「すごい簡単な競馬が」
冷静な目の蒼華さん。困難君の手綱を握る唯一の制止手段。なおSっ気あり。というかドSじゃないの?
「競馬とか言わないんだよ賭けしてるわけじゃないんだから」
「オッズは1.0002くらいかな」
わいわいきゃいきゃいとした探偵事務所メンバーである。柊君は現在パシらされていていない。困難君は多分まだSWATと追いかけっこしてるんじゃないかな。
「祭り事は嫌いじゃない まあ、最善を尽くすよ、頑張ろうライダー」
「速度だけでよろしいのですか、でしたらお役に立てないことも…」
思いの外しっかりした、良い反応。 良い反応、なんだけど。
「……あの、本当にそれでいいんですか?」
二人の乗っているのは巨大なザリガニであった。地味な生臭さとかがちょっと伝わってくる。触覚もうねうね動く。うん、これはザリガニだ。真っ赤な甲殻が太陽に当たってきらめいていた。
「生物のほうが好都合なので問題はないと」
冷静な口調でライダーが応える。そう言う問題でもない気もするが。
「でもほら、馬とか」
困惑した表情で海瀬が続ける。ザリガニを用意した覚えはないので持参品なのだ。
「水陸進むことでも見越されているのかと…………すぐ慣れます、すぐ……魚類でないですし」
明らかに思い詰めてるんだけど。大丈夫この子。
「交配し間違えたキメラの一体でも紛れ込んだのか……まあ、ライダーが良ければ私は何でも構わないが 」
良さそうじゃないです。ないです。
(明らかに良さそうじゃないんですけどねぇ)
と海瀬も困惑顔だ。
ちなみに。
「お腹すいたのう……」
そんなことを呟いたバーサーカーちゃんは哀れ、「食用なわけがないでしょ」とシオンに一蹴されてしまっていた。
「えーっと、次はランサー陣営のようです。 ぽるしぇ!!!! かっこいい!!!!」
「あれでレースするんですかねあそこ」
ででーんと立つは白いポルシェ。かっこいい。けど確かに鵺野の言うとおり。レース向けではなさそうだが……?
まあ人力車やらザリガニがいる時点でそこら辺は言及すべき事ではないだろう。
「頑張りましょう、マスター。私に出来ることは少なそうですが……」
少し自信なさげ、というか恐縮したように言うのは参加者のランサー。真名を関羽。あの大英雄関羽である。ちなみにメシマズ。彼女のオムライスは紫色だったという。
「そうなのか?まぁ気楽にやったら良いんじゃないか?」
そう言って笑うのはそのマスター、シュトリヒ。参加者中一番のイケメンでありファンクラブもあるとか。因みにさっきのCMで言ってた金持ちのオーナーは此奴です。
最近ファンクラブは何者かの手によって潰されたみたいだが。いやぁ槍のかけらが残ってたらしいけど誰だろうねー。
「ところでランサーは爆死する運命らしいですけど」
青いのだけです。
「うーん、まぁその時はその時だな。なんとかなる。」
しかしこの語り口はなんか何とかなりそうな気がしてくるのがあれだ。勝者の貫禄というか何というか。
「自信満々ですね! ジャスコのためにガンバってください!
「おう、頑張るぞ!」
そうさわやかに締めて曰く。尺が押しているとの連絡を受けました。
「巻きで行けといわれました」
困り顔の海瀬ちゃん。
「ふぅむ、どうしよっか?」
ことりちゃんもちょっと思案顔です。
「……よし、とばそっかー」
「ですねー」
こうしてアーチャーセイバーの自己紹介ははぶられたのであった。え? キャスター? そんなのあったっけ?
*****準備が出来るまでキャスター好きへの焼き土下座タイム*****
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「さぁ、げーむすたーとなのです。その前にルール説明ことりさんよろしくっ!」
「はーい、コースは冬木市一週、ショートカットは自由だけど人に見つかった場合はスタートに戻ってもらうよ。瞬間移動等々は不可、監視カメラで見てるからねー」
マイクを握り平静な口調でそう告げる。ことりの後ろでは各陣営が準備をしているのだがとりあえず見ない。ツッコミは疲れる。助けてツッコミの神。
しかしいかんせん(以下略。
まあ実際ボケとはいかずともとんでものワンダーランドだったりするのでその選択は正しい。
さぁ、イカレたラインナップを紹介するぜ!
一番、人力車。二番、ポルシェ。三番、ザリガニ。四番、乗用車。五番、列車砲。六番、ライオン。ライオン!?
ちなみに本家と違い各自自分で車を準備していることを追記しておく。
「なんか捕食せんばかりにザリガニ睨んでるライオンがいるんですけど」
「うふふ、まだ食べちゃだめよ」
にっこりとした笑顔でライオンをなでるタイバーさん。セイバーのマスターでちょっとふくよか。動物大好きというか動物キチというか。
人間より動物が好きな人である。因みに甲殻類は例外の模様。
まだというか永遠にダメです。
「いえ、マスター。このザリガニはキメラの可能性があります。ライオンの健康に悪いかと」
生真面目に言う鎧の美女がセイバー。きりっとライオンにまたがる姿は騎士を思わせるような思わせないような。
ちなみに動物除け持ちなのでライオンさんめっちゃ嫌がってたりする。
まあシカタナイネ。というかザリガニよりマシというか本家よりマシである。
100円で動くおもちゃとかおもちゃとかおもちゃとか。
「はい、レース終わるまではだめですからねー、さて。まあ時間をおいても何なのでさっさと始めていきますよー!」
元気よく言ってチェッカーな旗をぱたぱたと動かす。
『さん!』
「のじゃ」
バーサーカーが力車に力を籠める。
『にー!』
「はい……最初から、本気で。いかせてもらいます」
静かな声でそうつぶやき、ライダーがザリガニの触角をひっぱる。
『いち!』
「行こうか……。アーチャー」
「あぁ、ライザよ。では行ってくれるな?」
「はい! 総統様の仰せのままに」
壮年の男性、そして少女。笑顔で列車砲の砲台に乗り込む女の子。
それぞれアーチャーのサーヴァントヒトラー、そのマスターライザ。それに心酔している実験動物ナンバー3。
「きゃああああああああっ!! ライザ様がんばってえええええ!!」
そしてネオナチス(別名ライザフリーク)一同。筆頭ニコラさん。ガスマスクがチャーミング。
実際頑張るのは実験ナンバー3ちゃんのようだけどね。
『ぜろーっ!!』
ばさり、チェックが一気に振り下ろされる。ここに火ぶたが切って落とされた。
「先手必勝! 総統様は永遠なりいいいいいいいいいいいい!!!」
どがらどしゃらどっすううううううん!!!
ものすごい音と煙を立てて砲弾。いや人間? が飛び出す。凄い勢いなうえに優勝候補筆頭のライダーの動きさえ一瞬止めた。
そのまますっ飛んで行き……ものの数秒で折り返し地点までたどり着く。
「凄いね…… もう負けることはない」
望遠鏡で眺めていたライザが感嘆の息を漏らす。
「いや、一つ問題点があってな」
こともげもなくヒトラーが一本指を立てる。
「?」
「折り返しからは徒歩だ」
「なんで迎えを行かせてあげなかったの……」
かくりと首を落とすライザ。しかしヒトラーは悠然と言ったところだ。
「下民共へのハンデだよ、戦争というのは圧倒的勝利でなければならないが、蹂躙では面白くない。彼奴を信じろ」
そんなことを言いつつ野菜スティックをかじるナイスミドル。
「でも……」
ライザのその目線はライダーへと向かっていた。
「主様、ご命令を」
「全力で行こう。この戦いは私たちが獲る」
「……御意」
そんなライダー陣営のやり取りのあと、一気に加速。スピードに乗って走り出すザリガニ。
先に走っていた乗用車とライオン、ポルシェと序に実験体ちゃんを追い抜きどこまでも。
「おお、速いな。世界一周だってできるんじゃないか?」
「はい、お望みならば」
「ふむ、では頼もうか」
後で――と続ける前にザリガニが急加速しだした。
「御意。少しだけ速度を上げます」
「いやライダー!?」
そのままコースアウト。まっすぐにまっすぐに飛んでいく(物理)。
『おおっとライダーチームコースアウト!? というかどこいくのー!?』
走る走る走る。飛ぶ。そして水平線に――
――消えた。もう姿はかけらも見えない。帰ってこれるのかなあの二人は……。
「お土産頼むわ」
「マカデミアンナッツを所望する」
アーチャー陣営が笑いをこらえながらそんなことを言っている。
「私シチリアの生魚」
「腐っちゃうんだよ」
蒼華とことりはなんかそんなのんきな会話を続けていた。そういう問題じゃないと思うんだがこういう議題で突っ込み担当な鵺野君は残念ながら出中だ。
あとライダーちゃんの弱点は生の魚介類なんだからやめてあげなさい。
『えーあー……オッズが荒れているのです』
実は賭博も行っていたらしい。確実な場所に賭けたはずの人々が阿鼻叫喚の騒ぎだ。
でもまあ、そんなこんなで戦いは続いていく。特に見せ場もなく、騎乗スキルを持ったセイバーが強いようだ。
「ライオン号ー、がんばってー」
「少し間の抜けた名前過ぎませんか……?」
「は????? 文句あるの???? 私のペットだしあなたは私のサーヴァントよ????」
「……はい、申し訳ありません」
「それにこの名前には理由があるの。勝者にはあやからないとね」
「勝者……?」
「あなたは気にしなくていいの」
……あんまりマスターとサーヴァントの仲はよろしくないらしい。ライオンは走るのに夢中で気づいてないけど。というかわざと気がつかないようにしてる節がある。
「ござるうううううう!」
その後ろで声上げて走るミニバン。ルーデルさん家の所有である。
「ライダーには負けますが。馬の扱いに比べたら車なんて容易いものです」
「お先〜」
『あ、アサシンさんが颯爽とポルシェに抜かれた。しかもシュトリヒさん手を振ってる。これはちょっとムカつきますね』
『まあミニバンとハイブリット車じゃ馬力が違うよねぇ』
「最下位でござるか……! しかしこのアサシン! 決して最後まで諦めませぬ!」
ごう、と目に炎を燃やして。ちなみに先ほどヘロヘロになった実験体ちゃん追い抜いたのでビリ2です。
もっと言うとライダー陣営はたぶん今日中にゴールできることはないと思うのでビリ3である。
そしてライオンVsポルシェという異種格闘技戦。格闘技?
割と肉薄したけどそこまで笑えることもなかったので割愛させていただこう。
『……あれ?』
送られてくる試合中継を見ながらことりが首をかしげる。
『どうしました? ことりさん』
『あのね海瀬ちゃん、バーサーカー陣営は?』
確かに先ほどからあの騒がしいのじゃろりの声が聞こえない。どこにいたってわかるレベルの賑やかさなのだが。
『最初の砲撃で吹っ飛んだりしましたかね……?』
『ああ、そうかも』
そう納得し、捜索に人を割こうと口を出したそのとき。
「嗚呼!」
「ふぅ、やっと出番ね」
たんっ、地を飛んでゴールに飛び出したのは。
『バーサーカー!?』
「この戦い、私たちの勝利よ」
ふぁさっ、と髪をかき上げ少しだけどや顔かますシオンさん。楽しそうで何よりです。
どうやらアーチャーの爆音に紛れ狂化し、一気に飛び。カメラの影を縫ってそのまま独走。一足先に到着、といった具合の模様。
さすがバサカ、バサカ汚い。いやどっちかというとバーサーカーって真正面から戦う系だと思うけど。
実際牛鬼ちゃんはそこそこあざとくて狡猾なだけで基本脳筋だ。たぶん今回もシオンの入れ知恵である。
そのままぱぁぁんっと華麗にゴールテープを切って。優勝はバーサーカーチームの手へと下った。
ふわわわわわわわっ。
ゴールテープを切った彼女らへと舞い降りる聖杯……
見た目は象印ポッド。しかし黄金に輝いている。
≪そなたの望みを聞こう……≫
「「こいつ直接脳内に/なのじゃ」」
イメージボイスは美輪明宏でお願いします。
そんなアルセウスボイスは望みは何だと脳内でリフレイン。
わんわんわんわん。
「いや待て。五月蠅くてかなわん。ちょっと静かにしてほしいのじゃ」
≪それがそなたの望みか…… 叶えようではないか、願望機の名にかけ――≫
「のじゃっ」
「あっ」
すっ。と速やかに声は消えて。
速やかな沈黙。
――こうして。なんだったんだろうという虚しい気持ちの中第零次カーレースは幕を閉じたのであった。
ちなみにマカデミアナッツがアーチャー陣営のもとに律義に届けられたのは別の話。
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