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既存モデルの素材違い、色違いが目立った2024年のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ。コレはロレックスも同様だったが、さすがに完成度は比類ない。人気はなさそうだが、個人的な推しは外装を18Kゴールドに改めた「ディープシー」だ。ただでさえデカくて重いディープシーを金に改めた本作は激重。しかし、現時点でコレを真似できるメーカーはなさそうだ。

ロレックスの偉さはブレスレットにある
 職業柄、ロレックスの何がすごいんですかと聞かれる。美点はいろいろある。例えばケース。硬い904Lを鍛造するのは従来に同じ。しかし近年は表面を剥き、面の歪みがいっそう小さくなった。ムーブメントも比類ない。Cal.31形を魔改造したCal.32系は、今なお現行の自動巻きとしては最高峰のひとつだろう。高効率の自動巻きと、量産メーカーらしからぬ凝った巻き上げヒゲは、ロレックスに共通する美点だ。

 もっとも、デイデイトやセレブレーションダイアルなどをのぞけば、文字盤の仕上げは10年前、ひょっとしたら20年前から変わっていない。また、一部モデルの回転ベゼルも、機構として凝りすぎていて、あまり筆者の好みではない。こういう弱点はあるものの、時計としての「抜け」の少なさがロレックスのすごみと思っている。

 2000年以降とそれ以前で大きく変わったのは、ブレスレットだろう。筆者の乏しい私見を言うと、優れたブレスレットなくして、ロレックスの成功はなかったのではないか。いろんなメーカーがロレックスをベンチマークにブレスレットの開発に取り組むが、今なお及ばない。



 現行のロレックスは、すべてブレスレットの出来がいい。ただ、強いて言うと、貴金属系のブレスレットはいっそう際立っている。ちなみに貴金属のブレスレットを作るのは決して難しくない。問題は、重い時計に対応させること、そして長期間、ブレスレットにガタを出さないことなのである。この2点で、ロレックスは際立っている。過去はさておき、今はそうだ。

 ロレックスの貴金属ブレスが優れる理由は、その構造にある。コマとコマを連結する芯を支えるチューブを、わざわざセラミックスで作っているのだ。その結果、重い時計に合わせても、長期間使ってもブレスレットは傷みにくい。ちなみに筆者の知る限りで言うと、過去の金無垢ロレックスは、ケースの内部をごっそりくり抜いていた。多くのメーカーはコストダウンのためにそれを行うが、ロレックスの場合は、時計部分とブレスレット部分の重量バランスを取るため、と聞いたことがある。ロレックスという会社は、それぐらい、時計のバランスを昔から考えていたわけだ。

ディープシーの金無垢は、重さ以外に見るところがある
 対して現行のロレックス。ブレスレットに工夫を凝らした結果、重いヘッドとブレスレットにも対応できるようになった。その帰結が、プラチナのデイデイトであり、2024年の金無垢「ディープシー」というわけだ。セラミックスのチューブを埋め込むというテクニックを、ロレックス以外が持っていない以上、他のメーカーは、こういった重量級の金無垢時計は作れないのである。単なる素材違いに思えるが、よくよく他のメーカーに真似できるモノではない。

クロノス日本版で再三述べているように、今のロレックスは、フラッシュフィットとケースのクリアランスを極端に詰めている。これを18Kゴールドでも実現したところに、ロレックスの凄みがある。
 ロレックスが公表した金無垢ディープシーの重さは322g。意外にも軽い理由は、耐圧性能を高めるためのリングロックの素材を変えたためだろう。そもそものリングロックは窒化処理した強化スティール。対して本作では、ハイテクセラミックスである。セラミックスのほうが硬いから採用は当然と思えるが、高い圧力を加えるとセラミックスは割れてしまう。ロレックスはどうやってこの課題をクリアしたのだろうか? 併せて、エスケープバルブもチタンに置き換えられた。

新型ディープシーの裏蓋は、既存モデルに同じくRLXチタン製。これも、重さのバランスを取るための試みか。
 さて結論だ。レギュラーモデルのディープシーは、重さが約220g。大して本作は322gと約1.5倍に増えた。しかし、腕に置いた印象を言うと、十分重いが、決して使えない重さではなかった。時計部分とブレスレット部分の重さのバランスが良いためだろう。両者のバランス取りに十分な注意を払ってきたロレックスの、これはひとつの完成形ではないか。全面金無垢だけあって本作のお値段は安くない。しかし、この唯一無二の豪奢さを思うと、気分を上げたい人にはむしろお安いのではないか。もっとも、無理を承知で言うと、事前のフィッティングは必須です。

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