「名探偵都の事件簿 〜Ep.313〜」
あん時はマジで助かった!あのままじゃ、アイツもどこ行っちまってたかわかったもんじゃねぇし……。
いえいえ!見つけられてよかったです!
そうだ。今度何かおごってやるよ。礼っつぅことでさ。
あっ、大それたものは受け取れませんよ。探偵にとっては、仕事それ自体が最高の報酬ですからね!
そうかぁ?でも、義理は通すもんだろ。
んじゃ、これやるよ。さっきコンビニで買いすぎたし、たいしたモンでもねぇからな。
これは……あんぱん!そういうことでしたら、喜んでいただきます!
あ、都ちゃん……。お疲れさまです。先日は、お世話になりました。
お、二人とも知り合いか?
はい!この前のLIVEでユニットを組んだんです!
それで……あの、都ちゃんと拓海さんは、何のお話を……?
あー……ちょっと前に、ウチの猫がいなくなっちまったんだよ。
張り紙とか出したけど、最終的には都が見つけてくれたんだよな。たいしたもんだよ。
そうだったんですか……。都ちゃんは探偵ですもんね。もしかしたら、あのお話も、都ちゃんなら……。
おやおや?何か事件のお話ですか?
えっと……事件というよりは、迷い猫の捜索依頼……です。
よく行くギャラリーのオーナーさんが飼っている猫なんですが……少し目を離したすきに、出て行ってしまったようで……
まだ帰ってこないと、オーナーさんも落ち込んでいて……少しでもお役に立てればと考えていたところだったんです。
それは立派な事件です!そして探偵の出番ですよ!
絶望の淵にいる人に助けを求められたなら、探偵たるもの、危険を顧みるべきではありません!
……つっても、迷い猫探しなら、んな危険なこともねぇと思うけど。
拓海さん……今のはおそらく、都ちゃんの好きな探偵ドラマの台詞かと……。
ホシは現場に戻るというもの!さっそく、そのオーナーさんに話を聞きましょう!
猫はホシじゃねぇだろ……って、都のヤツ、もう走り出してんな。
ま、待ってください……!私が案内するので……っ!
オーナー:あの子はずっと室内飼いで、外に出したこともありません。いつも家でのんびりしている子だったのに……。
オーナー:急に飛び出していっちゃって、どこに行ったのかしら……。
ふむふむ……それは心配ですね。でもご安心を!私が必ず見つけてみせます!
それで、現場はどこでしょうか?
えっと、どこから出ていったのかを聞きたいそうです……。
オーナー:そうね……。きっと、庭に面した掃き出し窓からだわ。……私が、ちゃんと閉めてなかったの……。
なるほどなるほど……。ホシは現場に戻るとは言いますが、その形跡も無し、と。
庭を調べてんのか?飛び出してったっつぅなら、ここで見つかるわけねぇと思うけどよォ……。
……猫の探し方としては、間違いではないかと。
実際、迷い猫のうちの何割かは、自力で帰宅したり、実は庭にいたというパターンが多いようですから……。
へぇ、都のやつ、ちゃんと探偵やってんだな!
頼子さん、拓海さん、調査は終わりました!そろそろ次の場所へ向かいましょう!
にゃー……にゃ〜ご!にゃ! ……あっ! 猫さん、待ってください!
……なぁ、都って猫と会話できんのか?っつぅかそもそも、猫に聞き込みって有効なのか?
猫と会話……はできてなさそうですね……ですが、猫は特有のネットワークを持つといいますから……
迷い猫を探している人間がいる、ということは、猫にも通じているんじゃないでしょうか……?
???:おや、都ちゃんじゃないかね。
???:おー、相変わらず元気な子だねぇ。
和菓子屋の奥さん!パン屋さんの奥さんもご一緒なんですね!
和菓子屋の奥さん:そうなの、ランチの帰りでね。そういえば、この前はおつかい、ありがとね。いつも助かってるのよ。
いえ、探偵として、みなさんのお役に立つのは当然です!
パン屋の奥さん:そうそう、都ちゃんの好きなあんぱん、今日も早くに売切れちゃったのよ。ごめんねぇ。
大丈夫ですよ! あんぱんはまた次の機会に買いますし、人気の謎は目下推理中ですが、必ず突き止めてみせます!
へぇ、そんなに美味いあんぱんがあるのか。
ええ。あとは……おそらく、都ちゃんがこの前、テレビで牛乳に合うと紹介していたからだと思います……。
……それ、本人は気づいてねぇのか?
みたいですね……。
それに、今日はあんぱんを買いに来たわけじゃなくてですね、迷い猫を探しているんです!
みなさん、この辺で猫ちゃんをみませんでしたか?グレーで、上品な雰囲気のしゅっとした猫なんですが。
パン屋の奥さん:うーん、見てないねぇ……。
和菓子屋の奥さん:あ、でも、この前コンビニで猫がいっぱい集まってるのを見たわ。ほら、あの河原近くのことよ。
むむ……では、ホシもそこに潜伏している可能性が高いですね……。
ですが……その場所は、商店街からも徒歩で20分はかかりますし……
オーナーの家からは遠すぎるのでは……?
たしかにな。ずっと室内飼いされてた猫なんだろ?そんなに遠くに行くもんか?
しかし、行ってみる価値はありますよ!先入観を捨て去るのが、推理の第一歩ですから!
猫たち:にゃ〜。んにゃーお。ぶにゃー・ごろごろ……。
本当に、猫がたくさんいますね……。
っつぅか、いすぎだろ。これじゃあ、あの中に探している猫がいるかもわかんねぇぞ……。
いいえ、あの子は必ず、この集会に参加している……。私の推理に間違いはありません!
でも……どうしましょう?近づいたら逃げてしまいそうですよ……?
ふっふっふ…… ここで、探偵七つ道具の出番ですよ!
じゃじゃん!ボイスレコーダー!
ん? 七つ……?都が今持ってんのは、虫眼鏡とポシェット、双眼鏡にペンセットに__。
手帳とボイスチェンジャーと工具セットですね……。完全に七は超えています……。
そ、それはですね…… 七つというのは名称に過ぎませんから!中身も日替わりですから!
コホン……ここには、あらかじめ飼い主さんの声を録音させていただきました!
ポチッ
オーナーの声:『セバスティアーノちゃん、帰っておいで?』
あの猫、そんな洒落た名前だったのかよ……!
さあ、出てきてください……。おふくろさんが家で待っていますよ……!
都ちゃん、それは探偵というより、交渉人かと……。
いやぁ、この台詞もいつか言おうと思っててですね……。
ってオイ、都、頼子、猫がよって来てんぞ……!
セバスティアーノ:にゃー……?
見つけましたよ、セバスティアーノさん!無事、ホシは確保です!
オーナー:本当にありがとうございました……! セバスチャンも、無事に帰ってきてくれて……。
オーナー:これは、ささやかだけど、私からのお礼です。お菓子、みんなで食べてね。
ありがとうございます!
オーナー:それにしても、この子は外に出たこともなかったのに……急にどうしたのかしら……?
そのことですが……私の推理としては、友達が欲しかったのが脱走の動機ではないかと!
きっと、掃き出し窓から庭を通る猫たちを見て、一緒に遊びたかったんだと思います。
生垣にちょうど、猫が通れるくらいの隙間がありましたから!
へぇ、思うままに動いたようでいて、ちゃんと都なりに考えてたんだな。
情報を足で稼ぎ、先入観にとらわれず、人……ではなく、猫の想いに寄り添って操作する……。
そして何より、周囲が協力したくなる空気にさせる……都ちゃんには、名探偵の素質ありですね。
ありがとうございます!真実はいつも、名探偵都のもの! ババ―ン!!
都のナレーション:「こうして、名探偵都の事件簿〜Ep.313〜は幕を閉じた。」
都のナレーション:「けれど、解決の先には、また新たな事件が待っている!名探偵都のの活躍に、終わりなど存在しないのだ……!」
END
最新コメント