美濃・大垣十万石の藩主、戸田釆女の下屋敷に連れ去られた大工の弥吉が帰ってこないと、女房が主水(藤田まこと)に泣きついた。
釆女の息女・小夜姫(渡辺とく子)の慰み者にされて殺されたのだ。煩悩に身をやく小夜姫は、尼寺に妙心尼(三島ゆり子)を訪れた帰り、鉄(山崎努)を見染めた。
棚からぼた餅とよろこぶ鉄。が、寅の日、殺しのセリに姫がかけられ、鉄が仕置する破目になった。
鉄「はい。皆さん長らくお待たせいたしました。江戸一番の人気男。念仏の鉄と申します。巷々に女あり。ああ念仏の鉄。花の鉄。ははは。ねえ。皆さんどしたの? どしたの、おじさん?」
主水「馬鹿野郎! 気持ち悪いんだよ! てめえは!」
●今までに存在した歴代必殺の「情念」的なエピソードの集大成的な回。(実際、以後において同様のテーマの回は存在しない)
●構成的には、同じ脚本&監督コンビによるあんたこの女の性をどう思うの発展版といえる。
●また「女陰」の暗喩との説も強い、「空井戸」を使うシチュエーションは必殺仕置人9話利用する奴される奴を彷彿させる。
●特に必殺仕置人9話との対比でポイントなのが、鉄の描写で、以前は被害者に感情移入していた彼が、本話ではあくまで相手に対して一歩「引いて」いるのが重要。
●その最たる部分といえるのが志乃への扱いで、意図の有無に関係なく情報を引き出した、彼女を巳代松に仕置されるままに任すところもポイント。
●ある意味では、鉄のキャラクターの変化を示す格好の比較ともいえる。
●あまりにも痛快強烈なラストシーンだが、シナリオでのラストは、鉄が声を掛けられても店に入らず通り過ぎてしまうという物だったらしく、それが正反対になったのは、演出段階か、それとも鉄を演じる山崎氏の発想による物か。
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