ハイライト
1.「真咲、俺がラップとは何かを教えてやるぜ」 → ファンブル → 「ただの駄洒落ではないか!」 → orz
2.寝るときの格好をしています → チョイス → パンツ一丁 → ドアガチャー → 雪が降っています → orz
3.それでは、青年はお花をくれました → 片手ふさがっちゃう… → パンツに挿します! → 言いくるめ → >これはお洒落なアクセだ!<
4.青年が一緒に来てくれない… → 真咲、青年に向けてセッションしよう! → 灰崎のラップ・スペシャル! → 真咲のバイオリン・クリティカル! → これメジャーデビューじゃね?
名前の由来
言わずとしれた、Dragon Ashから。
というか、他にラッパーを知らないという方が正しい。
ボツになった名前
来場 慈武郎(くれば じぶろう)
日本のラッパー二大巨頭、KREVAとZeebraを掛け合わせてみた。
結果、「じぶろうはねぇよな、じぶろうは」ということで没に。
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あの一夜の夢とも思える奇妙な出来事の後。
灰崎はまるで人が違ったかのように、ラップに向き合っていた。
知り合いのDJに楽曲を提供してもらっては、納得いくまで宅録を繰り返す日々。
鬼気迫る形相でマイカフォンに言葉をぶつける彼の視線の先には、写真立てがあった。
その写真立てには、何やら音楽雑誌の切り抜きが飾られていた。
写っているのは御園真咲。
音楽界の名門一家に生まれたサラブレッドにして、そのバイオリンの腕は、弱冠二十歳にして
クラシック好きの間では知らない者はいないほどの若手のホープである。
同じ音楽を志す者とはいえ、灰崎と真咲は目指すべき方向性も、育ってきた環境も、
そして残念なことにアーティストとしてのレベルまでも天と地の差があった。
あの一夜限りのセッションで、灰崎はレベルの違いを嫌というほど思い知った。
真咲の奏でるバイオリンの調べには、「魂」がこもっていた。
時に優雅に、時に激しく、弦を動かすたびに聴く者の心を揺さぶった。
二人で成し遂げたあの極上のセッションだって、結局は未熟な灰崎を
真咲が彼のステージまで引っ張り上げた結果にすぎない。
それは灰崎自身がよくわかっていた。
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思えば、ラップを始めたきっかけといえば「格好よかったから」だった。
自分なりに道を極めるつもりでいたのだが、どこかファッション感覚だったのかもしれない。
しかし真咲は違った。家柄、期待、周囲からのプレッシャー。
それら全てを呑み込むだけの、自らの腕への自信と、音楽に対する真摯な姿勢があった。
自らの全てを音楽に費やしてきた彼は、敬虔な宗教家にも似た雰囲気を纏っていた。
自分に足りなかったのはこれだったのか。灰崎は冷や水を浴びせられたかのような心地がした。
そんな中での真咲からの援助の申し出は、灰崎にはかえって屈辱に思えた。
その屈辱を晴らすには、いつか対等な立場になって彼の前に立つしかない。
その思いを胸に、灰崎はバイトを辞め、素麺を啜りながらラップバトルに出場しまくった。
結果は連戦連勝。
それもそのはず。奇妙な部屋から脱出する際の、ヨモツヘグイにも似た経験。
あの心臓をギュッと握りつぶされるような感覚に比べれば、いくら目の前の粋がった相手が
どうDisってこようと、何も感じなかった。むしろ滑稽にすら思えるほどだ。
「起こしてみろよSANチェック、似合ってないぜそのタータンチェック、そんな奴俺が、斬!滅す!」
灰崎は来る日も来る日も、相手を罵倒し続けた。
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バトル結果が呼び水となり、周囲からの評価も徐々に高まっていった。
そんな中リリースした自主製作アルバム「パンツに咲く花のように」が、その独自の世界観と
賛否両論の芸術性が音楽関係者の間で話題となり、あれよあれよとメジャーデビューが決定した。
安アパートを引き払う準備をしながら、灰崎は花束を手に呟いた。
「……待たせたな、真咲」
その数年後、1MC・1バイオリニストという異色のデュオが、
日本のミュージックシーンを揺るがすほどの大ブームを巻き起こすのだが、
今の灰崎はそれを知るよしもない。
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