最終更新:ID:qCL4aePBnQ 2015年02月03日(火) 20:31:02履歴
探索者達が奇妙な世界で出会った1人の少女。
彼女を捕えるのはこの世で最も邪悪で狡猾な邪神。
救いを求める声を絞り出せなかったのは止む無き事か。
それでも声なき彼女の声を聞いた1人の人間の勇気が道を開く。
そして少女は。
家へと還る。
彼女を捕えるのはこの世で最も邪悪で狡猾な邪神。
救いを求める声を絞り出せなかったのは止む無き事か。
それでも声なき彼女の声を聞いた1人の人間の勇気が道を開く。
そして少女は。
家へと還る。
PCより
あれから俺は・・・いや、俺達は、長いこと行方不明になっていた望さんの事情(あの夢の世界のことは何とか黒上さんとごまかした)を警察に言ってから、警察署で一晩明かし、翌日に兄がいる家に戻った。
「うへぇー、やっと終わった〜って!何してんだ軽武!」
家の前の石壁軽武がいて、りんごを齧っていた。
「へへへ・・・りんごうまいな・・・。佃・・・食うかい?」
「齧りかけはいらねぇぞw」
一応ジョークで言ってみる。「バカ、ちゃんと新品だぜ」といった軽武は新品のりんごを俺にくれた。
「んじゃ、もらうか」そういってありがたくもらうことにする。一口齧ってから話を切り出す。
「しっかし、最初は思わなかったぜ。お前が犯罪者とかな」
そう、あの世界から黒上さんより一足先に戻ってきた俺達が少し語りあった内容で未だに一番驚いていることだ。
「まぁな・・・逃げる生活も慣れたけどな・・・早く足を休ませたいぜ・・・」
「へへ、もう休ませるばしょあるじゃねぇかよ」
俺は、犯罪者でも軽武がいい奴ってことは知っているから、軽武の事情を知ったときに彼の居場所をつくろう。そう思った。俺は、自分の家を親指で指す。
「そういや、そうだったな・・・俺が何者であろうと・・・受け入れるんだっけか」
事情っつっても、そんな深くまでは知らない。だけど、こいつはいいやつだ。少し間を空けて、軽武は呟いた。
「極真空手は・・・取得すると危険物扱いだ・・・倒れて、動けなくなるまで殴るからな」
「ははは!キレた兄貴といい勝負だぜ!!」
「おい、なんか言ったか?」
「ぶっ!!」
「っ!?」
驚きのあまり、軽武はバックステップでいきなり現れた兄貴、鉄也から離れる。兄貴は殺気が駄々漏れなんだよなー。
「ど・・・どうも・・・」
警戒してる軽武に兄貴が近寄る。俺からは伝えておいたんだがなぁ・・・。犯罪者であることは一応伏せてあるけど。
「ん、お前がうちで世話になる軽武か」
俺の位置からじゃ、兄貴の表情が見えなかったが、兄貴の声色が穏やかになる。
「よろしくな。俺は高也の兄、鉄也だ」
まあ、兄貴は顔が怖いが、優しいからな。軽武の警戒も溶けたようだ。
「っ・・・、よろしく。こう見えても犯罪者だけどな」
あ、こいつさらっと・・・。・・・ま、大丈夫か。りんご齧って握手してるし。
「んなこた関係ねぇ。高也の数少ない友だ。それに、居場所のない奴は俺としてもほっておけねぇタチでな」
「ふっ・・・これからよろしく頼むぜ・・・?」
これから軽武も加わって、楽しいことになりそうだと思うと、楽しみになってきて、
「ったりめーだよ!!」
と、会話に乱入する。そろそろ会話に参加したかったんだ。すると、兄貴がこっちむいて睨んでくる。
「おいてめ!人が話そうとしているときに!」
「うるせえ!!俺を蚊帳の外にしようとしたくせに!」
「やるか?」
「あ”ぁ”!?」
兄貴が挑発するんなら、乗らない手はない!そのまま喧嘩という名の手合わせをする。兄貴の右ストレートに警戒しつつ、よける。そのまま、組み付きに持っていく。そのなかで兄貴に少し違和感があったが、気にせずにそのまま・・・!!
「うおおおおおおおおお!!俺の新技をとくと見やがれ!!ギガッ!!イィンパクトオオオオオオオォォォ!!!!」
そうして兄貴を投げ飛ばすが、投げた先に軽武がいた。
「あ、・・・やべっ」
そう呟いた瞬間、軽武が飛んでった兄貴にあのキックをかます。飛んでった勢いと、キックで兄貴の意識は一瞬で刈り取られた。地面にぐったりと倒れる兄貴を見て、軽武は焦る。
「はぁ・・・はぁ・・・やべっ・・・」
「ま、兄貴は何回かくたばりかけているけどよ、今の蹴りでもしなねえから安心しろ☆」
・・・これはけっこうマジだったりする。頭から血ぃ出そうが、手当てした次の日から普通に組み手をやるぐらいだからな。まあ、とりあえず兄貴を肩に担いで家に入る。軽武は少し呆然としているっぽい。
「お前も来いよ〜」
「あぁ・・・お邪魔する・・・っす」
ん?今日から一緒に暮らすのにお邪魔しますは違和感あるなぁ。っと、軽武は気付いているのか?
「ふぅ〜ん、中はこうなってんだな・・・」
あ、気付いてねぇわ。
「おーい、なんか忘れてねぇか?」
「っ・・・・?」
「今日からお前はどうなるんだ?」
さあ、気付け!
「ぇ・・・・?」
・・・。(´・ω・`)まあ、気を取り直して、
「俺達の家族だ。だから、“ただいま”でいいんだよ!」
ちょいといい感じに言ってみる。軽武は驚いた表情になって、戸惑っている。
「っ・・・た・・・・ただいま・・・?ただいま・・・」
やっぱこっちのほうがしっくりくるわ。新しい家族ができたし、嬉しいから軽武の頭を兄貴を担いでないほうの手でわしゃわしゃとする。
「や・・・やめろ・・・・!!!?」
あ〜、楽しいわこれ・・・って、なんで軽武はそんなに俺のほう指差して怯えてんだ?
「ア・・・アニキ・・・・目覚めたぞ」
「ん?((「オラァ!!」
俺の背中に兄貴からの重い一撃が入る。器官の近くだったので、息ができない。
「うぶおおおおおおお!!あのクソ兄貴ぃぃっ・・・!!」
しばらく悶えていると、軽武が「もう行ったぜ、アニキ」と告げる。何とか痛みも引いて、立ち上がる。
「っ・・・まぁ、面白そうだな。いい遊び相手がいたからな・・・」
おいぃ、その不敵な笑みは。マジで何の笑みだ・・・
「どういう意味かな・・・まぁ『楽しくなりそう』だぜ。いい住処見つけてくれてあんがとさん」
そういって、軽武はりんごを齧る。時間はそろそろ夕方に差し掛かっている。
「もうすぐ飯だけどそんな食って大丈夫か?」
軽武のりんごをひったくる。齧りかけだが・・・。
「飯か・・・ここ最近りんごしか食ってねぇな・・・。この町の指名手配だからな・・・飯すらまともに食えねぇ。・・・いいのか?」
「いいんだってばよ。家族ならな!」
「っ・・・そうだな・・・んじゃあ頼むぜ」
おう!と俺は返事をした後、昼間警察署で分かれた黒上さんと望さんのことを思い出す。
「・・・・・・あの二人も無事、帰れたんだよな・・・」
「あいつらは、大丈夫だろ。だって・・・俺の友達も・・・そうやって帰ってきたんだからな」
・・・そうか。前にもあんな経験してるのか。すげぇな。
「よし、飯でも作るか!」
「そうだなっ!よーし!!軽武!手ぇ切んなよ!」
気を取り直して、キッチンに行って料理をしようとしたら、兄貴が来た。片手には電話の子機を持っている。電話を受け取って、ちょいとキッチンから離れる。
電話機の向こうからマネージャーの声がする。そのこえは、少し苛立っているようにも焦っているようにも聞こえた。
「たかやん、今日、生放送試合あるんだけどー・・・。」
「あ”−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−!!!!」
完全に忘れてた!!事件のことで頭一杯だったから、仕事のこと忘れてた!!急いで自分の部屋に戻って仕事道具取りに行って、ああっと忘れてた!
「兄貴!!軽武と飯食っててくれ!!俺、今日生放送試合あるんだった!!」
「あぁ」
その会話のあと、マネージャーの車が来て、俺は急いで車に乗る。
――――――――
夜、生放送試合でスカイアーとして、マスクをかぶり、リングに上がる。テンションの高いアナウンスと共に、会場が熱気に包まれる。
ゴングが鳴る。まずはスカイアロック!!これで動きを・・・って、相手つえぇ!!組み付きが外された!!
「ぐっ!」
まさかの先制をとられた!!いや、まだだ!!俺は、すぐに体制を整えて、アタックする・・・がこれも避けられる。あ、ちょとまて、コーナーに上って・・・こっちにダイブしてきやがった!!相手に押しつぶされ、額をぶつける。頭の中がかき乱される感覚に陥る。いや、気をしっかりもて!今日は、新技を、初めて名前をつけてもらった技を出すんだ!!
「ぬおおおおおお!!」
俺は立ち上がって、相手に立ち向かう。何度だって、何度だって!
攻防を繰り返す中、勝機が見える!疲れている相手の脇が大きく広がり、組み付きやすくなる。そこに突っ込んで、相手の胴を捕らえる。
「うおおおおおおおおおおおおお!!いくぜええええええええええええええ!!」
持ち上げて、・・・これで、
「ギガァ、イィンパクトオオオオオオオオオぉりゃああああああああああああ!!!!」
終わりだあああああ!!投げた相手に、さらに地に伏せるように抑える。カウントが全て終わり、俺は勝った!!
試合のあと、インタビューで「最後の投げ技は自分で考えたんですか?」と聞かれた。だから、俺はこう答えた。
「技の形は俺だけど、この技の名前は、俺の新しい家族が考えてくれた、初めて人に名前をつけてもらったかっこいい技だ!!」
この言葉に偽りはない。本当に嬉しかったから。あの夢の世界での出来事と共に忘れられない、一番の技だ。
―――――――――――――
家に帰ってきたら、兄貴と軽武が出迎えてくれた。
「激戦だったな」
兄貴が最初に感想を言う。
「まあな。ダイブされたときは痛かったわーww」
いや、ホントに痛かった。額のシップを触る。・・・あ、これ、コブできてるわ。軽武が「まぁ・・・勝ったみてぇだし」と呟く。二人で見ていたのか。嬉しいぜ。
「あ、そうだ!どうだった!?俺の短時間で仕上げた新・ギガインパクト!!」
「まあ、まず家はいれ」
それもそうだな。兄貴に家に入るよう促される。軽武が思いついたように言う。
「ふっ・・・あの技はな・・・『画竜点睛』と名づけよう」
「お!?また新しくできた!?画竜点睛!!いいっ!!それすっごくいいなっ!!」
兄貴が納得したように、うなずく。
「そうだな。今回から軽武に技名をつけてもらおう」
「ふぁっ!?」
軽武は心底驚いたようだ。なんにせよ、俺は大歓迎だがな!センスいいし!!
「あ、インタビューのお前、いつも以上にガキらしかったぞ」
兄貴が呆れた表情で言ってくる。
「うぇ?そうか?」
「・・・よっぽど嬉しかったんだな。あのころとは大違いだ」
「はぁ!?」
あのころって、またそのはなしかよ!!嬉しかったって何が!?てか、ガキって!
「なんだよもー・・・軽武!そんな俺ガキっぽかったか!?」
軽武に振るも、「あぁ」の返事で肯定された・・・。兄貴に高校の成績で勝ってるのになんて呟いたら殴られた。そのあと、兄貴は表情を曇らせ、軽武にさきに風呂に入るように言った。軽武は少し戸惑いつつも、風呂へ向かった。
兄貴が俺に向き直る。
「さて、何があったかは聞かないぜ」
「へっへーん、俺に友人ができたことがそんなに珍しいか?」
兄貴の顔が俺のはっちゃけ発言を無視して真面目になっている。
「ああ、昔のお前は弱かった。だからその傷が今でも残っている」
昔の嫌な記憶が脳裏をよぎる。自分を恨んでいた時期の、兄貴に助けられていてばっかだったあの日々を。心なしか右頬がうずいた。俺は無意識に右頬の傷をなでる。
「・・・へ。またそれかよ」
「だから((「皆まで言うなよ。これのせいで一時期腐ったこともあった。正直、友人なんて全部嘘だったんだ。」
そう、何回裏切られたこともあったか。・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・。
「けどよ、昨日の出来事で、俺に友人ができた。そして、信頼できる家族が増えた。あと((「強くなったな。高也」
兄貴が微笑む。優しい、成長を見守る兄の顔だ。まあ、俺は今までどおり、そんな兄貴にも容赦しないけどな。
「・・・へっ。俺、近々兄貴を越すかもな」
ドヤ顔でそういった瞬間、兄貴のほうから何かが切れる音がした。満面の笑みでこっちを見る。
「そうかそうか。明日から楽しみだ・・・」
あ、組み手が一段とハードになったな。
―――
風呂にも入って、自分の部屋に戻ろうとした俺は、ふと、軽武の部屋の前で立ち止まる。
「・・・軽武、おきているか?」
部屋の奥から軽武の声が聞こえる。
「・・・?起きてるぜ〜・・・?」
いたずら心をばねに、軽武の部屋の中に突撃しつつ、クッションを投げる。
「うぇい!?」
「ぎゃははははははは!!歓迎の挨拶だこのやろうめー!!」
ボスボス、と手に持ったクッションで手加減のパンチングをする。不意打ちをくらった軽武は弱いが抵抗してくる。
「おいっ!やめろよ!!」
面白い、子供のころにも一度は味わっていたはずの興奮が爆発している。それは、この短期間で嬉しいことがありすぎたせいか。
しばらく落ち着いて、軽武のベッドで二人並んで横に座る。俺は、まだ言ってなかったことをここで言う。
「・・・ありがとうな」
軽武は「んぁ?」と間の抜けた声で返事をする。俺は話を続ける。
「俺さ、昔は・・・・・・まあ、今もだけど、兄貴ほど強くなくてさ、寂しがりなんだ。おかげで弱虫言われて、挙句の果てにはこれだ」
右頬のでかい傷を軽武に見せると、彼は息をのんだ。隠してはなかったんだけどな。
「さみしくて、昨日の事件でも本当は怖かった。だけど、一緒に戦って、技の名前考えてくれて、嬉しかった」
語っているうちに目の奥から、喉の奥からなにかが込み上げてきた。
「軽武が俺の家に来てくれたときすげえ嬉しかった。・・・・・・。」
あ、ダメだ。泣く。女々しいと思うが、これが俺の本性なんだ。しばらく自分の目元をおさえてうつむいておく。隣から「佃・・・」と俺を心配してんのか、軽武が声をかけてくれる。いつまでも泣いているわけにはいかねぇから、「心配すんな」という代わりにクッションでボスッと軽武を小突いた。そのまま、部屋の外まで駆け抜けて、背中を向けたまま
「にひひー、ま、明日は早い。なんせ、5時に皆で組み手だからな!!お休み!!」
ドアをそのまま閉めて、逃げるように自分の部屋に向かった。
明日から、また、色々と始まるんだ!今度は兄貴の試合だろ?あ、明日マスクの修正して・・・。なんだか、にやにやしてしまう。
「はっははぁー!!さあて、忙しくなるz((「やかましい!!はよねろ馬鹿が!!」
はしゃいでいたら兄貴から右ストレートをもらっちまった。・・・まあ、これも、家族だから。だな。
俺はもっと強くなる!
俺は自分の部屋に戻って、ベッドに入って、おとなしく寝た。
PLより
あれから俺は・・・いや、俺達は、長いこと行方不明になっていた望さんの事情(あの夢の世界のことは何とか黒上さんとごまかした)を警察に言ってから、警察署で一晩明かし、翌日に兄がいる家に戻った。
「うへぇー、やっと終わった〜って!何してんだ軽武!」
家の前の石壁軽武がいて、りんごを齧っていた。
「へへへ・・・りんごうまいな・・・。佃・・・食うかい?」
「齧りかけはいらねぇぞw」
一応ジョークで言ってみる。「バカ、ちゃんと新品だぜ」といった軽武は新品のりんごを俺にくれた。
「んじゃ、もらうか」そういってありがたくもらうことにする。一口齧ってから話を切り出す。
「しっかし、最初は思わなかったぜ。お前が犯罪者とかな」
そう、あの世界から黒上さんより一足先に戻ってきた俺達が少し語りあった内容で未だに一番驚いていることだ。
「まぁな・・・逃げる生活も慣れたけどな・・・早く足を休ませたいぜ・・・」
「へへ、もう休ませるばしょあるじゃねぇかよ」
俺は、犯罪者でも軽武がいい奴ってことは知っているから、軽武の事情を知ったときに彼の居場所をつくろう。そう思った。俺は、自分の家を親指で指す。
「そういや、そうだったな・・・俺が何者であろうと・・・受け入れるんだっけか」
事情っつっても、そんな深くまでは知らない。だけど、こいつはいいやつだ。少し間を空けて、軽武は呟いた。
「極真空手は・・・取得すると危険物扱いだ・・・倒れて、動けなくなるまで殴るからな」
「ははは!キレた兄貴といい勝負だぜ!!」
「おい、なんか言ったか?」
「ぶっ!!」
「っ!?」
驚きのあまり、軽武はバックステップでいきなり現れた兄貴、鉄也から離れる。兄貴は殺気が駄々漏れなんだよなー。
「ど・・・どうも・・・」
警戒してる軽武に兄貴が近寄る。俺からは伝えておいたんだがなぁ・・・。犯罪者であることは一応伏せてあるけど。
「ん、お前がうちで世話になる軽武か」
俺の位置からじゃ、兄貴の表情が見えなかったが、兄貴の声色が穏やかになる。
「よろしくな。俺は高也の兄、鉄也だ」
まあ、兄貴は顔が怖いが、優しいからな。軽武の警戒も溶けたようだ。
「っ・・・、よろしく。こう見えても犯罪者だけどな」
あ、こいつさらっと・・・。・・・ま、大丈夫か。りんご齧って握手してるし。
「んなこた関係ねぇ。高也の数少ない友だ。それに、居場所のない奴は俺としてもほっておけねぇタチでな」
「ふっ・・・これからよろしく頼むぜ・・・?」
これから軽武も加わって、楽しいことになりそうだと思うと、楽しみになってきて、
「ったりめーだよ!!」
と、会話に乱入する。そろそろ会話に参加したかったんだ。すると、兄貴がこっちむいて睨んでくる。
「おいてめ!人が話そうとしているときに!」
「うるせえ!!俺を蚊帳の外にしようとしたくせに!」
「やるか?」
「あ”ぁ”!?」
兄貴が挑発するんなら、乗らない手はない!そのまま喧嘩という名の手合わせをする。兄貴の右ストレートに警戒しつつ、よける。そのまま、組み付きに持っていく。そのなかで兄貴に少し違和感があったが、気にせずにそのまま・・・!!
「うおおおおおおおおお!!俺の新技をとくと見やがれ!!ギガッ!!イィンパクトオオオオオオオォォォ!!!!」
そうして兄貴を投げ飛ばすが、投げた先に軽武がいた。
「あ、・・・やべっ」
そう呟いた瞬間、軽武が飛んでった兄貴にあのキックをかます。飛んでった勢いと、キックで兄貴の意識は一瞬で刈り取られた。地面にぐったりと倒れる兄貴を見て、軽武は焦る。
「はぁ・・・はぁ・・・やべっ・・・」
「ま、兄貴は何回かくたばりかけているけどよ、今の蹴りでもしなねえから安心しろ☆」
・・・これはけっこうマジだったりする。頭から血ぃ出そうが、手当てした次の日から普通に組み手をやるぐらいだからな。まあ、とりあえず兄貴を肩に担いで家に入る。軽武は少し呆然としているっぽい。
「お前も来いよ〜」
「あぁ・・・お邪魔する・・・っす」
ん?今日から一緒に暮らすのにお邪魔しますは違和感あるなぁ。っと、軽武は気付いているのか?
「ふぅ〜ん、中はこうなってんだな・・・」
あ、気付いてねぇわ。
「おーい、なんか忘れてねぇか?」
「っ・・・・?」
「今日からお前はどうなるんだ?」
さあ、気付け!
「ぇ・・・・?」
・・・。(´・ω・`)まあ、気を取り直して、
「俺達の家族だ。だから、“ただいま”でいいんだよ!」
ちょいといい感じに言ってみる。軽武は驚いた表情になって、戸惑っている。
「っ・・・た・・・・ただいま・・・?ただいま・・・」
やっぱこっちのほうがしっくりくるわ。新しい家族ができたし、嬉しいから軽武の頭を兄貴を担いでないほうの手でわしゃわしゃとする。
「や・・・やめろ・・・・!!!?」
あ〜、楽しいわこれ・・・って、なんで軽武はそんなに俺のほう指差して怯えてんだ?
「ア・・・アニキ・・・・目覚めたぞ」
「ん?((「オラァ!!」
俺の背中に兄貴からの重い一撃が入る。器官の近くだったので、息ができない。
「うぶおおおおおおお!!あのクソ兄貴ぃぃっ・・・!!」
しばらく悶えていると、軽武が「もう行ったぜ、アニキ」と告げる。何とか痛みも引いて、立ち上がる。
「っ・・・まぁ、面白そうだな。いい遊び相手がいたからな・・・」
おいぃ、その不敵な笑みは。マジで何の笑みだ・・・
「どういう意味かな・・・まぁ『楽しくなりそう』だぜ。いい住処見つけてくれてあんがとさん」
そういって、軽武はりんごを齧る。時間はそろそろ夕方に差し掛かっている。
「もうすぐ飯だけどそんな食って大丈夫か?」
軽武のりんごをひったくる。齧りかけだが・・・。
「飯か・・・ここ最近りんごしか食ってねぇな・・・。この町の指名手配だからな・・・飯すらまともに食えねぇ。・・・いいのか?」
「いいんだってばよ。家族ならな!」
「っ・・・そうだな・・・んじゃあ頼むぜ」
おう!と俺は返事をした後、昼間警察署で分かれた黒上さんと望さんのことを思い出す。
「・・・・・・あの二人も無事、帰れたんだよな・・・」
「あいつらは、大丈夫だろ。だって・・・俺の友達も・・・そうやって帰ってきたんだからな」
・・・そうか。前にもあんな経験してるのか。すげぇな。
「よし、飯でも作るか!」
「そうだなっ!よーし!!軽武!手ぇ切んなよ!」
気を取り直して、キッチンに行って料理をしようとしたら、兄貴が来た。片手には電話の子機を持っている。電話を受け取って、ちょいとキッチンから離れる。
電話機の向こうからマネージャーの声がする。そのこえは、少し苛立っているようにも焦っているようにも聞こえた。
「たかやん、今日、生放送試合あるんだけどー・・・。」
「あ”−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−!!!!」
完全に忘れてた!!事件のことで頭一杯だったから、仕事のこと忘れてた!!急いで自分の部屋に戻って仕事道具取りに行って、ああっと忘れてた!
「兄貴!!軽武と飯食っててくれ!!俺、今日生放送試合あるんだった!!」
「あぁ」
その会話のあと、マネージャーの車が来て、俺は急いで車に乗る。
――――――――
夜、生放送試合でスカイアーとして、マスクをかぶり、リングに上がる。テンションの高いアナウンスと共に、会場が熱気に包まれる。
ゴングが鳴る。まずはスカイアロック!!これで動きを・・・って、相手つえぇ!!組み付きが外された!!
「ぐっ!」
まさかの先制をとられた!!いや、まだだ!!俺は、すぐに体制を整えて、アタックする・・・がこれも避けられる。あ、ちょとまて、コーナーに上って・・・こっちにダイブしてきやがった!!相手に押しつぶされ、額をぶつける。頭の中がかき乱される感覚に陥る。いや、気をしっかりもて!今日は、新技を、初めて名前をつけてもらった技を出すんだ!!
「ぬおおおおおお!!」
俺は立ち上がって、相手に立ち向かう。何度だって、何度だって!
攻防を繰り返す中、勝機が見える!疲れている相手の脇が大きく広がり、組み付きやすくなる。そこに突っ込んで、相手の胴を捕らえる。
「うおおおおおおおおおおおおお!!いくぜええええええええええええええ!!」
持ち上げて、・・・これで、
「ギガァ、イィンパクトオオオオオオオオオぉりゃああああああああああああ!!!!」
終わりだあああああ!!投げた相手に、さらに地に伏せるように抑える。カウントが全て終わり、俺は勝った!!
試合のあと、インタビューで「最後の投げ技は自分で考えたんですか?」と聞かれた。だから、俺はこう答えた。
「技の形は俺だけど、この技の名前は、俺の新しい家族が考えてくれた、初めて人に名前をつけてもらったかっこいい技だ!!」
この言葉に偽りはない。本当に嬉しかったから。あの夢の世界での出来事と共に忘れられない、一番の技だ。
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家に帰ってきたら、兄貴と軽武が出迎えてくれた。
「激戦だったな」
兄貴が最初に感想を言う。
「まあな。ダイブされたときは痛かったわーww」
いや、ホントに痛かった。額のシップを触る。・・・あ、これ、コブできてるわ。軽武が「まぁ・・・勝ったみてぇだし」と呟く。二人で見ていたのか。嬉しいぜ。
「あ、そうだ!どうだった!?俺の短時間で仕上げた新・ギガインパクト!!」
「まあ、まず家はいれ」
それもそうだな。兄貴に家に入るよう促される。軽武が思いついたように言う。
「ふっ・・・あの技はな・・・『画竜点睛』と名づけよう」
「お!?また新しくできた!?画竜点睛!!いいっ!!それすっごくいいなっ!!」
兄貴が納得したように、うなずく。
「そうだな。今回から軽武に技名をつけてもらおう」
「ふぁっ!?」
軽武は心底驚いたようだ。なんにせよ、俺は大歓迎だがな!センスいいし!!
「あ、インタビューのお前、いつも以上にガキらしかったぞ」
兄貴が呆れた表情で言ってくる。
「うぇ?そうか?」
「・・・よっぽど嬉しかったんだな。あのころとは大違いだ」
「はぁ!?」
あのころって、またそのはなしかよ!!嬉しかったって何が!?てか、ガキって!
「なんだよもー・・・軽武!そんな俺ガキっぽかったか!?」
軽武に振るも、「あぁ」の返事で肯定された・・・。兄貴に高校の成績で勝ってるのになんて呟いたら殴られた。そのあと、兄貴は表情を曇らせ、軽武にさきに風呂に入るように言った。軽武は少し戸惑いつつも、風呂へ向かった。
兄貴が俺に向き直る。
「さて、何があったかは聞かないぜ」
「へっへーん、俺に友人ができたことがそんなに珍しいか?」
兄貴の顔が俺のはっちゃけ発言を無視して真面目になっている。
「ああ、昔のお前は弱かった。だからその傷が今でも残っている」
昔の嫌な記憶が脳裏をよぎる。自分を恨んでいた時期の、兄貴に助けられていてばっかだったあの日々を。心なしか右頬がうずいた。俺は無意識に右頬の傷をなでる。
「・・・へ。またそれかよ」
「だから((「皆まで言うなよ。これのせいで一時期腐ったこともあった。正直、友人なんて全部嘘だったんだ。」
そう、何回裏切られたこともあったか。・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・。
「けどよ、昨日の出来事で、俺に友人ができた。そして、信頼できる家族が増えた。あと((「強くなったな。高也」
兄貴が微笑む。優しい、成長を見守る兄の顔だ。まあ、俺は今までどおり、そんな兄貴にも容赦しないけどな。
「・・・へっ。俺、近々兄貴を越すかもな」
ドヤ顔でそういった瞬間、兄貴のほうから何かが切れる音がした。満面の笑みでこっちを見る。
「そうかそうか。明日から楽しみだ・・・」
あ、組み手が一段とハードになったな。
―――
風呂にも入って、自分の部屋に戻ろうとした俺は、ふと、軽武の部屋の前で立ち止まる。
「・・・軽武、おきているか?」
部屋の奥から軽武の声が聞こえる。
「・・・?起きてるぜ〜・・・?」
いたずら心をばねに、軽武の部屋の中に突撃しつつ、クッションを投げる。
「うぇい!?」
「ぎゃははははははは!!歓迎の挨拶だこのやろうめー!!」
ボスボス、と手に持ったクッションで手加減のパンチングをする。不意打ちをくらった軽武は弱いが抵抗してくる。
「おいっ!やめろよ!!」
面白い、子供のころにも一度は味わっていたはずの興奮が爆発している。それは、この短期間で嬉しいことがありすぎたせいか。
しばらく落ち着いて、軽武のベッドで二人並んで横に座る。俺は、まだ言ってなかったことをここで言う。
「・・・ありがとうな」
軽武は「んぁ?」と間の抜けた声で返事をする。俺は話を続ける。
「俺さ、昔は・・・・・・まあ、今もだけど、兄貴ほど強くなくてさ、寂しがりなんだ。おかげで弱虫言われて、挙句の果てにはこれだ」
右頬のでかい傷を軽武に見せると、彼は息をのんだ。隠してはなかったんだけどな。
「さみしくて、昨日の事件でも本当は怖かった。だけど、一緒に戦って、技の名前考えてくれて、嬉しかった」
語っているうちに目の奥から、喉の奥からなにかが込み上げてきた。
「軽武が俺の家に来てくれたときすげえ嬉しかった。・・・・・・。」
あ、ダメだ。泣く。女々しいと思うが、これが俺の本性なんだ。しばらく自分の目元をおさえてうつむいておく。隣から「佃・・・」と俺を心配してんのか、軽武が声をかけてくれる。いつまでも泣いているわけにはいかねぇから、「心配すんな」という代わりにクッションでボスッと軽武を小突いた。そのまま、部屋の外まで駆け抜けて、背中を向けたまま
「にひひー、ま、明日は早い。なんせ、5時に皆で組み手だからな!!お休み!!」
ドアをそのまま閉めて、逃げるように自分の部屋に向かった。
明日から、また、色々と始まるんだ!今度は兄貴の試合だろ?あ、明日マスクの修正して・・・。なんだか、にやにやしてしまう。
「はっははぁー!!さあて、忙しくなるz((「やかましい!!はよねろ馬鹿が!!」
はしゃいでいたら兄貴から右ストレートをもらっちまった。・・・まあ、これも、家族だから。だな。
俺はもっと強くなる!
俺は自分の部屋に戻って、ベッドに入って、おとなしく寝た。
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