夢路 後日談 KP:nuit
最終更新：ID:Z2ilyc2S4A 2016年01月23日(土) 09:18:45履歴
あらすじ 
探索者たちは富士樹海散策ツアーの最中に姿を消した尭彦という少年と茅目草蝶子という少女を探しに美作崇と名乗る少年と共に洞窟へとはいった
洞窟の一点に穴が開き探索者たちは遥か昔に滅び去った一族の村を訪れる
終らない日々と繰り返される殺戮に満ちた村を歩き民と心を交わした探索者たちは最後の最後にようやっと尭彦と蝶子を見つける
探索者たちは折り重なった悪意をはねのけ見事に民の魂を開放し二人の神に力を取り戻させた。
現世に戻った探索者たちはフロリバンダの人々と連絡先を交換したり食事をとったりするだろう
神様二人はきっとまた何処かで会えるだろう。
人間の持つ諦めない意志の力で探索者たちは彼らを救う事が出来たのだ。
TrueEND：夢路
洞窟の一点に穴が開き探索者たちは遥か昔に滅び去った一族の村を訪れる
終らない日々と繰り返される殺戮に満ちた村を歩き民と心を交わした探索者たちは最後の最後にようやっと尭彦と蝶子を見つける
探索者たちは折り重なった悪意をはねのけ見事に民の魂を開放し二人の神に力を取り戻させた。
現世に戻った探索者たちはフロリバンダの人々と連絡先を交換したり食事をとったりするだろう
神様二人はきっとまた何処かで会えるだろう。
人間の持つ諦めない意志の力で探索者たちは彼らを救う事が出来たのだ。
TrueEND：夢路
探索者の後日談
蒔田 優樹 / ゆりき
PCより
PLより
ある日の職場
僕は勤務先の高校にいた。
「優樹く〜ん、遊びに来たよ〜」
今日も、生徒たちが遊びに来たようだ。
「もう……せめて優樹先生って呼んでって言ったでしょう？」
「だって〜、先生って身長じゃないんだも〜ん。しょうがないじゃん？」
「ハァ……これでも頑張ってるのになぁ」
二人の妙に人間臭い神様との不思議な経験、それからもう、2週間が経っていた。
すべてが終わった後、サイラス達と一緒にワイワイと美味しいものを食べに行った。
「そういえば〜、この間旅行行ったんだって〜？」
「この間って……、2週間前の話ね。うん、ちょっと富士山の樹海にね」
「え〜、樹海！？あそこって自殺の宝庫とかじゃなかったっけ？」
「もう……行ったことないならそんなこと言っちゃダメだよ。行けばわかるけど、森も洞窟もすっごく綺麗だったよ」
「え〜、そうなの？」
「そうだよ。森林浴っていうのかな？空気も綺麗だったし、洞窟も神秘的で楽しかったよ」
「へぇ〜、そうなんだぁ。そこまで言うなら行ってみたいなぁ」
「この辺からならそこまで遠いって程でもないしね。ツアーもあるからそこに参加するのもいいかもね」
「うーん、おとーさんに頼んでみようかな〜」
「……今度のテストで頑張ればお願いもしやすいんじゃない？」
「うーん、でもなぁ……」
「またこの部屋で勉強会やってもいいし、その時は私も教えてあげるからね」
「わ〜い、やった〜！」
帰ってきてからも、サイラス達とは連絡を取り合っている。
今まで海外旅行には縁がなかったけど、今回の旅行で彼らとの縁が出来た。
……生徒たちに勉強を教えるついでに、僕も英会話の勉強をしようかな。
「じゃあ……そこまで行きたいなら連れて行ってあげようか？」
「えー！？ホント！？」
「テストで頑張って、ご家族の許可が出たら、みんなを連れて行ってあげるよ」
「「「やったー！」」」
……流れで、またあの樹海に行くことになったみたい。
僕も、もう一度行っておきたかったんだけどね。
「……今頃二人はどうしてるのかなぁ」
「えっ、なになに〜？」
「ふふっ、テスト範囲の勉強しておかないと、って言ったんだよ」
「え〜、本当に頼っちゃうよ〜」
帰ってきてからはずっと平和だ。不思議なことなんて起こってない。でも……。
少し、期待しちゃってるのは確かかな。
「優樹く〜ん、遊びに来たよ〜」
今日も、生徒たちが遊びに来たようだ。
「もう……せめて優樹先生って呼んでって言ったでしょう？」
「だって〜、先生って身長じゃないんだも〜ん。しょうがないじゃん？」
「ハァ……これでも頑張ってるのになぁ」
二人の妙に人間臭い神様との不思議な経験、それからもう、2週間が経っていた。
すべてが終わった後、サイラス達と一緒にワイワイと美味しいものを食べに行った。
「そういえば〜、この間旅行行ったんだって〜？」
「この間って……、2週間前の話ね。うん、ちょっと富士山の樹海にね」
「え〜、樹海！？あそこって自殺の宝庫とかじゃなかったっけ？」
「もう……行ったことないならそんなこと言っちゃダメだよ。行けばわかるけど、森も洞窟もすっごく綺麗だったよ」
「え〜、そうなの？」
「そうだよ。森林浴っていうのかな？空気も綺麗だったし、洞窟も神秘的で楽しかったよ」
「へぇ〜、そうなんだぁ。そこまで言うなら行ってみたいなぁ」
「この辺からならそこまで遠いって程でもないしね。ツアーもあるからそこに参加するのもいいかもね」
「うーん、おとーさんに頼んでみようかな〜」
「……今度のテストで頑張ればお願いもしやすいんじゃない？」
「うーん、でもなぁ……」
「またこの部屋で勉強会やってもいいし、その時は私も教えてあげるからね」
「わ〜い、やった〜！」
帰ってきてからも、サイラス達とは連絡を取り合っている。
今まで海外旅行には縁がなかったけど、今回の旅行で彼らとの縁が出来た。
……生徒たちに勉強を教えるついでに、僕も英会話の勉強をしようかな。
「じゃあ……そこまで行きたいなら連れて行ってあげようか？」
「えー！？ホント！？」
「テストで頑張って、ご家族の許可が出たら、みんなを連れて行ってあげるよ」
「「「やったー！」」」
……流れで、またあの樹海に行くことになったみたい。
僕も、もう一度行っておきたかったんだけどね。
「……今頃二人はどうしてるのかなぁ」
「えっ、なになに〜？」
「ふふっ、テスト範囲の勉強しておかないと、って言ったんだよ」
「え〜、本当に頼っちゃうよ〜」
帰ってきてからはずっと平和だ。不思議なことなんて起こってない。でも……。
少し、期待しちゃってるのは確かかな。
お疲れ様でしたぁあああああ！
KP・PLの皆様、本当にお疲れ様でした。
みなさんのおかげで、今回のトゥルーENDに辿りつけました。ありがとうございます。
nuitさんの卓は、まだ卓参加が一桁の時に参加したマユリ様のバッドENDから始まりました。その時、かなりのショックを受けたことを覚えています。
しかし、とてもいいシナリオだったので、魔改造悪霊の家・春つ方と参加してきました。
魔改造悪霊の家は難易度の低いものだったので除くとして、高難易度の春つ方もあと一歩のところでノーマルENDという結果でした。
なので、今回は本当にトゥルーENDに辿り着くことが出来てよかったです。
みなさん、本当にありがとうございました。いつか、また別の卓でご一緒できましたら幸いです。
みなさんのおかげで、今回のトゥルーENDに辿りつけました。ありがとうございます。
nuitさんの卓は、まだ卓参加が一桁の時に参加したマユリ様のバッドENDから始まりました。その時、かなりのショックを受けたことを覚えています。
しかし、とてもいいシナリオだったので、魔改造悪霊の家・春つ方と参加してきました。
魔改造悪霊の家は難易度の低いものだったので除くとして、高難易度の春つ方もあと一歩のところでノーマルENDという結果でした。
なので、今回は本当にトゥルーENDに辿り着くことが出来てよかったです。
みなさん、本当にありがとうございました。いつか、また別の卓でご一緒できましたら幸いです。
穂積 千秋 / amirin@
PCより
PLより
彼女の冒険譚
「お疲れ様でした〜！」
そう言ってお天気お姉さん「穂積千秋」はスタジオを後にした。
控え室に戻る途中、誰かに呼び止められ足を止める。
「穂積さん、お疲れ様です。」
彼女は確か、この番組のスタイリストだ。
呼び止められた千秋はにっこり笑いながら、軽く会釈する。
「お疲れ様です、いつもセットありがとうございます。」
「いえいえ〜、それが仕事ですからね！あ、そういえばこの間のツアーどうでした？」
その言葉にふと、先日の日帰りツアーが頭を過ぎる。
幼馴染であり、姉弟のような存在のあの子達と行った「青木ヶ原樹海散策ツアー」。
そこで色んな人と出会い、村人たちの思いを聞き、そして...みんなで帰って来た。
今頃、彼らはどうしているだろうか....そんな思考も目の前のスタイリストによって引き戻された。
「...穂積さん？どうかしましたか？」
きょとんとしている彼女に千秋は慌てて返事を返す。
「あ、いいえ。何でもないです。ちょっとボ〜ッとしちゃって。」
「最近は働き詰めでしたもんね。あのツアーで余計疲れちゃいましたか？」
心配そうなスタイリストに彼女は首を横に振る。
「いいえ、―」
―余計疲れた？とんでもない。―
「―とても...楽しいツアーでしたよ。」
そう言って千秋はふんわりと笑う。
その顔は満足気な子供の様で、思い出を懐かしむ老人の様だったと後にスタイリストは語る。
その後スタイリストと別れ、再び控え室へと足を進める。
控え室に着くと思い出したように、LINEを確認する。
文面を目で追いながら、千秋はまた微笑む。
どうやら祖国アメリカへ帰った彼らも元気そうだ。
あの村で出会った人たちも...元気にしてるかしら？
スマホを仕舞った千秋は、童話に思いを馳せるかのように虚空を見つめる。
その目は宛ら絵本を読んでもらっている子供のようだ。
「さて、次は何処に行こうかしら。」
彼女の内に秘められた冒険心は、とどまる事を知らないようだ。
そう言ってお天気お姉さん「穂積千秋」はスタジオを後にした。
控え室に戻る途中、誰かに呼び止められ足を止める。
「穂積さん、お疲れ様です。」
彼女は確か、この番組のスタイリストだ。
呼び止められた千秋はにっこり笑いながら、軽く会釈する。
「お疲れ様です、いつもセットありがとうございます。」
「いえいえ〜、それが仕事ですからね！あ、そういえばこの間のツアーどうでした？」
その言葉にふと、先日の日帰りツアーが頭を過ぎる。
幼馴染であり、姉弟のような存在のあの子達と行った「青木ヶ原樹海散策ツアー」。
そこで色んな人と出会い、村人たちの思いを聞き、そして...みんなで帰って来た。
今頃、彼らはどうしているだろうか....そんな思考も目の前のスタイリストによって引き戻された。
「...穂積さん？どうかしましたか？」
きょとんとしている彼女に千秋は慌てて返事を返す。
「あ、いいえ。何でもないです。ちょっとボ〜ッとしちゃって。」
「最近は働き詰めでしたもんね。あのツアーで余計疲れちゃいましたか？」
心配そうなスタイリストに彼女は首を横に振る。
「いいえ、―」
―余計疲れた？とんでもない。―
「―とても...楽しいツアーでしたよ。」
そう言って千秋はふんわりと笑う。
その顔は満足気な子供の様で、思い出を懐かしむ老人の様だったと後にスタイリストは語る。
その後スタイリストと別れ、再び控え室へと足を進める。
控え室に着くと思い出したように、LINEを確認する。
文面を目で追いながら、千秋はまた微笑む。
どうやら祖国アメリカへ帰った彼らも元気そうだ。
あの村で出会った人たちも...元気にしてるかしら？
スマホを仕舞った千秋は、童話に思いを馳せるかのように虚空を見つめる。
その目は宛ら絵本を読んでもらっている子供のようだ。
「さて、次は何処に行こうかしら。」
彼女の内に秘められた冒険心は、とどまる事を知らないようだ。
お疲れ様でした
初の後日談だと張り切ったらこんな字数に...！？
でも、詰め込みたい事は詰め込めたので後悔はありません。
無事にトゥルーENDへ迎えて晴れ晴れとした気持ちです。
これも皆さんの素晴らしいRPと推理、そしてこのような素晴らしいシナリオと卓を用意して頂いたKP様のおかげです。
最後の緊張感...今も忘れられません。
では皆さん、運があったら次回も一緒の卓を囲める事を祈ります。
でも、詰め込みたい事は詰め込めたので後悔はありません。
無事にトゥルーENDへ迎えて晴れ晴れとした気持ちです。
これも皆さんの素晴らしいRPと推理、そしてこのような素晴らしいシナリオと卓を用意して頂いたKP様のおかげです。
最後の緊張感...今も忘れられません。
では皆さん、運があったら次回も一緒の卓を囲める事を祈ります。
高崎 凜奈 / いつみ
PCより
PLより
夏の終わりの蚤の市
八月の末。
午前と午後がバトンタッチしたばかりのまだ暑苦しい蚤の市を、夏の終わり特有の澄んだ風が縫うようにふきぬける。
立ち並ぶ露店の主たちが、首筋に浮き出る玉のような汗をぬぐいながらひいひい言っているのを聞き流しながら、露店群の端に位置する小奇麗な露店にて、高崎凜奈は正規の古物商として骨董品を販売していた。並んでいる品物の数からするに、売り上げは上々といったところか。
そして、肝心の店主の方は暑さにバテて、保冷剤を頬にあてながら呻くだけの謎の生物と化していたが、周りの人間のフォローによってなんとか生きながらえているようだった。
不意にタープをはためかせた涼しい風に、彼女は顔を上げて反応する。「もう、夏も終わりか」。そんな風に思わせる何かが、その風にはあった。
そして彼女は、少し前に起こったあの不思議な出来事を思い返す。にぎやかで仲の良いアメリカ人の集団に、最後の最後であるべき場所に戻ることができた村の人々。そして、やけに人間臭くて、でもどこか神々しい神様二人。彼らは今何をしているのだろうか……？手元に光る翡翠の勾玉を日にかざしながら思い出を振り返っていると、その奇想天外さに思わず笑みがこぼれた。
「おっ！やっぱり来てたか。嬢ちゃん」
考え込んでいたせいで、客が来たのに気付けなかったらしい。ぼんやりしていた自分に喝を入れながら、急いで声のした方に顔を向けた。
彼女の視界に入ってきたのは、蚤の市に参加すると割と高確率で出会うなじみの客の一人。見慣れた顔に懐かしさを感じつつ、彼女は頭を下げる。
「ああ、あなたでしたか。お久しぶりですね」
「おう。前会ったのは……九州の方だったかな。……なあ、そんな事よりそれ、見せてもらっていいか？」
「あ、この勾玉ですか？……すみません。残念ですけど、これは私物なんですよ」
「おお、そいつはすまねぇ。……例の樹海見物の副産物かい？」
「ええ、まあ、そんなところです。……あなたが買っていきそうなものはもうほとんど売れてしまっていますが、よろしければ並べてあるものも見ていってください」
「言われなくてもそうするつもりよ。嬢ちゃんとこは掘り出しもんがいっぱいあっからな」
一連の会話が終わると、なじみの彼は一通り品物に目を通し、「確かに、いいもんはみんな持ってかれちまってるな」とだけ言って人ごみにふらふら消えていった。
客がいなくなって緊張する必要がなくなったので、彼女はまたあの不思議な出来事に思いをはせる。本当に、本当に不思議な一日だった。今となっては幻のように、夢のように、あったかなかったかすら曖昧になりそうだったけれど、勾玉と作成したLINEのグループによってかろうじて現実の出来事だったのだと実感させられる。
本当の、本当に、不思議で不可思議で奇想天外でスリル満点で、そしてやっぱり不思議な一日だった。
来年も、再来年も、そのまた次の年も。夏が来るたび、私は絶対に思い出すだろう。
あの夏の日は、本当に不思議な一日だった……と。
午前と午後がバトンタッチしたばかりのまだ暑苦しい蚤の市を、夏の終わり特有の澄んだ風が縫うようにふきぬける。
立ち並ぶ露店の主たちが、首筋に浮き出る玉のような汗をぬぐいながらひいひい言っているのを聞き流しながら、露店群の端に位置する小奇麗な露店にて、高崎凜奈は正規の古物商として骨董品を販売していた。並んでいる品物の数からするに、売り上げは上々といったところか。
そして、肝心の店主の方は暑さにバテて、保冷剤を頬にあてながら呻くだけの謎の生物と化していたが、周りの人間のフォローによってなんとか生きながらえているようだった。
不意にタープをはためかせた涼しい風に、彼女は顔を上げて反応する。「もう、夏も終わりか」。そんな風に思わせる何かが、その風にはあった。
そして彼女は、少し前に起こったあの不思議な出来事を思い返す。にぎやかで仲の良いアメリカ人の集団に、最後の最後であるべき場所に戻ることができた村の人々。そして、やけに人間臭くて、でもどこか神々しい神様二人。彼らは今何をしているのだろうか……？手元に光る翡翠の勾玉を日にかざしながら思い出を振り返っていると、その奇想天外さに思わず笑みがこぼれた。
「おっ！やっぱり来てたか。嬢ちゃん」
考え込んでいたせいで、客が来たのに気付けなかったらしい。ぼんやりしていた自分に喝を入れながら、急いで声のした方に顔を向けた。
彼女の視界に入ってきたのは、蚤の市に参加すると割と高確率で出会うなじみの客の一人。見慣れた顔に懐かしさを感じつつ、彼女は頭を下げる。
「ああ、あなたでしたか。お久しぶりですね」
「おう。前会ったのは……九州の方だったかな。……なあ、そんな事よりそれ、見せてもらっていいか？」
「あ、この勾玉ですか？……すみません。残念ですけど、これは私物なんですよ」
「おお、そいつはすまねぇ。……例の樹海見物の副産物かい？」
「ええ、まあ、そんなところです。……あなたが買っていきそうなものはもうほとんど売れてしまっていますが、よろしければ並べてあるものも見ていってください」
「言われなくてもそうするつもりよ。嬢ちゃんとこは掘り出しもんがいっぱいあっからな」
一連の会話が終わると、なじみの彼は一通り品物に目を通し、「確かに、いいもんはみんな持ってかれちまってるな」とだけ言って人ごみにふらふら消えていった。
客がいなくなって緊張する必要がなくなったので、彼女はまたあの不思議な出来事に思いをはせる。本当に、本当に不思議な一日だった。今となっては幻のように、夢のように、あったかなかったかすら曖昧になりそうだったけれど、勾玉と作成したLINEのグループによってかろうじて現実の出来事だったのだと実感させられる。
本当の、本当に、不思議で不可思議で奇想天外でスリル満点で、そしてやっぱり不思議な一日だった。
来年も、再来年も、そのまた次の年も。夏が来るたび、私は絶対に思い出すだろう。
あの夏の日は、本当に不思議な一日だった……と。
お疲れ様でした！
夢路、お疲れ様でした！！
初オンセでわたわたしていた私が無事トゥルーエンドを見ることができたのは、ひとえに全力でフォローしてくださったPL、KPのみなさんのおかげです！この場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました！！
そして、後日談長すぎ……。趣味兼将来の夢である、現在絶賛特訓中の執筆技能が間違った方に全力疾走してしまった結果です。最後まで読んでくれる人、いるんでしょうか……？
夢路は記念すべき初PL、初オンセ卓なので、私もPCと同じく一生忘れられない出来事、思い出のシナリオになりそうです。動画化も少女漫画も満面の笑みで待機してるんでがんばってください！手伝えることがあれば呼んで下さればすっとんでいきます。
えー、長くなりましたが、とにかくお疲れ様でした！そして、ありがとうございました！！いつかまた、機会があったらみなさんと一緒に卓を囲みたいです。そのときはまたよろしくお願いしますね！では！
初オンセでわたわたしていた私が無事トゥルーエンドを見ることができたのは、ひとえに全力でフォローしてくださったPL、KPのみなさんのおかげです！この場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました！！
そして、後日談長すぎ……。趣味兼将来の夢である、現在絶賛特訓中の執筆技能が間違った方に全力疾走してしまった結果です。最後まで読んでくれる人、いるんでしょうか……？
夢路は記念すべき初PL、初オンセ卓なので、私もPCと同じく一生忘れられない出来事、思い出のシナリオになりそうです。動画化も少女漫画も満面の笑みで待機してるんでがんばってください！手伝えることがあれば呼んで下さればすっとんでいきます。
えー、長くなりましたが、とにかくお疲れ様でした！そして、ありがとうございました！！いつかまた、機会があったらみなさんと一緒に卓を囲みたいです。そのときはまたよろしくお願いしますね！では！
千歳 雪子 / やこ
PCより
PLより
夏の思い出
放課後、久しぶりに同僚達と飲むことになり、いつもの居酒屋に入った。
生徒たちのことや期末テストの結果など、仕事の話でひとしきり盛り上がった頃。
ビール一杯で顔を真っ赤にした男性教諭が話を振ってきた。
「そういえば、千歳先生、富士樹海どうだったんですかー？」
「富士樹海？キャンプですか？」
隣にいた国語科担当の教師が身を乗り出してくる。
「富士樹海の洞窟に行くっていうツアーに参加してきたんですよ」
もうあのツアーから一週間になる。いつものメンバーで体験した不思議な出来事。
恐ろしいものではあったが、不思議と思い出すのは怖くない。
きっと、そこで出会った人たちとの思い出が暖かいせいだろう。
「千歳先生、顔が緩んでますよー？もしや、いい出会いでもありました？」
「あはは！そんなわけないじゃないですかぁ」
にやにやしている男性教諭の背中をバシッとたたく。
そういえば。5杯目になるビールを飲み干し、空になったジョッキをみて
この間言われたことを思い出す。
「私、そんなに酒ぐせ悪かったかしら」
同僚が苦笑した。
生徒たちのことや期末テストの結果など、仕事の話でひとしきり盛り上がった頃。
ビール一杯で顔を真っ赤にした男性教諭が話を振ってきた。
「そういえば、千歳先生、富士樹海どうだったんですかー？」
「富士樹海？キャンプですか？」
隣にいた国語科担当の教師が身を乗り出してくる。
「富士樹海の洞窟に行くっていうツアーに参加してきたんですよ」
もうあのツアーから一週間になる。いつものメンバーで体験した不思議な出来事。
恐ろしいものではあったが、不思議と思い出すのは怖くない。
きっと、そこで出会った人たちとの思い出が暖かいせいだろう。
「千歳先生、顔が緩んでますよー？もしや、いい出会いでもありました？」
「あはは！そんなわけないじゃないですかぁ」
にやにやしている男性教諭の背中をバシッとたたく。
そういえば。5杯目になるビールを飲み干し、空になったジョッキをみて
この間言われたことを思い出す。
「私、そんなに酒ぐせ悪かったかしら」
同僚が苦笑した。
お疲れ様でした！
KP、PLの皆様、お疲れ様でした！
至らない点がたくさんあったと思いますが、皆様の優しい言葉に何度も救われました。
人生初めての卓がこの「夢路」だったことは本当に幸せだと思っています。
本当にありがとうございます。
素敵な先輩方に教えていただいたことを忘れずに、経験を積んでいきたいなと思います。
もしまた同じ卓を囲む機会がありましたら、どうぞよろしくお願いします！
至らない点がたくさんあったと思いますが、皆様の優しい言葉に何度も救われました。
人生初めての卓がこの「夢路」だったことは本当に幸せだと思っています。
本当にありがとうございます。
素敵な先輩方に教えていただいたことを忘れずに、経験を積んでいきたいなと思います。
もしまた同じ卓を囲む機会がありましたら、どうぞよろしくお願いします！
泉 鏡花/ 九鬼
PCより
PLより
「ふう、今日は疲れました…」
誰に聞かせるわけでもなく泉鏡花は小さく独白した。
小説のための取材兼趣味をかねての遠出をしてみたが、一、二月前にあったことが忘れられずどうにも上の空だった気がしなくもない。
誰にも信じてもらえそうにない不思議な冒険。危険なことがたくさんあったが、思い出すと少し頬が上がる。
サイラスたちや美作さん……バカップル？さん達とも連絡を取り合っている。今度はみんなでサイラス達の方に遊びに行く予定だ。
トテトテと小さな歩幅で必死に歩く。もはや諦めも入ったがこの小さな体はコンプレックスだ。
幼馴染たちと一緒に過ごしているとそれは余計に感じる。まるで自分だけが取り残されているかのような嫌な気分だ。
秋姉、雪姉、凛姉はとても綺麗な人になった。背も高くかっこよく、綺麗ですらりとしてて。
優兄はよく子どもと間違われるといっていたが、何事にも冷静で、思慮深くて、誰からも頼られるすごい人だ。
内海……暁は一番変わったのだろうか、昔は私の後ろをずっと歩いている気弱な男の子だった。
転んだだけで泣いて、遊びで負けては泣いて、お菓子を落としては泣いて、いつも私が隣にいないとダメダメな奴だった。
そう……だった。いつの間にか暁には背を抜かれていた。手も大きくなり手を引いていたはずが引かれるようになり、気づくとずっと前を歩いていた
幼馴染以外中々仲良くなれなかった私と違って、いろいろな人に話しかけ打ち解けられる……認めたくはないがすごいやつになった
私は暁の事を目で追うことしかできなくなっていた。私たち以外にも仲のいい人たちがいて、暁はその中にいる。
暁はきっと私の知らない顔で笑っている。暁だけではない秋姉、雪姉、凛姉、優兄達だって私以外にも仲のいい人たちはたくさんいる。
でも、……私には彼女たちしかいない。他に何も持っていないのだ。
わかっているこれはただの醜い嫉妬だ。考え方も幼稚すぎて恥ずかしい、まるで子供だ。私はみんなで遊んでいた公園から一歩も外に出ていない。
「…………」
いや、違う。私にも一人友達ができた美好ちゃん。勇気を持ったすごい子だ
でも、はたして自分は美好ちゃんを友達と呼んでもいいのだろうか。
醜いと思った。美好ちゃんだけではない村々の住人たちの姿を見た時、恐れ、嫌悪の感情が浮かんだ。
焼けただれた皮膚、動きそうにもない四肢、だのにこちらに話しかけてくる。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
しかし彼らは話しかけてくるだけで、決してこちらに何かしてこようとはしてこなかった。
私は安心した。彼らがふれてこないことに安堵した。
触れたのは彼らじゃない暁からだった
「うん、大好きな人とはずっと一緒にいたいもんね」
躊躇などしていなかった。優しく笑った顔で暁は焼け焦げた小さな手を握った。
手に着いた乾ききらない血が暁の手についている。とっさに思ったことは時間のたった死体には細菌や病原菌が大量についているということ
我ながら呆れてしまうが、きっとそれは言い訳に過ぎない。暁に触ってほしくなかった。ただそれだけ。
いそいで手をぬぐおうとしたが断られてしまった。その時暁の顔は笑顔だったがあれは怒っていた。
今思えば千種君たちにこんなことをした者達への怒りだったのだろうが、まるで自分が叱られているようだった。
目が覚めそして恥じる。何が醜いいったい何が？彼らは涙を流していた。自分たちがひどい目に合っているのに誰かを思い涙していた。
醜いのは私だ……
一人の少女が震える足、こっちにくる
怖いのだ。何百年も誰も来なかった場所に知らない人間たち。もしかしたら炎と翼持った化物の仲間かもしれない。
きっと何度も傷つけられてたのだろう。骨の髄まで恐怖が浸透してるはずだ。
なのに、だというのに
「ど、何処から来た！」
勇気をもって私たちに話しかけてきた。誰にもできることではない……
気が付くと私は美好ちゃんを抱きしめていた。
彼女は自分が醜いことを恥じていたが、そんなことはない。むしろ美しく尊い
本当に醜いのは何も知らず嫉妬して、嫌悪して、恐怖している私のような人間だ。
……私にあなたの友達でいる資格はありますか？
「…は！」
いつの間にか知らない道まで来ていた。考え事をして歩いていたせいで普段曲がる道を通り過ぎたのだろう。
思考が現実に戻ってきたことで少しばかり冷静になる。自己嫌悪ここに極まれり。悪い方悪い方に考えが行ってしまった。
胸を押さえ大丈夫、大丈夫、大丈夫、胸の中で三回唱える。これは暁が言っていたよくわからないおまじないだ。絶対大丈夫の呪文だそうだ。
少し胸が楽になる。呪文のおかげか暁のおかげか、暁のおかげにするのはしゃくだから、呪文の効果に違いない。
…………暁
手をつないだのはいつ以来だろう。天使から逃げる時に手を繋いでくれた手を引いてくれた。不覚にも胸がはねた。
この気持ちは…だろうか？
いやいや、いやいや、いやいや、いやいや、違う断じて違う。
だってあいつだし泣き虫暁だし、そんなことはない。暁なんかと比べたらゴキブリの方がまだいい
いや、いやだけど、ゴキブリは嫌だけど。そう事じゃなくてなくて何が言いたいかというと
そんなんじゃないし。それなら優兄の方が断然言いに決まってる。優しいし大人の魅力もあるし話をよく聞いてくれるし。
眼中にないから、暁何て、本当の本当にないから、話聞かないしへらへらしてるしたまにふらっとどっかにいなくなるしデリカシーのかけらもないし
暁にはもっと、もっと…………もっとふさわしい女性がいるはずだ。
「はあ……」
知らない道を歩いていたせいですっかり迷子だ。ここはどこだろう。神社？
「嫉妬ト愛ト嫌悪ノ入リ混ジッタ匂イガスル」
私は見た
「ン？ヲォコレハ、御前サン、珍シイ勾玉ヲオ持チデ、何処カデ感ジタ事ノアル神気ダ」
なぜ気づかなかったのだろう。それはとても巨大だ
「マア、ソレハ置イテオクトシテ、愛憎ノ、陰ノ匂イガスル。私好ミダ」
暗い影の様だ。それは闇をはらんでいて少しの先も見通せない
「心ニ身ヲ任セロ。ヨリ堕チロ」
にやりとそれが笑う
「ソレデ相応シクナル」
黒蛇
「狂ヱ」
……
………
…………
……………
………………
「暁」
誰に聞かせるわけでもなく泉鏡花は小さく独白した。
小説のための取材兼趣味をかねての遠出をしてみたが、一、二月前にあったことが忘れられずどうにも上の空だった気がしなくもない。
誰にも信じてもらえそうにない不思議な冒険。危険なことがたくさんあったが、思い出すと少し頬が上がる。
サイラスたちや美作さん……バカップル？さん達とも連絡を取り合っている。今度はみんなでサイラス達の方に遊びに行く予定だ。
トテトテと小さな歩幅で必死に歩く。もはや諦めも入ったがこの小さな体はコンプレックスだ。
幼馴染たちと一緒に過ごしているとそれは余計に感じる。まるで自分だけが取り残されているかのような嫌な気分だ。
秋姉、雪姉、凛姉はとても綺麗な人になった。背も高くかっこよく、綺麗ですらりとしてて。
優兄はよく子どもと間違われるといっていたが、何事にも冷静で、思慮深くて、誰からも頼られるすごい人だ。
内海……暁は一番変わったのだろうか、昔は私の後ろをずっと歩いている気弱な男の子だった。
転んだだけで泣いて、遊びで負けては泣いて、お菓子を落としては泣いて、いつも私が隣にいないとダメダメな奴だった。
そう……だった。いつの間にか暁には背を抜かれていた。手も大きくなり手を引いていたはずが引かれるようになり、気づくとずっと前を歩いていた
幼馴染以外中々仲良くなれなかった私と違って、いろいろな人に話しかけ打ち解けられる……認めたくはないがすごいやつになった
私は暁の事を目で追うことしかできなくなっていた。私たち以外にも仲のいい人たちがいて、暁はその中にいる。
暁はきっと私の知らない顔で笑っている。暁だけではない秋姉、雪姉、凛姉、優兄達だって私以外にも仲のいい人たちはたくさんいる。
でも、……私には彼女たちしかいない。他に何も持っていないのだ。
わかっているこれはただの醜い嫉妬だ。考え方も幼稚すぎて恥ずかしい、まるで子供だ。私はみんなで遊んでいた公園から一歩も外に出ていない。
「…………」
いや、違う。私にも一人友達ができた美好ちゃん。勇気を持ったすごい子だ
でも、はたして自分は美好ちゃんを友達と呼んでもいいのだろうか。
醜いと思った。美好ちゃんだけではない村々の住人たちの姿を見た時、恐れ、嫌悪の感情が浮かんだ。
焼けただれた皮膚、動きそうにもない四肢、だのにこちらに話しかけてくる。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
しかし彼らは話しかけてくるだけで、決してこちらに何かしてこようとはしてこなかった。
私は安心した。彼らがふれてこないことに安堵した。
触れたのは彼らじゃない暁からだった
「うん、大好きな人とはずっと一緒にいたいもんね」
躊躇などしていなかった。優しく笑った顔で暁は焼け焦げた小さな手を握った。
手に着いた乾ききらない血が暁の手についている。とっさに思ったことは時間のたった死体には細菌や病原菌が大量についているということ
我ながら呆れてしまうが、きっとそれは言い訳に過ぎない。暁に触ってほしくなかった。ただそれだけ。
いそいで手をぬぐおうとしたが断られてしまった。その時暁の顔は笑顔だったがあれは怒っていた。
今思えば千種君たちにこんなことをした者達への怒りだったのだろうが、まるで自分が叱られているようだった。
目が覚めそして恥じる。何が醜いいったい何が？彼らは涙を流していた。自分たちがひどい目に合っているのに誰かを思い涙していた。
醜いのは私だ……
一人の少女が震える足、こっちにくる
怖いのだ。何百年も誰も来なかった場所に知らない人間たち。もしかしたら炎と翼持った化物の仲間かもしれない。
きっと何度も傷つけられてたのだろう。骨の髄まで恐怖が浸透してるはずだ。
なのに、だというのに
「ど、何処から来た！」
勇気をもって私たちに話しかけてきた。誰にもできることではない……
気が付くと私は美好ちゃんを抱きしめていた。
彼女は自分が醜いことを恥じていたが、そんなことはない。むしろ美しく尊い
本当に醜いのは何も知らず嫉妬して、嫌悪して、恐怖している私のような人間だ。
……私にあなたの友達でいる資格はありますか？
「…は！」
いつの間にか知らない道まで来ていた。考え事をして歩いていたせいで普段曲がる道を通り過ぎたのだろう。
思考が現実に戻ってきたことで少しばかり冷静になる。自己嫌悪ここに極まれり。悪い方悪い方に考えが行ってしまった。
胸を押さえ大丈夫、大丈夫、大丈夫、胸の中で三回唱える。これは暁が言っていたよくわからないおまじないだ。絶対大丈夫の呪文だそうだ。
少し胸が楽になる。呪文のおかげか暁のおかげか、暁のおかげにするのはしゃくだから、呪文の効果に違いない。
…………暁
手をつないだのはいつ以来だろう。天使から逃げる時に手を繋いでくれた手を引いてくれた。不覚にも胸がはねた。
この気持ちは…だろうか？
いやいや、いやいや、いやいや、いやいや、違う断じて違う。
だってあいつだし泣き虫暁だし、そんなことはない。暁なんかと比べたらゴキブリの方がまだいい
いや、いやだけど、ゴキブリは嫌だけど。そう事じゃなくてなくて何が言いたいかというと
そんなんじゃないし。それなら優兄の方が断然言いに決まってる。優しいし大人の魅力もあるし話をよく聞いてくれるし。
眼中にないから、暁何て、本当の本当にないから、話聞かないしへらへらしてるしたまにふらっとどっかにいなくなるしデリカシーのかけらもないし
暁にはもっと、もっと…………もっとふさわしい女性がいるはずだ。
「はあ……」
知らない道を歩いていたせいですっかり迷子だ。ここはどこだろう。神社？
「嫉妬ト愛ト嫌悪ノ入リ混ジッタ匂イガスル」
私は見た
「ン？ヲォコレハ、御前サン、珍シイ勾玉ヲオ持チデ、何処カデ感ジタ事ノアル神気ダ」
なぜ気づかなかったのだろう。それはとても巨大だ
「マア、ソレハ置イテオクトシテ、愛憎ノ、陰ノ匂イガスル。私好ミダ」
暗い影の様だ。それは闇をはらんでいて少しの先も見通せない
「心ニ身ヲ任セロ。ヨリ堕チロ」
にやりとそれが笑う
「ソレデ相応シクナル」
黒蛇
「狂ヱ」
……
………
…………
……………
………………
「暁」
すいません！ずいぶんと遅くなりました。もはや読んでくれる人もないかもしれませんが一応書きます！
セッションの導入風で書いてみましたよん。いつか機会がありましたら鏡花ちゃんを救うセッションでも作ってみますよ
タイトルはそうだな…【感情に住む黒蛇】かな？仮ですけどね！スカイプにも載せて置くのでまたどこかの機会にできましたら
追伸ＳＷのシナリオも作っている途中ですできましたら皆さんやりましょう
セッションの導入風で書いてみましたよん。いつか機会がありましたら鏡花ちゃんを救うセッションでも作ってみますよ
タイトルはそうだな…【感情に住む黒蛇】かな？仮ですけどね！スカイプにも載せて置くのでまたどこかの機会にできましたら
追伸ＳＷのシナリオも作っている途中ですできましたら皆さんやりましょう
内海 暁 / 味噌
PCより
PLより
夕暮れの公園にて。
夕暮れの中、通り馴れた道を歩く。
今日の講義はまた眠たかったなぁ、と思い返しつつ、ついつい首元に手が伸びた。
もううっすらとしか傷跡は残っていないそこに軽く指先を添えて、は、とひとつ息を落とす。
――そろそろ飛行機にも乗れそうかな？
サイラスさん達を皆で尋ねるのに間に合いそうでよかった。１人だけ留守番というのは寂しいものだ。
ロバートとエイミーはそろそろでっかい秘密基地完成したかな？
この前貰った写メだと結構できあがってたけどなー。
そんなことを、はらひらと考えつつゆったりとした足取りで角を曲がると、昔、皆で遊んだ公園が見えた。
夕暮れ時だからだろうか、公園にはもう誰もいない。日が暮れるのが早くなったから、当たり前か。
「んー、まだ時間あるな」
スマフォの時間表示は、待ち合わせの時間まで余裕たっぷり。
なら、ちょっとぐらい寄り道したっていいだろう。
公園に2つあるブランコのうち、ひとつに座り、ゆったりと漕ぐ。
幼い頃は、座ると足がつま先しか届かなくって、大分怖かった。ブランコを繋ぐ鎖が太くって、握れなかったもんだ。
「……変わるもんだなー」
変わらないものもあるけれど、改めてしみじみと噛みしめる。
砂場で一緒になって皆で遊んだのを、凛奈姉さんが何か城つくるの上手かったり、皆今とあんまり変わらないのも、よく泣く俺を鏡花ちゃんが怒りながら手を引いてくれたのも、今は懐かしい。
もう俺が鏡花ちゃんの手を引ける側になった…とちょっと自惚れてもいいことにしとこう。そっちの方が、嬉しいから。
ふとそんな回想に浸っていると、ぶるりとスマフォが震えて何かの着信を伝えてくれた。
お、ロバートから秘密基地の写真！これはかっこいいなー、さすがロバートやるな〜。……。
「……鏡花ちゃん？」
ふと、名前を呼ばれたような気がして辺りを見回した。
けれども、声の主は見当たらなくて夕暮れの公園でひとり、首を傾げたのだった。
今日の講義はまた眠たかったなぁ、と思い返しつつ、ついつい首元に手が伸びた。
もううっすらとしか傷跡は残っていないそこに軽く指先を添えて、は、とひとつ息を落とす。
――そろそろ飛行機にも乗れそうかな？
サイラスさん達を皆で尋ねるのに間に合いそうでよかった。１人だけ留守番というのは寂しいものだ。
ロバートとエイミーはそろそろでっかい秘密基地完成したかな？
この前貰った写メだと結構できあがってたけどなー。
そんなことを、はらひらと考えつつゆったりとした足取りで角を曲がると、昔、皆で遊んだ公園が見えた。
夕暮れ時だからだろうか、公園にはもう誰もいない。日が暮れるのが早くなったから、当たり前か。
「んー、まだ時間あるな」
スマフォの時間表示は、待ち合わせの時間まで余裕たっぷり。
なら、ちょっとぐらい寄り道したっていいだろう。
公園に2つあるブランコのうち、ひとつに座り、ゆったりと漕ぐ。
幼い頃は、座ると足がつま先しか届かなくって、大分怖かった。ブランコを繋ぐ鎖が太くって、握れなかったもんだ。
「……変わるもんだなー」
変わらないものもあるけれど、改めてしみじみと噛みしめる。
砂場で一緒になって皆で遊んだのを、凛奈姉さんが何か城つくるの上手かったり、皆今とあんまり変わらないのも、よく泣く俺を鏡花ちゃんが怒りながら手を引いてくれたのも、今は懐かしい。
もう俺が鏡花ちゃんの手を引ける側になった…とちょっと自惚れてもいいことにしとこう。そっちの方が、嬉しいから。
ふとそんな回想に浸っていると、ぶるりとスマフォが震えて何かの着信を伝えてくれた。
お、ロバートから秘密基地の写真！これはかっこいいなー、さすがロバートやるな〜。……。
「……鏡花ちゃん？」
ふと、名前を呼ばれたような気がして辺りを見回した。
けれども、声の主は見当たらなくて夕暮れの公園でひとり、首を傾げたのだった。
お疲れ様でした！
こそこそ…一番遅くなってしまいましたが、改めまして皆さんお疲れ様でした！
そして少し鏡花さんの後日談に乗っかる形になってしまいましたが、大丈夫でしたでしょうか…！
ご近所さん同士仲良く和気藹々な雰囲気、そして皆さんの素敵なRPを拝見できて、泣いたり笑ったり素敵な卓でした。
もろもろでまたご厄介になるかもしれませんが、その時は宜しくお願いします。少女マンガもありがとうございますありがとうございます！
それ以外でも、またセッションでご一緒することになりましたら宜しくお願いしますね！
そして少し鏡花さんの後日談に乗っかる形になってしまいましたが、大丈夫でしたでしょうか…！
ご近所さん同士仲良く和気藹々な雰囲気、そして皆さんの素敵なRPを拝見できて、泣いたり笑ったり素敵な卓でした。
もろもろでまたご厄介になるかもしれませんが、その時は宜しくお願いします。少女マンガもありがとうございますありがとうございます！
それ以外でも、またセッションでご一緒することになりましたら宜しくお願いしますね！
探索者の後日談
突撃するお嬢様、それに巻き込まれながらも確かな成長を見せた美術部員、そしてそれをしっかり見届け続けた先生。あとはファンブルでいちゃつきやがった探偵2人組。
そんな彼らの終わった物語の少し先の話…
そんな彼らの終わった物語の少し先の話…
北大路 天香/A/I
PCより
PLより
神様に恋したアホの子
「……」
あれから数日。北大路天香はベッドに寝転んでいた。
あの時、実はとっさに手帳の一ページに自分の連絡先を書き、
破いて渡そうと思っていた。
書き終えた彼女の耳に入ってきたのは衝撃の事実。
好きかどうかは不透明だが、自分の人生でこれほどまでの
敗北感を味わったのは初めてである。
当時、顔を真っ赤にしてもぶおの首を揺さぶったことは
記憶にも新しい。
「あれから、もうこんなに経つのね……」
カレンダーは一日一日確実に日を去らせていった。
今までお金と権力で何でも好きにしてきた彼女にとって、
それは、途方もないことであった。
愛とか恋とか、お金でいくらでも買える。なんとかなる。
好きかとかそういうんじゃなく、単純に気に入っていた。
それなのに……！
「どういうことじゃーっ！！」
数日経ったというのに、屋敷には大声がこだました。
顔を真っ赤にして叫んでみても、事実は事実。
生きて帰れた。それだけでも奇跡的なのに、
それ以上をどうしても求めてしまうのだ。
いや、神様と、というシチュエーションに単純に
あこがれていただけなのかもしれない。
今まで自分のことをアホ呼ばわりされることはあっても、
認めてくれる人がいて嬉しかったのかもしれない。
否、嬉しかった――――。
これからも、天香はアホをやるだろう。
でもその時止めてくれる人はいるか。
認めてくれる人はいるか。
頭を撫でてくれる人はいるか……。
机の上にはくしゃくしゃになった手帳の一ページが、
今でも残っている。
あれから数日。北大路天香はベッドに寝転んでいた。
あの時、実はとっさに手帳の一ページに自分の連絡先を書き、
破いて渡そうと思っていた。
書き終えた彼女の耳に入ってきたのは衝撃の事実。
好きかどうかは不透明だが、自分の人生でこれほどまでの
敗北感を味わったのは初めてである。
当時、顔を真っ赤にしてもぶおの首を揺さぶったことは
記憶にも新しい。
「あれから、もうこんなに経つのね……」
カレンダーは一日一日確実に日を去らせていった。
今までお金と権力で何でも好きにしてきた彼女にとって、
それは、途方もないことであった。
愛とか恋とか、お金でいくらでも買える。なんとかなる。
好きかとかそういうんじゃなく、単純に気に入っていた。
それなのに……！
「どういうことじゃーっ！！」
数日経ったというのに、屋敷には大声がこだました。
顔を真っ赤にして叫んでみても、事実は事実。
生きて帰れた。それだけでも奇跡的なのに、
それ以上をどうしても求めてしまうのだ。
いや、神様と、というシチュエーションに単純に
あこがれていただけなのかもしれない。
今まで自分のことをアホ呼ばわりされることはあっても、
認めてくれる人がいて嬉しかったのかもしれない。
否、嬉しかった――――。
これからも、天香はアホをやるだろう。
でもその時止めてくれる人はいるか。
認めてくれる人はいるか。
頭を撫でてくれる人はいるか……。
机の上にはくしゃくしゃになった手帳の一ページが、
今でも残っている。
A/Iより皆様へご挨拶
お疲れ様でした！
まずはこんなアホの子を受け止めてくださり感激にございます！
時間が経過するのがこんなにも惜しいものだとは思いませんでした。
みなさんとまた遊びたい……その一心でございます。
またいつか、お会いしましょう。
その時もアホをよろしくお願いいたします。
まずはこんなアホの子を受け止めてくださり感激にございます！
時間が経過するのがこんなにも惜しいものだとは思いませんでした。
みなさんとまた遊びたい……その一心でございます。
またいつか、お会いしましょう。
その時もアホをよろしくお願いいたします。
這慧 茂部夫/ロック
PCより
PLより
ここにある想い
・・・いつも通り廊下を歩く。何気ない日常。
でも。これまでより、輝いて見えるのはなぜだろう。きっと、気のせいじゃない。
「・・・・・・」
ひたすら無言で歩く。今度は、なにを描こうか。ワクワクする。
あの事件から、僕は少しだけ明るくなった。
・・・あと、先生から出席が取られる確率も多くなってきた。
・・・言ってて悲しくなるからやめよう。
今、自分は美術室に向かっている真っ最中。
そこには、僕をみつけて変えてくれた、大好きな二人がいる。
・・・なぜか、そのうち一人は最近落ち込み気味だけど。
聞いても、「うっさい、モブ夫！！」といってひっぱたかれる。
・・・でも、そんな日常が大好きだ。だから、もっと前を向きたいと思う。
もっと、芸術に、恋に、勉強に、頑張っていこうと思う。また、会うであろうあの子のために。
・・・そして、何よりも大切な、二人のために。
・・・そうそう、恋、といえば。
実は、いま手の中には一通の手紙が握られている。
白い封筒、そして、ハートマークのシール。
・・・なんともテンプレな感じだ。でも、それ以外思いつかない。
手紙の最後には、
『・・・僕を見つけてくれて、ありがとう』
そんな、絶対にこんな手紙には書かない一文。でも、大丈夫。
・・・便箋以外にも、はがき大の背景画が一枚入ってる。
・・・僕にとって大切な人を対象として、それをベースに背景を描いただけの。
僕のこれまでで、一番の力作。
そして・・・その絵の裏には、僕の何一つ偽りのない気持ちをかいてある。
「・・・・・・っ！」
・・・怖い。拒絶が。これまでのものが壊れるのが。
・・・自分には不釣り合いなのは、分かってる。でも。どうか。
・・・・・・この、想いだけはっ！！
部室の扉を・・・勇気を振り絞り、開く。
・・・そして、あなたに、この想いを・・・
でも。これまでより、輝いて見えるのはなぜだろう。きっと、気のせいじゃない。
「・・・・・・」
ひたすら無言で歩く。今度は、なにを描こうか。ワクワクする。
あの事件から、僕は少しだけ明るくなった。
・・・あと、先生から出席が取られる確率も多くなってきた。
・・・言ってて悲しくなるからやめよう。
今、自分は美術室に向かっている真っ最中。
そこには、僕をみつけて変えてくれた、大好きな二人がいる。
・・・なぜか、そのうち一人は最近落ち込み気味だけど。
聞いても、「うっさい、モブ夫！！」といってひっぱたかれる。
・・・でも、そんな日常が大好きだ。だから、もっと前を向きたいと思う。
もっと、芸術に、恋に、勉強に、頑張っていこうと思う。また、会うであろうあの子のために。
・・・そして、何よりも大切な、二人のために。
・・・そうそう、恋、といえば。
実は、いま手の中には一通の手紙が握られている。
白い封筒、そして、ハートマークのシール。
・・・なんともテンプレな感じだ。でも、それ以外思いつかない。
手紙の最後には、
『・・・僕を見つけてくれて、ありがとう』
そんな、絶対にこんな手紙には書かない一文。でも、大丈夫。
・・・便箋以外にも、はがき大の背景画が一枚入ってる。
・・・僕にとって大切な人を対象として、それをベースに背景を描いただけの。
僕のこれまでで、一番の力作。
そして・・・その絵の裏には、僕の何一つ偽りのない気持ちをかいてある。
「・・・・・・っ！」
・・・怖い。拒絶が。これまでのものが壊れるのが。
・・・自分には不釣り合いなのは、分かってる。でも。どうか。
・・・・・・この、想いだけはっ！！
部室の扉を・・・勇気を振り絞り、開く。
・・・そして、あなたに、この想いを・・・
ロックより皆様へ
どうも皆様、ロックです。
今回、ＰＬとしてすごく成長できたように感じました。
どれもこれも、ＫＰとＰＬの皆様のおかげです。ホントにありがとうございました！
セッション中、変なミスや勘違い、あと離席が多くてご迷惑をおかけしました('A`;)
ＰＣ的には、多分自分のＰＣのなかで一番成長を見せたと思います。
もうちょっと、探偵組とも絡ませたかった・・・（汗）
探偵組の皆さん、ごめんなさい！
それではこのあたりで。また皆さんと会えるのを楽しみにしています！！
今回、ＰＬとしてすごく成長できたように感じました。
どれもこれも、ＫＰとＰＬの皆様のおかげです。ホントにありがとうございました！
セッション中、変なミスや勘違い、あと離席が多くてご迷惑をおかけしました('A`;)
ＰＣ的には、多分自分のＰＣのなかで一番成長を見せたと思います。
もうちょっと、探偵組とも絡ませたかった・・・（汗）
探偵組の皆さん、ごめんなさい！
それではこのあたりで。また皆さんと会えるのを楽しみにしています！！
常盤 天音/キャノ
PCより
PLより
破戒
常盤天音はふらりと立ち寄った教会で、椅子に座り込みぼんやりと物思いにふけっていた。時はすでに夕刻、人のいなくなった教会でぽつんと独り思案に暮れていた。教育者として、聖職者として、そして何より人として、人と出会い別れる度に頭をよぎることがある。「私は相手から教わるばかりで貰うばかり、少しでも何かを返せているのでしょうか？」と。かわいい生徒たち、頼りになる探偵たち、異教の神やその子どもたちにさえ施しを受けた。私が彼らに返せるものは一体なんなのか、翡翠の勾玉を掌で転がしながら考えあぐねていた。ふいに決意した顔をしてロザリオの数珠を一粒外し、代わりに翡翠の勾玉を組み込む。そしていつも通りに祈れるかどうかポケットの中でこっそり祈りを数える。「よし」指も頭も働く、神に祈るのに必要なものは意外と少ないのかもしれない。しかし「こんな冒涜的なロザリオ、人には見せられないですね。・・・神はもう私をお許しにはならないでしょう」と苦笑する。それでも聖職者として彼らの分も祈りを捧げるなんて、なんて罪深い。相手に何を返せるか、答えなんてきっと出ない、それでも思考し、祈りを捧げよう。それが私にできる精一杯の足掻きだと信じて。
キャノより皆様へ
セッションでは大変ご迷惑おかけしました。特にＫＰの胃痛は凄まじかったのではと思います。途中ぐったりしてしまって申し訳ない。また皆さんと卓をご一緒したいです。ご迷惑でなければですが、呼んでいただけたら時間の都合が合い次第行きます。それではまたどこかで！
桜川 祐子/りょん
PCより
PLより
恋も仕事も八分咲き
息が白くなる冬の日。そんな日の遅い時間に街灯だけに照らされた暗い道を歩く人影一つ。
桃色の髪をなびかせて歩く女性--探偵、桜川祐子その人である。
ツアー以降の祐子は他の4人に比べて変化がなかった、というより変化を感じないくらい忙しくなったのだ。
雑誌に取り上げられたこともあってか、民間だけでなく警察からも依頼が舞い込むようになり様々な場所を訪れていたのだ。
さらにたまの休日に旅行に行くと、そこでも事件が起こることしばしば。
そんな感じで働き詰めで、気づくとツアーから何か月か経ってしまっていた。
そんな彼女が多忙による過労やプレッシャーに押しつぶされなかったのは、間違いなく彼の存在のおかげだろう。
自分の家を通り過ぎて、彼の事務所があるビルの階段をゆっくりとのぼる。
彼のセンスが感じられるお洒落な『closed』の看板、だがそれを無視してドアを開ける。
「…こんばんは、守さん」
遅い時間なので守さんに軽いものを作ってもらい、星が綺麗に見えるので外に出る。
珍しくお酒を飲んでいるのでぽかぽかしていい気分だ。
「桜川さんさぁ」
「なんれすかぁ〜?」
「大人になったよね」
「そんなことないれすよ〜」
「いや大人になったよ。少しずつだけど確かに」
そう言ってお酒を口に含む守さん。酔いが回ってきたせいか、その動作だけでもかっこよく見える。
確かに出会った頃より体は立派になったと思う、雰囲気も落ち着いてきたと思う。
有名になったせいで世間が求める探偵像になろうとした結果かもしれない。でも1番は…
「僕の顔に何かついてる?」
「べっつに〜?」
やっぱり理想の人が1番近くにいるからだろう。恥ずかしさを紛らわすために、守さんが注いでくれたお酒を一気に飲み込む。
「私からも1ついいですかぁ〜?」
「なんだい?」
「どうしてこーんなべたなシチュエーションで襲ってくれないんですか?」
コップの中の氷が「からんっ」と音を立てる。私の真剣な表情に守さんも困惑している。
「…答えて」
「…そういうところが子供っぽいんですよ」
真剣な表情になるどころか、いつもみたいに微笑んで私の頭をなでてくる。むぅ…。
「真面目に答えて…あっ」
立ち上がろうと思ったらふらついて守さんに倒れこんでしまう。自分の予想以上に飲んでしまったらしい。
「ふふっ、言わなくてもちゃーんと桜川さんの魅力は理解してるよ」
「だったらやっちゃえばいいじゃないですか、既成事実って…やつ…れすよー…」
徐々に呂律が回らなくなってくる。瞼もだんだん落ちてきて視界が黒に染まる。もう…む…り…。
「あらあら飲みすぎていましたか。こんな無理をする君は子供ぽくって可愛くて心配なんだ」
「すぅ…すぅ…」
「だけどそんな君をずーっと見ていたい自分がいるんだ。だから君の思いはまだ受け取れない」
祐子を背負うと、彼女専用となりつつあるソファーに寝かせて毛布を掛ける。
お皿やコップをかたずけて、寝ようかと思うと桜川さんが寝言を呟いているのが聞こえる。
「んぅ…守さん。好き…よ…」
寝言とはいえ顔が熱くなる。どうしてここまで慕われているのかわからないが、彼女は自分が美人であるということを自覚してほしい。
「いつか君の顔が恥ずかしくて見られなくなっちゃう日が来るのかなぁ…」
後に必ず来るであろう状況に戦々恐々としながらも、幸せそうな彼女の笑顔に少し癒されるのだった。
それから数日後、桜川探偵事務所に珍しくなくなってきた依頼者がやってきた。
長身痩躯で漆黒の肌をした人物で、どこか不思議なオーラを放っている。
もちろん、そんな人物が持ってくる依頼が面白くないわけはない。
そしてその依頼を祐子が興味を持たないわけはない。わずかな微笑を浮かべて一言。
「…その依頼、受けさせてもらうわ」
探偵、桜川祐子。彼女の人生は恋も仕事もまだ満開とはいかず、中途半端な八分咲きのようだ
桃色の髪をなびかせて歩く女性--探偵、桜川祐子その人である。
ツアー以降の祐子は他の4人に比べて変化がなかった、というより変化を感じないくらい忙しくなったのだ。
雑誌に取り上げられたこともあってか、民間だけでなく警察からも依頼が舞い込むようになり様々な場所を訪れていたのだ。
さらにたまの休日に旅行に行くと、そこでも事件が起こることしばしば。
そんな感じで働き詰めで、気づくとツアーから何か月か経ってしまっていた。
そんな彼女が多忙による過労やプレッシャーに押しつぶされなかったのは、間違いなく彼の存在のおかげだろう。
自分の家を通り過ぎて、彼の事務所があるビルの階段をゆっくりとのぼる。
彼のセンスが感じられるお洒落な『closed』の看板、だがそれを無視してドアを開ける。
「…こんばんは、守さん」
遅い時間なので守さんに軽いものを作ってもらい、星が綺麗に見えるので外に出る。
珍しくお酒を飲んでいるのでぽかぽかしていい気分だ。
「桜川さんさぁ」
「なんれすかぁ〜?」
「大人になったよね」
「そんなことないれすよ〜」
「いや大人になったよ。少しずつだけど確かに」
そう言ってお酒を口に含む守さん。酔いが回ってきたせいか、その動作だけでもかっこよく見える。
確かに出会った頃より体は立派になったと思う、雰囲気も落ち着いてきたと思う。
有名になったせいで世間が求める探偵像になろうとした結果かもしれない。でも1番は…
「僕の顔に何かついてる?」
「べっつに〜?」
やっぱり理想の人が1番近くにいるからだろう。恥ずかしさを紛らわすために、守さんが注いでくれたお酒を一気に飲み込む。
「私からも1ついいですかぁ〜?」
「なんだい?」
「どうしてこーんなべたなシチュエーションで襲ってくれないんですか?」
コップの中の氷が「からんっ」と音を立てる。私の真剣な表情に守さんも困惑している。
「…答えて」
「…そういうところが子供っぽいんですよ」
真剣な表情になるどころか、いつもみたいに微笑んで私の頭をなでてくる。むぅ…。
「真面目に答えて…あっ」
立ち上がろうと思ったらふらついて守さんに倒れこんでしまう。自分の予想以上に飲んでしまったらしい。
「ふふっ、言わなくてもちゃーんと桜川さんの魅力は理解してるよ」
「だったらやっちゃえばいいじゃないですか、既成事実って…やつ…れすよー…」
徐々に呂律が回らなくなってくる。瞼もだんだん落ちてきて視界が黒に染まる。もう…む…り…。
「あらあら飲みすぎていましたか。こんな無理をする君は子供ぽくって可愛くて心配なんだ」
「すぅ…すぅ…」
「だけどそんな君をずーっと見ていたい自分がいるんだ。だから君の思いはまだ受け取れない」
祐子を背負うと、彼女専用となりつつあるソファーに寝かせて毛布を掛ける。
お皿やコップをかたずけて、寝ようかと思うと桜川さんが寝言を呟いているのが聞こえる。
「んぅ…守さん。好き…よ…」
寝言とはいえ顔が熱くなる。どうしてここまで慕われているのかわからないが、彼女は自分が美人であるということを自覚してほしい。
「いつか君の顔が恥ずかしくて見られなくなっちゃう日が来るのかなぁ…」
後に必ず来るであろう状況に戦々恐々としながらも、幸せそうな彼女の笑顔に少し癒されるのだった。
それから数日後、桜川探偵事務所に珍しくなくなってきた依頼者がやってきた。
長身痩躯で漆黒の肌をした人物で、どこか不思議なオーラを放っている。
もちろん、そんな人物が持ってくる依頼が面白くないわけはない。
そしてその依頼を祐子が興味を持たないわけはない。わずかな微笑を浮かべて一言。
「…その依頼、受けさせてもらうわ」
探偵、桜川祐子。彼女の人生は恋も仕事もまだ満開とはいかず、中途半端な八分咲きのようだ
りょんから皆様に一言〜
茶番要因、りょんです。参加したPL、KPお疲れ様でした＆ありがとうございました。
この後日談は私が皆さんに企画したのですが、書くのが1番遅くなってしまいました。どうしてこうなった…。
実際、他の方は完全オリジナルですが私のはうぃのさんと雑談でやったものを編集したものになります。
完全オリジナルの皆さんのすごさが実感できましたね。
後日談、最後の依頼者が不穏ですがどうしてでしょう（棒）
私は茶番100％でできているので、またどこかでこのメンバーで茶番祭りがしたいところですｗ
どこかで見かけたら、生易しく茶番に付き合ってくださいねｗではまたどこかで！
この後日談は私が皆さんに企画したのですが、書くのが1番遅くなってしまいました。どうしてこうなった…。
実際、他の方は完全オリジナルですが私のはうぃのさんと雑談でやったものを編集したものになります。
完全オリジナルの皆さんのすごさが実感できましたね。
後日談、最後の依頼者が不穏ですがどうしてでしょう（棒）
私は茶番100％でできているので、またどこかでこのメンバーで茶番祭りがしたいところですｗ
どこかで見かけたら、生易しく茶番に付き合ってくださいねｗではまたどこかで！
犬飼 守/うぃの
PCより
PLより
引き返せぬ物語
手提げの買い物袋を片手に持ち、信号で止まり何度も流れゆく人混みを眺めていた。
まさか神様から歴史的な勾玉を賜るとは思わなかった。
不思議と普段の生活の中で傷がついたりすることはないそうだ。
今は得体のしれない物への気味悪さから神棚に飾ってある。
お揃いができない。と頬をふくらませて怒られてしまった。
映画の中で能動的に動く主人公。
仲間と協力して正解に導くカルタシスを感じる物語だった。
現実は行方不明の捜索や事件の解決は「継続中」となる案件が多い。
進展がしない状況に苛立ち立ちをぶちまけるクライアントがいる。
警察に持ちこめない事情で情報が少ないのだ。
柳に風にと適当にいつも流している。
隣で感動している女性はいつも大げんかをしているとのこと。
その中でクライアントから情報をこぼすらしい。
信頼の勝ち取れる方法なのだろうが私にはできない。
だがその夜に終電がすぎまで経緯をマシンガンのように話し続けられるのはどうなのか。
買い物袋で両手が塞がってしまった。
店頭に飾ってある服や旅行のパンフレットを見ながら身軽な女性はしゃいでいた。
視線をふと暗がりに移す。
猫を追いかけるとき動く物体がどこかにいるかを考えていた。
だがなぜだろう。
事件から戻ってきてから、物音がしない物陰に目が移ってしまうのだ。
誰かが見ている気がする。
その事をさっき話したら、神様が見ているのかもしれないと笑われた。
ぼんやりとしていると、近づいてきた彼女が身につけていた勾玉を首にかけられた。
「桜川さんのじゃない」
「大丈夫もう一個持っているから」と言って彼女は取り出した勾玉を自分の首に掛けた。
「もう一個貰ったんだ」
「うん。神様が使うがいい〜って」
記憶を探る。あの時、受け取ったのは一人一個だったはず。
「それ、どこで呼びかけられたの？」
「とある家の神棚」
「……お菓子感覚？」
「いやいやいやいや、なんか不味そうな顔していたから必要だと思ったのよ」
「そうなんだ」
「えへ。お揃い〜」
まだまだ十代に見える顔が笑っていた。
予約したレストランに入った。
とあるクライントから指定された場所だ。
どこから私と彼女の関係を聞きつけたのか。
彼女が持ってきた話しである。
二人揃ってのご指名とのこと。
すぐにクライアントは見つかった。
まだまだ暑い季節だというのに、茶色のコートを羽織り帽子を深くかぶっていた。
そこから見える目が、死んだ魚のような目をしていた。
肌の色は人の肌とはおよそかけ離れており、光を反射し、鱗状にみえた。
私は視線を彼女を眺めた。
相手の姿など一切構わずに話は開始された。
てきぱきと商談を進めていく。
最後に差し出された茶封筒は机に立つほどであった。
直接顔を見ていないが、寒気が止まらない。
何に聞き感を覚えたのだろうか。
気づくと奴はヒタリヒタリと足音と呼べる物をたてて帰っていった。
話は至極まっとうであった。
引っかかった。
薬漬けで瞳孔が開いているのかともいきや冷静な話し方であった。
手が震えている様子でもなかった。
あれが普通の姿ということ。
そんな人間がいるのだろうか。
考えを巡らせていると、彼女が茶封筒を目の前にスライドしてきた。
「この依頼うけるの？」
明らかに一線を超えた依頼である。
「当然」
「人には手に余る依頼じゃない？」
彼女は何も言わすに立ち上がり、残りの飲み物を飲んでから領収書を取った。
日が沈んだ。錆びかけたアパートに２つの足音だけが響いていた。
荷物をどうにか下ろして部屋に入る。
続いて彼女は疲れた。とだらしなくソファーによりかかった。
神棚に目を移すと置いてあった勾玉がなくなっていた。
彼女にミルクティーとサンドイッチを渡す。
あの場で私と彼女は食事を取っていなかった。
手は伸びなかった。
「綱渡りだよね」と彼女は言った。
「君の事務所は儲かっているようにみえるけど」
「健全経営しているから。都内の１LDKマンションも即金で買えるくらいには」
ぶらぶらと彼女の手がゆれて、くすんだフローリングに爪があたる。
「あの事件に携わる前は、後ろ盾にマフィアがいるという人はいましたが――」
「守だけではなかったってこと。あらゆるところから見つめてくるのよ」
「神様は助けてくれますかね」
「一億二千万のお願い聞くのに忙しいでしょ」
「ですねぇ」
安っぽい時計の秒針が何度か鳴った。
「降りてもいいわよ？」
元気のない声であった。
勾玉を触ると自らとは違う二つのあたたかみを不思議と感じた。
「大きな事件を一緒に乗り越えたいと誘ったのは私からですから」
ずずず、とお茶を飲む音が聞こえた。振り返るとサンドイッチは半分なくなっていた。
「で。その呼び方はまだ変わらないの？ いい加減。すっごい他人行儀に聞こえるの。生き残るために前回の褒美があっていいと思うの」
とても現金だった。
「癖がとれないんです」
「じゃあ、次のデートまでに」
腕を頭の後ろにまわして頭をかいた。
妙な焦燥感が駆け巡る。
「わかりました」という言葉が口からこぼれた。
「期待しているわ」と笑顔になった。
正しい選択だったのだろうか。
進んだというより、もう後戻りできなくなった気がする。
まるで深き海からの手にゆっくりと引きこまれていくような……
まさか神様から歴史的な勾玉を賜るとは思わなかった。
不思議と普段の生活の中で傷がついたりすることはないそうだ。
今は得体のしれない物への気味悪さから神棚に飾ってある。
お揃いができない。と頬をふくらませて怒られてしまった。
映画の中で能動的に動く主人公。
仲間と協力して正解に導くカルタシスを感じる物語だった。
現実は行方不明の捜索や事件の解決は「継続中」となる案件が多い。
進展がしない状況に苛立ち立ちをぶちまけるクライアントがいる。
警察に持ちこめない事情で情報が少ないのだ。
柳に風にと適当にいつも流している。
隣で感動している女性はいつも大げんかをしているとのこと。
その中でクライアントから情報をこぼすらしい。
信頼の勝ち取れる方法なのだろうが私にはできない。
だがその夜に終電がすぎまで経緯をマシンガンのように話し続けられるのはどうなのか。
買い物袋で両手が塞がってしまった。
店頭に飾ってある服や旅行のパンフレットを見ながら身軽な女性はしゃいでいた。
視線をふと暗がりに移す。
猫を追いかけるとき動く物体がどこかにいるかを考えていた。
だがなぜだろう。
事件から戻ってきてから、物音がしない物陰に目が移ってしまうのだ。
誰かが見ている気がする。
その事をさっき話したら、神様が見ているのかもしれないと笑われた。
ぼんやりとしていると、近づいてきた彼女が身につけていた勾玉を首にかけられた。
「桜川さんのじゃない」
「大丈夫もう一個持っているから」と言って彼女は取り出した勾玉を自分の首に掛けた。
「もう一個貰ったんだ」
「うん。神様が使うがいい〜って」
記憶を探る。あの時、受け取ったのは一人一個だったはず。
「それ、どこで呼びかけられたの？」
「とある家の神棚」
「……お菓子感覚？」
「いやいやいやいや、なんか不味そうな顔していたから必要だと思ったのよ」
「そうなんだ」
「えへ。お揃い〜」
まだまだ十代に見える顔が笑っていた。
予約したレストランに入った。
とあるクライントから指定された場所だ。
どこから私と彼女の関係を聞きつけたのか。
彼女が持ってきた話しである。
二人揃ってのご指名とのこと。
すぐにクライアントは見つかった。
まだまだ暑い季節だというのに、茶色のコートを羽織り帽子を深くかぶっていた。
そこから見える目が、死んだ魚のような目をしていた。
肌の色は人の肌とはおよそかけ離れており、光を反射し、鱗状にみえた。
私は視線を彼女を眺めた。
相手の姿など一切構わずに話は開始された。
てきぱきと商談を進めていく。
最後に差し出された茶封筒は机に立つほどであった。
直接顔を見ていないが、寒気が止まらない。
何に聞き感を覚えたのだろうか。
気づくと奴はヒタリヒタリと足音と呼べる物をたてて帰っていった。
話は至極まっとうであった。
引っかかった。
薬漬けで瞳孔が開いているのかともいきや冷静な話し方であった。
手が震えている様子でもなかった。
あれが普通の姿ということ。
そんな人間がいるのだろうか。
考えを巡らせていると、彼女が茶封筒を目の前にスライドしてきた。
「この依頼うけるの？」
明らかに一線を超えた依頼である。
「当然」
「人には手に余る依頼じゃない？」
彼女は何も言わすに立ち上がり、残りの飲み物を飲んでから領収書を取った。
日が沈んだ。錆びかけたアパートに２つの足音だけが響いていた。
荷物をどうにか下ろして部屋に入る。
続いて彼女は疲れた。とだらしなくソファーによりかかった。
神棚に目を移すと置いてあった勾玉がなくなっていた。
彼女にミルクティーとサンドイッチを渡す。
あの場で私と彼女は食事を取っていなかった。
手は伸びなかった。
「綱渡りだよね」と彼女は言った。
「君の事務所は儲かっているようにみえるけど」
「健全経営しているから。都内の１LDKマンションも即金で買えるくらいには」
ぶらぶらと彼女の手がゆれて、くすんだフローリングに爪があたる。
「あの事件に携わる前は、後ろ盾にマフィアがいるという人はいましたが――」
「守だけではなかったってこと。あらゆるところから見つめてくるのよ」
「神様は助けてくれますかね」
「一億二千万のお願い聞くのに忙しいでしょ」
「ですねぇ」
安っぽい時計の秒針が何度か鳴った。
「降りてもいいわよ？」
元気のない声であった。
勾玉を触ると自らとは違う二つのあたたかみを不思議と感じた。
「大きな事件を一緒に乗り越えたいと誘ったのは私からですから」
ずずず、とお茶を飲む音が聞こえた。振り返るとサンドイッチは半分なくなっていた。
「で。その呼び方はまだ変わらないの？ いい加減。すっごい他人行儀に聞こえるの。生き残るために前回の褒美があっていいと思うの」
とても現金だった。
「癖がとれないんです」
「じゃあ、次のデートまでに」
腕を頭の後ろにまわして頭をかいた。
妙な焦燥感が駆け巡る。
「わかりました」という言葉が口からこぼれた。
「期待しているわ」と笑顔になった。
正しい選択だったのだろうか。
進んだというより、もう後戻りできなくなった気がする。
まるで深き海からの手にゆっくりと引きこまれていくような……
うぃのより皆様へ
楽しいRPをさせていただきました。
この組で話を進めていると時間がいくらあっても足りないと思うほどです。
それがヒントにつながったかは別ですが……
今回は神話生物との比較的優しい接触となりました。
このPCにとっては神話生物との戦いの始まりではないかと思います。
またどこかで、お付き合いしていただければと思います。
この組で話を進めていると時間がいくらあっても足りないと思うほどです。
それがヒントにつながったかは別ですが……
今回は神話生物との比較的優しい接触となりました。
このPCにとっては神話生物との戦いの始まりではないかと思います。
またどこかで、お付き合いしていただければと思います。
探索者の後日談
Strangerさん/地場 衛さん
ヒーローより
PLより
夜の街を歩きながら
知っているだろうか？
自分と戦わないと、誰とも戦えないということを。
私は困っている人を助けたいからヒーローをやっている。
動機なんてそんなものだ。誰かに認められるとか、そんなことはどうでもいい。
そう、ヒーローを目指した。正装。正しい姿。まずは形から入ることにした。
人生には無数の選択肢がある。
が、正しい選択肢なんてものはない。選んだ後で、それを正しいものにしていけばいいのだから。
だからこそ、今日もタキシードと蝶メガネを着用して、今日も変わらない夜の街を練り歩いている。
そうそう。最近の友人について近況報告をしよう。
ある友人は、家族を愛する隻腕のヒーローの、純愛バトル系ライトノベルについて悩んでいた。
ビジュアルについて悩んでいたようなので、タキシードを着せてあげるように助言した。
ある友人は、実家が古物商を営んでいたので、持っていた翡翠の勾玉を預かってもらうことにした。
彼女の祖父は陶器に詳しいらしいが、あれをどう鑑定するのだろうか。いずれ引き取りにいくのが恐ろしい。
ある友人には、新しいヒーロー衣装の作成を依頼している。純白の装束で、アラビアの王子を意識した衣装だ。
今回もきっと素晴らしい出来になることだろう。名前は……月影の騎士というものはどうだろうか。
世界は何も変わっていない。自分と違う種族・価値観 ・生まれ育ち……。
未知のものと出会ったからこそ、 得られたものは多かった。
……ある友人について語ろう。彼は惚れた女性と手をとりあって普通に暮らした。
どこにでもある幸せだ。だが、極上の幸せだ。
彼等の未来は最早、悩むところでも、迷うところでもなく、進むところだ。
日常と非日常は繋がっていて、同じものだと知った。
どうしようもない現実に対して、何かに救いを求めるのは、おかしいことではない。
何処にも救いを求めず、自分自身でも解決できず、結果として自滅してしまうよりは遥かにマシなのだから。
まだ見ぬ誰かの手を取る為に、バラ細工を強く握り締め、タキシードを着て、間違っていないことを確信する。
精々、何処かの優しい神様に追いつくまで、理想の紳士を貫くことにしよう。
彼と同じくらい、私に誰かを救えるかは未だ分からない。
けれど、失望はない。海を泳いでる最中には 海の広さはわからないのだから。
その時、夜の街に女性の悲鳴が上がる。困っているに違いない。
「お困りですか？ 見ての通り、私は通りすがりの紳士です」
マントを翻し、口を半開きにした。
自分と戦わないと、誰とも戦えないということを。
私は困っている人を助けたいからヒーローをやっている。
動機なんてそんなものだ。誰かに認められるとか、そんなことはどうでもいい。
そう、ヒーローを目指した。正装。正しい姿。まずは形から入ることにした。
人生には無数の選択肢がある。
が、正しい選択肢なんてものはない。選んだ後で、それを正しいものにしていけばいいのだから。
だからこそ、今日もタキシードと蝶メガネを着用して、今日も変わらない夜の街を練り歩いている。
そうそう。最近の友人について近況報告をしよう。
ある友人は、家族を愛する隻腕のヒーローの、純愛バトル系ライトノベルについて悩んでいた。
ビジュアルについて悩んでいたようなので、タキシードを着せてあげるように助言した。
ある友人は、実家が古物商を営んでいたので、持っていた翡翠の勾玉を預かってもらうことにした。
彼女の祖父は陶器に詳しいらしいが、あれをどう鑑定するのだろうか。いずれ引き取りにいくのが恐ろしい。
ある友人には、新しいヒーロー衣装の作成を依頼している。純白の装束で、アラビアの王子を意識した衣装だ。
今回もきっと素晴らしい出来になることだろう。名前は……月影の騎士というものはどうだろうか。
世界は何も変わっていない。自分と違う種族・価値観 ・生まれ育ち……。
未知のものと出会ったからこそ、 得られたものは多かった。
……ある友人について語ろう。彼は惚れた女性と手をとりあって普通に暮らした。
どこにでもある幸せだ。だが、極上の幸せだ。
彼等の未来は最早、悩むところでも、迷うところでもなく、進むところだ。
日常と非日常は繋がっていて、同じものだと知った。
どうしようもない現実に対して、何かに救いを求めるのは、おかしいことではない。
何処にも救いを求めず、自分自身でも解決できず、結果として自滅してしまうよりは遥かにマシなのだから。
まだ見ぬ誰かの手を取る為に、バラ細工を強く握り締め、タキシードを着て、間違っていないことを確信する。
精々、何処かの優しい神様に追いつくまで、理想の紳士を貫くことにしよう。
彼と同じくらい、私に誰かを救えるかは未だ分からない。
けれど、失望はない。海を泳いでる最中には 海の広さはわからないのだから。
その時、夜の街に女性の悲鳴が上がる。困っているに違いない。
「お困りですか？ 見ての通り、私は通りすがりの紳士です」
マントを翻し、口を半開きにした。
KPさん、PLさんの皆様、丸一日の卓を囲ませて頂き、本当に楽しかったです。
お疲れさまです。そして、有り難うございました。
PLの皆様がヒントを出したり、色々なアイデアを出したりしてくれなければ本当に詰んでいた気がします。
最期まで諦めずに、ギリギリまで尽力してくださった結果だと思います。
そして、結構シビアながら手応えのあるシナリオを用意してくださったKPにも感謝します。
それと、ずっと失敗続きだったのに最期だけクリティカルを出してくれたダイスにも一応感謝します。
また卓を囲む機会がありましたら、是非ご一緒させてください。
それまでに、もう少し脱初心者ができるように精進しようと思います。
お疲れさまです。そして、有り難うございました。
PLの皆様がヒントを出したり、色々なアイデアを出したりしてくれなければ本当に詰んでいた気がします。
最期まで諦めずに、ギリギリまで尽力してくださった結果だと思います。
そして、結構シビアながら手応えのあるシナリオを用意してくださったKPにも感謝します。
それと、ずっと失敗続きだったのに最期だけクリティカルを出してくれたダイスにも一応感謝します。
また卓を囲む機会がありましたら、是非ご一緒させてください。
それまでに、もう少し脱初心者ができるように精進しようと思います。
キノナカさん/木野 五葉さん
PCより
PLより
古物商にて
「知らん。私に鑑定を依頼するならせめて陶器にして持ってきなさい」
一刀両断、そして無茶である。
波乱万丈の後の帰り道に地場さんから勾玉の鑑定を託されたので早速祖父に聞いてみたが、少しばかり
手に取りちらりと見まわしたその返答はそっけない。
しかし陶磁器に愛を注ぐ祖父のことだ。予想はできたしそもそも大学生の私が手に入れられるものなん
てたかが知れていると思われてもそう不思議はない。
地場さんからものを頼まれるのは珍しいのでできれば粘りたいが…
�‘�手ルート：友人がお母さんからもらった首飾りをぶっちぎってわけてくれた
�⇒Э諭Г垢瓦�昔から人々を見守っているらしいすごいと思われる神様。そのお母さんもたぶん神様。
とても残念だが祖父が納得して「なるほどこりゃすごい！」と言ってくれる姿は一向に思い浮かばない。
目の前に突っ立ってうんうん言葉を探す私に祖父がふと目をくれる。
「五葉が鑑定したいと品を持ってくるなんて珍しいな」
普段からものを見には行くが何か持ってくるなんてそうないと。つと思案し、そういえば今週あたり来る
客がそういったものやらにも詳しかった気がすると教えてくれた。
「茶と菓子を出しとけばペラペラしゃべり出すんじゃあないか」
数日後、やってきたその客人にお茶とお菓子と
「ほぉ、これはまた…」
勾玉を差し出しこれがどういったものかを尋ねる。手に取りまじまじと興味深そうに見ながら話はじめて
くれたので、私は手帳とペンを手に耳を傾けた。
「勾玉は日本古来、護身や招運の力とかとにかく大きな力を持つとされて特に権力者の装身具に使われて
いたんだ。瑪瑙、水晶、翡翠とか様々な石で作られたものが遺跡から出土されて…」
そう言われたことで綴ちゃんが「翡翠」と言っていたようなことを思い出してそれを告げると、出回って
いる翡翠は白や灰色がかったものが多く、こういったきれいな若葉色のものは珍しいことを教えてくれた。
「う〜む…翡翠ね。翡翠はなかなか判断が…」
とライトを取り出しその光を当てると、勾玉が柔らかく、穏やかに輝いた。その美しさに一時言葉もなく見入る。
「こりゃきれいなもんだね〜！うむ。地質の博物館に行けば学芸員に聞いたり分析器で成分みて判断できると思うよ」
客人は少し声を弾ませてそう言ってくれたが、私は少しばかり考えてやめることにした。
勾玉をくれた人物というか神様からすると、あまりに考古学的な目線から調べた場合博物館に寄付しなきゃ
いけないレベルの結果が出るかもしれない。また入手ルートについて邪推されると困る。
それにこれは皆の感謝と、そしてたぶん、友好の証としてくれたものだ。
そこまでして調べるのは少々無粋かなと感じた。
客人に感謝と共にこれは友人からもらったものであり、このまま大事にするという旨を伝えると彼は一瞬
「おや」という顔をした後に
「ふむ、友達からか。それはとても素敵だね」
と温かに笑んでくれた。
そのあとは翡翠の勾玉が持つ意味、翡翠の探し方、見間違えやすい石、糸魚川翡翠と奴奈川姫、建御名方命、
彼が祭神を務める諏訪大社、諏訪大社の奇祭、参加して大怪我をしたこと、七不思議と様々な話をしてくれた。
祖父は少し遠いところで完全にこちらに背を向けて壺を磨いている。
そして私は話の最中に出したお茶と菓子の補充回数を数えるのをやめた。
客人が帰った後、改めて手帳を見直す。
話に出てきた名からすると、今手元にある勾玉の身元は糸魚川翡翠であり、そこの主本人が手ずから息子へ与
えた日本の中でも屈指の由緒正しき翡翠の勾玉であろう。
…なんてものがこの手にあるのだ、と若干遠い目になりながらも美しい若葉色を手に取り眺める。
そして『健康』『長寿』『災難を退ける』『博愛心』『正義感、人望の高まり』『事業の成功』『閉じた心の
解放』『生命の源』『不変性』。これらは勾玉の所有者に与えられるという力の一端であるという。
並べるとなんとも神の力そのもののようで、あまりの万能感に聞いたときは少しばかり唖然としてしまった。
自分がもらった方とは別の、友人から預かった勾玉を見やる。なんとなく、早く返さねばと使命感に駆られる。
手の中の勾玉に、客人がやっていたようにライトを当ててみる。
そうするとやはり柔らかで穏やかに輝き、手の中で若葉色の光を優しく内包する。
それを見ていると、辛い目にあいながらも人を好きだと言ってくれ、その背に自分たちを庇い守ってくれた
神様やそんな彼らを心から慕っていた人々を思い出す。
ボロボロで不安でたまらなかったのに、それでも私たちの言葉に応えてくれた優しい人々。家族のために自らを
盾にし必死に立っていた気丈で優しい少女。
最後の別れ際に会えた少年は元気な体で、はちきれんばかりの笑顔で、嬉しそうに、キラキラしていた。
今は皆がそうして心も体も健やかに日々を過ごしていること、それがずっと続くことを願う。
ふと、勾玉を単体でこのままの状態で持っていてはいつのまにか落とすかなくすかしてしまいそうだと気づく。
確か元は首飾りの１パーツだったのだし、せっかくなのでそれにならって穴に革紐を通して首にかけられる形に
しよう。それでなくしたらもうなくす運命だったのだと諦める。
せっかくなので自分の分の他に３本分の革紐を用意する。少しだけあの神様をまねて、感謝と友好を３人の友人
たちに示してみたくなったのだ。もちろん勾玉のような力はないが、気持ちというやつだ。
念のために司馬くんの分は２倍の長さにしておこう。彼の場合はもしかしたらすでに他の形で身に着けているかも
しれないが、なんだかんだで優しいので受け取ってはくれるだろう。
地場さんの行動パターンは凡人たる私には読むことができないが、鑑定もどきと勾玉の返却をかねて会いにいか
なくては。タキシードに勾玉…どうなるのだろうか。
綴ちゃんは執筆に集中しているから店に顔を出してくれるのはいつになるかわからない。たまには私の方から差し
入れでも持って遊びに行くのもいいかもしれない。…邪魔しない程度に。
ひとつ、ひとつと予定を組み立てる。いつも通りの日常に小さくプラスを足していきながら手帳を開き、あの場所
で書き込まれた文字を指でなぞる。
さてさて次はどこに行ってみようか？
思いを巡らしていると口元に笑みが浮かんでくる。
ふとこちらを振り向いた祖父が眉間にしわを寄せて言った。
「五葉。顔が気味悪い。さっさと片づけと掃除」
単刀直入、そして道理である。
私は手帳を閉じ、片づけから始めた。
一刀両断、そして無茶である。
波乱万丈の後の帰り道に地場さんから勾玉の鑑定を託されたので早速祖父に聞いてみたが、少しばかり
手に取りちらりと見まわしたその返答はそっけない。
しかし陶磁器に愛を注ぐ祖父のことだ。予想はできたしそもそも大学生の私が手に入れられるものなん
てたかが知れていると思われてもそう不思議はない。
地場さんからものを頼まれるのは珍しいのでできれば粘りたいが…
�‘�手ルート：友人がお母さんからもらった首飾りをぶっちぎってわけてくれた
�⇒Э諭Г垢瓦�昔から人々を見守っているらしいすごいと思われる神様。そのお母さんもたぶん神様。
とても残念だが祖父が納得して「なるほどこりゃすごい！」と言ってくれる姿は一向に思い浮かばない。
目の前に突っ立ってうんうん言葉を探す私に祖父がふと目をくれる。
「五葉が鑑定したいと品を持ってくるなんて珍しいな」
普段からものを見には行くが何か持ってくるなんてそうないと。つと思案し、そういえば今週あたり来る
客がそういったものやらにも詳しかった気がすると教えてくれた。
「茶と菓子を出しとけばペラペラしゃべり出すんじゃあないか」
数日後、やってきたその客人にお茶とお菓子と
「ほぉ、これはまた…」
勾玉を差し出しこれがどういったものかを尋ねる。手に取りまじまじと興味深そうに見ながら話はじめて
くれたので、私は手帳とペンを手に耳を傾けた。
「勾玉は日本古来、護身や招運の力とかとにかく大きな力を持つとされて特に権力者の装身具に使われて
いたんだ。瑪瑙、水晶、翡翠とか様々な石で作られたものが遺跡から出土されて…」
そう言われたことで綴ちゃんが「翡翠」と言っていたようなことを思い出してそれを告げると、出回って
いる翡翠は白や灰色がかったものが多く、こういったきれいな若葉色のものは珍しいことを教えてくれた。
「う〜む…翡翠ね。翡翠はなかなか判断が…」
とライトを取り出しその光を当てると、勾玉が柔らかく、穏やかに輝いた。その美しさに一時言葉もなく見入る。
「こりゃきれいなもんだね〜！うむ。地質の博物館に行けば学芸員に聞いたり分析器で成分みて判断できると思うよ」
客人は少し声を弾ませてそう言ってくれたが、私は少しばかり考えてやめることにした。
勾玉をくれた人物というか神様からすると、あまりに考古学的な目線から調べた場合博物館に寄付しなきゃ
いけないレベルの結果が出るかもしれない。また入手ルートについて邪推されると困る。
それにこれは皆の感謝と、そしてたぶん、友好の証としてくれたものだ。
そこまでして調べるのは少々無粋かなと感じた。
客人に感謝と共にこれは友人からもらったものであり、このまま大事にするという旨を伝えると彼は一瞬
「おや」という顔をした後に
「ふむ、友達からか。それはとても素敵だね」
と温かに笑んでくれた。
そのあとは翡翠の勾玉が持つ意味、翡翠の探し方、見間違えやすい石、糸魚川翡翠と奴奈川姫、建御名方命、
彼が祭神を務める諏訪大社、諏訪大社の奇祭、参加して大怪我をしたこと、七不思議と様々な話をしてくれた。
祖父は少し遠いところで完全にこちらに背を向けて壺を磨いている。
そして私は話の最中に出したお茶と菓子の補充回数を数えるのをやめた。
客人が帰った後、改めて手帳を見直す。
話に出てきた名からすると、今手元にある勾玉の身元は糸魚川翡翠であり、そこの主本人が手ずから息子へ与
えた日本の中でも屈指の由緒正しき翡翠の勾玉であろう。
…なんてものがこの手にあるのだ、と若干遠い目になりながらも美しい若葉色を手に取り眺める。
そして『健康』『長寿』『災難を退ける』『博愛心』『正義感、人望の高まり』『事業の成功』『閉じた心の
解放』『生命の源』『不変性』。これらは勾玉の所有者に与えられるという力の一端であるという。
並べるとなんとも神の力そのもののようで、あまりの万能感に聞いたときは少しばかり唖然としてしまった。
自分がもらった方とは別の、友人から預かった勾玉を見やる。なんとなく、早く返さねばと使命感に駆られる。
手の中の勾玉に、客人がやっていたようにライトを当ててみる。
そうするとやはり柔らかで穏やかに輝き、手の中で若葉色の光を優しく内包する。
それを見ていると、辛い目にあいながらも人を好きだと言ってくれ、その背に自分たちを庇い守ってくれた
神様やそんな彼らを心から慕っていた人々を思い出す。
ボロボロで不安でたまらなかったのに、それでも私たちの言葉に応えてくれた優しい人々。家族のために自らを
盾にし必死に立っていた気丈で優しい少女。
最後の別れ際に会えた少年は元気な体で、はちきれんばかりの笑顔で、嬉しそうに、キラキラしていた。
今は皆がそうして心も体も健やかに日々を過ごしていること、それがずっと続くことを願う。
ふと、勾玉を単体でこのままの状態で持っていてはいつのまにか落とすかなくすかしてしまいそうだと気づく。
確か元は首飾りの１パーツだったのだし、せっかくなのでそれにならって穴に革紐を通して首にかけられる形に
しよう。それでなくしたらもうなくす運命だったのだと諦める。
せっかくなので自分の分の他に３本分の革紐を用意する。少しだけあの神様をまねて、感謝と友好を３人の友人
たちに示してみたくなったのだ。もちろん勾玉のような力はないが、気持ちというやつだ。
念のために司馬くんの分は２倍の長さにしておこう。彼の場合はもしかしたらすでに他の形で身に着けているかも
しれないが、なんだかんだで優しいので受け取ってはくれるだろう。
地場さんの行動パターンは凡人たる私には読むことができないが、鑑定もどきと勾玉の返却をかねて会いにいか
なくては。タキシードに勾玉…どうなるのだろうか。
綴ちゃんは執筆に集中しているから店に顔を出してくれるのはいつになるかわからない。たまには私の方から差し
入れでも持って遊びに行くのもいいかもしれない。…邪魔しない程度に。
ひとつ、ひとつと予定を組み立てる。いつも通りの日常に小さくプラスを足していきながら手帳を開き、あの場所
で書き込まれた文字を指でなぞる。
さてさて次はどこに行ってみようか？
思いを巡らしていると口元に笑みが浮かんでくる。
ふとこちらを振り向いた祖父が眉間にしわを寄せて言った。
「五葉。顔が気味悪い。さっさと片づけと掃除」
単刀直入、そして道理である。
私は手帳を閉じ、片づけから始めた。
改めましてお疲れさまでした。
未熟なところが多く、PLやKPの皆様には過分にご苦労をおかけしました。
そしてラストのエンド分岐では本当に申し訳ありません…
丁寧に訂正してくださってありがとうございました！！
一緒にトゥルーエンドへ辿り着くことができましたこと、本当に感謝しかありません。
RP、リアルアイデア、リアル推理。ずっと気になっていたのですが、
二の足を踏んでましたところ、卓に迎え入れていただきありがとうございました。
セッション中はあまりの自分の中の空っぽさに苦しみましたが、楽しかったし参考になりました。
後日談の方は自分の頭の中を整頓する意味も込めて若干説明が多く、しかも長くなってしまいました。
間違ってたらまずい、んですがとりあえず私の結果として提出します。
それではこの度は誠にお世話になりました。
またご一緒する機会がありましたらどうぞよろしくお願いします。
未熟なところが多く、PLやKPの皆様には過分にご苦労をおかけしました。
そしてラストのエンド分岐では本当に申し訳ありません…
丁寧に訂正してくださってありがとうございました！！
一緒にトゥルーエンドへ辿り着くことができましたこと、本当に感謝しかありません。
RP、リアルアイデア、リアル推理。ずっと気になっていたのですが、
二の足を踏んでましたところ、卓に迎え入れていただきありがとうございました。
セッション中はあまりの自分の中の空っぽさに苦しみましたが、楽しかったし参考になりました。
後日談の方は自分の頭の中を整頓する意味も込めて若干説明が多く、しかも長くなってしまいました。
間違ってたらまずい、んですがとりあえず私の結果として提出します。
それではこの度は誠にお世話になりました。
またご一緒する機会がありましたらどうぞよろしくお願いします。
りーす�い気�/綴 栞さん
PC
PL
「探し物」あとがきより
綴栞です。お読みいただいてありがとうございました。
今回は珍しく一冊で完結する本となりました。
(担当さんにはシリーズにしろと言われましたが、わがままでこの形にしてもらいました…)
その辺の理由としましては突発的に書き上げたくなった…というのが本音です。
実はこの作品、わたしの経験談も少なからず含まれていました。
どの辺がというのは具体的にはいえませんが…。
まぁ、主人公であるミマサカとタカヒコがかっこよく書けたならいいなぁと。
誰かのために動けるというのは素敵なことです。
今回の経験したことやこの本を執筆していて強く思いました。
この本を手に取ったあなたは家族や友人を大切にできていますか？
それはきっと日常の中で再確認することは難しいかもしれません。
でもよかったら、心の片隅に置いておいてください
以下謝辞。
担当さん、いろいろ迷惑かけました。
絵師さん、素敵なイラストをありがとうございます。かっこよかったです。
それと、友人たち。
Tさん、あの格好素敵だけどやっぱり主人公に着せるのには無理があったよ。ごめんね。
Kさん、今回の素敵な冒険に誘ってくれてありがとう。また遊ぼうね。
Sさん、いろいろ優しくしてくれてありがとう。あと、衣装のモデルまたみせてね。
お世話になったみなさん、本当にありがとう。
また、新しいプロットも練っていますので新作もお待ちいただけると幸いです。
それでは、また別の作品で。
綴 栞
今回は珍しく一冊で完結する本となりました。
(担当さんにはシリーズにしろと言われましたが、わがままでこの形にしてもらいました…)
その辺の理由としましては突発的に書き上げたくなった…というのが本音です。
実はこの作品、わたしの経験談も少なからず含まれていました。
どの辺がというのは具体的にはいえませんが…。
まぁ、主人公であるミマサカとタカヒコがかっこよく書けたならいいなぁと。
誰かのために動けるというのは素敵なことです。
今回の経験したことやこの本を執筆していて強く思いました。
この本を手に取ったあなたは家族や友人を大切にできていますか？
それはきっと日常の中で再確認することは難しいかもしれません。
でもよかったら、心の片隅に置いておいてください
以下謝辞。
担当さん、いろいろ迷惑かけました。
絵師さん、素敵なイラストをありがとうございます。かっこよかったです。
それと、友人たち。
Tさん、あの格好素敵だけどやっぱり主人公に着せるのには無理があったよ。ごめんね。
Kさん、今回の素敵な冒険に誘ってくれてありがとう。また遊ぼうね。
Sさん、いろいろ優しくしてくれてありがとう。あと、衣装のモデルまたみせてね。
お世話になったみなさん、本当にありがとう。
また、新しいプロットも練っていますので新作もお待ちいただけると幸いです。
それでは、また別の作品で。
綴 栞
皆様、お疲れ様でした。また、本当にありがとうございました。
未熟なPLで非常に申し訳なかったです。
お世話になりっぱなしで本当、感謝の念しかありません。
ですが、皆様と探索・考察・推理出来て楽しかったです。
今回の経験を活かしPLとしてどうにかスキルアップを図れれば…と思いました。
もしよければ、またどこかでご一緒で来たらと思います。
駄文、失礼いたしました。
未熟なPLで非常に申し訳なかったです。
お世話になりっぱなしで本当、感謝の念しかありません。
ですが、皆様と探索・考察・推理出来て楽しかったです。
今回の経験を活かしPLとしてどうにかスキルアップを図れれば…と思いました。
もしよければ、またどこかでご一緒で来たらと思います。
駄文、失礼いたしました。
マルコさん/司馬 映さん
PC
PL
PC後日談が中々進まないので先に挨拶だけコッソリと…
KP,PLの皆さんお疲れ様でした〜！
PLとして至らぬところが多く、始終迷惑をかけっぱなしでしたが
皆様のおかげでトゥルーENDへたどり着くことが出来ました。本当にありがとうございます…！
やったぜトゥルー！とても嬉しいよお！あとダイスの女神様はもうちょっとデレて下さいお願いします
ではでは、またどこかで卓を囲んだときはよろしくお願い致します〜。
KP,PLの皆さんお疲れ様でした〜！
PLとして至らぬところが多く、始終迷惑をかけっぱなしでしたが
皆様のおかげでトゥルーENDへたどり着くことが出来ました。本当にありがとうございます…！
やったぜトゥルー！とても嬉しいよお！あとダイスの女神様はもうちょっとデレて下さいお願いします
ではでは、またどこかで卓を囲んだときはよろしくお願い致します〜。
探索者たちの後日談
ラッキーマウスさん/古日 高嶺さん
PL 俺はいつも傍観者よ・・・！
足手まといになるためについてきたわけじゃあないってのに・・・！ シナリオ終わってしばらくは、そんな感じに猛省してました。
本当に高嶺さんというかラクマがしたことって、数少ないSANチェックポイントで気絶して介抱されたぐらいという（）
とはいえ、PL的にはPCの前でうなりながら考えつつ楽しいひと時をすごさせていただけたと思っております。若い人たちの勇姿が本当にかっこよくてもうRP忘れて見入っちゃったことも何度かありました。申し訳ない。
何はともあれお疲れ様でした！ すばらしいシナリオを回していただいたKPと、困難に共に立ち会ったPL、PCの皆様に心からの感謝を述べさせていただきます。
本当に高嶺さんというかラクマがしたことって、数少ないSANチェックポイントで気絶して介抱されたぐらいという（）
とはいえ、PL的にはPCの前でうなりながら考えつつ楽しいひと時をすごさせていただけたと思っております。若い人たちの勇姿が本当にかっこよくてもうRP忘れて見入っちゃったことも何度かありました。申し訳ない。
何はともあれお疲れ様でした！ すばらしいシナリオを回していただいたKPと、困難に共に立ち会ったPL、PCの皆様に心からの感謝を述べさせていただきます。
PC 昼下がりの古美術商
今こうして扱っている骨董品の一つ一つも、もしかしたら人ならざるもの達の因縁や歴史を見届けてきたのだろうか。
富士の樹海から帰って、しばしばそんなことを考えては、ため息をつくことが多くなっていた。
あの日の出来事まで、人間の歴史とは、人の一生の積み重ねだと信じて疑わなかったし、骨董品を通じて歴史を知ることは、古来に生きた人々の一生を知ることに等しいものだと私は確信していた。
だけど、人の歴史は、人の築いたものだけに非ず、そこには時として、人間以上に人間らしい存在の介入や共存があったのだろう。彼らを見て、神が人のそばに寄り添い、人が神を心から讃えた時代が確かにあったのだと、そう気づかされた。
「神と呼ばれる存在にろくなモノはいないと思っていたけど・・・本当に、勉強不足ね。」
己の無知を恥じると同時に、少し前に送られてきた1枚の写真に目を向ける。あの富士の樹海での奇妙な出来事からしばらく経つが、あの場に居合わせた未来ある若者達は元気にしているだろうか。国際色豊かな旅行者や、彼の地にて讃えられた神々は、元気にしているだろうか。
「・・・次に宴会をするとき、またみんなで笑えるといいわね。」
祈るようなつぶやきは、誰の耳にも届くことはなかっただろう。
富士の樹海から帰って、しばしばそんなことを考えては、ため息をつくことが多くなっていた。
あの日の出来事まで、人間の歴史とは、人の一生の積み重ねだと信じて疑わなかったし、骨董品を通じて歴史を知ることは、古来に生きた人々の一生を知ることに等しいものだと私は確信していた。
だけど、人の歴史は、人の築いたものだけに非ず、そこには時として、人間以上に人間らしい存在の介入や共存があったのだろう。彼らを見て、神が人のそばに寄り添い、人が神を心から讃えた時代が確かにあったのだと、そう気づかされた。
「神と呼ばれる存在にろくなモノはいないと思っていたけど・・・本当に、勉強不足ね。」
己の無知を恥じると同時に、少し前に送られてきた1枚の写真に目を向ける。あの富士の樹海での奇妙な出来事からしばらく経つが、あの場に居合わせた未来ある若者達は元気にしているだろうか。国際色豊かな旅行者や、彼の地にて讃えられた神々は、元気にしているだろうか。
「・・・次に宴会をするとき、またみんなで笑えるといいわね。」
祈るようなつぶやきは、誰の耳にも届くことはなかっただろう。
パッドさん/山田美由紀さん
PLより
今回もまた・・・迷推理をしでかしてしまいましたと反省中
。リアルアイデアを使いつつ頭の回転をぐるぐる悩ませなが
ら推理しつつ物語もシナリオも楽しめました。
RPのリベンジも出来ましたし満足しました。また卓を囲む機
会があればよろしくお願いします。
。リアルアイデアを使いつつ頭の回転をぐるぐる悩ませなが
ら推理しつつ物語もシナリオも楽しめました。
RPのリベンジも出来ましたし満足しました。また卓を囲む機
会があればよろしくお願いします。
PCうろ覚えな記憶
うーん・・・むにゃむにゃ・・・昨日もまた飲みすぎちゃったなぁ・・・
確か富士山の樹海ツアーに出かけて・・・タイムスリップしたような現実
でも夢でもないような怪現象に遭遇したような。詳しい内容は左笹さんの
荷物を預けた時からあまり覚えていない。というかほぼ思い出せない。今
日も平和に境内の掃除をしつつ日頃の自分の金による汚さを見つめ直して
見る事にした。・・・しかしお賽銭がなぁ・・・そこで私はうちの神社に
ついて少し調べて見た。スマホでググってみたらすぐに検索はヒットした
。あ・・・うち、諏訪神社の分社だったのか・・・道理でご縁があったと
思ったら。
確か富士山の樹海ツアーに出かけて・・・タイムスリップしたような現実
でも夢でもないような怪現象に遭遇したような。詳しい内容は左笹さんの
荷物を預けた時からあまり覚えていない。というかほぼ思い出せない。今
日も平和に境内の掃除をしつつ日頃の自分の金による汚さを見つめ直して
見る事にした。・・・しかしお賽銭がなぁ・・・そこで私はうちの神社に
ついて少し調べて見た。スマホでググってみたらすぐに検索はヒットした
。あ・・・うち、諏訪神社の分社だったのか・・・道理でご縁があったと
思ったら。
橙文さん/左笹 叉作さん
PL
PC
百日紅さん/已己巳己 鈴菜さん
PL
PC
ノルチェさん/柊沢 達人さん
PL
PC
ヨシノさん/安野 陽太さん
PL
PC
KPより
お疲れ様でしたああああああ!
皆さん最後までお付き合いいただき本当に本当にありがとうございました!
8/6 少女漫画修正。さらにゲロ甘い何か
くっそ甘い少女漫画的な何か。
inviting the mountain scream butterfly cried
「あ、あの…!」
「いい加減にしろ。鬱陶しい!」
勇気を出して声を掛けた彼女は、その赤毛の少年に手を振る払われ拍子に足がもつれ洞窟の岩壁に手をついた。
「なっ…危ない!」
振り払ったのは自身だというのに彼は少女が傷つくことを畏れたのかとっさに手を伸ばし、腕を掴んで引き寄せた。
引き寄せようとした。
刹那、視界が一変した
茅目草蝶子はその日観光に来た親類と一緒に富士のふもとへとやってきた。
観光と銘打ってはいたが実質的にいとこちがいの―蝶子の母親の従弟に当たる―サイラスの心の傷を少しでもいやすためだった。
数か月前まで戦場で軍医をしていた彼は任期が終わり家に戻ってきてもその緊張は終わることはなく毎晩魘されては眠れぬために、命を擦りきらすようになってしまっていたから。。
ならばせめて環境を変えて静かな所に行きなさいと彼にとっては祖母、つまり蝶子にとっては曾祖母に当たる人に諭され彼は都会の喧騒とは無縁の静かで長閑な山梨へとやってきた。
それに便乗したのは夏休みでかねてより日本に来たがっていたロバートとベラドンナ、そして東京に住むエイミーの三人で、蝶子の母は増えた来客に苦笑しながらも、その理由が大好きなサイラスの為だったから許した。
そうして、彼女たちは日本の象徴ともいえる富士の麓へと足を運んだというわけである。
湿り気を帯びた日本の夏の空気は、湖と山裾の為にひんやりと涼しく、アメリカの緑とは違ったその鮮やかさにふっとサイラスの張りつめた糸も僅かばかりに解けた。。
「兄さん。サイラス兄さん、洞窟いってみよう?」
蝶子は大好きな兄の袖を引いて、ワザと子供らしい我儘を口にした。
「はいはい。洞窟があるのか?」
それに対し、兄はそれこそ幼い子供に言い聞かせるようにゆっくりとした口調で返事をする。
兄は、優しい人だった。
だからこそ戦地で負った傷は深く、痛みが続くのだろう。
彼女の家は誰かを大切に思う事を一番にと子供たちに伝えてきた。
だけれどその本当の意味は自分自身で見つけなければならなかった。
兄はきっと答えを見つけたから傷を負って、痛みを抱えているのだと母は言っていたから、「前を向いて歩いて行けるまで、待っててあげなさい」と曾祖母は見守っていなさいと蝶子の肩を撫でた。
どうしたら、一生懸命頑張った人を支えてあげる事が出来るのだろうとそれでも蝶子は考えてしまう。
まだ自分だけの答えを得ていないから、少しでも兄の痛みが消えるようにとあれこれ考える。しかし、結局実行する事が出来たのは幼子のように無邪気さを装って兄に甘える事だけだった。
「ん、ああ、私たちですか」
散策ツアーの最中に声をかけてきたのは幼馴染の団体さんだった。
和気あいあいと楽しげに会話をしていたから、その仲の良さは微笑ましくて少しだけヤキモチを焼いた。。
その反対に、最後尾でガイドの男性と話をしている恐らく蝶子より一つか二つ年上と思しき赤毛の少年が、サイラスの様に何処か痛々しい程に焦っていたことが気にかかった。
茅目草蝶子がその少年を目で追ってしまう事に気が付いたのはツアーの最後に大きな洞窟に入った時だった。
ガイドの説明も聞かずに彼はずっと洞窟の一点を睨みつけ険しい表情で何かに耐えていたから。
「あの…」
と勇気を出して声を掛けたのはなぜだろうか。それは蝶子自身にもよく分らなかった。
恐らく誰かの為になりたいと、兄の支えに成れない無力な自分を厭うていたからかもしれない。
「…」
しかし彼は答えなかった。
「あの」
再び声を掛ける。けれど応えはない。聞こえているはずなのに。
迷惑だろうか、いいやきっと迷惑なのだ。
それくらいわかった。けれど放っておくのがどうしてか嫌だった。
どうしてだろうと蝶子は考える。
自分が必要とされたいため?誰かの力になって自分を肯定したいため?
力になりたい。その感情は果たして中途半端な自分を慰める為の物ではないだろうか。
分らない。けれど、どうしても、ここであきらめてしまったら自分の大事な物を永遠に失いそうで怖かった。
「あ、あの…!」
「いい加減にしろ。鬱陶しい!」
彼の裾を引き、いら立ちを隠せない少年は勢いよく踵を返した。蝶子は彼より背が小さかったから彼は体重差をよく分らなかったのだろう。振り払うつもりが勢いをつけすぎたせいで蝶子は固い岩壁に足をもつれさせた。
「なっ…危ない!」
腕を掴まれ、体を引かれる。
しかし固い岩壁も同じ材質で出来た地面も彼女を傷つけることはなかった。
何故ならそこは確かに岩壁に覆われた洞窟であったけれど、それまでいた場所とは全く違った場所であったから。
「おい、無事か?」
聞こえてきたのはぶっきらぼうな低い声だった。
突然の事に呆然としている蝶子の肩を掴み、赤毛の少年は顔を覗き込む。
「え、あっ、は、はい!」
驚き動揺しているけれど、見た目には傷もない蝶子を確認して彼はならばいいと一つ頷いた。
「あ、の…」
「なんだ?」
不機嫌であることは隠していないけれど先ほどとは違って言葉を交わす気になったらしい彼は視線こそ寄越さないけれど蝶子の声に言葉を発する。
「ここ、…その、何処でしょうか?」
「さてなあ。俺にもわからぬ」
神経をとがらせた彼は嫌に古めかしい言葉遣いをして、此方へ来いと手招きした。
「お前に怪我をされるのは本意ではない」
だから後ろについていろと彼は言う。
「分かり…ました」
混乱がまだ収まらない蝶子はその言葉に素直に頷いて従う。無意識に子供の様に少年の手に触れようとして急に気恥ずかしくなってやめた。
二人がいた場所は確かに洞窟と呼んでいい場所だった。
四方を岩壁に覆われ、正面の一方だけが開いている。
けれどこれまでいた場所は溶岩が冷え固まった物であり、小さな気泡や触れれば切れそうなザラザラとした肌をしていたというのに、ここにあるのは長い間水か土の中で丸くなった岩ばかりだ。
よくよく見れば、足元には小さな名も知らない草が生えている。
その片隅に朽ちかけた石碑が落ちていた。
「…これ…は…」
それに気が付いた少年は足を向けそこに彫り込まれた文字を認めると暫し呆然と立ち尽くした。
「あの…どう…」
恐る恐る声をかけ、彼女もその石を見る。
古い文字でよく読めないが「大」という文字と「同」だろうか。四角の中に何か書いてある様な、そんな文字を見付けた。
「まさか…だが、…何故…?」
上向けば目を見開いた少年がいた。
「…!」
鋭く息をのみ、彼は洞窟を飛び出した。慌てて彼女も走る。一瞬だけ外の明るさで目がくらむ。次いで感じたのは物の焼け焦げた匂い。木が十分な空気で燃えなかった時の木酢の酸っぱい匂い。
動物の肉が焼けるにおい。そして、とても嫌な肉が腐り落ちる匂い。
「待って!待ってください!」
少年の背に追いすがり、あたりを見回す。そこにあるのは焼け落ちた住居達だ。しかも歴史の教科書で見るような遥か昔の地面に穴を掘った竪穴式と呼ばれるような古い古い住居。
石を積み木で囲い。草で屋根を作った。とてもとても古い太古の建造物。それが燃えて、黒く焦げていた。
「安澄!楡太!小笹!千富ぃ!」
その真ん中で、少年は叫んだ。
とても大切な者の名だと引き攣れる声音に蝶子は悟る。
彼の声に呼応するように焼けた家の中で何かが動く気配がする。瞬間、酷く嫌なにおいがした。
息をのんで少年に駆け寄る。だが彼はもはや蝶子など眼中にないようだった。
「いないのか!?誰か!小絹!藤彦!居ないのか!なあ!誰か!」
怯えながら、蝶子は彼が泣いているのではないかと思った。その背に隠れようとする癖に、その背を慰める様に裾を掴む自分の身勝手さに泣きたくなる。
「なあ!俺だ!帰って来た!どうか、誰かおらぬのか!?なあ!…なあ…!」
掠れ震える声音。大きく揺れる肩。
彼は急に大人になったように見えたし、急に幼い子供の様にも見えた。
何があったのかは知らない。知る筈もない。けれどだけれど、茅目草蝶子にはただただ名も知らぬ赤毛の少年が誰かを多くの人を只管に愛していたことは分かった。
「誰か…。誰か…」
一滴、ひとしずく、滴るような深い深い情があった。
うなだれる彼の背を触れるか触れまいか悩む蝶子はそれ故に一瞬だけ彼より早くそろそろと近づく異形の群に気が付いた。
それは汚らしい血膿が滲み元の色が分からないほど腫れあがって黒く変色した、化け物だった。
大きいものも小さいものもいる。
それらが一様にそろりそろりと家々の中から這い出してくる。
「ひっ…!」
息をのみ無様にも蝶子は少年の背にしがみ付いた。それによって彼は顔を上げ、異形を認める。
「タカヒコ様」
「ああ、タカヒコ様」
「タカヒコ様」
「お戻りになった」
「お帰りになった」
「ああ、ああ、やっと…」
口々に異形は人の声を発した。
そこにあったのは思慕と歓喜。言葉にならない呼吸のような声が漏れ、詰まったように誰かが泣いている。
けれど、彼はその声を聞いた途端に憤怒の形相でその異形達を睨みつけた。
「…よくも…!よくも俺の民を!我が一族を!」
怒りと悲しみ。それを上回る深い情。否、それがあるからこそ彼はここまで怒り悲しむのだ。
「よくぞ俺の前に姿を現した!ここまでして俺を貶めたいのか!?」
気が付けば彼は一振りの剣を持っていた。
「俺を嘲笑い、俺の愛しい者たちを殺し、剰え侮辱するか!」
下郎がと吐き捨てる彼に異形達は一歩後ずさる。
「タカヒコ様」
「タカヒコ様」
「タカヒコ様」
「ちぃだよ!」
口々に怯えとそれ以上の慕情を募らせる声が聞こえた。
「ねえ、ねえちぃだよ。ねえ、タカ様」
混じる声は大人の男も幼い子供もいた。
「ねえ、ねえ」
とその子は泣いていた。
激情のままにそれでも少年は背中に張り付いた蝶子なぞ知らないように歩を進める。
幼子が更に高く泣き声を上げた。
悲哀の嘆きが遠吠えの様に異形達から立ち上る。
「ねえ、ねえ!」
子供が泣いていた。
「黙れ!黙れ!」
聞くことすら汚らわしいと頭を振り、彼は手にした剣を握りしめる。
何をするつもりかなど、聞かずとも分かった。
「…」
息が上がっていること、心臓が早鐘を打っていること、じっとりと背中に冷や汗が張り付くこと、カラカラに口の中が乾いていることに蝶子は気が付く。
でも、でも駄目だ。
「タカ様!」
泣いている。小さな子が。
駄目だ。
「タカ様ぁ!」
膿と爛れて腫れあがった肢体の化け物が。
泣いている。
「―!駄目です!」
いやだった。きっと何もできなければ、私は私の大事な物を永遠に失ってしまう。
「何をする!切られたいか人の子!」
少年が咆えた。少女が異形を抱え、対峙する。
べっとりと血膿だろうかその異形の体にへばりついた赤黒い粘液が腕や衣服に付着した。手の中にある感触はぶよぶよとしている部分もあればザラザラとして肌に刺さる部分もあった。
腐った物に触れた時の嫌な感触。
少年に切っ先を向けられた。
死の感触が目の前にある。
けれど、いやだった。
「駄目です!駄目だ!」
殆ど悲鳴だった。
「駄目だよ!殺しちゃ、駄目だ!駄目なんです!」
目の前が滲む。鼻の奥が痛い。喉がひりついて上手く呼吸が出来ない。それでも、目を見て伝えなければ。
必死に、大切なモノを失わない様に、戦う。
「貴方は、タカヒコ様でしょう?駄目です。この子を殺したら、駄目です…!」
瞬いて雫を払い彼の眼をまっすぐに見つめる。見失わないように。腕の中で僅かに幼子が身じろぎした。
痛くないだろうかと慌てて蝶子は腕の力をごめんねと緩めた。いつも父母が従兄弟たちがそうやって自分を守ってきた。
だから今度は、私の番だ。目を見開いて間違わないように一度喉の奥に力を込めた。
「この子を殺したら、きっとあなたは自分を責めてしまう。だから、駄目です。…お願いですから」
情けないことに声が震えていた。しかしそれでも、彼には届いた。
「…何故、その名を…?」
ぽっかりと何かを失った様に彼は呟き、蝶子は答えた。
「皆が…そう貴方を呼んでいるからです。『お帰りになった』って、…喜んでます。この子は『ちぃ』って自分の事を呼んでました。…ねえ、ちぃちゃん、お名前は?」
全力疾走する心臓は、腕に抱いた幼子が「ちとみ」と答えたことでようやっと収まってくれた。
「そっかぁ…千富ちゃんかぁ…」
目に映るのは悍ましい粘液と腫れあがった皮膚に覆われた化生の物だ。手に伝わる感触は最悪と言ってもいい。
それでも茅目草蝶子は、周囲の人間が自身を愛してくれていると知っている子供は、同じだけ誰かを愛せる事を、肌に染みるように知っていたから。
「可愛いお名前だね」
そう言ってザラザラとした頭を撫でて、頬を寄せた。
周囲はざわりと蠢いた。しかし決していやな雰囲気はない。純粋に驚いて、そして緊張が緩和した時のどよめきだった。彼等は緩やかに輪を狭め、少年の元へと近寄ってくる。
中心にいる赤毛の少年はその真逆で蝶子とその腕の中の異形を見詰め、彫像の様に動けずにいた。
「ちとみ!」
輪の中から腕の中の異形よりは一回りほど大きな異形が飛び出してきた。
人間で例えるなら、小学校低学年くらいの背丈の、男の子の声をした、異形。
「にぃに!」
と、そう千富は呼んだ。
「ずるいぞ!さきにいっちゃうなんて!」
ぷんぷんと怒った様な声音と口調。
きっと仲の良い兄妹なのだろうと蝶子は思った。
「ねえ、君のお名前は?」
だから自然と尋ねた。
「…千種」
「千種君に、千富ちゃんかぁ…」
「うん」
男の子が頷いた。女の子は、ぶんぶんと元気に腕を振り回す。
「千種?…そこにいるのは千種なのか?」
呆然とした声が少年の唇から零れた。
「そうだよ!タカヒコ様!お帰りなさい!」
元気いっぱいに嬉しそうに、小学校だったら褒められるくらいに千種は言って勢いよく頭を下げた。
カランと乾いた音を立て、息をのんだ少年の手から剣が滑り落ちる。
「…!」
「おかえりなさいって、言ってます」
蝶子が伝えれば、彼は膝から崩れ落ちた。
お帰りなさい、お帰りなさい。よくぞお戻りになられました。ああ、おいたわしや。どうかお休みください。大丈夫ですから。わたくしたちは何ともないのです。
貴方にそんな顔をさせたくないのです。
異形の者たちは口々に啜り泣きながら唯々少年の帰りを喜び、そうして少年を哀れんでいた。
どうしようもなく唯々彼を慕い思っていると。
労わりの言葉をかけていた。
「貴方が帰ってきてくれて嬉しいって。皆そう言ってます」
伝えなくてはと考える事もなくそう口に出した。声が震えていた。
「大丈夫だから。安心してくださいって、皆…」
どうしようもない程に、彼らは思いあっていた。
「…あ、ぁ、あぁああああああああああああ!」
赤い髪の少年は、額を地面にこすり付け、慟哭した。
「済まない…!済まない!俺が…俺がふがいないばかりに…!」
カチカチと奥歯を鳴らして、彼が泣いていた。
「俺が守れなかったばかりに…この…このような…!」
見れば既に湖みたいな痕が出来ていた。
「何故…!何故お前たちがこのような…!そこまでして恨むか!?恨むなら憎むなら俺だけに…!何故!?どうして俺の…俺の…!」
軋みねじれ、悶える。壊れてしまいそうな位に。
「済まない…すまない…!俺のせいだ…!」
何度も頭を打ち付け彼は詫びた。
自分の力が足りなかったから。自分がふがいなかったから。このような苦しみを屈辱を与えてしまったと。
「俺が守らねばならないというのに!それなのに俺は…俺は剣を…!」
嗚咽に喉が詰まり指が土を掻き毟って血が滲んだ。
ざわざわと彼の愛した者たちが泣きながら違う違うと声をそろえる。
違うのに、貴方様の苦しみは知っているのに。だから待っていた。
誰よりも愛してくれているから。
誰よりも慈しんでくれるから。
誰よりも守ろうと必死だから。
全部知っている。それを感じていた。
だから、だから待ち続けていた。
待ち続けることが出来た。
嬉しいのだ。どうしようもなく嬉しいのだ。
それを伝えたいのに、彼には伝わらない。もどかしくてもどかしくて彼らは泣いている。
気が付けば、音もなく茅目草蝶子も泣いていた。
異形達が少年を取り囲み、ただただ労をねぎらい、お帰りなさいと感謝の言葉を伝えている。
周囲を見回して蝶子はきゅっと腕の中の幼子を抱き直すともう片方の手で千種の手を取った。
大人しく子供たちは付いてきてくれる。
彼女が足を踏み出せば、異形達は道を開けてくれた。
「…タカヒコさん」
男の子の手を離し、彼の肩に手を置いた。
「…大丈夫です。大丈夫ですから。だから、どうか」
ちゃんと話を聞いてあげてください。と蝶子は祈るように囁いた。
「なかないで、タカヒコ様」
隣に立つ千種が自身も半べそでそう言った。否、そういう風に見えたのだ。元々親類の多い彼女にはそう言った微かな仕草も見覚えがあった。
途端、現金なことにも安堵した。
何だ。同じだったんだ。
そっと胸の中でそう呟き、しがみ付いている千富の額に頬を寄せて大丈夫だよと安心させるために小さなキスをした。
いつもいつも両親祖父母や従兄弟たちや子守りのお兄ちゃんがしてくれるみたいに。
「あ、あー!」
蝶子の励ましに背を押されたのか腕の中の幼子がむつかって飛出し、少年の前にぽてぽてと歩みを進めると、両手を突き出した。視界の中にそれが入ってきた彼は顔を上げて、変わり果てたその子を見る。
「ん!ん!」
小さな手には何かが乗っかっていた。
「ああ…覚えて、いてくれたのか…」
吐息に紛れるように彼は魂ごろ絞り出すように呟いた。。
その手に乗る木の実を、彼は見覚えがあった。遠い遠い昔に交わした他愛のない約束。
目の前にいるのはどす黒い触手と腫れあがった様な肉芽で全身を覆い、じくじくと汚らしい血膿をまき散らす異形。
嘗てあったのは、紅葉の様に愛らしい小さな手だった。柔らかくて頼りなくて、暖かくて少し湿っていて。
腰を下ろしていればとてとて覚束ない足取りでやってきてはてちてち痛くもない平手打ちを太ももにくらわせて抱き上げろと催促してきたものだ。
守りたかったものだった。
異形は唸る。彼には獣の声にしか聞こえなかった。
周囲では同じようにすすり泣くような鳴き声が聞こえる。
何を言っているのか、分らなかった。
遠い遠い昔に共に暮らし、共に生きたものたち。遠い遠い昔に彼が愛した守りたかった者たち。
一人一人名前も顔もつぶさに覚えている。どんな声だったかもどんなふうに笑うのかも全て。
それが何一つ分らない。
それがどうしようもなく、悲しかった。
「いっしょに埋める約束をしたのですか?」
異形の中、ただ一人人の形をしているのは彼が巻き込んでしまった人間の少女だ。
どうしてか彼女は声が聞き取れるらしい。
「ああ…そうだ。春になったら、一緒に埋めると…」
芽が出たら水をやって、大きくなったらまた一緒に木の実を食べようとそう遠い遠い日に秘密の約束をしたのだ。
「千種君怒ってますよ?千富ばっかり貴方と約束してずるいって」
少女の体には異形の血膿がべっとりと着いていた。抱きしめたからその頬にもその長い黒髪にも、勇気づけるためのお呪いをしたから唇にすら。
「そうか…それは…済まなかったな、千種」
ボロボロに泣いた顔でその子を見上げると、千種は腕を後ろに組んで身をくねらせた。
この仕草はこの子が拗ねているときの物だ。
ああ、俺は確かに覚えている。
確かに愛している。
帰りたかった。
帰りたかった。
この者たちが待つあの邑へ。
あの家へ。
あの炉端へ。
帰りたかった。
突きあげたのは例える事の出来ない「かなしみ」。
奪われた友の腕。
殺されてしまった民の骨。
友を優先したのは簡単なことだ。
俺は民を失いたくなどなかったのだ。
その為に恭順を示唆した友を戦禍の中に引き入れてしまった。
その癖に俺は友の腕を奪われ、民を失ったのだ。
どうして長足る俺が真っ当な道を示さずにいられようか。
何よりも愛おしく何よりも守りたかったこの者らに恥じることなど出来ようか。
守りたかった。守りたかったのだ。花を飾る娘らの長い髪を。川の飛沫に光る子らの足を。地の実りを歌う女達を。研ぎ澄まされた穂先をまっすぐに見据える男たちの眼差しを。
青い空に煮炊きの煙が上がる日々を。
ただそれだけの事だった。
「…ずっと待ってたから、ご褒美頂戴。って言ってます」
そっと少女が言葉を伝えてくれた。その言葉に対して千種たちの母親が叱っていたことすら。
「まったく…変わらんなぁ…」
しみじみと肺の中の空気を全て吐き出すように彼は呟いた。
「大丈夫…ですか?」
ふり仰げば泣き腫らした顔で少女が笑っている。
「ああ…」
それに彼も少し微笑んで答えた。
差し伸べられた手を取って立ち上がる。周りから聞こえる呻き声は安堵の溜息だった。
「…すまなかったな。人の子」
「いいえ。貴方もあの人たちも、傷つかずに済んで…本当に良かった…」
ほぅっと息を漏らす少女。また一つ涙が零れ落ちた。
泣くなと頭でも撫でようとして、土にまみれ血のにじんだそれに気が付く。
けれど彼女は自分が持っていたであろう手巾でパタパタと彼の血と土を拭った。
「痛くないですか?」
「…」
ああ、参った。
「ああ、平気だ。この程度」
この子は、どうにも優しい。
「済まなかったな。人の子。お前を置いていってしまった」
約束を破るのは申し訳が立たないと頭を下げると慌てて大丈夫だと手を振った。
ざわざわと周りが何か言っている。どうせ、俺がこのこを置いてけぼりにしたことを囃し立てているのだろう。
そう尋ねるとやはりそうだと答えが帰って来た。
「仕方のない連中だ」
「でも良かったです。…やっと笑ってくれた」
「そうか」
「ええ…」
耳に届く声音は穏やかだった。
「もう、大丈夫です。だから、お話ししましょうよ。ね?」
言葉は私が伝えますから、と少女が笑った。少し眩しいものでも見たように彼は目を細めた。
確かに敵勢によって殺されたこと。骸は討ち捨てられ、家々には火を、畑には塩をと彼の治めた土地は完膚なきまでに叩き潰されたこと。
それなのに何時ごろからか、気が付けば生前と同じ家に住み生前と同じ姿でここに暮らしていたこと。
此処は何一つ帰る事が出来ない事。
今日の終わりにやってくるのはまた今日であり、此処には死がない。老いも病もない。裏を返せば生がないという事。
否、ここにあるのは骸だけ。御魂は何処かへ繋ぎとめられ、無理矢理に生かされ続けている。
その証拠に、いくら殺されても死ねないという事。
何時ごろかにやってきた異国の人が自分たちを見て驚き罵り、彼らの去った後には炎と翼をもった人がやってきては必ず彼らを殺していくこと。
焼けただれ肉が切られても、もう痛みもないという事。
終る事のない日々だけがここにあるという事。
他の村へ向かう事は出来ないという事。
聞きだしたことは大まかに言えばざっとこんなところだった。
それを彼に伝えてくれた少女の顔色は真っ青で、大丈夫かと問えば唇をかみしめて平気だと頷いた。
「無理はするなよ」
「いいえ、いいえ!大丈夫です!」
頭をふってきっと少女は前を見据えた。
「人の子よ。頼みがある」
「は、はい、なんでしょうか?」
「俺と共に来てくれ。今聞いた通りだ。お前一人を残すのは危険すぎる。先ほどは置いていってしまってすまなんだな。案ずるな、いざとなればお前だけでも家元へ戻す事は約束しよう」
巻き込んでしまった娘だ。帰さずにしてどうしろというのだ。
「はい!」
元気よく頷いて少女が微笑んだ。
話を聞き終えて、では行くかと焼けた地面を歩き閉ざされた箇所の手前までやってくると、足元で付いてきてしまった千富が飛び跳ねた。
「ねぇね!ねえね!」
何を言っているのかは彼には分らないが仕草に見覚えがあった。
「なぁに?千富ちゃん。抱っこ?」
その意図を汲み取って蝶子が嫌がるそぶりも見せずに千富を抱き上げる。ボロボロの化け物を。
嬉しそうに唸っているからきっと笑っているのだろう。
ああ、そうだ。と彼ははたと気が付いた。
「お前、名はなんという?」
尋ねるのをすっかり忘れてしまっていた。
その娘はあっと目を見開いて次いでむぅと頬を膨らませた。
「はは、すまんすまん」
特に悪びれる様子もなく彼は詫びる。
「蝶子です。茅目草蝶子。蝶々の子供で蝶子」
「そうか、いい名前だな」
「ありがとうございます。おばあちゃんが付けてくれたんですよ」
擽ったそうにクスクス身をよじって、蝶子は腕の中の千富を撫でた。千富がその指を掴んで弄って彼女はされるがままにしていた。
「お前で良かった」
祈りにも似た響きで彼はぽつりと苦笑を漏らした。
聖書の一節が脳裏によみがえった。
"He drove out the man; and at the east of the garden of Eden he placed the cherubim, and a sword flaming and turning to guard the way to the tree of life."
廻る剣の炎とケルビム。
知恵の木と生命の木がエデンの園にはあった。その二つの木のみを口にすれば人は神に成れた。
だから神は知恵の実を食べた人をエデンから追い出して、決して生命の木の実を食べないようにと守った。
ざわざわと空の一角が騒がしくて、それと同時に邑の人達が口々に逃げてくださいと叫び声を上げた。
現れたのは翼の生えた美しい天使と、燃え盛る炎。
羽虫を追い払うような無造作さと無遠慮さでそれらは異形達を殺し始めた。柔和な天使はその繊手をふるって風を起こし、雹を振りそそいで文字通り押しつぶしていく。炎はもっと簡単だ。耳を持たぬそれは彼らの悲鳴など聞こえない。目を持たないそれは彼らの肌が溶ける様を見ない。
永遠に死なない、死ぬことを許されない人達。。
ああ、これはきっと、謂れのない罪に下された誰かの罰だ。
慈悲なんてない。感情すらない。唯々掃除をする際に箒の先に虫の死骸を見つけた様な乾燥した義務。
「あ…あ…!」
気を狂わせることも出来ないで、ひたすらに待っていた彼の民。
その事実を悟った瞬間、言いようのない感情が蝶子の胸に渦巻いて、醜い化け物が燃やされていく様が断末魔を上げ、のた打ち回り、ちりちりと燻されていく様が網膜に焼付いた。
「あ、やめ…やめて…!」
声に出したのに、音がなかった。足を踏み出そうとしたのに動けなかった。
なんて情けない。なんて惨めったらしい。私は何もできやしない。無力さに自分が嫌になる。
でも。
「そうかお前か。ああ、ああ!お前たちか!お前たちが!」
傍らにいるのはずっとずっと自分よりも強いのに、ずっとずっと自分よりも強く自身を呪っている彼だった。
彼はまた泣いていた。カッと見開いた目はひたと瞬きも許さずケルビム達を見据えていた。狂暴なほどに笑う口から発したのは震える事さえ出来ない怒りの声。
「殺してやる…!必ずや殺す…!俺の民をよくぞここまで!」
低く低く喉の奥で拉げてしまった言葉。守りたいのに、救う事が出来ない。ここで彼女の手を離して飛び出しても、決して彼の本当に大切なモノの結末を変える事が出来ない。
彼は聡明だ。恐ろしい程に冷静だった。全ては彼らを守る為。約束を違えないために背負うものの重さで自分自身を縛り上げる。どうしようもなく優しくてどうしようもなく誠実だから。
「来い、蝶子!」
だから彼は蝶子の手を取る。
何も彼女は言えなかった。
震える彼の手に、何を言えばいい。誰よりも自分自身を責めているこの人にいったいどんな言葉を掛けたらいい?
「…!」
腕の中の幼子は毎日殺しに来るケルビム達に怯えて顔を埋めていた。
「平気だ千富。お前も蝶子も俺が守る」
強い口調でそうその人は言った。
「大丈夫だから。…だから、泣くな」
心底優しい声でその人はそう言った。
安心させるように穏やかに微笑んで。
「大丈夫だ。大丈夫。俺が守るよ」
その両目にあったのは決意と慈愛。
ああ、この人は本当に。優しい人だ。
ああ、私が決して失いたくなかったのは。
この人だ。
答えが見つかった。
森を抜ける中、今しがたの殺戮など露ほども感じさせぬほど静かなその中で、魔女の血を引く少女は心を定めた。
「なら、私が貴方の味方になります」
その声は嫌に澄んで。よく聞こえた。
視線を上げれば真っ直ぐに自分を見つめる娘がいた。
きゅっと口を引き結び、その少女はもう一度誓を口にする。
「私が、貴方を守ります。皆を大事にして守ろうとする貴方を」
気が付けば森の一角の開けた場所の用だった。中空には日が差して、暖かな光を注いでいる。
「お前…」
彼は瞠目し彼女を見た。そうして思い知った。彼がどこかで願っていたように娘は女になっていた。
「皆が貴方を慕ってる。皆を貴方が愛してる。守ろうと必死になって、今だって凄い心配で本当は飛び出していきたいくせに。頑張って頑張って…!」
ぱらぱら雫が双眸から流れ落ちていた。
「じゃあ一体、誰が貴方を守るっていうんですか!?全部を背負って全部を受け入れて、許して、愛して守ろうとする貴方を!」
参ったな。本当に。
「なら、私が!私が貴方の味方になります!貴方を許して!貴方を守ります!」
泣くな、頼むから。
煤けた指先を伸ばし、彼は熱と煙に燻されて張り付いてしまった前髪を払ってやってそのまま彼女の頭を引き寄せた。
間に挟まれた千富が蝶子を泣かすなと抗議して唸り、彼は苦笑して返した。
「私は…!私は貴方が悲しむのも苦しむのももう見たくないんです…。だってこんなに…こんなに優しいのに…」
彼の肩口に顔を埋め、蝶子は嗚咽を噛み殺す。
「もう貴方に、自分自身を責めないで欲しいんです。…どうか、どうか…私が許しますから…受け入れますからどうか…お願いです…ねえ…」
その指が大切そうに千富の頬を撫でるのを彼は見た。
「だからお願いですそんな風に笑わないで」
その指が次は彼の裾を掴んで乞うのを彼は見た。
「大丈夫なんて言わないでいいんです」
その指を取れば、力を込めて握り返されるのを彼は知った。
「私が、全部受け止めますから」
まるで呪いのような真っ直ぐな言祝ぎ。
深く長く息を吐いて、彼は顔を上げた蝶子の眦を拭ってそっと笑った。
「ありがとう蝶子。お前で良かった」
「あ、あの…!」
「いい加減にしろ。鬱陶しい!」
勇気を出して声を掛けた彼女は、その赤毛の少年に手を振る払われ拍子に足がもつれ洞窟の岩壁に手をついた。
「なっ…危ない!」
振り払ったのは自身だというのに彼は少女が傷つくことを畏れたのかとっさに手を伸ばし、腕を掴んで引き寄せた。
引き寄せようとした。
刹那、視界が一変した
茅目草蝶子はその日観光に来た親類と一緒に富士のふもとへとやってきた。
観光と銘打ってはいたが実質的にいとこちがいの―蝶子の母親の従弟に当たる―サイラスの心の傷を少しでもいやすためだった。
数か月前まで戦場で軍医をしていた彼は任期が終わり家に戻ってきてもその緊張は終わることはなく毎晩魘されては眠れぬために、命を擦りきらすようになってしまっていたから。。
ならばせめて環境を変えて静かな所に行きなさいと彼にとっては祖母、つまり蝶子にとっては曾祖母に当たる人に諭され彼は都会の喧騒とは無縁の静かで長閑な山梨へとやってきた。
それに便乗したのは夏休みでかねてより日本に来たがっていたロバートとベラドンナ、そして東京に住むエイミーの三人で、蝶子の母は増えた来客に苦笑しながらも、その理由が大好きなサイラスの為だったから許した。
そうして、彼女たちは日本の象徴ともいえる富士の麓へと足を運んだというわけである。
湿り気を帯びた日本の夏の空気は、湖と山裾の為にひんやりと涼しく、アメリカの緑とは違ったその鮮やかさにふっとサイラスの張りつめた糸も僅かばかりに解けた。。
「兄さん。サイラス兄さん、洞窟いってみよう?」
蝶子は大好きな兄の袖を引いて、ワザと子供らしい我儘を口にした。
「はいはい。洞窟があるのか?」
それに対し、兄はそれこそ幼い子供に言い聞かせるようにゆっくりとした口調で返事をする。
兄は、優しい人だった。
だからこそ戦地で負った傷は深く、痛みが続くのだろう。
彼女の家は誰かを大切に思う事を一番にと子供たちに伝えてきた。
だけれどその本当の意味は自分自身で見つけなければならなかった。
兄はきっと答えを見つけたから傷を負って、痛みを抱えているのだと母は言っていたから、「前を向いて歩いて行けるまで、待っててあげなさい」と曾祖母は見守っていなさいと蝶子の肩を撫でた。
どうしたら、一生懸命頑張った人を支えてあげる事が出来るのだろうとそれでも蝶子は考えてしまう。
まだ自分だけの答えを得ていないから、少しでも兄の痛みが消えるようにとあれこれ考える。しかし、結局実行する事が出来たのは幼子のように無邪気さを装って兄に甘える事だけだった。
「ん、ああ、私たちですか」
散策ツアーの最中に声をかけてきたのは幼馴染の団体さんだった。
和気あいあいと楽しげに会話をしていたから、その仲の良さは微笑ましくて少しだけヤキモチを焼いた。。
その反対に、最後尾でガイドの男性と話をしている恐らく蝶子より一つか二つ年上と思しき赤毛の少年が、サイラスの様に何処か痛々しい程に焦っていたことが気にかかった。
茅目草蝶子がその少年を目で追ってしまう事に気が付いたのはツアーの最後に大きな洞窟に入った時だった。
ガイドの説明も聞かずに彼はずっと洞窟の一点を睨みつけ険しい表情で何かに耐えていたから。
「あの…」
と勇気を出して声を掛けたのはなぜだろうか。それは蝶子自身にもよく分らなかった。
恐らく誰かの為になりたいと、兄の支えに成れない無力な自分を厭うていたからかもしれない。
「…」
しかし彼は答えなかった。
「あの」
再び声を掛ける。けれど応えはない。聞こえているはずなのに。
迷惑だろうか、いいやきっと迷惑なのだ。
それくらいわかった。けれど放っておくのがどうしてか嫌だった。
どうしてだろうと蝶子は考える。
自分が必要とされたいため?誰かの力になって自分を肯定したいため?
力になりたい。その感情は果たして中途半端な自分を慰める為の物ではないだろうか。
分らない。けれど、どうしても、ここであきらめてしまったら自分の大事な物を永遠に失いそうで怖かった。
「あ、あの…!」
「いい加減にしろ。鬱陶しい!」
彼の裾を引き、いら立ちを隠せない少年は勢いよく踵を返した。蝶子は彼より背が小さかったから彼は体重差をよく分らなかったのだろう。振り払うつもりが勢いをつけすぎたせいで蝶子は固い岩壁に足をもつれさせた。
「なっ…危ない!」
腕を掴まれ、体を引かれる。
しかし固い岩壁も同じ材質で出来た地面も彼女を傷つけることはなかった。
何故ならそこは確かに岩壁に覆われた洞窟であったけれど、それまでいた場所とは全く違った場所であったから。
「おい、無事か?」
聞こえてきたのはぶっきらぼうな低い声だった。
突然の事に呆然としている蝶子の肩を掴み、赤毛の少年は顔を覗き込む。
「え、あっ、は、はい!」
驚き動揺しているけれど、見た目には傷もない蝶子を確認して彼はならばいいと一つ頷いた。
「あ、の…」
「なんだ?」
不機嫌であることは隠していないけれど先ほどとは違って言葉を交わす気になったらしい彼は視線こそ寄越さないけれど蝶子の声に言葉を発する。
「ここ、…その、何処でしょうか?」
「さてなあ。俺にもわからぬ」
神経をとがらせた彼は嫌に古めかしい言葉遣いをして、此方へ来いと手招きした。
「お前に怪我をされるのは本意ではない」
だから後ろについていろと彼は言う。
「分かり…ました」
混乱がまだ収まらない蝶子はその言葉に素直に頷いて従う。無意識に子供の様に少年の手に触れようとして急に気恥ずかしくなってやめた。
二人がいた場所は確かに洞窟と呼んでいい場所だった。
四方を岩壁に覆われ、正面の一方だけが開いている。
けれどこれまでいた場所は溶岩が冷え固まった物であり、小さな気泡や触れれば切れそうなザラザラとした肌をしていたというのに、ここにあるのは長い間水か土の中で丸くなった岩ばかりだ。
よくよく見れば、足元には小さな名も知らない草が生えている。
その片隅に朽ちかけた石碑が落ちていた。
「…これ…は…」
それに気が付いた少年は足を向けそこに彫り込まれた文字を認めると暫し呆然と立ち尽くした。
「あの…どう…」
恐る恐る声をかけ、彼女もその石を見る。
古い文字でよく読めないが「大」という文字と「同」だろうか。四角の中に何か書いてある様な、そんな文字を見付けた。
「まさか…だが、…何故…?」
上向けば目を見開いた少年がいた。
「…!」
鋭く息をのみ、彼は洞窟を飛び出した。慌てて彼女も走る。一瞬だけ外の明るさで目がくらむ。次いで感じたのは物の焼け焦げた匂い。木が十分な空気で燃えなかった時の木酢の酸っぱい匂い。
動物の肉が焼けるにおい。そして、とても嫌な肉が腐り落ちる匂い。
「待って!待ってください!」
少年の背に追いすがり、あたりを見回す。そこにあるのは焼け落ちた住居達だ。しかも歴史の教科書で見るような遥か昔の地面に穴を掘った竪穴式と呼ばれるような古い古い住居。
石を積み木で囲い。草で屋根を作った。とてもとても古い太古の建造物。それが燃えて、黒く焦げていた。
「安澄!楡太!小笹!千富ぃ!」
その真ん中で、少年は叫んだ。
とても大切な者の名だと引き攣れる声音に蝶子は悟る。
彼の声に呼応するように焼けた家の中で何かが動く気配がする。瞬間、酷く嫌なにおいがした。
息をのんで少年に駆け寄る。だが彼はもはや蝶子など眼中にないようだった。
「いないのか!?誰か!小絹!藤彦!居ないのか!なあ!誰か!」
怯えながら、蝶子は彼が泣いているのではないかと思った。その背に隠れようとする癖に、その背を慰める様に裾を掴む自分の身勝手さに泣きたくなる。
「なあ!俺だ!帰って来た!どうか、誰かおらぬのか!?なあ!…なあ…!」
掠れ震える声音。大きく揺れる肩。
彼は急に大人になったように見えたし、急に幼い子供の様にも見えた。
何があったのかは知らない。知る筈もない。けれどだけれど、茅目草蝶子にはただただ名も知らぬ赤毛の少年が誰かを多くの人を只管に愛していたことは分かった。
「誰か…。誰か…」
一滴、ひとしずく、滴るような深い深い情があった。
うなだれる彼の背を触れるか触れまいか悩む蝶子はそれ故に一瞬だけ彼より早くそろそろと近づく異形の群に気が付いた。
それは汚らしい血膿が滲み元の色が分からないほど腫れあがって黒く変色した、化け物だった。
大きいものも小さいものもいる。
それらが一様にそろりそろりと家々の中から這い出してくる。
「ひっ…!」
息をのみ無様にも蝶子は少年の背にしがみ付いた。それによって彼は顔を上げ、異形を認める。
「タカヒコ様」
「ああ、タカヒコ様」
「タカヒコ様」
「お戻りになった」
「お帰りになった」
「ああ、ああ、やっと…」
口々に異形は人の声を発した。
そこにあったのは思慕と歓喜。言葉にならない呼吸のような声が漏れ、詰まったように誰かが泣いている。
けれど、彼はその声を聞いた途端に憤怒の形相でその異形達を睨みつけた。
「…よくも…!よくも俺の民を!我が一族を!」
怒りと悲しみ。それを上回る深い情。否、それがあるからこそ彼はここまで怒り悲しむのだ。
「よくぞ俺の前に姿を現した!ここまでして俺を貶めたいのか!?」
気が付けば彼は一振りの剣を持っていた。
「俺を嘲笑い、俺の愛しい者たちを殺し、剰え侮辱するか!」
下郎がと吐き捨てる彼に異形達は一歩後ずさる。
「タカヒコ様」
「タカヒコ様」
「タカヒコ様」
「ちぃだよ!」
口々に怯えとそれ以上の慕情を募らせる声が聞こえた。
「ねえ、ねえちぃだよ。ねえ、タカ様」
混じる声は大人の男も幼い子供もいた。
「ねえ、ねえ」
とその子は泣いていた。
激情のままにそれでも少年は背中に張り付いた蝶子なぞ知らないように歩を進める。
幼子が更に高く泣き声を上げた。
悲哀の嘆きが遠吠えの様に異形達から立ち上る。
「ねえ、ねえ!」
子供が泣いていた。
「黙れ!黙れ!」
聞くことすら汚らわしいと頭を振り、彼は手にした剣を握りしめる。
何をするつもりかなど、聞かずとも分かった。
「…」
息が上がっていること、心臓が早鐘を打っていること、じっとりと背中に冷や汗が張り付くこと、カラカラに口の中が乾いていることに蝶子は気が付く。
でも、でも駄目だ。
「タカ様!」
泣いている。小さな子が。
駄目だ。
「タカ様ぁ!」
膿と爛れて腫れあがった肢体の化け物が。
泣いている。
「―!駄目です!」
いやだった。きっと何もできなければ、私は私の大事な物を永遠に失ってしまう。
「何をする!切られたいか人の子!」
少年が咆えた。少女が異形を抱え、対峙する。
べっとりと血膿だろうかその異形の体にへばりついた赤黒い粘液が腕や衣服に付着した。手の中にある感触はぶよぶよとしている部分もあればザラザラとして肌に刺さる部分もあった。
腐った物に触れた時の嫌な感触。
少年に切っ先を向けられた。
死の感触が目の前にある。
けれど、いやだった。
「駄目です!駄目だ!」
殆ど悲鳴だった。
「駄目だよ!殺しちゃ、駄目だ!駄目なんです!」
目の前が滲む。鼻の奥が痛い。喉がひりついて上手く呼吸が出来ない。それでも、目を見て伝えなければ。
必死に、大切なモノを失わない様に、戦う。
「貴方は、タカヒコ様でしょう?駄目です。この子を殺したら、駄目です…!」
瞬いて雫を払い彼の眼をまっすぐに見つめる。見失わないように。腕の中で僅かに幼子が身じろぎした。
痛くないだろうかと慌てて蝶子は腕の力をごめんねと緩めた。いつも父母が従兄弟たちがそうやって自分を守ってきた。
だから今度は、私の番だ。目を見開いて間違わないように一度喉の奥に力を込めた。
「この子を殺したら、きっとあなたは自分を責めてしまう。だから、駄目です。…お願いですから」
情けないことに声が震えていた。しかしそれでも、彼には届いた。
「…何故、その名を…?」
ぽっかりと何かを失った様に彼は呟き、蝶子は答えた。
「皆が…そう貴方を呼んでいるからです。『お帰りになった』って、…喜んでます。この子は『ちぃ』って自分の事を呼んでました。…ねえ、ちぃちゃん、お名前は?」
全力疾走する心臓は、腕に抱いた幼子が「ちとみ」と答えたことでようやっと収まってくれた。
「そっかぁ…千富ちゃんかぁ…」
目に映るのは悍ましい粘液と腫れあがった皮膚に覆われた化生の物だ。手に伝わる感触は最悪と言ってもいい。
それでも茅目草蝶子は、周囲の人間が自身を愛してくれていると知っている子供は、同じだけ誰かを愛せる事を、肌に染みるように知っていたから。
「可愛いお名前だね」
そう言ってザラザラとした頭を撫でて、頬を寄せた。
周囲はざわりと蠢いた。しかし決していやな雰囲気はない。純粋に驚いて、そして緊張が緩和した時のどよめきだった。彼等は緩やかに輪を狭め、少年の元へと近寄ってくる。
中心にいる赤毛の少年はその真逆で蝶子とその腕の中の異形を見詰め、彫像の様に動けずにいた。
「ちとみ!」
輪の中から腕の中の異形よりは一回りほど大きな異形が飛び出してきた。
人間で例えるなら、小学校低学年くらいの背丈の、男の子の声をした、異形。
「にぃに!」
と、そう千富は呼んだ。
「ずるいぞ!さきにいっちゃうなんて!」
ぷんぷんと怒った様な声音と口調。
きっと仲の良い兄妹なのだろうと蝶子は思った。
「ねえ、君のお名前は?」
だから自然と尋ねた。
「…千種」
「千種君に、千富ちゃんかぁ…」
「うん」
男の子が頷いた。女の子は、ぶんぶんと元気に腕を振り回す。
「千種?…そこにいるのは千種なのか?」
呆然とした声が少年の唇から零れた。
「そうだよ!タカヒコ様!お帰りなさい!」
元気いっぱいに嬉しそうに、小学校だったら褒められるくらいに千種は言って勢いよく頭を下げた。
カランと乾いた音を立て、息をのんだ少年の手から剣が滑り落ちる。
「…!」
「おかえりなさいって、言ってます」
蝶子が伝えれば、彼は膝から崩れ落ちた。
お帰りなさい、お帰りなさい。よくぞお戻りになられました。ああ、おいたわしや。どうかお休みください。大丈夫ですから。わたくしたちは何ともないのです。
貴方にそんな顔をさせたくないのです。
異形の者たちは口々に啜り泣きながら唯々少年の帰りを喜び、そうして少年を哀れんでいた。
どうしようもなく唯々彼を慕い思っていると。
労わりの言葉をかけていた。
「貴方が帰ってきてくれて嬉しいって。皆そう言ってます」
伝えなくてはと考える事もなくそう口に出した。声が震えていた。
「大丈夫だから。安心してくださいって、皆…」
どうしようもない程に、彼らは思いあっていた。
「…あ、ぁ、あぁああああああああああああ!」
赤い髪の少年は、額を地面にこすり付け、慟哭した。
「済まない…!済まない!俺が…俺がふがいないばかりに…!」
カチカチと奥歯を鳴らして、彼が泣いていた。
「俺が守れなかったばかりに…この…このような…!」
見れば既に湖みたいな痕が出来ていた。
「何故…!何故お前たちがこのような…!そこまでして恨むか!?恨むなら憎むなら俺だけに…!何故!?どうして俺の…俺の…!」
軋みねじれ、悶える。壊れてしまいそうな位に。
「済まない…すまない…!俺のせいだ…!」
何度も頭を打ち付け彼は詫びた。
自分の力が足りなかったから。自分がふがいなかったから。このような苦しみを屈辱を与えてしまったと。
「俺が守らねばならないというのに!それなのに俺は…俺は剣を…!」
嗚咽に喉が詰まり指が土を掻き毟って血が滲んだ。
ざわざわと彼の愛した者たちが泣きながら違う違うと声をそろえる。
違うのに、貴方様の苦しみは知っているのに。だから待っていた。
誰よりも愛してくれているから。
誰よりも慈しんでくれるから。
誰よりも守ろうと必死だから。
全部知っている。それを感じていた。
だから、だから待ち続けていた。
待ち続けることが出来た。
嬉しいのだ。どうしようもなく嬉しいのだ。
それを伝えたいのに、彼には伝わらない。もどかしくてもどかしくて彼らは泣いている。
気が付けば、音もなく茅目草蝶子も泣いていた。
異形達が少年を取り囲み、ただただ労をねぎらい、お帰りなさいと感謝の言葉を伝えている。
周囲を見回して蝶子はきゅっと腕の中の幼子を抱き直すともう片方の手で千種の手を取った。
大人しく子供たちは付いてきてくれる。
彼女が足を踏み出せば、異形達は道を開けてくれた。
「…タカヒコさん」
男の子の手を離し、彼の肩に手を置いた。
「…大丈夫です。大丈夫ですから。だから、どうか」
ちゃんと話を聞いてあげてください。と蝶子は祈るように囁いた。
「なかないで、タカヒコ様」
隣に立つ千種が自身も半べそでそう言った。否、そういう風に見えたのだ。元々親類の多い彼女にはそう言った微かな仕草も見覚えがあった。
途端、現金なことにも安堵した。
何だ。同じだったんだ。
そっと胸の中でそう呟き、しがみ付いている千富の額に頬を寄せて大丈夫だよと安心させるために小さなキスをした。
いつもいつも両親祖父母や従兄弟たちや子守りのお兄ちゃんがしてくれるみたいに。
「あ、あー!」
蝶子の励ましに背を押されたのか腕の中の幼子がむつかって飛出し、少年の前にぽてぽてと歩みを進めると、両手を突き出した。視界の中にそれが入ってきた彼は顔を上げて、変わり果てたその子を見る。
「ん!ん!」
小さな手には何かが乗っかっていた。
「ああ…覚えて、いてくれたのか…」
吐息に紛れるように彼は魂ごろ絞り出すように呟いた。。
その手に乗る木の実を、彼は見覚えがあった。遠い遠い昔に交わした他愛のない約束。
目の前にいるのはどす黒い触手と腫れあがった様な肉芽で全身を覆い、じくじくと汚らしい血膿をまき散らす異形。
嘗てあったのは、紅葉の様に愛らしい小さな手だった。柔らかくて頼りなくて、暖かくて少し湿っていて。
腰を下ろしていればとてとて覚束ない足取りでやってきてはてちてち痛くもない平手打ちを太ももにくらわせて抱き上げろと催促してきたものだ。
守りたかったものだった。
異形は唸る。彼には獣の声にしか聞こえなかった。
周囲では同じようにすすり泣くような鳴き声が聞こえる。
何を言っているのか、分らなかった。
遠い遠い昔に共に暮らし、共に生きたものたち。遠い遠い昔に彼が愛した守りたかった者たち。
一人一人名前も顔もつぶさに覚えている。どんな声だったかもどんなふうに笑うのかも全て。
それが何一つ分らない。
それがどうしようもなく、悲しかった。
「いっしょに埋める約束をしたのですか?」
異形の中、ただ一人人の形をしているのは彼が巻き込んでしまった人間の少女だ。
どうしてか彼女は声が聞き取れるらしい。
「ああ…そうだ。春になったら、一緒に埋めると…」
芽が出たら水をやって、大きくなったらまた一緒に木の実を食べようとそう遠い遠い日に秘密の約束をしたのだ。
「千種君怒ってますよ?千富ばっかり貴方と約束してずるいって」
少女の体には異形の血膿がべっとりと着いていた。抱きしめたからその頬にもその長い黒髪にも、勇気づけるためのお呪いをしたから唇にすら。
「そうか…それは…済まなかったな、千種」
ボロボロに泣いた顔でその子を見上げると、千種は腕を後ろに組んで身をくねらせた。
この仕草はこの子が拗ねているときの物だ。
ああ、俺は確かに覚えている。
確かに愛している。
帰りたかった。
帰りたかった。
この者たちが待つあの邑へ。
あの家へ。
あの炉端へ。
帰りたかった。
突きあげたのは例える事の出来ない「かなしみ」。
奪われた友の腕。
殺されてしまった民の骨。
友を優先したのは簡単なことだ。
俺は民を失いたくなどなかったのだ。
その為に恭順を示唆した友を戦禍の中に引き入れてしまった。
その癖に俺は友の腕を奪われ、民を失ったのだ。
どうして長足る俺が真っ当な道を示さずにいられようか。
何よりも愛おしく何よりも守りたかったこの者らに恥じることなど出来ようか。
守りたかった。守りたかったのだ。花を飾る娘らの長い髪を。川の飛沫に光る子らの足を。地の実りを歌う女達を。研ぎ澄まされた穂先をまっすぐに見据える男たちの眼差しを。
青い空に煮炊きの煙が上がる日々を。
ただそれだけの事だった。
「…ずっと待ってたから、ご褒美頂戴。って言ってます」
そっと少女が言葉を伝えてくれた。その言葉に対して千種たちの母親が叱っていたことすら。
「まったく…変わらんなぁ…」
しみじみと肺の中の空気を全て吐き出すように彼は呟いた。
「大丈夫…ですか?」
ふり仰げば泣き腫らした顔で少女が笑っている。
「ああ…」
それに彼も少し微笑んで答えた。
差し伸べられた手を取って立ち上がる。周りから聞こえる呻き声は安堵の溜息だった。
「…すまなかったな。人の子」
「いいえ。貴方もあの人たちも、傷つかずに済んで…本当に良かった…」
ほぅっと息を漏らす少女。また一つ涙が零れ落ちた。
泣くなと頭でも撫でようとして、土にまみれ血のにじんだそれに気が付く。
けれど彼女は自分が持っていたであろう手巾でパタパタと彼の血と土を拭った。
「痛くないですか?」
「…」
ああ、参った。
「ああ、平気だ。この程度」
この子は、どうにも優しい。
「済まなかったな。人の子。お前を置いていってしまった」
約束を破るのは申し訳が立たないと頭を下げると慌てて大丈夫だと手を振った。
ざわざわと周りが何か言っている。どうせ、俺がこのこを置いてけぼりにしたことを囃し立てているのだろう。
そう尋ねるとやはりそうだと答えが帰って来た。
「仕方のない連中だ」
「でも良かったです。…やっと笑ってくれた」
「そうか」
「ええ…」
耳に届く声音は穏やかだった。
「もう、大丈夫です。だから、お話ししましょうよ。ね?」
言葉は私が伝えますから、と少女が笑った。少し眩しいものでも見たように彼は目を細めた。
確かに敵勢によって殺されたこと。骸は討ち捨てられ、家々には火を、畑には塩をと彼の治めた土地は完膚なきまでに叩き潰されたこと。
それなのに何時ごろからか、気が付けば生前と同じ家に住み生前と同じ姿でここに暮らしていたこと。
此処は何一つ帰る事が出来ない事。
今日の終わりにやってくるのはまた今日であり、此処には死がない。老いも病もない。裏を返せば生がないという事。
否、ここにあるのは骸だけ。御魂は何処かへ繋ぎとめられ、無理矢理に生かされ続けている。
その証拠に、いくら殺されても死ねないという事。
何時ごろかにやってきた異国の人が自分たちを見て驚き罵り、彼らの去った後には炎と翼をもった人がやってきては必ず彼らを殺していくこと。
焼けただれ肉が切られても、もう痛みもないという事。
終る事のない日々だけがここにあるという事。
他の村へ向かう事は出来ないという事。
聞きだしたことは大まかに言えばざっとこんなところだった。
それを彼に伝えてくれた少女の顔色は真っ青で、大丈夫かと問えば唇をかみしめて平気だと頷いた。
「無理はするなよ」
「いいえ、いいえ!大丈夫です!」
頭をふってきっと少女は前を見据えた。
「人の子よ。頼みがある」
「は、はい、なんでしょうか?」
「俺と共に来てくれ。今聞いた通りだ。お前一人を残すのは危険すぎる。先ほどは置いていってしまってすまなんだな。案ずるな、いざとなればお前だけでも家元へ戻す事は約束しよう」
巻き込んでしまった娘だ。帰さずにしてどうしろというのだ。
「はい!」
元気よく頷いて少女が微笑んだ。
話を聞き終えて、では行くかと焼けた地面を歩き閉ざされた箇所の手前までやってくると、足元で付いてきてしまった千富が飛び跳ねた。
「ねぇね!ねえね!」
何を言っているのかは彼には分らないが仕草に見覚えがあった。
「なぁに?千富ちゃん。抱っこ?」
その意図を汲み取って蝶子が嫌がるそぶりも見せずに千富を抱き上げる。ボロボロの化け物を。
嬉しそうに唸っているからきっと笑っているのだろう。
ああ、そうだ。と彼ははたと気が付いた。
「お前、名はなんという?」
尋ねるのをすっかり忘れてしまっていた。
その娘はあっと目を見開いて次いでむぅと頬を膨らませた。
「はは、すまんすまん」
特に悪びれる様子もなく彼は詫びる。
「蝶子です。茅目草蝶子。蝶々の子供で蝶子」
「そうか、いい名前だな」
「ありがとうございます。おばあちゃんが付けてくれたんですよ」
擽ったそうにクスクス身をよじって、蝶子は腕の中の千富を撫でた。千富がその指を掴んで弄って彼女はされるがままにしていた。
「お前で良かった」
祈りにも似た響きで彼はぽつりと苦笑を漏らした。
聖書の一節が脳裏によみがえった。
"He drove out the man; and at the east of the garden of Eden he placed the cherubim, and a sword flaming and turning to guard the way to the tree of life."
廻る剣の炎とケルビム。
知恵の木と生命の木がエデンの園にはあった。その二つの木のみを口にすれば人は神に成れた。
だから神は知恵の実を食べた人をエデンから追い出して、決して生命の木の実を食べないようにと守った。
ざわざわと空の一角が騒がしくて、それと同時に邑の人達が口々に逃げてくださいと叫び声を上げた。
現れたのは翼の生えた美しい天使と、燃え盛る炎。
羽虫を追い払うような無造作さと無遠慮さでそれらは異形達を殺し始めた。柔和な天使はその繊手をふるって風を起こし、雹を振りそそいで文字通り押しつぶしていく。炎はもっと簡単だ。耳を持たぬそれは彼らの悲鳴など聞こえない。目を持たないそれは彼らの肌が溶ける様を見ない。
永遠に死なない、死ぬことを許されない人達。。
ああ、これはきっと、謂れのない罪に下された誰かの罰だ。
慈悲なんてない。感情すらない。唯々掃除をする際に箒の先に虫の死骸を見つけた様な乾燥した義務。
「あ…あ…!」
気を狂わせることも出来ないで、ひたすらに待っていた彼の民。
その事実を悟った瞬間、言いようのない感情が蝶子の胸に渦巻いて、醜い化け物が燃やされていく様が断末魔を上げ、のた打ち回り、ちりちりと燻されていく様が網膜に焼付いた。
「あ、やめ…やめて…!」
声に出したのに、音がなかった。足を踏み出そうとしたのに動けなかった。
なんて情けない。なんて惨めったらしい。私は何もできやしない。無力さに自分が嫌になる。
でも。
「そうかお前か。ああ、ああ!お前たちか!お前たちが!」
傍らにいるのはずっとずっと自分よりも強いのに、ずっとずっと自分よりも強く自身を呪っている彼だった。
彼はまた泣いていた。カッと見開いた目はひたと瞬きも許さずケルビム達を見据えていた。狂暴なほどに笑う口から発したのは震える事さえ出来ない怒りの声。
「殺してやる…!必ずや殺す…!俺の民をよくぞここまで!」
低く低く喉の奥で拉げてしまった言葉。守りたいのに、救う事が出来ない。ここで彼女の手を離して飛び出しても、決して彼の本当に大切なモノの結末を変える事が出来ない。
彼は聡明だ。恐ろしい程に冷静だった。全ては彼らを守る為。約束を違えないために背負うものの重さで自分自身を縛り上げる。どうしようもなく優しくてどうしようもなく誠実だから。
「来い、蝶子!」
だから彼は蝶子の手を取る。
何も彼女は言えなかった。
震える彼の手に、何を言えばいい。誰よりも自分自身を責めているこの人にいったいどんな言葉を掛けたらいい?
「…!」
腕の中の幼子は毎日殺しに来るケルビム達に怯えて顔を埋めていた。
「平気だ千富。お前も蝶子も俺が守る」
強い口調でそうその人は言った。
「大丈夫だから。…だから、泣くな」
心底優しい声でその人はそう言った。
安心させるように穏やかに微笑んで。
「大丈夫だ。大丈夫。俺が守るよ」
その両目にあったのは決意と慈愛。
ああ、この人は本当に。優しい人だ。
ああ、私が決して失いたくなかったのは。
この人だ。
答えが見つかった。
森を抜ける中、今しがたの殺戮など露ほども感じさせぬほど静かなその中で、魔女の血を引く少女は心を定めた。
「なら、私が貴方の味方になります」
その声は嫌に澄んで。よく聞こえた。
視線を上げれば真っ直ぐに自分を見つめる娘がいた。
きゅっと口を引き結び、その少女はもう一度誓を口にする。
「私が、貴方を守ります。皆を大事にして守ろうとする貴方を」
気が付けば森の一角の開けた場所の用だった。中空には日が差して、暖かな光を注いでいる。
「お前…」
彼は瞠目し彼女を見た。そうして思い知った。彼がどこかで願っていたように娘は女になっていた。
「皆が貴方を慕ってる。皆を貴方が愛してる。守ろうと必死になって、今だって凄い心配で本当は飛び出していきたいくせに。頑張って頑張って…!」
ぱらぱら雫が双眸から流れ落ちていた。
「じゃあ一体、誰が貴方を守るっていうんですか!?全部を背負って全部を受け入れて、許して、愛して守ろうとする貴方を!」
参ったな。本当に。
「なら、私が!私が貴方の味方になります!貴方を許して!貴方を守ります!」
泣くな、頼むから。
煤けた指先を伸ばし、彼は熱と煙に燻されて張り付いてしまった前髪を払ってやってそのまま彼女の頭を引き寄せた。
間に挟まれた千富が蝶子を泣かすなと抗議して唸り、彼は苦笑して返した。
「私は…!私は貴方が悲しむのも苦しむのももう見たくないんです…。だってこんなに…こんなに優しいのに…」
彼の肩口に顔を埋め、蝶子は嗚咽を噛み殺す。
「もう貴方に、自分自身を責めないで欲しいんです。…どうか、どうか…私が許しますから…受け入れますからどうか…お願いです…ねえ…」
その指が大切そうに千富の頬を撫でるのを彼は見た。
「だからお願いですそんな風に笑わないで」
その指が次は彼の裾を掴んで乞うのを彼は見た。
「大丈夫なんて言わないでいいんです」
その指を取れば、力を込めて握り返されるのを彼は知った。
「私が、全部受け止めますから」
まるで呪いのような真っ直ぐな言祝ぎ。
深く長く息を吐いて、彼は顔を上げた蝶子の眦を拭ってそっと笑った。
「ありがとう蝶子。お前で良かった」
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