ここは、クトゥルフ神話TRPGのオンラインセッションに関する各種情報がまとめられているWikiです。

シナリオ作成者:t-sr

シナリオ基本情報


舞台:現代
難易度:低
プレイ時間予想:1~3時間程度
推奨プレイ人数:2~4人
推奨技能:<図書館><オカルト><ナビゲート><心理学>
あるといいかもしれない技能:<回避><運転>
ロスト・発狂の可能性:あり
改変・改造:おすきにどうぞ

注意

当シナリオは「N川殺人事件」というシナリオの、BもしくはCエンドであった後を想定して作成されています。
よって、このシナリオ単体でもプレイする事は可能ですが、KPは事件の事前概要として「N川殺人事件」を読んでおく事をおすすめします。
B、もしくはCエンドだったPLのリベンジ、もしくは救出シナリオ等として改変してもかまいません。

N川殺人事件シナリオページ

シナリオ概要

導入

探索者達はある日、ネット上のオカルト掲示板でおかしな噂を耳にする。
数年前、とある大災害によって不毛の土地になり人がよりつかなくなったという「N川」という地域。そこで生存者が目撃されたり、あるはずのない村が今でも存在しているというのだ。
探索者達は押さえられない好奇心から、N川へ肝試しへ行く事にしたのだった。

事前情報・準備

探索者同士はネット掲示板等の繋がりでも良いし、知り合いでも良い。
ただし事前にN川についての情報を調べたり準備をする時間を与えると良い。
これは「N川殺人事件」をプレイしている探索者なら省いても良いし、合流も楽になるかもしれない。
適宜<図書館>や<オカルト>等を振らせても良い。

・「N川」は3年前(時期は3年前から好きに変更して良い)大洪水が起こった事により周辺地域は壊滅的な被害にあった。今は人も住んでおらず荒れ果てている。
・当時洪水が起こっていた時期の写真等を見たのなら<アイデア>を振り、土砂等が混じっているとはいえ水が異常に黒ずんでいることがわかる。N川の水が元々黒ずんでいた、なんてことはない。
・何年間かは立ち入り禁止区域に指定されており、立ち入りが解除されてからも「幽霊が出る」とか「化け物が出る」等としてあまり人が近寄る事もない。
・肝試しとして出かけた旅行者が、実際何人も行方不明になったり遭難しているという話もちらほらあるだろう。
・<オカルト>当時N川では、大洪水が起こる3日前ほどから、旅館でおかしな連続殺人事件が起きていたという噂がある。オカルトマニアの間では有名。
・殺人事件の流れがとある有名なオカルトミステリー小説の流れと酷似していた、さらに当時、その旅館にはそのオカルト小説家自身が宿泊しており、大災害に巻き込まれ死亡したとされている。ネット上では彼が謎の大洪水を引き起こす儀式を行ったのでは?と言う不謹慎な噂もある。小説家の名前は「楠白彦」

・<図書館>に成功すれば当時のN川周辺地図が手に入るだろう。昔は神社や旅館があったようだ。


合流

探索者達はN川へ向かう為に合流する。N川周辺は今では電車等も通っておらず、車でしか行く事ができない。また、かなり放置されており山も荒れ果てているので、行くならそれなりの準備を事前にさせてよい。
(寝袋、食料、ランタン、サバイバルナイフ等)

発見

昼の3時頃。探索者達は村へようやく辿り着く。
N川は以前の大災害があったとはいえ、とても自然豊かで綺麗な風景を見せる。
以前村があったであろう場所にはむき出しになった鉄筋や窓枠、電柱のみが残されており、苔むして自然と一体化しつつある。
綺麗な川が山の上流から流れていて、退廃的とも取れる美しい風景だ。

過去の村


以前村のあった場所を散策するなら、到着できるかどうか適宜<ナビゲート>
地図をまだ持っていないなら<目星>等で古びた村の案内板を見つけさせる。

・神社や郷土資料館等は既に跡形も無くなっていて、どこにあるかすら分からないが、かろうじて以前「藤原旅館」という旅館があったであろう場所に辿り着く事が出来る。
<オカルト>もしくは<知識><図書館>で事前情報にある大洪水があった時、この旅館で連続殺人事件がおこっていたらしい事を提示して良い。(事件は洪水によって結局解決せずうやむやになっている)
<オカルト>成功者は「N川殺人事件」というN川にあるとある旅館で連続殺事件がおこるというオカルトミステリ小説があったことを知っている。

その後<目星>や<アイデア>を振らせ、成功すると探索者達を見つめている一人の人間がいることに気付く、その人物はふらふらと山の麓の方へと消えて行った。
失敗しても再度<目星>か<アイデア>に成功すると比較的新しい立て看板があり、そちらにその人物が向かって行ったことがわかる。
看板には「この先 藤原旅館」と書かれている。

また、探索者を見つめていた人物に見覚えがないか調べるなら<知識>
成功した場合テレビ等に出ていたのを見た事があったのだろう、その人物が楠白彦という例の死んだはずの小説家であることを知っている。
死んだはずの人物と遭遇したことによるSANチェック(0/1)
楠白彦について調べ顔写真等を見ていた場合も同様である。

ないはずの村

人物を追ったり、立て看板の示す方向へ向かうと、森の中には人が踏みならしたような道があった、車も通れるくらいの幅はあるだろうか。
森を抜けるとそこには、ありえないはずの光景が広がっていた。
山の麓にはよく見慣れた建物が建っていて、それがおかしいことなどまるでないかのように、村人達がのどかな日常生活を営んでいるのだ。
ないはずの村へ訪れた事へのSANチェック(0/1)

おかしな村・聞き込み

この村には飲食店等、食物が一切存在しない。
これはしばらく村を見回ったあと<アイデア>等で気付かせると良い。
村の人々も食事を取っている様子は無く、おかしいと感じている様子も全くない。
彼らはものを食べる必要が既にないからだ。嗅覚や味覚も既に彼らには存在していない。
村人は何故か記憶を共有している。よって、誰に聞いても同じ情報がでるし、村人同士に情報はすぐさま伝わるだろう。
また、村の建物はばらばらの方向だったり、おかしな向きに建っていて、過去のN川の周辺地図とはまるでちぐはぐである。


■村人達に話しかけると、とても好意的に対応してくれるだろう。
ここは名も無き小さな村だが、ゆっくりしていくと良い。と。
また、この村には宿泊施設はひとつしかないと藤原旅館の場所を案内してくれる。

■楠白彦について聞く
楠白彦について聞くと、彼の住んでいるという村のはずれの家を教えてくれる。
村人達は彼は元々数年前にこの村に移り住んできていると言うだろう。嘘をついている自覚は無い。
彼はあまり村人との交流をせず、村に出てくる事は少ないという、偏屈な人物だが村人達は彼の事を嫌っているわけではないようだ。
(これは彼が生け贄としてささげられたことを村人達は本能的に誇らしいと思っているからだ)
また楠の居場所を聞いた場合探索者達が楠を捜していることは村人全員に伝わる。

■村人に全てを話す。
村人達は大災害があったことや、以前の村があった場所については何も覚えていない。
昔からこの名も無き村で生活していると思っているし、大災害の話をしても信じてはくれないだろう。また、以前村があった場所については外は危険なので行った事が無いと言う。
しかし、あまりにもその件について探索者が言及したり、食事をとらない事、村が存在しないはずのことを追求すると、村人達はこの異常な状況に少し違和感を感じはじめる。
そして、おかしな点に気付いてしまったことによって、探索者達の目の前で彼らは目を見開き、震えだしたかとおもうと、黒い涙を流す。その直後黒い液体が口から溢れ出し、溺れたように苦しみながら倒れる(1/1d4)
また、彼らを無理矢理にでも村の外へ連れ出した場合も同じ現象が起こるため注意。

村人の一人が死んだ事に対して、他の村人は微塵も関心を示さない。
村人の死体に関しても、既に脈は無く、助かる保証はないだろう。もしも<医学>に成功した場合、村人の身体の構造が通常の人間とは異なり、何か人間とはかけ離れた生物である事に気付いたことによる 0/1のSANチェックが発生する。

藤原旅館

村で一番大きい建物がすぐ奥に見える、その建物は「藤原旅館」という旅館である。
旅館に入ると女将と美青年の旅館の息子が出迎えてくれる。
「ようこそいらっしゃいました、藤原旅館へ」

旅館の息子は藤原アキラという。
旅館の従業員もこの村におかしな点があることには一切気付いていない。
ただし、藤原アキラだけはNPC詳細に記載した通り全てを知っている。

一階に受付、ロビー、土産物屋、大ホール、厨房がある。
二階は基本的に客室で、談話室以外は各部屋の鍵が無いと入れない。

旅館の息子「藤原アキラ」は旅館への宿泊をすすめてくる。
旅館に宿泊しても良いし、車内に泊まっても良い。

ロビー

<目星>で旅館の自由ノートのような、旅行客が自由に書いて良い感想ノートのようなものがある。
大災害が起こる以前の書き込みもあるが、当たり障りないことくらいしか書かれていない。
また、いくつか比較的最近の書き込みもあり、
「まさかこんなところに旅館があるとは思いませんでした!また友達を連れてきます!」
「ここって幽霊旅館なのでは?」
という書き込みもある。
書き込みに対して<アイデア>に成功するとひとつ明らかに異質な書き込みを発見する。
おそらく村の地図と思われるような絵のはずれの方に大きく○が書かれている。
「K」とだけ名前が書かれているが他に特に文字のようなものは書き込まれていない。
その場所にいくなら楠白彦の家だとわかる。

土産物屋

RPの息抜きにでもどうぞ。好きに設定を生やして構いません。
乙姫ちゃんストラップとかが売られている。全体的にセンスが一昔古い。
ただし食べ物は売っていません。

大ホール

以前はここに集まって基本的に食事を取るタイプの旅館だったが、現在では閉鎖されていて使われることはない。中に入ってみても、しばらく使われた形跡がないだろう。

厨房

全く使用されていない。
<目星>等で冷蔵庫の中を含めてまったく食材が入っていないこと
<アイデア>でもう何年も使用された形跡がないこと等を提示し、村人達が食事をとっていないのではないか?という疑問を抱かせると良い。

■一階をしばらく調べたところで「裏口」があることを認識させると良い。
鍵はかかっておらず開いている。受付とは逆方向にある。

談話室

二階 階段脇にある小さな談話室。
好きに読んでよい本や自動販売機がある、本のジャンルは「雑誌」「小説」「新聞」

「雑誌」かなり古いもの、その中でも文学雑誌系が多い、<アイデア>に成功するとほとんどの雑誌に共通して取り上げられている人物がわかる、楠白彦である。

「小説」オカルト小説から恋愛小説まであるが、N川出身の著者であったりこの土地の伝承をモチーフに取り扱った本が多いようだ。楠白彦の「N川殺人事件」もある。小説【N川殺人事件】の情報を提示。また、【龍神伝説】という童話のような本もある。情報【龍神伝説】を提示。
「N川殺人事件」
著:楠白彦 彼のデビュー作であった。
ただのオカルト小説なので技能は必要なく読む事が出来る。
昔起こっていた殺人事件は、この小説の流れがまったく同じものだったらしい。
最初の晩に観光客が腹を引き裂かれて殺され、次の晩は腕を切り取られた死体、その次は顔の無い死体、と事件は続いて行くが、登場人物がなんとか事件を暴き食い止めて行く。といったストーリー。
巻末の制作協力、取材の欄にN川伝承研究の第一人者「平瀬 洋三」様 と名前がある。
しっかりと読んだ場合はオカルト技能に+5%。
「龍神伝説」
その昔蛇穴という場所にわるさをはたらく龍神様がおったそうな、龍神様はたまに人をさらって置き去りにしたり、食べてしまうこともあったんだと。
たいへん困った村人は偉いお坊さんに頼んだ。
お坊さんが龍神様の住んでいる洞窟に行き、龍神様を封印した。
龍神様はお坊さんを飲み込もうとしたが、できなかったので降参した。
それ以来龍神様は反省し、N川の守り神となったそうな。


「新聞」地域新聞である。
<アイデア>最新の新聞の日付はN川で事件があった当時の日付で止まっており、それより新しいものは存在しない。
<目星>で気になる記事を見つける。事件当時より三ヶ月ほど前のもので、一帯で行方不明者が相次いでいた、というもの。
中には「N川の第一人者 平瀬洋三さん 行方知れず」といった記事もある。

夜に外を見たり、出歩いたりするならおかしな出来事を目撃できる。
旅館内には従業員の姿が無い、村からは人影が消え、見かけたとしてもふらふらとうつろな目で村の奥へと向かって行くだけだ。声をかけても返事はなく、まるで探索者を気にしていないように見える。
[アブホースのテレパシーの影響で村人達が操られているが、分身である藤原アキラ、村人との同調が少ない楠白彦は影響を受けていない]

・藤原旅館内に居る藤原アキラは影響を受けていないため、旅館内に止まっていた場合外に出ようとすると「どうされました?夜は危険ですので出歩くのはおやめください」と引き止めて来る。しかし探索者が無理に外に出ようとするならば止めはせず「お気をつけて」とだけ言って見送るだろう。
裏口から出る場合は彼に見つかる事は無い。


村人達を追いかけると、村の奥、山のふもとに大きな洞窟を発見する。
人々は洞窟に吸い込まれるように消えて行く。

夜の間、街の中にはまったく人影がなく、灯もない。村中がもぬけの殻になっている。探索しても家の中等には特になにもないが、KPが妥当だと思う情報なら与えて良い。

ただし「藤原旅館」と「楠白彦の家」だけは灯がついている。

夜の洞窟


村人達は探索者達を気に留めていないので、洞窟に入るのに技能は特別必要ない、が<忍び歩き>や<隠れる>を要求しても良い。

しばらく外で待っているなら、洞窟の中からは不快な粘液の這いずる音と、聞くに耐えない悲鳴が聞こえて来るだろう。(1/1d3)

洞窟の内部は下り坂のようになっており、暗く、不快なぬめぬめとした空気と水音が充満している。


※もしもライターやランタン、松明等の灯をつけた場合は見つけた村人達は人が変わったように恐ろしい顔で探索者に襲いかかり破壊するので注意して下さい。
破壊した後はとたんに興味をなくしたかのようにそのまま洞窟へと向かいます。
懐中電灯の灯には反応しません。彼らは火に反応しています。

洞窟の奥の開けた場所には複数の村人がおり、さらにその奥にはよくは見えないがぬめぬめと、黒くのたうち回る液体のような、ゴムのような、のたうつ塊が見え、更にその塊からは触手のような付属肢がいくつも伸び、村人を掴んだかと思うと。直後村人の身体はミイラのように黒ずんでひからび、喉の奥から絞り出したかのような悲鳴が洞窟に響く。からからになったかのように見えた村人の死体も、すぐにばしゃん、と黒い水のような液体に変わり、周りの村人達はその液体に群がり一斉にそれをすすりはじめた。(1d2/1d10)

もしも灯等で奥を照らしたり、<目星>に成功した場合はその塊をじっくりと観察してしまったことによりSANチェックが(1d3/1d20)になる。

発狂して、金切り声等ばれる行動を取ってしまったPCがいるかもしれないが、彼らは貴方達の方を一斉に振り返りはせど追っては来ない。
ただし、この光景を見られてしまった事、見たのが探索者達であることは楠白彦以外の全員、藤原アキラにも知れ渡ることになる。
普通に逃げようとした場合や帰ろうとした場合でも、<幸運>を振らせ失敗したものは村人に見つかります。

村人達は夜明け前になると何事もなかったかのように村へ帰る、吸収された村人も新たな身体で村に戻され、村人は誰一人死んで等いない。
また、村人達は夜にあったことを一切覚えてはいない。

昼の洞窟

昼間に洞窟に向かう場合、とくにイベントは発生しません。
村人に洞窟について訪ねても「あそこには龍神という神様が住んでいる」というおとぎ話と、神聖な場所であるということしか知りません。

洞窟の内部は下り坂のようになっており、暗く、不快なぬめぬめとした空気と水音が充満している。
しばらく進むと開けた部分に出る、そこはかなり大きな空洞で、まんなかにはまるで水が引いた池のような大きなくぼみがある、くぼみはじめじめと湿っていて不快な臭いがするだろう。
<目星>に成功すると湿った地面に無数の足跡がある事に気付く。さらに<アイデア>に成功すると、あまりにも多い足跡の数からして、恐らく村人全員分くらいの数がここを行き来していることに気付きます。

■昼に洞窟を燃やしても、効果はありません。
さすがに村人は気付きますし、慌てて消火活動を行うでしょう。
もしも昼に洞窟を燃やし、再度夜に放火活動を行おうとする場合、藤原アキラはさすがに気付きます。
夜に藤原アキラによる「説得」を行わせた後、尚逆らおうとするようなら戦闘を発生させて下さい。
尚、藤原アキラは炎によるダメージで消滅したとしても、洞窟を燃やさないかぎりすぐに洞窟から復活します。

楠白彦の家


彼の家は村からすこし離れた場所にある。
村の建物とは雰囲気の違う広めの一軒家で、楠白彦が暮らしている。

彼は探索者達を見ると、歓迎はしないが家にあげてくれる。
お茶やお茶菓子などは出さない、そして渋々といった感じで話を聞いてくれる。

彼に災害があったことや、事件の事を話すとそんな事はなかった、私は元々この村に住んでいたし、この村は平和だ。と言った事を言う。
しかしこのときの彼は全てを覚えているのでこれは全て嘘である、適宜<心理学>等を振らせる事。
彼は探索者達に絶対に真実を伝えようとはしない、自分が何か覚えている事を探索者を通して村人に知られると、彼は殺される為である。
また、彼はある程度話をすると席を外し「すぐには戻ってきませんので、ごゆっくり」と言い部屋から出て行く。

その後部屋全体に<目星>を振ると情報【楠白彦の長い手記】を発見できる。

探索者が日記を読んだ辺りで戻ってきて、それは私のものではありませんのでお持ち帰りください、と言うだろう。
また、彼の家から帰ろうとすると「落とし物」ですよ。と探索者に「マッチ」を手渡してくれる。
そして「二度と会う事もないでしょう、さようなら」と言って探索者と別れる。

■彼は探索者がこの村を消滅させてくれることを願っていますが、彼もアブホースの落とし子には変わりない事を充分に自覚しているので、積極的に協力の姿勢は見せません。遠回しに、自らの言動、そして村がおかしいことを気付かせるような言動を取るでしょう。
もしも探索者に彼が協力した事が村人に知れればその夜、「新しい」楠白彦が落とし子として形成されます。探索者の事を覚えていません。
しかし彼は元々村人ではないため記憶の同調に限界があり、そのうちまた事件の事を思い出し、苦しむでしょう。

楠白彦の長い手記


私の記憶が正しい内に、これを書き記す。

私は、××年○月m日、G県N川の藤原旅館へと向かった。
手紙が来たからだ。差出人は「平瀬洋三」。N川における民族学と歴史の第一人者で、私の古くからの友人にして、師である。
手紙に書かれていた内容は残念ながら、私を急ぎ行き着けの菓子屋へ祝いの品を買いに向かわせるようなものではなかった。むしろ、私はこの手紙を読んだ後すぐに遺書をしたためたのである。
「龍神が目覚めてしまった」
手紙に記された一行は私に死を予感させるには充分であった。

このN川という地には、龍神と呼ばれた神が居る。

龍神の存在を確信し、迷信や都市伝説等ではなくN川という地に眠る恐るべき脅威だと考えていた平瀬さんは、目覚めてしまった神を再び封印する事にした。

しかし私、楠白彦と平瀬洋三は龍神を封印する儀式に失敗し、死亡した。

では、今この日記を偉そうに書いているお前は誰なんだ?と君は思うだろうが、それは間違いなく私、楠白彦である。…おそらくは。

事の発端はある青年。
「藤原アキラ」という青年である。藤原旅館という旅館の一人息子で、線の細い美男だ。藤原旅館を懇意にしていた私にとっては甥のような存在であった。
彼が何故狂気に染まったのかは私の知る由はないが、彼こそが龍神を目覚めさせ、連続殺人という儀式を行った張本人である。

我々は彼の狂気を見抜く事ができなかった。そうしてあの気味の悪い、黒い粘液の充満する沼の中に放り込まれ、死んだ。


龍神に飲まれ、ふと目覚めると、私はこの村に居た。
元々この村に住んでいたような気持ちがしたし、事件が起こった事などしばらくは全く思い出せはしなかった。
村の人々は何も変わらず、知らず、日常を過していた。しかし間違いなくあのおぞましい事件は夢ではなかったのだ。夜だけは、以前の村と違いがあった。

この村は既に龍神の胃の中で、全てが村の人々の記憶から出来た偽物で、龍神の子供、そして玩具だ。

私もまた、楠白彦の偽物だ。

嗚呼、またあの音が聞こえて来た。
明日にも、私は再び殺されて、新しい何も知らない私が龍神によって生み出されるだろう。
私が覚えている事を村人達は許さない、知れれば、すぐに別の私が作られるだろう。


これを見つけたのなら、どうか私を殺して欲しい。
そして、藤原アキラを殺してやってほしい。

村を殺せば私も、彼も死ぬだろう。


・日記には当時のN川の地図が挟まっており、藤原旅館の裏手にに○マークが書かれている。

藤原旅館跡地

過去の藤原旅館があった場所、廃墟後で地図の場所を捜すならば<ナビゲート>もしくは<目星>を要求する。
成功すれば瓦礫の下から鉄の扉のようなものを発見できる。
開くと地下への階段が続いており、中は薄暗く、腐臭が漂っている。

地下室へ降りると扉があり、開くと中は熟成された酷い腐臭と嫌な空気が充満していて、部屋のあちこちに白骨化した何かの屍体やぐちゃぐちゃになった肉塊が散乱している(1/1d6)

部屋全体への<目星>に成功すると部屋の片隅に赤いポリタンクのようなものが置いてあるのを見つける。ポリタンクは複数あるだろう。数はKPに委ねるが、中には灯油がたっぷりと入っている。

・また【N川殺人事件】シナリオ内情報にある【誰かの手帳】を発見させても良い。

藤原アキラによる「説得」


探索者達が村の内部を嗅ぎ回っている事、楠白彦と接触した事が彼に知れると、彼は探索者達に村から帰る事を勧めてきます。
彼は探索者が望むならすべてを話した上で、自らの犯した罪を深く後悔し、償いとしてこの村で村人達と生きて行くつもりだ、といった事を話します。
また、村人達は化け物とはいえ幸せに暮らしている、この村を壊す権利は貴方達にはない、と言うでしょう。

楠白彦について話すなら、彼は一瞬表情を変え、やはり彼は全部覚えているのか、と聞いた後。彼にはとても申し訳ないことをした、と言います。これは彼の今の状況を聞き出す為の罠です。
自らの狂気により彼の命を奪ってしまった事をとても悔やんでいる、しかし、今の自分にできることはせめてもの償いとしてこの村を守って行くことだと考えています。
「僕には、もう一度この村の人々を、先生を殺すなんて残酷な事はできません。」
「だから、お帰りください、お客様。この村はこれからもこうして永遠に存在し続けるだけなのです。」
と、彼はいかにも自らが罪を背負った可哀想な青年であるかのようにふるまうでしょう。

実際には彼は、楠白彦に対して微塵も申し訳ないとか言う感情は抱いていません。
村に対しても、こうなった事にとても満足しています。この状況に対して罪悪感とか、償いといった感情等は彼には全くないのです。

村の破壊


村人は夜になると全員が洞窟へと集まります。
そこを狙って灯油を入り口から投げ込んだり、昼のうちに撒いておくと良いでしょう。火炎瓶等を作っても良いかもしれません。
村人達、及び藤原アキラには嗅覚が存在していないので、これに気付くことはありません。
その後の処理は後述の【逃走】を参照して下さい。

逃走


・村を破壊するルートはこのendの処理をすること。

夜、村人達が洞窟に集まっている時に火をつけるのが最善。
洞窟に火をつけると奥からは次々と複数の悲鳴があがる。
そして、燃え盛る炎の中から、黒い粘液のような、燃え盛るマグマのようなものが明らかに意思をもって悶え苦しみながら貴方達へと向かってくるのが見えた。

燃え盛る黒い塊が洞窟から出たのを振り返ったりしてはっきり見た場合(1/1d10)

→車で逃げる場合。
黒い粘液は洞窟から出ると、その燃え盛る身体を爆発させるように飛沫を飛ばし貴方達の方へ触手を伸ばす。車をドンドンと強く叩く音が車内に響いたが、中に居る貴方達までその勢いが届く事は無い。
村の出口付近まで来ると、うしろからは轟音のような悲鳴と、何かが崩れ去るような大きな音が響いた。
<回避>や<幸運>を振る必要が無くなり、確実に逃げる事が出来る

→走って逃げる場合。
黒い粘液は洞窟から出ると、その燃え盛る身体を爆発させるように飛沫を飛ばし貴方達の方へ触手を伸ばす。
街の建物はどろどろと溶けて行き、空からはあの塊が火のついた黒い液体を貴方達を逃がすまいと振らせている。
また、藤原アキラが貴方達を追って来るかもしれない。
黒い涙を流しながら、よくも、とか、許さない、と言った言葉を呟きながら。
適宜<回避>や藤原アキラとのDEX対抗を振らせ、逃げられるかどうかの判定を行う。
<回避>に失敗したものは黒い粘液の塊が直撃したことによる1d4のダメージ、及び粘液が纏わり付いたことにより村から出るまでDEXが1減少する。
藤原アキラに追いつかれたり、<回避>に失敗し気絶しても敵からの攻撃を2ターン耐えられれば、彼らは燃え尽き息絶えることとする。


→endAへ

村から帰る


藤原の説得等でおとなしく探索者が村から帰る場合、以下の処理を行う。
村から帰る途中、車に揺られる探索者がふと振り返ると、ガラスに何か黒い液体がべちゃりと付着していた。
その液体はみるみるうちに大きくなり、手のような形の付属肢をつくりだしたかと思うと、貴方達の車をドンドンと叩き、中に侵入しようとしてくるだろう。
<運転>や適切な技能でこれを振り払えた場合、無事に村からN川から脱出する事ができる。

→endBへ


何度か失敗した場合、どんどんと大きくなって行く黒い塊にやがて車は押しつぶされ、探索者達は黒い塊に吸収され、ロストとなる。

エンド分岐

endA「Nの回帰」


村から出た時、黒い和服姿のあの小説家が居た。
黒い涙を流しながら貴方達を見てにっこりと微笑んだかと思うと、彼はすぐにばしゃん、と黒い水に変わり、溶けるように消えた。

貴方達は無事、あの恐ろしい村から逃げる事が出来た。

それから、奇妙な村の噂や失踪者の話はすっかり無くなり、あの村があった場所に行っても、ただただ綺麗な風景が広がっているだけだ。
こうして龍神にまつわる悲しい事件は一旦、数百年の幕を閉じたのであった。



…という小説だったのだ。
タイトルは「Nの回帰」。作者は「楠白彦」と言う。
[この二行は付け加えても付け加えなくても構いません]

endB 「贖罪の村」


貴方達は無事日常へと還ることができた。
相変わらずネット上ではN川に関する奇妙な噂が流れている。
貴方達だけが知っているのだ、あの悲しい村の存在を。
あの村はそれからもあそこに存在し、村の人々は奇妙な日常を過しているのだろう。

貴方達にはあの村がどうなったか等、知る由もないのだ。


クリア報酬


生還報酬 1d10
村を消滅させた 1d6

クトゥルフ神話技能 なし

最後に

このシナリオは注意にもある通りN川殺人事件のB、もしくはCエンド後を想定して作られたシナリオです。
このシナリオ単体でもプレイは可能ですが、逆にこのシナリオの後N川殺人事件プレイする事が不可能になるかと思われます。

もしもBエンド等でロストしたPCが居た場合、村の人間ではないのでうまく飲み込めず同調もできなかった。
という御都合主義的理由をつけて救出できるように村に牢獄等を生やすといいかもしれません。
もしくはAエンドのオチをつければ、N川殺人事件の内容も小説というフィクションだった、という事も可能かと思われます。

個人的には、ロストしたPCが既に村に飲み込まれ記憶が混乱した状態で旅館で永遠に同じ行動を繰り返している、といった演出を盛り込むことを絶望感と悲しみ的に提案します。
ちなみにどうやっても楠白彦は死ぬと思います。


■シナリオの使用等について
シナリオの使用、リプレイの公開等は常識の範囲内でしたらお好きにして下さって構いません。
回しやすいように改変、改造等おすきにどうぞ。
ただ、一言報告して頂けると私がとっても喜びます。

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