2-256 ゆきおんな。

今日の裁判も散々だった。
いや、散々になったのは、相手のせいでもある。
『冷徹検事』『雪女』などのキャッチフレーズで有名な若い女検事。
そのキャッチフレーズはだてじゃなく、バッサリと被告人を証拠の力で切り捨ててしまうのだ。
あの人には情というものがないのだろうか……。求刑するときだって、妥当だと考えられるもので、一番重いものを淡々と述べるのだ。
今日にいたっては被告人もあの人の気迫に負けて、あっさり認めちゃうし。反論の余地もなかった。

「ただいまー」
「お帰りっ! 今日ね、真くんの大好物のカレーだよ! おいしく出来たんだよ!」
ドアを開けるなり、すごい勢いで飛び付いてきたのは、あの『雪女』だ。

そう。実は、あの冷徹検事は俺の恋人なのだ。しかも、とびっきり甘えん坊の。
「真くん、先にごはんたべる? お風呂にする?」
「先にお風呂にしようかな」
「じゃあカバンと上着おいてきてあげるね!」
「ありがと」

……誰があの雪女や冷徹検事などと言われる人が、家ではラブラブオーラ全開だと想像できるであろうか。
俺だって、告白されて付き合いだすまではこんなだと思ってなかったさ。

風呂からあがると、きちんと服が用意してあって、早く着替えておいでよー、なんて声も聞こえる。
急いで着替えて食卓の方にいくと、カレーのスパイシーないい香りがした。
「早く食べよ? お腹すいちゃった!」
「俺も腹減ったよー。うまそうだな」
「えへへ、今日は気合い入れて作ったんだよ! 私、頑張ったんだから!」
ニコッ、と極上スマイルが飛んできた。もうそれだけでお腹いっぱいな気がするけどな。


いただきます、と手をあわせてから30分ほどすると、作ったカレーはなくなってしまった。

「おいしかった。ごちそうさま」
「おそまつさまでした」
「俺、食器片付けとくよ。お風呂入っておいで」
「いいの? ありがとー。真くん大好き!」
あぁ……食器片付けるだけでこんないい笑顔がとんでくるなんて、幸せすぎる。

食器を片付け、寝る準備もできた俺は、ベッドで手続き用の書類を眺めていた。
すると、風呂上がりでかなり色っぽい澪が入ってきた。

「あれ、邪魔しちゃった……?」
「いいよ、確認だけだったから。おいで」
てててっ、と小走りでやってきて、嬉しそうにベッドに潜り込んできた。俺は仰向けから、向き合う体勢になった。
「真くん、今日もいじめてごめんね? でもね、悪いことしたらいけないんだよ」
「そうだよな。弁護士なんて因果な商売だよな……」
「ふふ。真くん」
「なに……」
答えようとしたら、キスされた。やわらかくて、あたたかい。
「いっぱいぎゅってするのー」
背中に腕を回され、さらに足まで絡められた。もはや抱き枕状態だ。
「真くんあったかーい……」
うわぁぁあ! 足を動かさないでくれ! 太ももが俺の大事なところに触れたり触れなかったりしている。本人はまったく気付いていないわけだが。
だが、俺の息子さんは素直に反応してて……いつ気付かれるかな。

「真くん、もう一回……しよ?」
「あ、あぁ」
澪の綺麗な顔が、ものすごく近くまできて、離れた。
「真……くん」
「どうした?」
俺の理性は辛うじてまだ頑張れている。頑張れ。頑張るんだ。
「なんか……すごいえっちぃ気分……なの……」

ぐはぁッ……! グッバイ、俺の理性!!


「ひゃあっ!」
俺は澪をころんと仰向けにさせて、マウントポジションをとった。そして、パジャマをはだけさせていく。
「よかったぁ……真くんもえっちぃ気分だったんだね♪」
あんなことされてムラムラせん方がおかしい。しないやつはなんだ。神か仏か。
ボタンを外しおわると、ぷるんとした胸が。むにむにと揉んでみると、澪は恥ずかしそうにしていた。

そっと乳首を口に含むと、かよわい喘ぎ声が聞こえてきた。
「ひぅっ……! にゃ、ぁん……」
今の猫みたいで可愛かったなー、と思いつつ、ズボンとパンツの中に手を差し入れまさぐっていると、ねっとりと愛液が絡み付いてきた。
「もうこんなになっちゃってるの……?」
指を目の前に差し出すと、ちろちろと舐めてきた。
「ぱんつ……脱ぎたいよぉっ……真くん脱がして……」
潤んだ瞳。これにおちない男はいない。断言できる。
下半身の服を取り去ると、明日も仕事あるから最後までやっちゃダメだよ、といっていた最後の理性のカケラも消し飛んだ。
指を中に入れると、もう慣らす必要もないほどだ。
「真くんのほしいよぉ……真くんと一緒になりたい……」
俺は手早くゴムを装着。こんなに素早く正確にできたのは初めてかもしれない。
ゆっくり、傷つけないように腰を押し進め、ようやく全て入れることができた。
締め付けにもっていかれそうになりながらも、入れたまま抱き合い、触れるだけのキスを繰り返した。

「このまま一つになりたい……真くんとずっと、ずーっと一緒にいたいな」
「俺も、澪とずっと一緒にいたいよ」
俺は動くよと告げ、澪がしっかり頷いたのを確認してからゆっくりと動き始めた。

「あんっ、真くん、真くんっ……!」
澪は俺の名前を呼び続け、イッてしまった。


「ねぇ、今日ずっとくっついてていい?」
「俺もずっと澪にくっついていたいよ」
お互いに顔を見合わせ、キスをした。
幸せすぎて、俺は、このとき大事なことを忘れていた。

明日の相手も澪だということを。
2008年10月04日(土) 20:31:10 Modified by bureizuraz




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