2-837 覚書外伝・ブランコ姉

「弟君のばかぁ。」
私は公園のブランコをゆらしながら、そんなことをつぶやいた。
だいたい弟君だって悪い。こんなに遅くに帰ってきて
弟君は生徒会の手伝いをしていたと言い訳していた。
だけど、私にはわかる。
美人で評判の生徒会長といちゃいちゃしていたにちがいない。
それでなくても、最近現れた許嫁や、いつも一緒にいる幼馴染み
その上、弟君を意識し始めた妹もいるのだ。
みんな悪い子ではないけど、弟君を取られそうで怖い。

だけど、私も悪いかな。いきなり怒って家を飛び出してしまった。
みんな心配してくれてるかな。
やっぱりそんな訳ないよね。弟君は私のこと口うるさい年増ぐらいにしか考えてないよね。
ごめんね。めんどくさいよね。もう弟君だってもう充分大人だもんね。

私がそんなネガティヴ思考の無限ループをぐるぐる回り、泣きそうになっているところに
「小鳥姉。いい歳してなに泣きそうになってるんだよ。」
「弟君?迎えに来てくれたの?」
「当たり前だろ。心配したんだぞ、いつまでたっても帰ってこないから。」
弟君は顔を真っ赤にしながら、こう言ってくれた。
「ふふっ。やっぱり弟君は弟君だね。」

嬉しくなってしまった。この子は子供の頃から私を、ううん、みんなを大切にしてくれた
やさしい子だった。
「なに言ってるんだよ、小鳥姉。」
「そのままの意味だよ。」
「ん?まぁ、いいや。早く帰ってメシにしようぜ。みんな腹減らして待ってるぜ。」
「うん!」
私は差し出された手をつかみブランコから立ち上がった。

帰り道、こんなお願いをしてみた。
「ねぇ、弟君、手をつないでくれないかな?」
「な、この年になって流石にそれはちょっと。」
「ひどい。おねーさんのいうことが聞けないの。ああ、お父さん、お母さん
私の教育が悪かったせいで、弟君は不良になってしまいました。」
「あーもう、わかったわかった。」
そう言うと弟君は優しく私の手を繋いでくれた。
私は弟君の大きくなった手をぎゅっと握りしめ、改めてこう思いました。

弟君だーいすきだよ。
2008年10月04日(土) 21:43:09 Modified by bureizuraz




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