2-868 無題

「ばか!遅刻しそうだったら言いに来なさいよ」
小さな口を尖らせブツブツと愚痴をこぼすキリ。
でもなキリ、元はといえば自分が寝坊するのが悪いんだぞ。
「何、もしかして起こしにきて欲しかった?」
「ち、違うわよ。リュウにそんなことしてもらわなくたって…」
始めの勢いはどこへやら。声のトーンが一言ずつ下がっていく。
「あっそ、じゃあ明日からも頑張って自力で起きてな」
キリの反応が面白くてつい意地悪になってしまう。
「あ、あのね。それはその……」
意地っ張りというか甘え下手というかツンデレというか……キリと話していると楽しくてしょうがない。
「ほら、これ以上遅刻するとアレだからさ。だからその…リュウが起こしに来てよ」
キリ知ってるか?肝心の所をぶっきらぼうに言うと逆効果なんだぞ。
「はいはい分かったよ。キリがそこまでして欲しいんなら毎朝行ってやるよ」
「本当に?」
「俺はキリに嘘はつかないぞ」
「約束よ。って勘違いしないで、リュウが来なかったら私が遅刻しちゃうからね」
本当に可愛いな。一々俺のツボにヒットしてくる。
「はいはい。あくまでもキリが遅刻しないためな」
「そうよ別に一緒に学校に行きたいわけじゃないんだから」
どんどん墓穴を掘っているのにキリは気付いてないんだな。
「でも、タダで毎朝来てもらうのも悪いから。これからは私と手を繋がせてあげる」
改めて言おう、キリは意地っ張りか甘え下手かツンデレのどれかだ。
「そんなこと言って自分が繋ぎたいだけなんじゃあ」
「ば、バカそんなわけないでしょ。それとも何?私とじゃ嫌…?」
最後でそんなに落ち込まないでくれ。俺が嫌がるわけないだろ。
「ほら、手出せよ」
「え?」
「俺は今すぐにでも繋ぎたい」
キリの表情がみるみるうちにニヤけていく。嬉しいなら言えばいいのにな。
「……ありがと」
手を握り合い歩いているとボソっとキリが呟く。
「手を繋ぐことじゃないわよ。わざわざ朝起こしに来てくれることの方だから」
そんなことを言いながら俺の腕ごと抱え込んでいるのはどこのどいつだか。
甘え下手もここまでくると面白い。
とはいえベタベタされるのが嫌いな俺にはこれくらいがちょうどいいのかもしれない。
「…好きだよ」
「ん?なんか言ったか?」
「ば、ばか。何も言ってないわよっ」
「そうか、でもなキリ。俺も好きだぞ」
「聞こえてたの!?」
「残念でした〜」
やっぱりキリといると楽しくてしょうがない。
2008年11月14日(金) 01:48:44 Modified by amae_girl




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