2-885 スレ擬人化

とてとて♪
どんっ♪
ぎゅーっ♪
すりすり♪
ちゅっ♪

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「ふぅ、今日も堪能したぜ!」
俺がこのスレを見始めためたのは一年くらい前。
ある日エロパロ板の一覧をボーっと眺めていたら、目に飛び込んできたタイトル。
「甘 え ん ぼ う な 女 の 子 の エ ロ パ ロ」
      • ビビっときた。期待に胸を高鳴らせてクリック。
はたして見込み通り、そこにはまさしく俺の理想、甘美なユートピアが広がっていたのだった。
その日からというもの、毎日のようにスレを開き様子をチェックしている。
始めはちょっと過疎気味だったが、徐々に住人は増えていった。
僭越ながらおれ自身も小ネタを書かせてもらったりした。そして今。
SSや小ネタはほぼ毎日のように投下され、盛り上がりは最高潮。しかもよくある住人同士の揉め事もなし。
今日なんか、知る人ぞ知るオリジナルSSの名手の某氏までもが来てくれたのだ。
ああ、このスレの住人で良かった!なんだか子供の成長を見守ったようで、なんとも言えない感慨深さがあるな。
「やっぱこのスレは最高だ!なあそう思うだろ」
さっきから隣に座り、俺の顔に頬擦りしている女の子に話しかける。
「ん・・・嬉しい、です・・・ありがとう・・・」
そうだ、そうだよな!あー生きてて良かったマジで。ところで誰なんだろこの娘。部屋に連れ込んじゃったりした覚えは無いんだけど・・・って女の子?
「うおっ!?だ、誰だアンタ!?」
思わず後ろに跳んで後ずさる。
「あん、もっとしてたかったのに・・・申し遅れました。私、そのスレッドの精です。名はまだ有りませんが以後お見しりおきを」

精。いろんな物に宿る妖精っぽい奴。
      • 確かこの板にもそんな感じのテーマのスレがあったな。後で見てみよう、ってそうじゃなくて!
「えーといわゆる電波さん?あー俺そういうの守備範囲外なんだけど」
「違います!!!」
顔を真っ赤にして否定する。おー結構可愛いなあ。
「正真正銘、PINKちゃんねる、エロパロ&文章創作板、『甘えんぼうな女の子のエロパロ』スレッドの精です!なんなら証拠も今すぐお見せします!」
なんか女の子が言っちゃいけない単語がいっぱいある気がするが、この際もうどうでもいい。
「証拠?」
「はい!まずはレス番号を適当に言ってみて下さい。そしたら私はそこに何が書いてあるか正確に当ててみますから、それで信じてもらえるでしょう?」
う〜ん、まあ分かった。それでとりあえず信じよう。
「じゃあ言うぞ・・・179番」
ふふん、とちょっと笑ってみせる彼女。
「書き込み日時は2008年8月14日23時37分27秒、IDナンバーはKGEIaTQQ。
『とてもいい出来なんだが、変なとこで改行が行われてるせいで少々読みづらいので、
 ちゃんとした文の区切りで開業することを勧めるよ。
 ともあれGJ 』
 って内容ですね。簡単です!」
さらっと即答してみせた。慌てて画面をスクロールして、問題のレスを探す。

179 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 23:37:27 ID:KGEIaTQQ
とてもいい出来なんだが、変なとこで改行が行われてるせいで少々読みづらいので、
ちゃんとした文の区切りで開業することを勧めるよ。
ともあれGJ

ええ、一字一句間違い無く合ってますね。完敗です。
どうやら彼女の言うことは間違いなく本当らしい。
「あー、その、君」
勝ち誇った顔をしている彼女に話しかける。
「はい!なんならまだやりますか?」
「いや、もういい・・・えーそれで君が、その、このスレの精だってのはよく分かった。で、一体俺なんかの元に何しに来たの?」
「そんなこと決まってます!」
またも即答。
「あなたに恩返しするために、たくさん甘えに来たんです!」

「・・・は?」
「はいそうです!あなた、ずいぶん昔から私のスレにいらっしゃいますよね?」
確かにそうだ。俺はかなり前から毎日のようにこのスレをチェックしている。
それだけに、最近の盛況ぶりは自分の事のように嬉しい。
「私、知ってるんです。あなたが毎日毎日私のスレを見てること。
 残業で疲れて眠そうにしてた時も、風邪引いて熱を出してた時も、いつもいつも私を見てくれてた。
 話題が無くなった時は、自分でネタを書いて盛り上げようとしてくれた。
 私、すごく嬉しくて。見てくれるたびに、このスレに生まれることが出来て良かったなあってすごく思って。
 だから、ずっと恩返ししたかったんです・・・」
驚いた。ただの趣味で毎日覗いていたと思ってたのに、こんなに感謝してくれる人(?)がいるなんて。
「私、今日からあなたにいっぱい甘えますね。
 心配しないで下さい。今まで投下されたSSや小ネタのデータは全部頭に入ってますから。
 私の甘えデータは108式まであるって言われてるんですよ?
 もちろん、あなたが特に気に入ってるのもちゃんと分かってます。
 そうですね、膝枕とかハグとか、一杯ねだっちゃいます!
 あと食べさせあいっことか、おはようとおやすみのキスしたりするのもいいですね。
 そうだ、あなたって呼び方もなんか他人行儀ですね、『ご主人さま』にしましょう!
 ねえ、2人で虫歯になっちゃうくらい甘い生活にしましょうね。
 よろしくお願いしますね、ご主人さま!」
「ちょっと待ったあ!!!」
「何ですか?もしかして『おにいちゃん』とかの方が良かったですか?もう、ご主人さまったら。でも大好きですっ、えへへ」
「違うって!とにかく落ち着いて!」
暴走してハイになる彼女を必死になだめる。
「つまり簡潔に纏めると、君がこのスレに書かれてるようなことを俺にしてくれるってこと?」
「はい、喜んで!」
      • 正直魅力的だった。そういうシチュエーションは無論大好きだ。じゃなければこんなスレを毎日覗くはずがない。
しかしだ、彼女は人間かも良く分からない生き物だ。それにここは3次元なんだ。現実なんだ。甘ったるい桃色空間が広がるあのスレじゃないんだ!
「ご主人さまぁ・・・そういうの、嫌い、なんですか?毎日見てるから好きだと思ってたのに・・・うぅ・・・」
だが、そんなささやかな理性は涙声でうつむく彼女の前に崩れ去った。
「そんなわけないじゃないか大歓迎だ!よし、2人で今日から激甘生活を送ろうな!」
「ほんとですか!?ご主人さま大好き!
 世間から見れば2chの最下層それもエロパロ板なんかに入り浸ってニヤついてるダメ人間かもしれないけど、大好きですっ!!」
後半は聞かなかったことにしよう。
最初の時ように、頬を顔に摺り寄せてくる彼女。ぐお、柔らけえ。
SSで見慣れたシチュのはずが、実際に体験するとこれほどの破壊力だったとは。
そのうち、頬だけでなく体全体を子猫のように擦りつけてきた。あー気持ちいい・・・ってこれ以上はヤバい!

「ちょっと、離れて、離れて!」
「あ、やん、ふぅ・・・御主人さまぁ・・・って、え?」
何やら嬌声を上げ始めた彼女を無理やり引きはがす。
「とりあえず、今日はもうこの辺にして寝よう!な、頼むから!」
「何でですか?私もっと甘えまくりたいですよう」
「いいからほら、寝るぞ!」
理性が持たない、なんて言えない。半ば無理やり寝室に連れて行く。
「ふ〜ん、まあいいですけど。
 ところで一緒に寝るなら当然、添・い・寝、ですよね?」
少し悪戯っぽい笑みを浮かべる彼女。添い寝か、そうだよな〜・・・添い寝?
「いやいやいや、それはもっとまずいって!勘弁してくれって!」
「えー何でですか?さっき、『激甘生活を送ろう!』なんて言ってくれたばかりじゃないですか」
      • 話は急に変わるが俺には彼女なんて出来たことは当然ない。(大体もしいたら1人寂しくこのスレを覗いたりしていない)
もちろん、体を触れ合った経験など皆無なわけで。
「いいですよね〜、添い寝。私のスレにも幾つかありますね。王道なシチュですよね〜。
 さ、どうぞ。どこからでもかかって来て下さい!
布団に身を投げ出す彼女。ええい、こうなったらヤケだ!
電気を消し、勢いよく彼女に抱きつく。
「やん!ご主人さま大胆♪
 あ、そのまま襲ってくれても全然かまいませんよ?
 私のスレにはあんまり濃厚なHシーンのデータは無いから、そんなにいきなり激しいのはできませんけどね♪」
何か言ってる気がするがひたすら眠ることに集中する。
それにしても。なんか、さっきから甘えられてるっていうよりは遊ばれてるような気がするんだが・・・まあ、いいか。
そんなことを考えながら、眠りに落ちた。

朝起きると、隣に人の気配がしない。
夢だったのか?甘いSSの読みすぎで頭がおかしくなったか?少しの落胆を覚え、台所にむかう。
「あっ、ご主人さまおはようございます!今日もいっぱい甘えますね!
 じゃあ早速ほら、おはようのキスしてください!ん――――――っ」
―昨日と同じ、騒がしい彼女がいた。キスを求めて顔を懸命に突き出している。
苦笑しながらキスをしてやる。
「あ・・・はわぁ・・・私嬉しいです・・・初めて、キスをしてくださいましたぁ・・・もう死んでもいいかも・・・」
感激のあまり包丁を胸に突きたてようとする。慌てて取り上げる。
「あ、ごめんなさあぃ・・・ご飯もうすぐ出来ますから、待っててくださいね」
朝食はやたらと旨かった。人間じゃない癖にどこで覚えたんだ?

「ほら、キス」
玄関。新妻のように見送りに来た彼女に言う。
「へ?」
「いってらっしゃいのキス。したくないのか?」
「あ・・・」
顔を真っ赤にする彼女。その顔にすかさず口づけ、舌を入れてやる。
「んんっ!?ん、あっ・・・はむ・・・うん・・・」
キスが終わると、抗議の声を食らう。
「っはぁ・・・もう、ご主人さま、ひどい・・・」
「昨日の夜、散々からかってくれたお返しだ」
「もう、早く行ってください!」
「怒るなって。じゃあ行ってきます」

家を出てからしばらくして気付く。なんか俺、段々あいつに染められてきてないか。
まさかあんな大胆なことを、自分からやってしまうとは思わなかった。
やばいな俺、ああいうのは二次元オンリーだと思ってたが・・・あいつも半分は二次元?だが・・・
思えばあいつに出会った時から・・いや、初めてあのスレを開いた時から、俺はあの甘い空間に洗脳されてたんだろう。
何だかんで、「甘えん坊な女の子」最高ってこった。なあそうだろ?
2008年11月14日(金) 01:52:42 Modified by amae_girl




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