4-756 無題

布団というものは、あったかいものである。特に冬場の朝は、そこが桃源郷といわんばかりに抜け出すことを躊躇してしまう。
それは俺にとっても同じ。同じなのだが。
「おい、なに人の布団に入って来てやがんだ」
「いいじゃんか別にぃ。減るもんじゃなし!」
そう言って香奈(かな)は俺の布団へと潜り込んでくる。
何だかんだで場所を開けてやる俺も俺だと思うけどな。
何故か足の方から入ってきて、布団のトンネルを抜け、俺の隣からすぽっと顔を出す。
「ぷひゃー!到着〜」
にへらーと緩んだ笑顔で言いながら、俺の体に抱きついてくる。
「大探検だったな」
「にへへー。香奈二等兵、無事帰還しましたっ!」
キリリと敬礼を決める香奈。
「うむ、御苦労」
威厳たっぷりに言ってみる。
「怖かったよー!」
恐怖心は欠片も感じさせない声で楽しそうに笑っている。なんか香奈の行動を見ていると、猫を彷彿とさせるな…
「ごろごろ〜」
心の声が聞こえたのか、本当の猫のように俺の腕の中でくるりと丸まって、上目遣いに見つめてくる。
「褒美は出んぞ」
「にゃにー?!」
こういうときは大抵何かご褒美をくれとねだられることが経験上知られているので、先手を打っておいた。
ふはは、お前の思う通りになる思うな!
「ふにゅ…いいもん。明日からご飯も作ってあげないし朝起こしてあげないし、キスだってエッチだって禁止しちゃうもん」
「すいませんでした」
あっけなく思い通りになってしまいました。本当に(ry
「にゃはw」
とりあえず、抱きしめておいた。女の子特有のやわらかい抱き心地と、リンスの甘い香りがほのかに漂ってくる。
あ、いかん。ムラムラしてきた。仕方がない、少しナデナデしてみよう。
「ひゃうっ!…さ、触り方がえっちだよぅ」
「お前が柔らかすぎるのがいけないんだ」
「んもー!それって私が太ってるってこと?!」
「そんなことないぞ。女の子特有の、柔らかい感じだ」
「むぅ…ってこれじゃあ私ご褒美もらえないじゃない!」
おっと、気付かれてしまった。さらりと流すつもりだったのに…
「ご褒美ー!ご褒美ー!」
俺の手を払いのける勢いで駄々をこねる香奈。可愛くて仕方がない。
「はいはい、わーったよ。何がいいんだ?」
「え?!いいの?!やったーぁ!それじゃーねぇ…うーん…うーん?」
「…あれか、なんも考えてなかったのか」
「…にゃはは。そういうことだね」
再びふやけた笑顔でにへらーと笑う。
不意に、こんな景色をずっと守って行けたらなあ、なんて考えていた。
この笑顔を絶やさないように、この幸せな空気をいつまでも。
そんなことを思った、冬のある日。

「もう考えるの面倒だし、今日は1日布団の中でごろごろしたい!」
「えらい極論に出たな…。まあいいよ」
「わーい!やったぁー!一度こういう過ごし方してみたかったんだぁー」
まあ、俺は一緒にいるだけでいいんだからな、ご褒美になってるのかはイマイチ不明だが、喜んでるしまあいいだろ。
ところで。
「…すごく腹減ったんだが」
「あーそうかー。ずっと布団の中だとご飯食べられないね…じゃあ…」
嬉しそうに、それでいて恥ずかしそうに。
「今日の朝ご飯は…私だよ。…とか、言っちゃったりして」
もちろん、おいしく頂いたのは言うまでもない。


少し時間あいたけど、思いついちゃったので糖化しました。今は後悔してる。でも、謝ったりしないんだからね!
2009年01月16日(金) 23:45:43 Modified by amae_girl




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