5-508 とある親子の愛

悲しいの?
私の胸を貸してあげる。
こうするとね、悲しみが薄れるってママが良く私にしてたの。
泣かないでパパ、よしよし。
妻が彼女にしてきたとしても、幼いながらも、女の子って本能で母性を発揮するんだな。

妻の病気の不安で一杯だった俺は、俺をたどたどしいながらも小さな手で俺の頭を抱き、撫でてくれる天使の様な幼い娘の胸の中で泣きながら思った…。

かつて彼女の母親が彼女にしたように、俺を抱き締める彼女は、優しい微笑みを浮かべて子守歌を歌ってくれた。







あれから


ベッドの上で横たわる妻…。
昨夜娘の胸で泣いたがどうやら良性のポリープだった様で、手術も無事に終わり俺は、ほっとした顔で妻の寝顔を見て居た。


――数日後、元気な笑顔を見せる回復した妻、安心した俺だが、妻の喉元の包帯やらが痛々しい、しかも彼女は声がまだ出ないのだ…。
ふとみると、妻の口紅が塗られて無い唇が何やら動いて居る、どうやら何か伝えようとして居るのだ。

彼女の唇をみると、何やらモゴモゴある言葉を表す様に唇の形を変えてる様で、最後に唇を窄めて目を瞑る、目を開けたと思ったらまた四回何かの言葉を言って居る様なので発音を真似ると、どうやら

『き・す・し・て』と言って居る様だ、最後にまたキス顔になったので俺は、彼女の頭を優しく支えてキスをした。
彼女の舌が弱々しく俺の舌を絡めようとするので俺の舌で彼女の舌を絡めとってやる。

彼女の手が俺の手を握り、俺達は、助かった喜びをキスで表した。
彼女の頬には涙の筋が通り俺は彼女の涙を舐めて優しく彼女を撫でてあげた。
俺に撫でられた彼女は、甘える仕種を見せつつ眠りに就いた。

可愛い寝息の彼女にキスをした後俺は、娘を明日連れて来るから。
とメモ書きを置いて娘を迎えに行くためにそっと病院を後にした、明日は彼女や娘は、どんな笑顔を見せてくれるかな?

彼女が眠る病院の方を振り返りながら俺は、微笑んだ。


〜END〜
2009年06月19日(金) 21:12:17 Modified by amae_girl




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