5-681 A sweet party3

ふぅ、死ぬかと思った。
昨日はジェラートとショコラの焼きもちコンビネーションアタックを食らって大変だったのだ。
幸運な事に僕はまだ生きている。体中痛いけど…。
その痛みでいつもより早く目が覚めてしまった。ちょっと外の空気でも吸いに行こうかな。
外に出ると、宿屋の側の林から何か音が聞こえる。何だろう?
林に入ってみると、大剣の素振りをしている女の子がいた。
僕が知る限り、大剣を軽く扱える人物、しかも女性は一人しかいない。
「おはようジェラート。朝から鍛練かい?」
ジェラートに声をかけると素振りを止めて、額の汗を拭いながら挨拶をしてくれた。
「勇者様おはよう。今日は早起きだね」
「うん。ちょっとね」
さすがにジェラートが原因の一つだとは言えなかった。
ジェラートは挨拶を済ませると剣の素振りを再開した。それにしてもその体のどこに大剣をブン回す力があるのだろうか。
「…」
目線が首から下に目が行ったのは偶然ですよ?素振りの度に揺れるたわわに実った果実に目が行くのも偶然です。
「どうしたの勇者様?もしかして大剣を扱ってみたいの?」
「え?あ、うん、まあね」
ついつい思いもしない返事をしてしまった。言える訳ないじゃないか
ジェラートの大福餅を食い入るように見てしまってたなんて。
「色んな武器を扱えるのはいい事だよ。感心感心!じゃあまずは軽く振ってみて」
ひょいとジェラートの愛剣を渡されたが…お、重い!持つのはともかく、歩くのは無理そうだ。
でも振るだけなら何とかできるかも…。
「ハァッ!」
力任せに思い切り振り上げてみたけど、反対に剣に振られてしまった。
「うわわわ!?」
「わっ!?ちょっと勇者様危な…キャー!」
ガシャンと地面に大剣が落ちる音がした。そういう僕も地面に倒れこんでしまった。やっぱり慣れない物は扱うもんじゃないね。
…ん?剣は地面に落ちた筈なのに、この手にある感触はなんだろう?
ムミュムミュ。
マシュマロのように柔らかい。
プルュンプルュン。
プリンのようにプルプルしてる。
…ああ、何だかとてつもなく嫌な予感がする。心地良い感触がする手を見るとそれが何なのか分かった。
「あ、あの勇者様…そろそろどいてくれる?」
「うわわわ!ご、ごめんジェラート!」
なんてこった。僕は倒れる際にジェラートも巻き込み、あろう事か彼女の胸を…。

お触りしていた…。癖になりそ…いやいや違う違う!
「本当にゴメン!謝っても許してもらえないと思うけど…」
慌ててジェラートから身を離して謝罪を重ねた。昨日の事もあって只では済まないと思った。
しかしジェラートは僕の思惑とは裏腹に落ち着いた様子だ。あれ?怒ってないのかな。
「勇者様は…胸の大きい子って嫌い?」
ジェラートは怒ってはいないようだが、代わりにとんでもない質問をぶつけてきた。
どう答えればいいんだ、こんな時。
「え、ええっと…嫌いじゃないよ?」
僕にはそう答えるしかできなかった。下手な回答をすると、ジェラートを、
もしくはこの場にいないメープルやショコラを傷付けてしまいそうな気がしたから。
「…そっか、じゃ許してあげる」
あれ?意外にあっさり許してくれたな。女の子ってこういうものなんだろうか。
「ごめんね…」
「もういいって。それよりも大剣扱えるようになりたいんでしょ?早く持って持って!」
ジェラートに急かされ、大剣を拾いあげるが、構えさえもままならない状態だ。
そして重さに耐え切れず、大剣の切っ先を地面に落としてしまった。
「もーう、だらしないぞ勇者様ぁ」
「そ、そんな事言ったって…」
「文句ばかり言う人には罰ゲームでーす!」
そ、そんなぁ。キツい思いして更に罰ゲームだなんて泣きそうな気分…。
「ば、罰ゲームって…?」
恐る恐る聞いてみると、彼女はニコリと笑い、軽やかな動きで僕の後ろにまわった。
ムニュ〜。
「ジ、ジェラート!?」
首に腕を絡まってきたと同時に、背中に先程手の平に感じていた感触が襲いかかってきた。
間違いなくジェラートに後ろから抱き締められてる。
「罰として一分間拘束しまーす♪」
凄く嬉しそうに後ろからムギュムギュしてくる…果たしてこれは罰ゲームなんだろうか。
確かに股間のバーサーカーを落ち着かせるのは地獄だけど…。
「…ッ!むー!…」
抱き付いていたジェラートが急に不機嫌そうな声をあげた。
ヤバい、相方である狂戦士の存在がバレたかな!?
「なんか勇者様メープルの匂いがする…」
うわ、そっちの方ですか。でも匂いが残ってても仕方ないじゃないか。
あんなに密着してたんだし、その後は風呂に入る余裕なんか無かった。
ジェラートは後ろにいるので表情は分からないが、きっとしかめっ面をしてるに違いない。

「これは更なる罰が必要みたいね…」
「も、もう勘弁してよー」
「駄目!追加罰は頬擦りの刑ー!メープルの匂いを消さないと!」
僕のお願いは却下され、胸ムギュに頬擦りが追加された。
すりすりムギュムギュすりすりムギュムギュ
すりムギュすりムギュすりすりムギュムギュ
「あ、あのージェラート?もう一分経ったんじゃないかな?」
これ以上は限界だ。メープルとは違う、ジェラートの甘い香りと罰ゲームの破壊力は凄まじい。
「そうだっけ?じゃあ延長ぉ〜」
「ダメー!!」
何とか罰ゲームから解放されて、再び大剣の稽古が始まったが、ジェラートのお陰でだいぶ様になってきた。
余談だが、僕に刀と槍の使い方を教えてくれたのもジェラートだったりする。
「勇者様やるじゃん。もう少し頑張れば実戦でもいけるかもよ?」
「ジェラートのお陰だよ。大剣も扱えるようになれば、かなり幅広く戦えるだろうしね。ありがとう」
笑ってお礼を言うと、ジェラートは顔を赤くして「大した事じゃない」と恥ずかしがっている。
ジェラートは綺麗系なんだけど、時折見せる仕草が可愛いんだよね。
こんな女性を世の男共は何故放っておくのだろう。時々疑問に思う。
「ねえジェラート。お礼がしたいんだけど、何か欲しい物とかある?」
「そ、そんな、別にいいよ」
甘える時は遠慮無しだけど、こういう時は遠慮しちゃって。
僕としては遠慮しなくてもいいんだけど、やっぱり恥ずかしいんだろうか。
いくらか押し問答が続いた後、先に折れたのはジェラートだった。
だけど「あの、その、えっと」ばかりで中々望みを言えないでいる。
(ホント…普段のジェラートとは大違いだよなぁ)
あたふたしているジェラートを見てそんな事を思ってると、だいぶ落ち着いたのか「勇者様」と僕に望みを語り始めた。
「よかったら…二人でいる時だけ、、勇者様の事、カズヤ様って呼んでいい?」
意表を突かれた望みに、一瞬間を空けてしまったが、そんな事はお安い御用だ。
「いいよ。でも『カズヤ様』じゃなくてカズヤって呼んで欲しいな」
「ほ、本当に!?いいの?」
「うん。じゃあ早速呼んでみてよ」
喜ぶジェラートに促すとまた顔を赤くしてゆっくり口を開いた。
「カ、カズヤ…」
「…ジェラート」
僕達は自然と抱き締め合っていた。理由は分からない。ただ、彼女の腰に回す腕に想いを込めて強く強く…。
2009年06月19日(金) 21:37:33 Modified by amae_girl




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