5-874 マシンガン!!

  • マシンガン!!

「先輩〜!!」
なんの脈絡もなく後輩が飛んできた、とりあえず回避。

「なんでよけるんですか先輩っ!?それはそれとして先輩、ゴールデンウィークに花見へ
行きたいので予定を空けておいてくださいっ!それと明日先輩アルバイトも暇でしたよね?
だったら映画に行きましょう!それで駅前に待ち合わせとかも素敵ですがそれだと柱を
はさんで三時間ぐらい待って『ああ、あの人は事故にでもあってないかしら…』なんて
昔の映画みたいなシチュになりそうですし、今日のうちから先輩のうちで泊まって一緒に
出かけたほうが確実ですよね?だから今日は先輩のうちに泊まりましょう!あとあと!
先輩に抱き付いてもいいですよね?いいですよね?良かったらいますぐ抱きつかせて
いただきたいと思いますっ!!」
そんなことを叫んだかと思うと飛んできた後輩を再び回避。さらに
再三失敗を恐れずに飛びついてくるであろう後輩にチョップを
食らわせて動作を強制停止、これでやっと話を聞かせられる、やれやれ。

「まず落ち着け!」
「あたしは落ち着いてますよ、先輩!!」
「すぐにばれる嘘をつくんじゃない。まずゴールデンウィークの件は了解した、放送部の
懐かしい面子でも集めて行くか?明日は空いてる、映画へ行くのもいい、だが我々は
携帯電話を持っているので三時間も会えないなんてことは……って何をしているんだ?」
足元で機械が壊れた音がしたと思って目を向けるとすでに携帯電話だったものが後輩の
足元にあった……
「何をしたんだ?」
「携帯電話が壊れちゃいましたっ!」
そう答えた後輩の顔はすごく晴れやかだった。

「って壊れたではなく壊したでしょう。」
「えっ?壊してなんていませ…ふにゃっ!」
「まったく、はい、代わりの端末です。こんなこともあろうかとプリモバイルの端末を用意
していました、SIMカードを入れ替えればいつも通り使えます。あなたのことですから
使い方は問題ないでしょう?私の番号以外に登録してませんでしたか?」
「なんで先輩はなんでも用意がいいんですか……先輩専用の電話でしたから大丈夫です、
それに先輩の番号はどれも暗記してます」
「それぐらい予想できますよ、大体今壊したのも私が買った端末でしょう、ただあまり
粗末に扱わないでくださいよ…」
そうグチったのが悪かったのか、その言葉を聴いたとたん後輩はあわててしゃべりだした。
「あわわ、すみませんでした先輩!!このケータイは絶対に壊しません!墓場に行くまで
一生の宝として大事にします!!」
「そこまでしろとは言ってない、だが常識の範囲内で大事にしろ。また壊れたら代わりの
一つ二つは用意するから気にしないでください。」
「先輩……グスッ……ありがとうございます!」
本当に太陽のような笑顔を見せる人ですね……

「ずいぶんとそれましたが話を戻しますよ。今日は自分の家に帰りなさい、あと明日の
集合時間は観る映画次第ですがたぶんドラゴンボールでしょう、だったら明日の九時半に
駅前のいつもの場所に集合で。これでさっきの質問は全部ですね?」
「先輩!抱き付いていいかという質問の答えがまだです!答えがないと言うことは抱き
付いてもいいってことですねっ!抱きつかせていただきっ ふにゃ!?」
まったく、はぁ〜
「血まみれで抱きつくなっ!実習後に白衣のまま抱きつくやつがどこにいる!!」
「だって先輩のぬくもりを一秒でも早く感じたかったんです!はっこれはまさか噂の
放置プレイ!?さすが先輩、ドSらしく放置プレイですか!?ですがあたしとしては目隠し
とかのほうが好きです、そうだ今日は先輩のうちで一晩かけてそんなプレイを……
ごめんなさい先輩、もう冗談は言いませんので許してください。」
「さっさと着替えてきなさい!」
「はい!!」

勢いよく答えるとぴゅーっと消えて行ったのは私が所属している放送部の後輩だ、
アナウンスが専門で今年の大会ではNHKホールまで残れるのではないかとひそかに期待
しているのだが、私以外の人を相手にするときはかけているリミッターを私との時だけは
完全にはずすのだ(部活では五割ぐらいはずしている)私の前でだけは素の顔を見せて
くれるというのは、なんというか、嫌ではないのだが、たまに困る。

そんなことを考えていると後輩がぴゅーっと帰ってきた。
「先輩〜!!今こそあたしを受け止めてください!!」
そう叫びながらジャンプしてくる物体を受け止めた、受け止められるものが私以外に
いないのだからしかたがない。そう、たぶんしかたがないのだ。

「ほいっと、しかし本当に軽いな。ちゃんと食べてるのか?というかこんなちっこい体の
どこからエネルギーがでてくるんだ?」
「ほらあれですよ!先輩から受け取ってる愛からですよっ!」
「何を言ってるんだ……」
「わぁ〜先輩の顔、少し赤くなってますね!」
「皮膚が薄いからな、気にするな」
「はいはい、先輩、今日先輩のうちに泊めてくれませんか?」
「さっき言ったでしょう?」
「そうじゃなくて、最近先輩のうちに遊びに行ってないですし、ちょっと行きたいな〜って」
はぁ、こんなパターンがこの前にもあった気がする……ここで俺がどう答えるかも、
こいつは分かってるんだろうな……それでも乗る俺も俺だけどな……
「泊めないぞ、来るだけなら、俺のうち来てもいいぞ。」
「ありがとうございます、先輩っ!」
まったく、明日の夕飯の分まで食材があると思ってたのに、二人分作ったら明日の朝まで
の分になっちまうな……なんてまだ決まってない泊まりの予定を考えてる俺は甘いのかな、
なんて思いながら二人で手をつないで帰宅するのも嫌いじゃないと思うのだった。
2009年06月19日(金) 22:04:28 Modified by amae_girl




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