6-140 ふわふわホットケーキ

「ごめんね、せっかくふわふわになったのに焦がしちゃって……」
「気にするなよ、誰にだってあるって」
「無理に食べなくていいよ、私が食べるもの買ってくるから」

言い訳すると、本当なら二人でショッピングしに行くはずだった。
だけど、子供の頃好きだった絵本のようなふわふわのホットケーキが焼けるって知って、
予定を変更して俺んちで作ってみようって話になったんだ。

この前彼女が買ってきたホットケーキミックスの残りがあった記憶だけは確かだった。
そして、材料はあるから大丈夫だ、とスーパーにも寄らず彼女を家に連れ込んだはいいが、
冷蔵庫の中を見てみたら、丁度二人分だった。
ついでに冷蔵庫の中に腹の足しになるようなモノはほとんど残ってない。
あるのは酒とつまみくらいだった。
今日のデートの帰りに食料買って帰ろうって予定だったんだよ、本当は。
それをすっかり忘れて彼女を連れて来ちゃったっつう訳で……ホントに情けない言い訳だ。
しかも僻地で丘のてっぺんにある俺の下宿先から、一番近くのコンビニまで往復50分くらいと来た。
俺の腹はもう限界で、かといってこんな暑い日に彼女をわざわざパシらせる訳にゃぁいかない。

「いいっていいって、もったいないだろ? せっかく作ってくれたのにさ。じゃ、いただきまーす」
と、言うわけで、俺は片面焦げ付いたホットケーキにかぶりついた。
苦みの利いたホットケーキをもそもそと咀嚼する。

「あーもう、だったら、せめて……ん……ふぅ……ん、ちゅぅ……ん……」
彼女が俺の上に乗ってきて、細い腕を俺の背中と首に回してきた。
ひとしきりお互いの唇を貪ると、ようやく身体を離した。
とはいえ、俺の上に乗ってるのは変わらんが。
「はんぶんこ、しよ?」
頬を染め、見上げてくる甘ーい甘ーい、もうまるでハチミツのように甘い仕草、もう一度言うが俺の腹はもう限界だった。
と、いうワケででそのまま美味しそうな彼女の唇に、たわわに実った白い果実にむしゃぶりついた。
ごちそうさん。
2009年10月28日(水) 19:48:23 Modified by amae_girl




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