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バイオハザード6

 やりましたよ。ええ。
 45→6と続けてやって思ったのは、どんどんただのTPSになっていっているな、ということです。旧シリーズのようなサバイバルホラーゲーじゃなくなってるっていうのは、4の頃からそうなので別にいいんですが、ここでいう「ただのTPSになっていっている」というのは、どんどん陳腐化しているということです。
 5では終盤にちょろっと登場しただけの銃火器持ちの雑魚が、6では序盤からボコボコと出てきます。そんな奴と、カバーで身を隠しながら撃ち合いをするゲームなんです。完全に、巷間に溢れている凡百の洋FPS・洋TPSとやっていることが変わりません。アタリショックからもたらされた長い暗黒時代を乗り越えて復活を果たし、日本の市場にも入り込んできていた当時の洋ゲーたちの波に飲まれてしまっているなという印象が拭えませんでした。
 そのうえこのゲームは、洋画(特にハリウッドのアクション映画)っぽくもあるんですな。QTEが大量に散りばめられていることはその証左です。
 人間の関節は、少なくなるように数えても約260あるそうです。対してゲームのコントローラには頑張っても20個ぐらいしかボタンを取り付けられません。ボタン操作では、人間の動きをすべて再現するのは不可能です。だから、映画でやっているような複雑な動きをプレイヤーにボタン操作だけでやってもらうのも不可能なのです。だからといって複雑な操作をムービーだけで見せたのでは、ゲームではなくなってしまいます。そこで編み出されたのが、QTEという手法です。基本は、製作側が用意した動き(それも、ムービーじゃないとできないような複雑な動き)をゲーム内のキャラクターが勝手にしてくれるのですが、その中に単純なボタン操作を入れ込み、その操作をしないとキャラクターが前述の「決められた動き」をしないような仕組みを導入しました。これが、QTEです。一応操作が入るので、ゲームで大事な「キャラクターを自分で動かしている感」を損なわないようにしつつ、ムービー並みに複雑な動きができるのです。ゴッド・オブ・ウォーなどのQTEを見ていただければ、ここまで筆者が述べたようなことは分かっていただけると思います。
 でもま、所詮は単純なボタン操作なので、それほど動かしていても楽しいものではありません。だから、あんまりたくさん入れるとゲームをやっている感より映像を見せられているだけの感が強くなってしまいます。バイオ6のQTEは、まさにそれです。プレイヤーのできることが少ないので、ただただ映画を見せられている気分になるんですな。
 しかも、映画としての出来も非常に陳腐です。ようやくつかんだと思った足場やでっぱりが崩れるなどといったアンチャーテッド的な裏切りが頻繁に起きます。橋は渡ろうとすれば崩れるし、主人公が乗った飛行機やヘリは落とされるのです。そこから復帰するために、QTEが入ります。迫りくる何かから逃げるという展開も頻繁にあります。それからも無事に逃げおおせるためには、QTEをこなさなければなりません。アクション映画のお約束的なあるあるばかりを延々と見せられ、プレイヤーができるのは面白くもない単純なボタン操作だけであるため、やっていてゲンナリしてきます。特定のクリーチャーやボス敵から即死攻撃を受けた時の演出なんかは結構長めの上に基本的に飛ばせないため、「せっかく作ったんだからこのすごい映像を見ろ」という作り手の傲慢さが背後に見え隠れします。スパロボFと一緒です。
 決して、TPSとしてつまらないわけではありません。でも、ひたすらに陳腐です。ゲームとしておもしろいものを作るという細やかな気配りが見えてきません。映画としておもしろいものを作るのに注力しすぎたせいなのか、細かい部分に粗が目立ちます。カバー操作は複雑で銃を構えただけではカバーから身を出してくれません。アイテム所持枠は9個しかなくて色々な種類の弾薬を持っているとすぐにいっぱいになります。投擲武器は1個投げるたびに装備しなおす必要があります。救急スプレーも投擲武器扱いなのでワンボタンで使えません。ハーブはワンボタンで使えますが、体力ゲージを1メモリしか回復してくれません。武器を変える時も、横一列に並んでいるものを目で見ながら選ぶ必要があります(方向キーの四方に武器をセットしてワンボタンで装備武器を変えられる前作5の方がよほど親切でした)。
 
 クソゲーでは決してないですが、ゲームとしても映画としても陳腐なんです。MGS4も言われていましたが、映画を作りたいなら映画を撮れということですね。映画はあくまで映像を魅せるエンターテインメントなので、瞬間瞬間の映像が最高になるような作り方をしていればいいわけです。そのためにカメラの位置をポンポン変えていく画作りもありなんですが、ゲームではプレイヤーが操作をしないといけないので、カメラの位置をポンポン変えられると倒す方向キーの向きもポンポン変える必要があり、煩わしいだけなのです。ボス戦でも、このゲームでは映画的な映像展開の中のQTEで決着がつく方が多いんですが、それだとあまり倒した爽快感がないのです。ゲームなんだから、きちんと通常操作の中でトドメを刺したいのです。

 きちんとゲームとしておもしろいものを作って欲しかったと思います。そこに力が割かれていれば、上述のような細かい操作の粗は全て潰せたはずです。

<追記>
・レオン編ではゾンビが雑魚として登場しますが、いまいちゾンビを倒した実感が湧かないので爽快感があまりありません。やっていてイライラします。ショットガンを撃っても吹っ飛ばないし、死ぬ時もなんかジワっと死ぬのでとどめを刺せたのかどうかの確認に時間がかかります。鎧兜を身に着けているやつも出てきて、無駄に硬いし。
4の頃から思ってましたが、エイダが使っているフックショットはあんなに便利なのに、なんで他に真似する人が出てこないんでしょうかね。

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