キシリトール
キシリトール
- エストニアの永久歯は萌出中の10歳の740名に、キシリトールガム、またはキシリトールキャンディを使用すると、50%ぐらい、う蝕などになりにくい。キャンディは、キシリトールが49%配合で1日8粒。ガムは100%配合で一日6枚です。学校のある日のみで、1日3回、各10分間使用。ガムとキャンディ間には、差がなかった。
Alanen P, Isokangas P, Gutmann K. Xylitol candies in caries prevention: results of a field study in Estonian children. Community Dent Oral Epidemiol. 2000 Jun;28(3):218-24. click
- 東北大学歯学部山田正名誉教授が、いろいろ書いています。メーカーよりですが、勉強になります。
http://www.toothfriendly-sweets.jp/letter/index.ht...
キシリトール以外のガム
ガムの総論
- CHEWING GUM-FACTS AND FICTION:A REVIEW OF GUM-CHEWING AND ORAL HEALTH T. Imfeld 内容の評価は、どうでしょうか、Freeで読めます: http://crobm.iadrjournals.org/cgi/reprint/10/3/405...
リカルデント
- GCのHPに載っている「 Reynols EC:J.Clin.Dent.,10,86-88,1999」の図は、PubMedでは載っておらず、直接、J Clin DentのHPを参照する必要があります。なぜか、対照のフッ素が500ppmと、使わないぐらい薄いのですが・・・?click
- キャドバリーのHPでは、違うデータで、水との比較です。HPによって、若干、選ばれた論文が異なりますが、人のRCTは、「CPP-ACPで、Limits: Randomized Controlled Trial, Humans」とすると2006年時点で、6論文があります。その中でフリーで読めるのを下に参考文献としてあげました(といっても、アウトカムがう蝕の抑制とか、カリエスそのものの修復ではありません)。本当なら、キシリトールより良いのだが、そこまで僕にはわかりません。僕が勉強した限りでは、明確な臨床研究は、ありませんでした。
E.C. Reynolds, C.L. Black, F. Cai, K.J. Cross, D. Eakins, N.L. Huq, M.V. Morgan, J.W. Perich, P.F. Riley, P. Shen, G. Talbo, F. Webber Advances in Enamel Remineralization: Casein Phosphopeptide Amorphous Calcium Phosphate J Clin Dent 10: 86-88, 1999. click
Reynolds EC, Cain CJ, Webber FL, Black CL, Riley PF, Johnson IH, Perich JW. Anticariogenicity of calcium phosphate complexes of tryptic casein phosphopeptides in the rat. J Dent Res. 1995 Jun;74(6):1272-9. click
Freeでみれます Reynolds EC, Cai F, Shen P, Walker GD. Retention in Plaque and Remineralization of Enamel Lesions by Various Forms of Calcium in a Mouthrinse or Sugar-free Chewing Gum. J Dent Res 82(3): 206-211, 2003 click
- グラスアイオノマーセメントの中に、CPP-ACPを入れる研究もありますよ。
Mazzaoui SA, Burrow MF, Tyas MJ, Dashper SG, Eakins D, Reynolds EC. Incorporation of casein phosphopeptide-amorphous calcium phosphate into a glass-ionomer cement. J Dent Res. 2003 Nov;82(11):914-8. Free Click
普通のガム
- 普通のガムでもノンシュガーなら、抑制効果あり。もっとも、効果は低いよ。
Beiswanger BB, Boneta AE, Mau MS, Katz BP, Proskin HM, Stookey GK. The effect of chewing sugar-free gum after meals on clinical caries incidence. J Am Dent Assoc. 1998 Nov;129(11):1623-6.click
有名論文
オーラルケアの宣伝がすごいので、US$32.00. 支払い、読んでみました。
http://www.tuftclub.jp/web53/web53.html
まず、誤解がないように、僕は、この論文、高く評価しています。RCTですし、サンプルサイズの計算もしてあり、質は、高いですし、その努力は、関心しております。
Nakai Y, Shinga-Ishihara C, Kaji M, Moriya K, Murakami-Yamanaka K, Takimura M: Xylitol Gum and Maternal Transmission of Mutans Streptococci. Journal of Dental Research 89(1):56-60, 2010
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19948944
この論文の結果の表が、臨床医には、難しくて・・・(^^;。
どうしても気になる点が、
ドロップアウトが30%を、サンプルサイズの計算の時から見積もっています。やはり、このような研究なので、最初からドロップアウトは高いと予想されていたのですね。
キシリトールガムグループ(キ)
コントロールグループ(コ)
とします。
(キ) (コ)
割り付け時 56例 51例
子供9か月 47例 31例
子供24か月 46例 31例
であり、(キ)が17.9%、(コ)39.2%の脱落率。
ガムなのでブラインドできるんで、ブラインドしてあると思い込んでいたのですが、
no gum
とあるだけで、どうも、ブラインドしてないようで、だから、コントロール群で脱落が多いのですね。
舌のMSより、saliva or plaqueのが良いと思うので、こちらのみをみます。
Strip mutans score (キ) (コ)
子供9か月 47例 31例
Score 0 45 21
Score 1 2 9
Score 2 0 1
Score 3 0 0
P=0.003
子供24か月 46例 31例
Score 0 17 5
Score 1 20 22
Score 2 9 2
Score 3 0 2
P=0.014
検定 カイ2乗法
だそうです(ふ〜)
たしかに、2×4表で検定すると、有意差がでますが、どうも、Score2と3が少なく、0のセルもあるので、有意差が気になります。
Score0と、1,2,3で比較と、
Score0,1と2,3(これは、意味なしですが)で比較でP値を求めると
Score0と、1,2,3
子供9か月 P=0.001
子供24か月 P=0.07
Score0,1と2,3
子供9か月 P=0.397
子供24か月 P=0.54
臨床的には、Score0と、1,2,3 が知りたいかな。
すると、子供9か月で有意差があっても、24か月でないので、ガムを食べるのをやめると、同じになるという結論になります。
(ここでは、わかりやすいように、わざと有意差で検討したように書いてありますが、実際には、僕は、有意差は気にしてません。その症例数そのものを気にして評価します。)
すると、ずーとガムを食べ続けなければならない。
いや、そもそも、ブラインドできるのにブラインドでないとなると、バイアスのリスクが高いことになる。
考察に、この研究の限界として、コントロールガムがなく、ブライドでなかったと書いてあります。
However, the impact of chewing on mother-child transmission
of MS would be negligible. Chewing a gum base 3-5 times a day
(Söderling et al., 1997) or sugar-free gum sweetened with sorbitol/
maltitol (Ly et al., 2008) did not decrease MS levels. Further studies
are needed, however, to optimize this intervention method.
ブラインドできなかったけど、コントロールガムをかんでいても、MSレベルが減少するというデータがないので、問題ありませんということです。
しかし、残念ながら、これは、まったく、意味不明です。被験者が、ランダム割り付けされた介入のどちらかがわからないということが重要であるのです。そもそも、コントロールガムではMSレベルが減少しないということを真実とするならば、わざわざRCTにしなくても、キシリトールガムの1アームのデザインでもよくなります。
と、ブランドの問題は難しいです。
実は、12か月では、症例数が82例と、9か月の78例より多くなっていて、詳細が不明(論文の考察までしっかり読んでないので、見落としの可能性あり)。
→これは、わかりました。9か月後におこっているので、介入後になります。サンプルをたまたま、集めなかったり、その次は集めたりで、少しサンプル数が変わったということのようです。
また、よく見ると(今頃気がついた)舌と歯肉・歯のどちらかでMSが検出されたというのが、表2の下にありました。それによると、
Strip mutans score (キ) (コ)
子供24か月で
MS検出された症例 29例(63%) 27例(87.1%)
です。
よって、口腔衛生指導とクリーニングを受けていても、ガムを食べると63%、食べないと87.1%の子供が、MS陽性と24か月でなってしまいます。
ちなみに、この母親は、同時に、として口腔内清掃を受けています。
ということは、もしかしたら、スプーンの共有などはよくないとの指導も受けているかもしれません。
なのに、さらにガムを食べても、63%でMS陽性か〜、
そもそも、ガムをやめると、63%が24か月時点で、Score1以上となることより、臨床的には、それほどインパクトがないと思いました。まあ、食べてもよいけどね〜という感じかな。
この論文のみで、結論をするわけでないのですが、いろいろと意見がわかれそうな論文です。
しつこいですが、サンプルサイズの計算もしてあるし、この論文を評価しております。でも、結論の使い方は、たぶん、著者の思惑と異なる使い方を、僕はするでしょうね(ごめんなさい)。
2010年09月09日(木) 08:43:06 Modified by mxe05064