味覚障害
- 原因不明の味覚障害(特発性)に亜鉛補充療法は、効果があるのか?
Sakai F, Yoshida S, Endo S, Tomita H. Double-blind, placebo-controlled trial of zinc picolinate for taste disorders. Acta Otolaryngol Suppl. 2002;(546):129-33.
- この論文の目的
- この研究が行われた場所:日本大学板橋病院耳鼻咽喉科
- この論文の研究デザイン:ランダム化比較試験(RCT)
- 対象者:
- 味覚障害を主訴として受診し、濾紙ディスク法による味覚検査にて亜鉛欠乏性もしくは特発性味覚障害と診断された患者であった。亜鉛投与群37例は、平均年齢55.2歳、特発性味覚障害24例、亜鉛欠乏性味覚障害13例であった。プラセボ投与群は、平均年齢50.4歳、特発性味覚障害24例、亜鉛欠乏性味覚障害12例であった。
- 介入方法:
- 1)カプセル中に亜鉛28.9mgを含むピリコン酸亜鉛に乳糖添加したカプセル
- 2)乳糖のみを内容としたプラセボ を1日3回、3ヶ月間内服させた。なお、今回の検討では、食事指導は行わなかった。
- 結果:
- 自覚症状改善度の比較で、亜鉛投与群と対照群において有意差がなかったが、濾紙ディスク法の味覚検査での改善率では、有意差があった。
もともと、透析患者さんなどで、亜鉛が欠乏すると、味覚障害が起こることより、亜鉛が味覚に関与することがわかっていました。最近、JDRにも亜鉛のRCTが掲載されましたが(日本大学耳鼻咽喉科系列ではない)、これも、僕の考えでは、自覚的な差はほとんどないと思うのですが、有意差ありと書かれています。
- 日本人対象のランダム化比較試験
自覚症状の改善 | 亜鉛投与群 | 対照群 | 期間 | 種類 | 背景 |
2002 Sasaki | 59% | 50% | 3ヶ月間 | ピコリン酸 | グルコン酸よりピリコン酸のが良いはずなので。結果も、良かったとある。 |
1991 Yoshida | 66% | 60% | 4ヶ月間 | グルコン酸 | 1976年のHenkinらの論文は、硫酸亜鉛で、グルコン酸のが良いので。 |
- 現在、これらの一連の論文の主任であった、冨田先生は、1991年の古い方の「体に吸収されやすいグルコン酸亜鉛が使われております」として、「アエンダM」を推奨していますね(使い方は、決められた1日1粒ではなく、6錠分3だそうです:日本歯科医師会雑誌Vo59No1p19-28,2006)。輸入販売中止になった、「ソルティア」を投与して、「これで九一%の効果が認められています。」。
- さて、この冨田先生の現在の奏功率ではなく、RCTの奏功率の59〜66%というのは、現実的であります。日本大学系列でないと考えられる施設でも、同じように言っているからです。
阪上 | 兵庫医大耳鼻 | 日本医事新報 2003 | 亜鉛内服療法 | 3ヶ月 60% |
愛場 | 大阪市立総合医療センター耳鼻 | 朝日新聞 2007 | 亜鉛内服療法 | 3ヶ月 60-70% |
- さて、みなさまは、この、「濾紙ディスク法」の結果と、「自覚症状の改善」の結果のどちらを使いますか。また、対照群(実は、服用していない)でも60%の効果があった、グルコン酸亜鉛を服用しますか?
- 最近、よく見ると、冨田先生のサイトに、「注意!! 血清亜鉛値の測定や味覚検査は、味覚障害の治療に自信のある医師なら出来ますが、亜鉛治療を始める前と、治療により好転するかどうか、少なくとも1ヶ月置きには検査して経過をみることが大切です。また、味覚障害は亜鉛以外に原因があることもお忘れなく!」との文言がありました。えっ、治療前に1か月おきに検査??、何か月かかるの??
- お蔵入り論文です。味覚異常の亜鉛の治療の系統的総説です。ちょっと古いので、新しい論文があるかも。ファイル
2011年11月23日(水) 05:47:46 Modified by mxe05064
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