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Hello, Again 6



861 名前: hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/06(日) 00:10:17 ID:6tn0Ka1P


*  *  *



一ヶ月と七日が過ぎた。
フェイトは自分に会いに来てくれたアルフと部屋で二人。
なのはが帰ってくるのはまだずっと日が落ちてからだ。

「ご飯はちゃんと食べてるかい?」
「うん、なのはが毎日作ってくれてる」

フェイトは膝の上に両手を乗せて独り掛けのソファーに座っている。
そのフェイトの顔色はアルフから見て、前に会ったときよりもぐっとよくなっていた。
少しは元気を取り戻したようだ。

「なのはは私がおいしいって思うものばかり作るんだよ。
私の好きなもの全部知ってるみたいに。不思議でしょ」
「へ〜……そうなんだねぇ」
「うん」

不思議ではないんだけどね、とアルフは心の中で呟く。

「で、ここでの生活はもう慣れたかい?」
「随分」
「ならよかった」
「でも未だに母さんがいないことや、色々なことが信じられないときがある」
「……やっぱりまだ寂しいんだね」
「うん……だけど夜寝るとき、寂しいとき、なのはが手を握ってくれるよ」
「ふぅん、優しくしてもらって良かったじゃないか」
「とても親切にしてもらってるよ」
「そりゃなによりだね」

フェイトの向いのサイドテーブルに腰掛けていたアルフはニッコリ笑うと、
ピョコンと両足を揃えて立ち上がり、今度はフェイトの座るソファーの手摺に座った。
それからアルフはフェイトの頭を手で寄せて自分の膝に乗せた。
フェイトは膝の上からアルフを見上げて言った。

「アルフ?やっぱりハラオウンさんのところに帰っちゃうの?」

もちろんアルフだってフェイトの側に居たい。
だけどなのははフェイトと二人きりにしてほしいと言った。
その話をしたときアルフは、なのはならもう一度
フェイトを救ってくれるかもしれない、と、そう思っていた。

後になってよく考えてみれば、フェイトが誰かを必要としているのと同じくらい
なのはの方がフェイトを必要としていたんだと理解出来る。
ヴィヴィオを親に預けてまでフェイトを選んだのだ。

きっと今、なのはにはフェイトが必要なんだ。
なのはは以前フェイトが心から必要としていた人だから、
自分以上にフェイトを想ってくれている人だから、なのはにフェイトを任せてあげたい。
だからアルフはこう言った。

「一緒に居てあげたいけど、まだフェイトより小さい子どもたちの
面倒みなきゃいけないんだ。フェイトが心細いときにごめんよ」





862 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/06(日) 00:13:51 ID:6tn0Ka1P


そんなこと、自分の大切なご主人様が大変なときに理由に出来るような用事ではない。
しかしフェイトもダダをこねるような子どもではないワケだから。

「そっか、仕方ないよね」

悲しいくらい従順な子だ、とアルフは胸を痛めた。
何故フェイトはいつもこうなのか。
もちろん『いやだ、帰らないで』だとか『ここを出たい』などと言われると
困ってしまうのだが、もっと我が侭を言えばいいのに、と思わずにいられない。

「だけど私もそのうちハラオウンさんのところに行くんでしょ?」
「へっ?」

フェイトの問い掛けに対し、アルフは少し驚く。
なのはのところから離れるなんて想像出来なかったから。

「ハラオウンさんの家の子なんだよね、今は」
「……ああ、うん」
「リンディさんてどんな人……?」
「ん?あぁ、もの凄く優しくていい人だよ」
「そっか……私のこと迷惑がってないかな……?」
「え、そんなワケないよ!あの人はそんなこと思わないよ!」
「そうなんだ。なら……よかった」
「……うん……」

フェイトは随分精神的に回復し、まだまだとはいえ今の世界に慣れ初めている。
自分の立場を理解しようと努めている。

それに対してアルフは嬉しさよりも何倍も不安を感じた。

万が一このままフェイトの記憶が戻らなければ……
恐らくフェイトは心に引っ掛かりを持ちつつもハラオウン家を受け入れるだろう。
リンディもまたフェイトが自分のところへ来ることは歓迎するはずだ。
そして海鳴市で改めてハラオウン家の一員として生きるのか?

アルフは思う。


――だとしたら……


なのはは??

なのははどうなるのか??
ヴィヴィオは一体どうなるのか??


『いつか二人と本当の家族になれたら』

そうフェイトが話してくれた二人のことはどうなるのか……?




「……フェイト、今はなのはのところに居ればいいじゃないか」
アルフがそう言うと、フェイトは体を起こして眉をひそめた。
「だけどずっとなんて駄目だよ」
なのはの気持ちも知らずよくもそんなことを、と、
アルフはフェイト以上に眉をひそめる。



863 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/06(日) 00:16:29 ID:6tn0Ka1P


「フェイトはなのはと居るの好きじゃないのかい?」
するとフェイトは少し考え込んだ。
「……好きかって言われても……解らないけど、ただ……」
「ただ何さ?」
「……友だちだからってこんなに良くしてもらってちゃ……なのはが疲れるよ」

友だちって初めてだからどんなものなのかよく解らないけど、とフェイトは言う。

「友だち……うーん……それはだねぇ、心配しなくても……」
「だけど……そっか、ハラオウンさんの家だって今の私が行けば困らせるかもしれないよね」
「いや、それは大丈夫だよ、大丈夫なんだけどね、そうじゃなくて」
「母さんがあれから――その、少し……少しだけ私にお願いをするようになってから、
いつも色んなことを一人でやってきたんだもの。またそうすればいいだけだよ」

アルフはそんなフェイトが不憫でならなかった。

――また……あの頃みたいに寂しい生活をすればいいって言うのかい……?
――そんなのあたしは嫌だよ!フェイトがあの頃のままなんて駄目だよ!

そしてアルフは咄嗟に1つ提案を出した。


「そうだ、フェイト!1人でやってくには仕事が必要だよ!」


単純で明確で、良い提案だった。

「そうだろ!?」
「……うん?」
「フェイトは魔導師なんだから、魔導師の仕事に就くのが一番だろ!?」
「……そう……だと思う」
「だったら管理局の仕事に就きな!」
「えっ」
「管理局にはハラオウンの家の人やなのはも居るから何かと助けてくれるだろうし、
フェイトだってまた知らない人ばかりの所へ行くよりいいだろ?」
「うん……それは、そうかもしれないけど」
「それなら話は早いよ!これから仕事に就くことが出来るまで、なのはの世話になる
ことにすればいい。きっとすぐ仕事は見つかるだろうし、なのはだってその間だけなら
全然迷惑じゃないと思うよ?寧ろ仕事探しを始めたら安心するんじゃないかい?」
こうなればなのはの側にフェイトを引き止めておける。
我ながらいいことを考えたとアルフは思った。
しかしフェイトは言った。

「だけど私既に今、執務官の仕事に就いてるんだって」





864 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/06(日) 00:19:15 ID:6tn0Ka1P


うっかりしていた。
フェイトは臨時休暇中であるだけで、執務官のままだった。
もう一ヶ月以上経つのにも関わらず、いつもは厳しい局側がフェイトの休暇の延長を認めている。
それはフェイトが如何に局にとって優秀な人材であるかが伺えるものだった。
多少休暇が長引いてフェイトの穴埋めに手間取っても、
戻って来たときの利益を考えるとそちらの方が大きいと捉えられているのだろう。

「あら、そ、そうだったね……」

そして何よりもアルフやなのは、リンディやクロノ、その他にも皆がフェイトの
記憶は近いうちに戻り、仕事にすぐに復帰する、してほしいと願っている。
だからこそ皆が執務官の席を開けたまま待っている。
皆、フェイトの記憶が戻ることを前提に考えたいのだ。

しかしそんな皆の想いはフェイトの知るところではなく、
現実問題、復帰どころか執務官試験の勉強も何もしていない状態だ。
母親のためでもなければ自分のことで手一杯なのに、
何処かの知らない犯罪者を相手に危険なことをする気持ちにはなれないのだ。

「でもまた別の魔導師の仕事に就けるようにこれからがんばるよ」
「へっ?」
「私にはどのみち執務官の仕事なんて出来ないよ。このままじゃ一緒に働いていた人たちに
迷惑だから、執務官の仕事は辞めさせてもらうようになのはに頼んでみる」
「……どうするんだい……?」
「さっきアルフが言ったように、それまでは申し訳ないけどなのはのお世話になる」
「それはその方がいいけど……何か思うところがあるのかい?」
「うん、ちょっと前にね、なのはに色々役立ちそうな本をもらったんだ」

フェイトはすぐ手元に置いていたなのはの教材をアルフに見せた。


「教導官の仕事ならどうかな。これならなのはに教われるから」


兎も角、どうにかアルフの思惑通りに運ばれそうだった。





865 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/06(日) 00:22:37 ID:6tn0Ka1P


*  *  *



アルフが訪れた翌日からフェイトはなのはの勤務中に魔法のトレーニングを行うようになった。
時々はなのはにも教わり、一度はシグナムが来てくれたこともあった。
シグナムとは初対面だったが、シグナムの方はフェイトに気兼ねせずに付き合ってくれた。
「ただ腕試しをするだけなのだから、何も余計なことを考えなくて良い」
そう言って。
なのはの方も、シグナムならフェイトを困らせるようなことは言わないし
以前のフェイトが彼女を信頼していたこともあり安心だった。
そして毎日黙々と訓練をしているうちに、フェイトは新しいバルディッシュの力や
成長した自分の力を徐々に操れるようになっていた。

「……ところでフェイトちゃん」
「ん?なに?」
「あのね、その新しい戦法なんだけど……」
「これのこと?」
「うん、そのソニックフォームのことだけど……それもう使わないで」
「え?なんで……」
「危ないからイヤなの」
「でもこれ凄く早――」
「早いのは解るけど、攻撃受けたら防げないから」
「まだ訓練しか――」
「ダメ。例え練習でも、さっきみたいに私が上手く砲撃止めなかったらどうなったと思うの?」
「……けど」
「もし私がフェイトちゃんを傷つけるようなことがあったら、
フェイトちゃんは良くても私は辛いんだってこと、解ってほしいよ」
「……」
「私のこと悲しませないでほしい……って言っても駄目なのかな」
「………なのはがそう言うなら……解った」

なのはは日々実力を取り戻すフェイトの様子を見て、ホッとすると同時に懸念もした。
フェイトが自ら執務官の職を解いて欲しいと言ってきたときには戸惑い、
反対しようかと思っていた。
しかし懸命に特訓に打ち込む姿を見ていると、フェイトが少しでも前向きになるならば
フェイトが何の職業に就こうとも構わないと考え直した。

「とにかくまだ暫くは私のところに居てくれるんだよね?」
「うん」
「絶対?」
「うん」
「ならいい」
「……なんだか……」
「ん?」
「私がここに置いてもらってる身なのに、そんなふうに言われると不思議」
「……不思議?」
「だって私、なのはにこんなに心配してもらう資格あるのかなぁ……?」
「……あるよ」
「どんな?」
「友だちだから、かな」





868 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/06(日) 00:30:27 ID:6tn0Ka1P


アルフが出した『管理局への就職』という名案は、出来ればフェイトには
言ってほしくなかったが、それでもまだ嘱託魔導師として働くなどと言われなくてよかった。
何故なら今すぐ局の仕事に就き、局内に足を運ぶことになれば
フェイトが以前の知人たちに会ってしまうからだ。
それはフェイトが自分の過去を知る可能性があるということ。
それを思えば教導官になるためにはまだ暫くかかるだろうから、
それまでにフェイトが元に戻ることを期待するしかない。

そんなふうに考えがまとまってからすぐになのははクロノに通信を入れた。
それからクロノを通して、現在フェイトの執務官チームを傘下に置く
次元航行艦の提督と話し合う許可を貰った。
もちろんフェイトの辞職について話し合うためだ。
予定では十日後に本局内で会えることになっている。
きっと自分1人では簡単にフェイトの辞職届を受け取らせることは出来ないのだろうけれど。
何故ならその提督こそはフェイトがこんなことになるまで
休暇を認めなかった、あの利己的な分からず屋だから。


「……友だちって本当にこんなにしてくれるものなの?」

「……さあ……どうかな」

――本当に……私にも解らないんだ
――自分の持ってる気持ち、どうすればいいのか……



*  *  *



ある日こんなことがあった。

早朝にトタトタと床を走る足音が聞こえて、なのはが目を覚ますと隣にフェイトがいなかった。
急いで布団から出たらしく、中途半端に布団がなのはの方へ捲れてしまっている。
なんだろうと思い、開け放たれて廊下の明かりが漏れている先を見ると
奥からフラフラとフェイトが戻って来る。

なのははその姿を見て頭が真っ白になった。


青い顔で戸口に立ったフェイトの足に血がついていた。


「なのは、私病気かな……怪我したのかな」

フェイトは羽織ったワイシャツを両手で引っ張るように握りしめて動かない。

ただごとではない状況にパニックになりそうだったが、
なのははとにかく急いで布団を押し退けて起き上がった。
そしてその際、フェイトの体がさっきまで横たわっていた場所に手をつくと、
冷たい何かがシーツにつているのに気づいた。

見るとそこにも血があった。
それは自分もどこかで見たことのあるような深い色だった。

――え、これって……





869 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/06(日) 00:37:32 ID:6tn0Ka1P


もしかしてと思い、フェイトをよく見る。
ワンピース型のキャミソール姿なので見えるワケではないが
どうやらアンダーショーツは脱いでおり、血はそこから伝ってきているようだった。

――ああ、なんだ……そうか……

――心が小さくなったからって、このことを忘れてしまっていたけれど、
  きっと精神的に参っていたから来るのが少し遅れてただけだったんだね

なのはは深い安堵の溜め息をついてフェイトの側に焦ることなく歩いていき、
そっとフェイトの握りしめられた手に自分の手を添えて言った。

「大丈夫だよ、病気じゃないし何処も怪我してないよ」

フェイトは恐る恐るなのはの顔を見た。

「ほんと……?」
「うん、女の人は大人になったら誰でもこういうことが起きるの」
「……そうなの……?」
「私もなるから心配しないでいいよ」

フェイトはまだ不安そうだ。
なのははそんなフェイトの肩に手を置いて、クルリとフェイトを後ろ向きにすると
そのまま背中を押して廊下を歩かせ始めた。

「どうすればいいか後でちゃんと教えてあげるから、その前にとりあえずお風呂行こうね」
「う、うん……」

「シーツ汚しちゃった……」
バスルームの扉の前まで来ると、フェイトは申し訳なさそうになのはに言った。
もちろんそんなこと、なのはは気にしないのに。
「フェイトちゃんビックリしちゃったんだよね、
ごめんね、こういうことがあるって先に言ってあげてればよかった」

小学校にも通っていなかったフェイトは色々なことを知らない。
下着とシーツに血がついているのを見て、それは驚いてトイレに確認しに行ったことだろう。

「……私の方こそまたなのはに面倒かけてごめんなさい」
「気にしないで?急に大人の体に慣れなきゃいけないんだから、きっと大変でしょ」
「……うん、でも……なのはが何でも手伝ってくれるから私いっぱい慣れたよ」
「そっか……よかった」

きっと今日は早朝訓練は遅刻だな、などと思いながらのんびり二人でシャワーを浴び、
脱衣所ですっかり落ち込んで俯いたフェイトの髪をバスタオルで拭いていると、
フェイトがそろりとなのはにしがみついてきた。
本当はまだたくさん慣れないことがあって不安なのだろう。
なのはの腕に添えるように置かれていたフェイトの手は、
やがて少しずつなのはの背中に回されて、なのはがバスタオルを離すまで
じっとそのまま何も言わずにくっついていた。


今のフェイトが初めてなのはを抱きしめた瞬間だった。

ぎこちなくて、それになのはがフェイトを抱きしめるのとは意味も全然違うかもしれない。
なのはには色々思うことがあったけれど、少しはフェイトに信頼され始めたと考えることにした。






870 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/06(日) 00:40:04 ID:6tn0Ka1P


*  *  *



「今日はスバルさんとティアナさんが会いに来てくれたよ」

なのはが制服のジャケットを脱いでいると、フェイトが言った。

「へ?そうなんだ?」
「なのはに色んな事教えてもらって本当によかったって言ってた」
「そっかぁ、わざわざ来てくれたんだねー」
「うん、何度か私とは会ってるのに二人とも気を使ってくれてたと思う」
せっかく来てくれたのに申し訳ないな、とフェイトは言う。

あの二人が気を使っていたのはフェイトが上司であることも原因だが、
なのはが多くの事を言わないように口止めしているからだ。
もし口を滑らせでもしたら大変だ。
来なくていいと何度も言っていたのに、それでも来てくれたのは
フェイトと自分を心配してくれているからだろう。

「なのはは凄いね。あんなに素敵な人たちを育てたなんて」
「そう……?」
「うん」
「……確かにいい後輩たちだよ、あの子たち」

今活躍している仕事についてもそうだし、こんなにも上司を慕ってくれているなんて。
そう思って微笑むなのはを、フェイトがベッドの上で両肘を付いて見ている。

「教導官の仕事って凄いんだね」

そうやって自分の仕事に対して理解を示してくれたり
褒められたりするのは純粋に嬉しいと感じた。
だからなのははフェイトが自分と同じ職に就きたいと思うなら、
記憶のことはさておき、それも悪くないなと思い始めた。


「それでね、スバルさんたちが私と同じくらいの子を連れてきたの」


「え……?」
微笑んでいたなのはの表情は一転する。

「エリオとね、それからキャロっていう子なんだけど」

――スバル……!!
――なんてことしてくれたの……!

フェイトにはもちろんエリオとキャロとの関係を話していない。
話せないことが多すぎる。
エリオとキャロには最近になって一通りはフェイトの状態を話したが、
彼らはまだ……

フェイトと同じ小さな子どもだ……





871 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/07/06(日) 00:43:35 ID:6tn0Ka1P


フェイトが自分たちを知らないなんて直接言ったら――
エリオは……
キャロは……!


「二年くらい前に私が居た部隊でね、私がその子たちに訓練してあげたことがあるんだって」
「う、うん、それで……何て??」
「だからその子たちと私はちょっとした顔見知りなんだって」
「……他には……?」
「……それだけだよ?」
「え??……それ、だけ……?」
「うん……?」


――そうだよね、ティアナが一緒なんだからスバルが勝手な事しようとしたって……

――だけど……エリオとキャロは……?
――何も言わずに帰ったの……?


「訓練のこと覚えてなくてごめんねって言ったら、何故だかその子たちが
私の両腕にくっついて、キュッてしてくれたの。それから男の子が――エリオがね、
会いに来ただけだから、会えたから、だから構いませんよって言ってくれた」
「そう……なんだ……?」
「うん、でもキャロが泣いてたみたいだったから、どうしたのって訊いたら、
久しぶりに会えて嬉しいだけだって言ってた」

なのはにはすぐにその様子が想像出来てしまう。
エリオとキャロがフェイトにしがみついて離れない様子。
悲しくて泣いて、それでもフェイトがそこに居るだけでいい、
フェイトを困らせてはいけないと自分たちに言い聞かせている様子を。

きっとスバルが二人の気持ちを察して、それか見るに見かねて
それでフェイトに会わせに来たのだろう。

「きっと凄くいい子たちだよ」


まだ幼いと思っていたエリオとキャロ。
しかし彼らはなのはが考えるよりもずっと成長している。
二人は大切な人を困らせる真似など決してしない。
彼らは他ならぬフェイトが育てたのだから。

ヴィヴィオも彼らのようになれるだろうか?

そして……
自分自身も……





Hello, Again 7
2009年08月30日(日) 16:50:08 Modified by coyote2000




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