741 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2010/04/10(土) 15:56:54 ID:rLqHmqro [3/10]
742 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2010/04/10(土) 15:57:54 ID:rLqHmqro [4/10]
743 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2010/04/10(土) 15:59:16 ID:rLqHmqro [5/10]
744 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2010/04/10(土) 15:59:59 ID:rLqHmqro [6/10]
745 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2010/04/10(土) 16:00:53 ID:rLqHmqro [7/10]
746 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2010/04/10(土) 16:01:28 ID:rLqHmqro [8/10]
747 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2010/04/10(土) 16:02:26 ID:rLqHmqro [9/10]

 事の起こりはヴェロッサの土産だった。
 第97管理外世界、すなわち地球からの土産物。
 ちなみに、管理外世界からの物品の持ち込みは、ミッドをはじめとする殆どの管理世界では厳しく制限されている。
 一見気軽に持ち込んでいるように見えるものでも、裏では数十枚の書類が乱舞しているのだ。
 数少ない例外が、高町なのはや八神はやてなどの、管理外世界出身者のプライベート荷物である。
 だから、と言うだけでもないだろうが、管理外世界からのお土産というのは非常にポイントが高いのである。
 ヴェロッサのようなタイプの人間が、細々としたものを大量に持ち込み、必要に応じて配っているのは当然と言えば当然と言えた。
 たとえばお菓子類は非常に好評だったりする。

 そして今日もカリムは、皆と一緒にヴェロッサの地球土産を食べていた。

「これは……一体」

 オットーは、皿の上に置かれたそれをつまみ上げ、首を傾げる。
 その横ではディードが同じように首を傾げている。

「それは、ひよこ饅頭というものです」
「ひよこ……」
「饅頭」

 饅頭は知っている。甘い餡を包んだ食べ物だ。焼いたものもあれば蒸したものもある。
 しかし、ひよことは……

「つまり、これは肉まんの一種ですか?」
「え?」
「肉まんには豚肉が入っています。ひよこ饅頭にはひよこが……」
「入ってない」

 断言するカリムに、セインが抗弁。

「でも、今、ひよこって」
「どうして可愛いひよこを食べなければならないのですか?」
「牛も可愛いよ」
「美味しいです」
「鯨も可愛いよ」
「美味しいです」

 そういえば、最近キャロが間違った動物愛護に目覚めて、鯨を護るために旅立ったと聞いたが、元気なのかなぁ、とセインは思う。

「これはひよこの形をしているからひよこ饅頭というそうですよ。けっしてひよこが入っているわけではありません」

 メロンパンにメロン入ってますか? ウグイスパンにウグイス入ってますか? タイヤキに鯛入ってますか? と尋ねるカリム。
 ひよこ饅頭がないのにメロンパンとウグイスパンとタイヤキのあるミッド凄ぇ。

「入ってた」
「は?」
「入ってたよね。ディード、オットー」
「はい。入ってました」
「うん、入ってた」
「え、あの」

 慌てるカリム。
 まさか、自分は騙されていたのか。
 ウグイスパンにはウグイスが入っているのか、メロンパンにはメロンが入っているのか、タイヤキには鯛が入っているのか。
 たこ焼きには……たこ入っててオッケーです。
 だったら、今まで自分が食べてきたのは一体何だったのだ。
 信者たちと一緒に汗を流した勤労奉仕の掃除隊。終わった後にみんなで食べた菓子パンの中に入っていたメロンパンとウグイスパンとタイヤキの美味しさと来たら……
 あれが全てまやかしだったというのか。

「クア姉のくれたウグイスパンには入ってたよ」
「あれはビックリしました」
「うぐいす……可哀想だった」

 食ったのか、オットー。

「メロンパンもメロンが入ってた」
「大きかったですね」
「メロン……皮が堅かった」

 食ったのか、オットー。

「タイヤキも鯛が入ってたよね」
「生焼けでしたけど」
「生臭かった……あと、うろこが取れてなかった」

 オットー、疑問を持て。

「それはクアットロの悪戯ではありませんか?」

 カリムの言葉に、セインがハタと悩む。
 数分ほど固まって……

「……メガ姉、許すまじ」
「セイン姉様、私もお手伝いします」
「……ウグイスパン、結構美味しかった」

 それにしても、とカリムは思う。
 地球の文化というのはイマイチよくわからない。
 古代ベルカ式魔法の体現者であるヴォルケンリッターの主八神はやて、そして聖王の母親である高町なのは。
 カリムら聖王教会とも関わりの深い二人の出身世界であるため、それなりに身近に感じようと努力はしているのだが、やはり異世界は異世界と言うことか。
 
 と、そこへ。

「た、大変です!」

 血相を変えて飛び込んできたのはこの場にいなかったシャッハ。
 いつものトンファーがやや血に染まっているような気がしたけれど、カリムは見事にスルーする。

「どうしました? シャッハ」
「こんなものをロッサが!」

 差し出されるのは一枚のDVDとそのカラフルなパッケージ。
 全員が注目するが、セインは「おお」と呻き、ディードは慌ててオットーの目を両手で覆う。オットーは何のことだかわからずきょとんと佇んでいた。
 そしてカリムは、静かに震えていた。

「……シャッハ?」
「はい」
「確認しますが、これをロッサが持っていたというのですね」
「はい」
「入手先は?」
「地球から持ってきたと本人は言っています」
「間違いないのですか?」
「デバイスの汚れに賭けて」

 どう見ても血染めのトンファーです。フルボッコされてます。死ぬな、ロッサ。

 二人のやりとりから目をそらし、セインはパッケージに目をやった。
 そこには地球語でDVDの内容が書かれている。こう見えてセインさんは賢い。地球の言葉が読めるのだ。
 知識はある。さすがナンバーズ。
 でも知恵は時々無くなる。大丈夫かスカリエッティ。

「……マル秘エロ女学園『先生堪忍して、ウチ……初めてなんよ』」

 どう見てもAVです。パッケージには肌もあらわな女学生(年齢詐称)がくんずほつれつうれしはずかしキャッキャッウフフ未成年は閲覧保持を禁じられています。

「なんて破廉恥なパッケージなのでしょう。まさか、中身も」
「チラッとしか見ていませんが、十二分に破廉恥でした」
「全ては確認していないのですか」
「はい。残念ながら」
「これは、確認しなければなりませんね」
「はい」
「セイン、すぐにこれを見ることのできる機器を用意してくれませんか? この手の機器に関しては、貴方達のほうが詳しいでしょう」
「あの、騎士カリム? ロッサのものだったら、ロッサが機器を持ってないかな?」

 それもそうだとカリムはシャッハに向き直る。
 何故かシャッハは俯いている。

「確かに、ロッサは持っていました。しかし、不注意から破壊してしまいました」
「なんで」
「……実は先ほどロッサの部屋で……」

 シャッハがうっかりノックを忘れて侵入。
 慌てるロッサ、何故かズボンを脱いでいた。
 ロッサの前では該当の機器が唸りをあげてDVDを再生中。破廉恥な映像を再生中。
 何故か、なんか握ってるロッサ。必死で隠すロッサ。微妙に嬉しそうにも見えるロッサ。
 何を隠しているのか、今再生されている映像記録を捨てても隠さなければならないもっと凄いモノがあるのか。
 なんて破廉恥な。
 騎士カリムの義弟だろうが今度ばかりは許さない。ヴィンデルシャフトの頑固な染み汚れ(色は赤黒)になるがいい。

「チェストーーーーーー!」

 ロッサの部屋がまるで誰かのSLB直撃を受けたような惨状に陥ったのは、それから数秒後のことだった。

「と言うことがありまして」
「不幸な事故ですね。いえ、これもロッサの日頃の行いのせいなのです。貴方に罪はありませんよ」

 ロッサの冥福(死んでない)を祈りながら、セインはDVDを手にとって眺めていた。
 これ用の再生機器とはやはり地球製のものだろう。ミッドチルダで手早く探そうとすると高町家か八神家。
 もしかするとナカジマ家。
 そして一時間後、DVDデッキを持ったヴィータが聖王教会に。

「なんか、はやてに頼まれて持ってきたんだけど」
「ご苦労さま」
「セインか。なにやってんだ、おめーら」
「いやぁ、教会にも色々あってねぇ」
「そっか。おめーらも大変だな」
「まあまあ、入ってお茶でも」
「いいよ、別に。おめーらとお茶呑んでもつまんねーし」
「じゃあアイスで」
「お邪魔します」

 ついでに、ということで上映会に参加するヴィータ。
 さて、ロッサが入手したAVだが、タイトルからわかるように学園ものである。
 不幸な偶然というのは得てして起こりやすいものである。
 そのAVで使われていた制服が、地球は日本の聖祥大学付属とそっくりであったとしても、それは不幸な事故なのである。
 そして勿論それは、ヴィータには見覚えのある制服なのである。
 ちなみにカリムたちは、なのはのバリアジャケットと似ている制服だなぁ、と思っていた。

「あー、これ聖祥の制服だ」

 名前には、カリムも聞き覚えがある。

「聖祥というのは……」
「おお、はやてやなのはの行ってた学校だ。フェイトも行ってたな」

 ヴィータはアイスに夢中で殆ど画面を見ていない。見ていないが、AVの存在は知っている。
 昼間ッからこの聖職者共は何をしているんだと思っているが、このアイスが口止め料なんだな、とも考えていたりする。
 まあ、過去の闇の書主の悪行三昧乱暴狼藉を記憶にも身体にも刻みつけられているので、今更この程度はどうってことなかったりするのだが。

 カリムとシャッハ、そして元ナンバーズ三人は顔を見合わせる。
 これは一体。
 五人とも、これは作り物だと思っていた。ところが、制服は本物と同じと言うではないか。
 まさか、内容も……?

「そ、その“せいしょう”とは、どのような学校なのですか?」
「ん?」

 ヴィータはテーブルの上の紙とペンを取って、学校名を書く。
 因みに、ヴィータは日本語を話せるが、読み書きは苦手である。特に漢字はキツイ。

 性詳

 だから、誤字も仕方がないのである。
 そして重ねて言うが、不幸な偶然とは重なるものなのである。
 この場合、セインが中途半端に日本語を知っていた。

「セイン、この地球の言葉は……」
「学校の名前……。性に詳しい……!?」
「なんですか、その名前はーーーーっ!!」

 カリムがキレた。

「どういう学校なのですか。まさか、あの方々がそんなところに通っていたのですか!!」
「お、落ち着いてください、騎士カリム!」

 ディードが慌ててヴィータに尋ねる。

「どんな学校だったのですか、その性詳というのは」
「ん……えーと……」

 はやてが実際に学校に通っていた期間はとても短い。
 足が治ったあとも、管理局絡みで割と欠席していたのだ。私立といえども義務教育でなければヤバいくらいに。
 自然、はやてから話を聞くヴィータの知識も限られてくる。

「えーと……そうだな……まず学校に行くと……」

 必死で思い出すヴィータ。

「そうだ。校門で検査があるんだ」
「肛門検査!? なんのためにそんなこと」
「風紀のため、だったかな」
「セイン、“ふうき”とは何ですか」
「えっと…………、ヴィータ、漢字で書いて」

 “風希”
 誤字です。

「……風俗、希望?」
「風俗って?」
「えーと、ソープランドとか」
「なにぃいいいい!!!」

 叫ぶカリムを抑えるシャッハ。

「いや、そう言うのじゃなくて、校則を守るために……」
「拘束!? 縛るんですか!?」
「あー、規則で縛り付けられるのは嫌だぁとか言う、集団生活を理解していないガキっぽいのも他の学校にはいたらしいけど」
「なるほど、全員が同じ趣味の持ち主ではないと」
「でもはやては言ってたぞ、学校の生徒なんだから、校則は必要だって」
「確かに。性奴には拘束が必要かも知れませんが……なんて恐ろしい……」

 考え始める五人を置いて、アイスを食べ終わったヴィータは帰り支度を始める。

「ごちそーさん、あたしは帰るぞー。デッキは、連絡くれたら、あたしかザフィーラが取りに来るから」

 ――数日後

「あの、ここは地球と違ってそういう学校じゃありませんから」
「は?」

 ヴィヴィオを迎えに行ったなのはは、シャッハの突然の言葉に首を傾げたという。



 ――数日後

「あの、ここは地球と違ってそういう学校じゃありませんから」
「は?」

 ヴィヴィオを迎えに行ったなのはは、シャッハの突然の言葉に首を傾げたという。


著者:野狗 ◆NOC.S1z/i2

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