はげみになるもの

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K-022

設定変更された為に整合性がとれないこと


当初の設定から変えない方がマシだったのでは? ということは、色々あると思いますが……一番気になるのは、オーブの設定。
素直にオーブを日本にすれば良かったと思うのですけどね。種第1話の時点では、オーブは日本だったと思われますし。

その1・・・「カオシュンが落とされた」というニュースを聞いて「やだ、オーブに近いじゃない」という感想を喋ったミリアリア。
カオシュンというのは、台湾の都市で「高雄」ですから……日本と台湾は、まぁ近いと言えば近いです。しかし、現在の「南太平洋上に位置する島国オーブ」からは、明らかにとんでもなく遠い。カオシュンなんかよりも、オーストラリアのザフト軍基地、カーペンタリアの方が近い。すごい矛盾。

その2・・・キラとアスランが、桜の舞い散る木の下で「本当に戦争になるなんて事はないよ」「キラもそのうちプラントに来るんだろ?」という会話をして別れている。
この光景って、どう見ても日本です。この会話がされたのは月で、月の幼年学校の幼なじみだったという設定が後で出てきましたが、「コペルニクスは中立都市」という設定もあります。
何故、中立の月に住んでいるのに地球とプラントの戦争の心配をしているんでしょう? 地球上の国だったらそういう心配もわかりますが……スーツCDで「避難の為、プラントに引っ越す」という表現などを考えると、やはり月はかなり地球寄りの領土だったということなのでしょうか? この辺がどうも曖昧なんですよね……
当初の設定では、(日本の位置の)中立のオーブ本国でキラとアスランは学んでいたのでは? 最初からあの場所が月という設定なら、もっと違うセリフになるような気がするんですが……。

その3・・・カガリが住んでいる屋敷が、無駄に豪華で、まるでヨーロッパの宮殿のごとき佇まいなのが変。
この点は、位置を日本にしたとしても違和感バリバリになるんでしょうから、あんな宮殿を出すなと言いたいけど。ハウステンボスのように、テーマパークの象徴&美術館としての目的ならば造る意義もわかりますが、宮殿というのは今の基準だと激しく使いにくい居住スペースなのに。
……わざわざ宮殿を造ろうと思うなんて、よっぽど欧州の王族にあこがれた、成金趣味の大金持ちの首長だったんでしょうかね? 莫大な費用をかけてまで……成金趣味で莫大な費用を惜しみなく使うといえば、ウズミですけど……ウズミより前の首長が造っていたとしたら、代々そんな性格だったのだろうか。

その4・・・シン一家が逃げていた森は、どう見ても熱帯の森ではない。シンの回想では、紅葉した山で家族一緒にピクニックをしていた。
高い山があって、それなりに寒暖の差があるとしても……赤道近くで紅葉する木が育つのか、疑問なんですが。それに、シン一家が逃げていた森はどうにも説明出来ない。

その5・・・オーブにいる時のキャラ達の格好が激しく暑苦しい。
涼しそうな格好だと一応言えるのは、運命初期のラクスのドレスのみ……キラのような真っ黒ピチピチルックだけでなく、アスランもカガリもユウナも、等しく暑苦しい格好です。上陸したミネルバクルーの格好も暑苦しいです。シン一家の服装も暑苦しいです。
オーブが日本の位置にあるなら、納得がいく格好なのに……赤道近くの国で、コーディネイターだけでなくナチュラルまでもが平気でいられるのは、島の周囲に天候制御バリアーが張ってあるとしか思えない。
グアムに3月行った際、2時間ほどプールで漂ってたら皮膚が真っ赤に(後に真っ黒)焼けて1週間ほど七転八倒して苦しんだ私からすると、シンの雪のような肌の白さが激しく疑問w


他に大きな設定変更された部分は何かといえば、コーディネイターに関する設定です。

種初期に出された、設定部のコーディネイターに関する発言は(アニメディア誌上)……「次代の宇宙開発のために、より優れた性質を持つようにと生み出された人類のことです。元々は遺伝病の克服のために開発された技術が、時代とともに広まり、形を変えて発展していった」でした。それを見ているとなおさら「なんでそういう話じゃなくて、ジョージ・グレンの告白によって一気に広まったという変な世界観にしたんだろう」と思ってしまいます。

本編だけ見ると、「自分の子供を見目麗しく、天才的能力の持ち主に出来るという点だけに目が眩んで、既存の社会で優位に立つ為に殺到した金持ちの数百万人単位の親+それを受け入れた社会」という感じです。
でも、初期設定から考えれば「宇宙で働かせるのに最適な人材にしようとする、ある意味実験台とされる形の親子……子供を危険に満ちた場所でわざわざ働かせようと思う金持ちはいないから、中流以下?の家庭が行ったのでは? 美形で能力が上というのは副産物だとしても、『居住空間が出来上がっていない状態から作り上げる、宇宙での生活』なんて、好まれるはずがない」と思える。それに、本編で「遺伝病の克服技術だった」なんて設定、否定されてるようなものですし。(フレイの「病気でもないのに」発言)

ただ、そういう設定だとしたら「第2世代と呼ばれる人もいます、という時間軸」っていう点がやっぱりおかしいわけですが。
……せめて、コーディという種族が誕生してから200年後位にしとけよ……と、つくづく思います。なんで素直に、CE202年にしないんだ……完全に人工的なのが第1世代で、コーディ同士の生まれなのが第2世代、っていう区分けで問題なかったのに。

……宇宙にナチュラルが住んでいないわけではない、月の開発や初期プラントの開発はナチュラルが行ってますし、月やL4のコロニーに住んでいるのは殆どナチュラルという設定らしいから、宇宙で生活する為にはコーディじゃなくてはダメという理由はない。(コーディが有利という位の意味になってる)

年表の記述から考えると、非合法時代にコーディになったのは非合法状態をすり抜けられるだけの権力のある富裕層で、グレン告白以前にはコーディは存在しない。コーディブーム後に生まれた中流家庭出身コーディは数は多いが年若い。だから、初期に生まれた富裕層コーディ(シーゲルやパトリック)が実権を握った、という感じになっています。
金持ちは代理母に頼むっていう線、卵子自体は金持ちの妻が提供だとしても、失敗したら引き取らないって路線でいいかもしれない……という推測をしても良いような気がしますが、ここまで行くと考察から逸脱するレベルになりそうです。

種とは逆に、宇宙移民した人は貧民層だったという設定は、Wなのですが……Wは、そういう設定でありながら、本編終了後のOVAの小説版で余計な後付かましてぶち壊してくれましたので……あれも、種とは逆の意味で酷いです。
どういう設定かと言えば、Wでは宇宙移民した人々は自然出産出来なくなったので、解決策の見つかった物語の始まる数十年前までは、人工子宮で子供を作っていた、という設定です。……そんな装置で子供作るなんてすごくお金かかりそうですし、搾取されている立場のコロニー住民の何処にそんな余裕があるのだ、と突っ込み所満載。
解決策としては、「卵子に手を加えて母胎で産めるような因子を組み込んだ」……結果、W本編の時代には、コロニー住民でも皆自然出産なわけですが。(この時代でも人工子宮生まれだった人を「試験管生まれ」とか言っていて、どうも親がいない状態で育った人々という設定で、しかもかなり卑下した存在と描かれているのは何なんだろう……)


さて、コーディネイターも設定変更されていますが、種&種運命の強化人間も、当初の設定とはずいぶん変化しています。

種放映時に、世間で「強化人間」と俗称されたのは「ブーステッドマン」と呼ばれる少年達3人で、依存性のある薬によって制御されていた。 種放映後に出てきた設定では、彼らは元死刑囚な為に、非人道的な扱いで問題がない、という状況だったらしい。
一方、種運命の場合は、ブーステッドマンの欠点を改良した「エクステンデッド」と呼ばれる少年少女達で、薬の代わりに記憶の調整、消去可能な「揺り籠」及び「ブロックワード」によって命令の忠実な実行をする、最高の兵士に仕立て上げていた。

………という、最初に出てきた設定だけなら、その設定自体は、まぁ構いません。
突っ込んでも突っ込み足りないのは、「ロドニアのラボ」でわかった事実。

タリアが「64年7月、11、廃棄処分、3、入所。8月、7、廃棄処分、5、入所・・・」と読み上げていた記録がありました。それから、その言葉を裏付けるような、ステラやアウル達の小さい頃(少なくとも5年以上は確実に前)の訓練風景が出ていました。
ステラ達は小さい頃から、戦闘に関する技術のみを叩き込まれて育てられた子供たちだったというわけです。種の強化人間、クロト達のデータもそこに残っていたことから、どうやら彼らも同じように育ったと思われます。

強化人間というのは、高い身体能力と操縦技術がないと扱うのが難しいモビルスーツに乗って戦うコーディネイターに対抗する為に、連合が作り出した「人間として扱われない兵器」です。

……さて、ここで問題です。

軍事用のMSという存在が世の中に知れ渡ったのは、いったいいつのことでしょう?
→CE68年、プラントに軍事的組織としてのZAFTが出現してからです。実用第1号機「ジン」が完成して、増産を始めたのはCE67年です。もう少し遡って、1号機がロールアウトしたのはCE65年です。……で、「水面下でMSの軍事転用の研究が始まった」のはCE63年。

プラント側の状況は上記の通りですが、連合側がMSを自軍の為に配備出来るようになったのはいつのことでしょう?
→CE69年にはMSの有用性を訴え、極秘裏にMS制作を行う一派が存在しました。それがCE71年1月にヘリオポリスでロールアウトされたGシリーズです。
つまり、それ以前にはMSは連合軍には存在しない上に、有用だと判断されるかどうかも未知数だったのですが……それから数ヶ月もしないうちに、ストライクダガー隊などのMSがわらわら出てくる謎事態になってますね。
まぁ、とりあえず連合の一部がMSの必要性を認識したのはCE69年であって、それ以前にはそんなことを語る一派もいなかった。そもそも、その一派はハルバートンだから、ブルーコスモスとは対極なのだが。
……それに、プラントが反旗を翻してやっかいなことになりそうだ、と連合が認識したのは少なくともこの年表から行くと……CE68年であって、それ以前ではない。

では、連合のブルーコスモス派が、少なくとも「CE64年7月」以前という時期から、同胞のナチュラルの子供を実験体に使ってまでやりたかった事って、いったい何だったのでしょうか?

その時期には「軍事用モビルスーツ」という存在が登場していない為、「作業用モビルスーツの延長の兵器を夢想した者がいた」としても、それがコーディネイターにしか扱えない代物だろうと推測することは困難です。連合にはモビルアーマーという立派な兵器があり、それを乗りこなすパイロットも大勢いて、なおかつコーディネイターと直接戦闘したことがあるわけではなかったので、「兵器と兵器のぶつかり合いで、どのような戦局になるかを思い描くこと」も困難。
オリンピック競技等なら、コーディネイターの驚異的身体能力が嫌でも目に付くので、勝てる気がしないのは当たり前なのだが……「数で勝る地球軍の勝利を誰もが疑っていなかった」という種冒頭説明から考えても、「戦争は数より質だ!」という考えに「相手のことがわからない開戦前から」到達するはずがない。優れたMAパイロットを作る為、という案はこの点で否定される。

と、いうことで、導き出される結論……考えられるだろう事は、何かといえば。
あの研究所は、「コーディネイターを効率的に殺す為の殺人術を徹底的に叩き込まれた、ブルーコスモスの為にコーディネイター絶滅を代わりに行う存在」を作ることに情熱を燃やしていた所だったのではないか。
戦闘訓練の描写から考えれば、普通に……ナイフや火器を使ってのテロ&暗殺を、確実に行えるようにする………そのための「『化け物』を排除出来るのに適した身体能力を持ち、しかも警戒されにくい姿形……子供から育てて、少年少女の段階で実行出来る用にする為」の兵器としての存在。

しかし、その計画が始まった当初はともかく、CE71年には華々しくMS戦が展開されていました。そして、数で勝って有利だったはずの連合側が、大損害を受けています。
そこで、そこの科学者達…か、連合側か…おそらく両方とも、こんな風に考えた。
生身でもコーディネイターと互角程度にまで鍛え上げた彼ら達ならば、MS戦でもすばらしい働きが出来るはずだ。ついでに、こんな薬(γ-グリフェプタン)も出来たから、実験投与してみよう。壊れても代わりはいるから何の遠慮もいらない。……と。
それが、クロト、オルガ、シャニの3人だった。

……しかし、第2次ヤキン・ドゥーエ戦で3人とも失われ、その戦闘データを解析してみると、どうもあの薬を使った路線ではうまくいきそうもない。停戦というだけで、戦争はまだ続く。今度こそ、コーディネイターに対抗出来るだけの完全な兵器を作り出さねば……ということで、ステラ達エクステンデッド路線に変更された、と。


とりあえず、「年表や前作の設定どころか、今作の最初に説明した設定すらも無視して、人体実験の悲劇なんていう視点をまた中途半端に取り上げた、監督がすべて悪い!」と思うのですが。
ファースト系を知る人が「強化人間は必ず死ぬのがお約束」と肯定してるようですが、自分はそんなことは思いません。何故、生き残るという道を描くことが出来ないのか、救いを求めたらいけないのか。
「人工的に作られた存在だから否定されるべき」という論理は、人体実験の果てに生まれてきたはずのコーディネイターは、(制作側の意識&大多数の種ファンに)無条件に礼賛されている世界では、主張出来ないはずです。
人体実験が間違っているというならば、ちゃんと「コーディネイターは滅びの道を辿る存在であり、出生率の低下という過酷な絶望のみを植え付けつつ、それを打開する為の案を何一つ示さなかったラクスは悪である」と描写して欲しい……それなら納得出来たんですから(溜息)。

種のあるべき姿は……「コーディネイターとナチュラルは手を取り合い、両者が融和の為に歩み寄るべきだ」という方針を指し示し、それを「お話としては美しいまとめになる、異種族同士のカップルの成立」によってある意味具現化、というのが最適の道だった。つまり、キラ&フレイ、アスラン&カガリ、ディアッカ&ミリアリア、というカップルで締めることこそ、あるべきだった。ラクスは元々、恋愛に関係ない超越した存在という位置づけで構わないし、それならばこそ、あのカリスマ性も納得がいく話になったはずだと思う。

……種のラストは、一応それに近いと妄想して構わないレベルだったはずなのですが。
なのに種死で、武器密造の上で、虎視眈々と世界征服を狙っていたという解釈が成り立つような行動をしてるラクスが描かれては、どんな綺麗事をAA組が並べようが意味はない。

………とにかく、種の世界観って何なんだろうと、この点でも絶望したというお話でした。

(2006/6/2、6/16)

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2006年07月24日(月) 19:23:05 Modified by reyz




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