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K-032

プラントの婚姻統制を解説もどき


「K-016*ギルタリの関係、婚姻統制について」に関連する補足説明でもあります。

プラントが「結婚しないといけない」という価値基準になっているのは、フランスの現状を考えると少し謎かもしれません。

1.フランスは出生率が高いですが、約半数が(同棲相手との)婚外子。
2.結婚していないとダメという政策にはなっていない。
3.出産期女性の労働率が高い上に、育児に関する手厚い保護。
4.性別役割分担意識は、その他の国に比べて弱い。

プラントって、3と4はおそらくそんな感じになっているはず、なんです。
……いや、一般市民の生活が全く見えず、軍隊という特殊な環境しか画面上に出ていないわけで、それで判断するのもまずいかもしれませんが。

ただ、フランスの女性だって……まさか、「同棲相手と別れたら、子供を相手の男が連れていってもいい」という意識で子供を産んでいるわけではない(自分の元で出来る限り育てたいと思う)はずだし、だから「代理母状態が当たり前の世界」というのは無理…………だろうな、やっぱり。

「カップルの愛を優先させるならば代理母状態を強制の為に、子供は全員半分血の繋がりがない人の家庭で育つ」のと、「血の繋がりを重視して強制結婚させる為に、子供は血の繋がりがある家庭で育つ」のと、どっちがマシなんだろう?
どっちにしても、「夫婦間の愛」か「親子間の愛」かが違うとはいえ、愛があるかどうか疑問という家庭ではありますが。


婚姻統制という形で結婚を強制せず、人工授精で子供を作るという政策にすると、こういう感じになるはすです。

プラントの政策として、夫婦で子供二人以上を産み育てる事が求められています。

あるカップル……夫婦、夫Aと妻Bは、遺伝子上子供が作れる組み合わせではありません。子供が作れるのは、夫Aに対しては女X、妻Bに対しては男Yです。

夫婦A&Bの元にも、子供は二人います。
一人は、妻B自身が産んだ子供ですが血縁としては男Yとの間の子、YB。
もう一人は、夫Aの子供ですが女Xに産んで貰った子供、AX。

ここで関係した男性Yと女性Xについても考えてみると。

女性Xは男性Cと結婚していますが、子供が作れる組み合わせは、妻Xに対しては男A、夫Cに対しては女Wです。なので、この夫婦C&Xの子供は、AXとCW。

男性Yは女性Dと結婚していますが、子供が作れる組み合わせは、夫Yに対しては女B、妻Dに対しては男Vです。なので、この夫婦Y&Dの子供は、YBとVD。


……さて、これら三組の夫婦…………夫婦それぞれが、それぞれの子供に対して等しい愛情を注ぐでしょうか?

そして、夫婦の愛が冷めて別れた時に……例えば、A&Bの夫婦の場合…………女性Bは、YBの方はともかくAXを育て続けることは困難かもしれません。
けれども、男性AがAXを引き取って育てるとして…………その後、他の女性Eと恋に落ちてまた結婚するとした場合。
その女性E(可能なのはZ)がまだ子供を産む義務を果たしていない状態ならば、ZEという子供を二人産むことになり、夫婦A&Eのもとにいるのは、AXとZE。
……それならまだしも、女性BがYBも含めて男性Aに引き渡した場合には、夫婦A&Eの元にいるのは、AXとZEとYB。(三人のうちの一人、YBはこの夫婦と血の繋がりがない)

いや、現実にもこういう複雑な家庭はかなりあります。
でも、すべての家族の最初の出発点が「そのカップルの子供じゃない」というのは……普通じゃないです。


一方で、婚姻統制という政策の場合。
恋人同士だった、A&B、C&X、Y&Dは結婚出来ません。
夫婦になったのは、A&X、Y&B、C&W、V&Dです。でも、子供はこの夫婦二人の子供です。

夫婦両方と血の繋がりがある子供を育てていくうちに、恋人と別れなければならなかった傷を忘れ、夫婦の愛が深まる……かもしれません。まぁ、子供の為だけに結婚という形で、どういう感情になるのかよくわかりませんが。
……そもそも、こういう体制では「結婚前に恋人を作る」のが是とされるのかもわからないし。
というより「婚姻統制を強いても生まれてこない子供たち」ということだと、子供の為に結婚したのに子供が生まれない、夫婦の絆が強まるきっかけも出来ないという、更に最悪の状況なんですがorz
(別に子供の為だけじゃないだろう、けど…………そもそも、この世界って子供を作るのに不適当だとされた人はどういう扱いになってしまうんだ、とか……不倫という概念があるのか、ないのか……orz)


ところで、コーディネイター同士で結婚していると……婚姻統制で結婚しない限りそもそも子供が出来ません、という設定ですが、第2世代同士では「婚姻統制で結婚しても」子供が生まれる確率が低いのです。まさに滅びる種です。
けれど、ナチュラルと一緒になれば、コーディネイター側の世代(第1か第2か)に関わらず、子供が生まれるという設定です。

ナチュラルとコーディネイターの子供は「ハーフコーディネイター」と呼ばれ、コーディネイターの能力を半分ほど受け継ぎます。
でも、この子供は……ナチュラル側がコーディネイターを忌み嫌うのと同様に嫌うのはともかく、コーディネイター側も「自分たちと比べて能力が低い」以上、同胞という意識はなく、忌み嫌っています。


コーディネイターの意識としては……

  • 自分は、優れた種である。ナチュラルなどとは比べものにならない優れた能力を持っている。
  • 自分と確かな繋がりがある存在が欲しい。自分の子供という形ならば、これ以上確かなものはない。もちろん、自分の子供にも自分の優れた能力が現れていなければ困る。
  • だから、それが可能な婚姻統制という政策を受け入れる。冷めるかもしれない一時の愛で、絶対に子供を望めない道を選ぶなどあり得ない。
  • ナチュラルと一緒になれば、誰とでも子供が作れる? 冗談じゃない! 確かに、ナチュラルの中にも、コーディネイターのように美しいもの、多少能力が優れているものがいるようだ。だが、我々とは違う。ナチュラルの劣った血と交わり、能力が低い子など、我が子と呼べるわけがない。

って感じのはずなので…………非常に難しいんですよね、コーディネイターの意識改革って。



そもそも、人工授精形式だと、何がまずいのかと言えば……

前半では、
「子供が作れるのは、夫Aに対しては女X、妻Bに対しては男Yです。」
としていましたが、実際にはこんな「1対1」の関係ではないと思います。
少なくとも、数十人か数百人単位で相性が合う人がいる……はず、です。
(そうじゃないと、いくら何でもね……)

で、そういう場合、どうなるかといえば。
とりあえず、女Bに対してを考えてみましょう。

女Bと相性が合う男性は、男Yだけではなくて、男G、H、I、J、K、L、M……がいるとします。
けれども、その男性達の個々の能力――財力などの付随的な事はともかく、見た目の美しさ&身体的能力&頭脳――は、「いくらコーディネイターはみな美形で能力が高い」とはいっても、「コーディネイターの中でも格差がある」はずです。

もし、この中で一番能力が高いのは、男Kだとした場合。
女Bが「自分が産んでその子を自分の子供として育てたい」と思う相手は、男Kとの子でしょう。(本来、パートナーAとの子供が出来ればそれが一番ですが、それが望めない以上)

一方で、男Kと相性が合う女性は、女Bだけではなくて、女N、O、P、Q……がいます。この中で一番能力が高い女性は、女Qです。
ということは、男Kが自分の手元に置きたい子供は女Qとの子供。

でも、女性達……Bだけではなく、N、O、P、Q……も、同様に男Kとの子供を望むでしょう。(彼女らの相性のよい相手の中でも、男Kが一番だとしたら)

能力が高い女Qと相性が合う男性は、男Kの他に男R、S、T、Uがいて、彼らも同様に相性のよい相手の中でも女Qが一番だとすれば、彼女Qとの子供を望みます。

ということは、男Kと女Qは利害一致の相思相愛状態ですが、他の……女B、N、O、P、男R、S、T、Uは、一方的な利益です。


しかし「女性が子供を妊娠して出産する」というのは、当たり前の事ですがそんなに簡単な事ではありません。ですから、男R、S、T、Uが女Qとの子供を欲しいと願ったとしても、それを普通Qが受け入れるはずがないので、彼らはあきらめるほかありません。彼らは、別の相性のよい女性と子供を作るでしょう。

一方で、女性側……B、N、O、Pはといえば、「男Kの方が負担になることはない」為に、何の制限もなければみんな男Kとの子供を欲しがり、産む事になります。

つまり、(相性がよい相手が多ければ多いほど)男Kの子が山ほど出来てしまう事になるのです。例え法で制限したとしても、それをくぐり抜けて子供を手に入れようとする女性は多いでしょうね。

要するに、競馬で「種牡馬成績のよい馬」に種付け依頼が殺到するのと基本的には同じ、かな。(最近の有名所だと、サンデーサイレンス。産駒が活躍しすぎて、血統に偏りが出そうとも言われてましたが)

競馬の馬の場合、一定の歯止めとなるのが「種付け料の高さ」「人工授精は禁止(馬の体力的な問題&時期が決まっているので、希望が多くても通常は年間100頭程度。サンデーは200頭突破というとんでもない記録を持ってますが)」。
……人工授精をOKにすると、精液を取っておけば、遠く離れた相手でもいくらでも妊娠可能ですから、ダメなのです。

でも、今回の考察で取り上げているコーディネイターの場合、「人工授精(体外受精でも良いけど)」ということで考えてますので……。(いや、実際……「現実の精子バンク」では、その通りの事が行われているわけですが)

そういう「偏り」を無くす為には、「産まれた子供は社会全体の子。代理母として出産し、なおかつ子供は全員全然別の家庭で育つ」という形にすれば、「自分の子供ではない」のだから、誰との組み合わせでも良いとなるでしょうけど。
自分の子供は確かに存在するのに会う事は出来ず、血の繋がりのない他人をパートナーと共に黙々と育てる社会。
……でも、やっぱりこれは、「今愛している恋人とは結婚出来ず、婚姻統制という形で子供が出来る可能性のある相手と強制的に結婚」という社会よりも、受け入れがたいのでは。

「今愛している恋人との愛がすべて」という思考よりも、「自分の子供が欲しい、それを自分の元で育てたい」という思考の人の方が多いのではないでしょうか。
コーディネイターであっても、いや人為的に生み出されたという意識がある、親という存在と決別した第1世代はなおさら、おそらくは「自分の子供」に拘るのでは? ……「確かな絆」を求めて。
(で、第1世代は、自分の子供の子供、孫も「自分と繋がった能力の高い子」を求める……はずなので、子供に対して婚姻統制は当たり前の事だと教育すると思う)

だから、「相性のよい相手でない限り子供が生まれない」という状態のコーディネイター達にとっては、やっぱり「婚姻統制」が最善の策……なのですが。…………でも、第2世代同士だと婚姻統制でも産まれにくくなってる、って状況では。


一つだけ確実に言える事は、「ジョージ・グレンは、史上最大最悪最低人間」ってことです。……彼が「世界に混乱をもたらしたいが為に」コーディネイター技術の公開を行った、というなら理解出来ますけど。「自分が何でも出来るのは遺伝子に組み込まれた結果でしかない」という思考に陥って、「自分と同じような不幸を味わう奴を作り出したい」と思って公開した、と考えるとしっくりくるんですよね…………別に遺伝子だけの結果じゃないだろうに。そして、「種としての欠陥」込みで、こうなる事を見越してばらまいたとすれば、極悪人ですね。

なのに「ジョージ・グレン友の会」とかいうものが存在し、コーディネイターは認めないがグレンだけは別、とかいう人々がいるとかいうアストレイの世界観は、訳がわかりません。


コーディネイター達の意識を変えて、ナチュラル側にも……全部は無理としても、かなりの人々に「コーディネイターを受け入れる意識」を持たせる。そして、自発的にカップルになっていく事が出来る世界。

…………夢物語だったと思います。
けれど、ある程度までは……ある程度までは、デュランダル議長は成功させた、はずなんです。 ……なのに。

ラクスは、一体何がやりたかったのか。
ラクスは、コーディネイターの意識改革なんてするつもりないような行動しか、種死ではやってないし。
ラクスは、コーディネイターをこれからどうするつもりなんだろう……。

……やっぱり、ラクスを「クライン派」と呼ぶのは抵抗があるな。


(2007/03/18、3/28)

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2007年07月07日(土) 00:00:51 Modified by reyz




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