繰延資産

１．繰延資産の定義

繰延資産とは、既に代価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用を資産として繰り延べたものをいいます。

後述する税法固有の繰延資産は、厳密にはこの定義に当てはまりませんが、指針では同じ項目の中で扱っています。

２．繰延資産の範囲

(1) 繰延資産の範囲

創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費、新株予約権発行費が繰延資産に該当します。それぞれの定義は以下のとおりです。

(a) 　創立費

発起人に支払う報酬、会社の負担すべき設立費用

(b) 　開業費

開業準備のために支出した金額

(c) 　開発費

次の目的のために特別に支出した金額

• 新技術又は新経営組織の採用
• 資源の開発
• 市場の開拓

(d) 　株式交付費

新株の発行または自己株式の処分のために支出した費用

(e) 　社債発行費

社債の発行のために支出した費用

(f) 　新株予約権発行費

新株予約権の発行のために支出した費用

(2) 税法固有の繰延資産

法人が支出する次に掲げる費用（資産の取得に要した金額及び前払費用を除く）のうち支出の効果がその支出の日以後１年以上に及ぶものは、税法固有の繰延資産に該当します。

• 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
• 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立退料その他の費用
• 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
• 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
• このほか、自己が便益を受けるために支出する費用

(3) 研究費の扱い

新製品の試験的製作または新技術の研究等のために特別に支出した金額、新技術の採用のうち、研究開発目的のために導入する技術、特許等に係る技術導入費および特許権使用に関する頭金等については、その発生時に費用処理します。

３．償却額・償却期間

繰延資産として資産に計上したものについては、その支出又は発生の効果が発現するものと期待される期限内に、原則として月割計算により相当の償却をしなければなりません。

償却期間は、次のとおりです。

創立費	会社成立後５年内
開業費	開業後５年内
開発費	その支出後５年内
株式交付費および新株予約権発行費	発行後３年内
社債発行費	社債償還期間

　
税法固有の繰延資産については、法人税法上、償却限度額の規定があります。

また、金額が少額のものは、発生時において費用処理します。

４．一時償却

(1) 一時償却

繰延資産について支出の効果が期待されなくなった場合には、一時に償却しなければなりません。

(2) 一時償却を行う場合の具体例（税法固有の繰延資産の場合）

次の場合には、繰延資産を一時に償却しなければなりません。

(a) 　他の者の有する固定資産を利用するために支出した費用で資産として繰り延べたものについて、次の事実が生じた場合

• 当該固定資産が災害により著しく損傷したこと
• 当該固定資産が１年以上にわたり遊休状態にあること
• 当該固定資産がその本来の用途に使用することができないため、他の用途に使用されたこと
• 当該固定資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと

(b) 　上記に準ずる特別の事実が生じた場合

５．表　示

費用として処理しなかった繰延資産の未償却残高及び繰延資産の償却額の表示は、次のとおりです。

(1) 貸借対照表における表示　

繰延資産は、貸借対照表に繰延資産の部を設け、項目を示して表示します。各繰延資産に対する償却累計額は、その各繰延資産の金額から直接控除し、その控除残高を各繰延資産の金額として表示します。
　
税法固有の繰延資産は、「投資その他の資産」に長期前払費用等の適当な項目を付して表示します。繰延資産の部に計上することはできません。
　

(2) 損益計算書における表示

繰延資産の償却額が営業収益との対応関係がある場合には販売費及び一般管理費に、対応関係がない場合には営業外費用に表示します。
　
繰延資産の一時償却額は、原則として特別損失とします。

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関連規定

会社計算規則第５条第１項、第２項、第７４条第３項第５号、第８４条
法人税法施行令第14条、第68条、第134条
繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い（実務対応報告第１９号）
研究開発費等に係る会計基準（企業会計審議会） 三

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国税庁のホームページより

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