帝国の竜神様閑話06
イッソスという街に定期的に馬鹿でかい船が護衛らしい鉄の船と共にやってくるようになってから、イッソスの大発展が始まった。
ニホンジンと呼ばれた彼らは珍しい物産を携えて交易を求めた。
「アリタヤキ」と呼ばれる皿は西部世界の諸侯の一品としてもてはやされ、「カガユウゼン」と呼ばれる着物はその派手さから社交界の婦人達を虜にした。
「ウキヨエ」はその美に虜になった商人達が買いあさり、「シッキ」と呼ばれる器で「ミソシル」や「ニホンシュ」を飲むのが上流階級の最高のもてなしとなった。
彼らがその巨大な船で魅力的な品物と引き換えにかき集めた金で買いあさったのがダークエルフだった。
ダークエルフは彼らが軒並み高い値段で買い漁っていった為、人買い商人達はエルフを攫いに出かけ、何故かニホンジンの武器で武装したエルフ達に返り討ちにあい、中央はおろか東方世界にまでダークエルフを求める始末。
そんな中、イッソスの奴隷市場で至高の一品と呼ばれる品物があった。
前任者が失踪したイッソスの盗賊ギルドの長、ガースルが所有するサキュバス「ディアドラ」がそれである。
ニホンジン達は船いっぱいの黄金を積んで求めたがガースルは首を縦に振ろうとはしなかった。
そこでニホンジン達は究極の切り札を出してきた。
「やぁ、この世界にもカジノはあるのか」
ダークエルフの奴隷に先導されて、カジノに入ってきたきた一組の初老の男と品のいい貴婦人は異世界の正装でカジノに入ってきた。
この一組の護衛だろう。ダイニホンテイコクの軍服を着た男が二人、ドレスをつけた若い女が一人と奴隷のダークエルフが一人やはりカップルで入ってくるが、四人の視線は最初に入った男に害意がある輩がこないかと常に警戒していた。
「さて、遊ばせてもらうか」
それが、このカジノの悪夢の始まりだった。
「で、いくら負けた?」
怒りを通り越して、淡々とガースルは支配人に尋ねた。
「……金貨にして500万枚」
カジノの支配人が冷や汗をたらしながら請求額を告げた。
その金額は、このカッパドキア共和国の年間予算に相当する。
上質な机にグラスが叩きつけられ、中の透明な酒がアルコールの臭いと共に飛散した。
「やつら、狙ってやがったなっ!!」
明日のギルド幹部会のあるこの夜に、信じられない程の大損害の報告が上がったら、ギルド内部で彼が引きずり落とされるのは目に見えている。
「で、奴らは何て言っているんだ?」
「金貨500万枚の請求放棄の代わりに、ディアドラを買いたいと。
ディアドラを譲ってくれるなら、請求放棄の他に大日本帝国の商品の一つの独占販売権をつけると」
腹が立つ。腹が立つがそれ以上にその取引に魅力があった。
ディアドラの肌に何よりも固執していたのがガースルであったが、それ以上に取引に対する鋭さと組織内部の権力闘争を勝ち抜いてきた冷酷さがないと盗賊ギルドの長の椅子に座っていられない。
「潮時……か」
女はまたいくらでもいる。
やつらにくれてやるには惜しい奴隷娼婦だが、追い詰められてディアドラと共に破滅するつもりはさらさら無かった。
こうして、大日本帝国に三人目のサキュバスがやってきた。
ちなみにガースルはこの半年後に謎の死を遂げるが犯人は誰なのかいまだ謎のままである。
そして、前代の死と前々代の失踪にともなう大混乱から独占販売権の話もいつしか忘れ去られ、盗賊ギルドはその力を内部分裂にのみ使い、イッソスの裏社会で大日本帝国の影響力が増してゆく事になる。
帝国の竜神様 閑話06
ニホンジンと呼ばれた彼らは珍しい物産を携えて交易を求めた。
「アリタヤキ」と呼ばれる皿は西部世界の諸侯の一品としてもてはやされ、「カガユウゼン」と呼ばれる着物はその派手さから社交界の婦人達を虜にした。
「ウキヨエ」はその美に虜になった商人達が買いあさり、「シッキ」と呼ばれる器で「ミソシル」や「ニホンシュ」を飲むのが上流階級の最高のもてなしとなった。
彼らがその巨大な船で魅力的な品物と引き換えにかき集めた金で買いあさったのがダークエルフだった。
ダークエルフは彼らが軒並み高い値段で買い漁っていった為、人買い商人達はエルフを攫いに出かけ、何故かニホンジンの武器で武装したエルフ達に返り討ちにあい、中央はおろか東方世界にまでダークエルフを求める始末。
そんな中、イッソスの奴隷市場で至高の一品と呼ばれる品物があった。
前任者が失踪したイッソスの盗賊ギルドの長、ガースルが所有するサキュバス「ディアドラ」がそれである。
ニホンジン達は船いっぱいの黄金を積んで求めたがガースルは首を縦に振ろうとはしなかった。
そこでニホンジン達は究極の切り札を出してきた。
「やぁ、この世界にもカジノはあるのか」
ダークエルフの奴隷に先導されて、カジノに入ってきたきた一組の初老の男と品のいい貴婦人は異世界の正装でカジノに入ってきた。
この一組の護衛だろう。ダイニホンテイコクの軍服を着た男が二人、ドレスをつけた若い女が一人と奴隷のダークエルフが一人やはりカップルで入ってくるが、四人の視線は最初に入った男に害意がある輩がこないかと常に警戒していた。
「さて、遊ばせてもらうか」
それが、このカジノの悪夢の始まりだった。
「で、いくら負けた?」
怒りを通り越して、淡々とガースルは支配人に尋ねた。
「……金貨にして500万枚」
カジノの支配人が冷や汗をたらしながら請求額を告げた。
その金額は、このカッパドキア共和国の年間予算に相当する。
上質な机にグラスが叩きつけられ、中の透明な酒がアルコールの臭いと共に飛散した。
「やつら、狙ってやがったなっ!!」
明日のギルド幹部会のあるこの夜に、信じられない程の大損害の報告が上がったら、ギルド内部で彼が引きずり落とされるのは目に見えている。
「で、奴らは何て言っているんだ?」
「金貨500万枚の請求放棄の代わりに、ディアドラを買いたいと。
ディアドラを譲ってくれるなら、請求放棄の他に大日本帝国の商品の一つの独占販売権をつけると」
腹が立つ。腹が立つがそれ以上にその取引に魅力があった。
ディアドラの肌に何よりも固執していたのがガースルであったが、それ以上に取引に対する鋭さと組織内部の権力闘争を勝ち抜いてきた冷酷さがないと盗賊ギルドの長の椅子に座っていられない。
「潮時……か」
女はまたいくらでもいる。
やつらにくれてやるには惜しい奴隷娼婦だが、追い詰められてディアドラと共に破滅するつもりはさらさら無かった。
こうして、大日本帝国に三人目のサキュバスがやってきた。
ちなみにガースルはこの半年後に謎の死を遂げるが犯人は誰なのかいまだ謎のままである。
そして、前代の死と前々代の失踪にともなう大混乱から独占販売権の話もいつしか忘れ去られ、盗賊ギルドはその力を内部分裂にのみ使い、イッソスの裏社会で大日本帝国の影響力が増してゆく事になる。
帝国の竜神様 閑話06
2007年03月24日(土) 18:38:42 Modified by nadesikononakanohito