水無瀬級軽巡洋艦

艦級概略

 水無瀬級は、対英米戦回避直後の建艦計画混乱時に建造された軽巡洋艦である。
 対米戦が回避による1942年度以降の継続予算(マル4計画以降の予算)の大幅な見直しの中で、5500トン級の代替を名目として、安くかつ短期間で建造が可能な軽巡洋艦として二隻の建造が認められた。

解説

 『安くかつ短期間で建造が可能であること』をコンセプトにした軽巡洋艦が水無瀬級である。
 マル4計画で計画された艦隊型の軽巡洋艦は阿賀野級4隻があったが、アメリカのクリーブランド級軽巡洋艦と比べて攻防能力は著しく劣る事もあり、日本海軍ではこれを凌駕する性能を持つ巡洋艦の建造が望まれていた。
 しかし、戦艦や空母といった大型艦の建造に集中するため軽巡洋艦は最低限度の建造で我慢されるものとされており、クリーブランド級を撃退可能な艦の建造は破棄されていたのだが、龍神様の降臨により昭和16年12月における対米戦の中止と海軍軍備の縮小が決定されてしまい、艦隊整備の大幅な見直しが行われることとなった。
 これにより、起工されていない大型艦艇の建造はその大半が中止(もしくは延期)となってしまったため、将来的な国防戦力の低下を抑えるために予算の通りやすい小型艦艇について重装備型とした艦を建造するべきとの案が軍令部より出され、水無瀬級はこれを受けて設計が始まっている。
 もっとも、この計画が軍事費の大幅削減を決定した大蔵省に気づかれないはずもなく、大蔵省と海軍省の間で何度か折衝が行われている。
 この結果、設計にかかる費用や建造期間の短期化を図ることで建造許可が降りることとなった。
 最終的には、計画段階から既存の艦艇の設計図を大幅に流用する事で簡素化を図るとされ、具体的には船体構造はすでに設計が固まっていた300号艦(仮称艦名「伊吹」)の線図を参考にしつつ、細々としたところで最上級後期型と利根級のデータを流用して計画されている。
 これは、水無瀬級の使用鋼材が既存の高張力綱ではなくランクを落としたものを長尺で使用するためにあえてカスタマイズする際の再計算時の基礎データとするため、すでに完成している艦のものが必要であるというやむを得ない理由があったためである(当初予定していた建造資材であるマル4計画ですでに発注されていた300号艦、301号艦のものは他の艦に流用されることが決定していたという理由もあった)。
 機関については戦争回避によって計画が宙に浮いていた商船改造空母用に用意していた駆逐艦の機関を採用するものとされたためベースである300号艦と比べ出力は3割以上の減少となっている。
 その反面、機関部のスペースは大幅に減少したことで兵員の居住性の向上と搭載燃料の増加による航続力の増大に成功している。
 武装については60口径15.5cm砲をベースとした両用砲を前後2基ずつ背負い式として搭載する予定であったが、その設計を纏めることができず、やむなく建造時には旧式戦艦からおろした15.2センチ砲を連装にして装備する事とし、後に完成した際には改めて長砲身の両用砲を乗せることとされた。
 そのため、重量が重たくなる両用砲塔と同程度の重さとするため、小型の15.2cm砲塔は大幅な装甲化をすることでバランスを取ることとされ、日本巡洋艦としては異例ともいえる200mm以上の装甲化が行われている(ただし、砲塔ターレットは強化されていない)。
 なお、給弾機については両用砲塔化を見越して300号艦と同様の20センチ砲級のものを採用したため砲弾については従来の分割式ではなく砲弾と炸薬を一体としたカートリッジ型のものを採用することが可能となり、砲身の放熱を考慮しなければ既存艦の15.2センチ砲と比べて射速の五割向上を実現する事が可能とされている。
 他に、15センチ砲では適わない大型化対策として魚雷も装備しているが、発射管は重雷装艦の大井・北上の簡易型発射管を流用したものであり、日本艦の標準
装備であった次発装填機構は無いものとされた。
 高角砲は両舷に2基ずつだけでなく、艦橋前および後部艦橋の直後に1基ずつ12.7cm連装高角砲を装備している。
 この他に計画段階で25mm3連装機銃8基24門が設置された。
 水上機は従来の日本巡洋艦とは違い、艦尾にカタパルトを1基だけ設置することで運用能力を維持しており、2機の水上機を運用可能とされている。
 なお、この艦は様々な女性兵士(黒長耳族および獣耳族の異世界種族の他、神祇院所属の日本人女性等)の搭乗を考えて設計が行われているのが特徴で、彼女たちの居住スペースは縮小された機関スペース──バイタルパート内である艦橋下部および後部艦橋下部──に作られている。
 これらの場所は戦闘時において損害時の応急部署としてしばしば使用されることとなり、応急要員として神祇院の黒長耳族や獣耳族(テレパスでの通信維持と水氷魔法による消化)、ナース(人命救護)達が活動することとなった。
 かくして武装面でいくつかの変更がなされたものの、船体自体はバランス調整以外はほとんど流用によって設計されたため、42年7月には1番艦は着工へとこぎ着けることに成功している。

水無瀬級軽巡洋艦
 排水量:12640トン
 全長:187.7m
 全幅:20.3m
 吃水:5.90m
 出力:104,000hp
 最大速力:32.5kt
 航続距離:18ktで8000浬
 舷側装甲:140mm
 甲板装甲:60mm
 武装:四十一式 50口径15.2cm速射砲 連装4基8門
    八九式 40口径12.7cm高角砲 連装6基12門
    九二式61cm4連装魚雷発射管3型 4基
 乗員定数:904名
 一番艦:水無瀬(呉海軍工廠)
 二番艦:綾瀬(三菱重工長崎造船所)

 工事そのものは「早く」「安く」という原則に基づき、電気溶接やブロック工法の一部導入や長耳族や獣耳族の魔法による支援等最新技術の実験に近い工事が行われ、一番艦の水無瀬は42年7月起工、43年5月進水、43年10月就航という工事期間約一年三ヶ月という異例の速さで完成した。
 なお、一番艦水無瀬は何故か朝になると機関部で故障が頻発するのだが、その後急回復して高速で想定時間に間に合わせる事から「寝ぼすけ」と関係者をひやひやさせたという。
2010年10月23日(土) 01:52:01 Modified by nadesikononakanohito




スマートフォン版で見る