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軍貫マン

それからしばらくの時が流れて、男と性玩具を取り巻く環境に変化が訪れる

男はフゥリ以外の女性に手を出すことが

なくなっていた

そのためシトリスは新たに女性を捕らえることはせず、性玩具たちも男への奉仕が必要でないため比較的穏やかな時間が流れていた

「まだ寝ていますね。昨日あれだけ愛し合ったのですから、仕方ないですよね」

フゥリは男の頬に手を添えて微笑む

「起きてすぐ見られるのが大好きなご主人様の寝顔。幸せすぎて怖いくらいです」

フゥリは男の胸に顔をうずめると深く息を吸い込む

「はぁ……この香り……たまらないです……」

すると男は目を覚ましきょとんとした様子でフゥリを見つめる

「すみません。もっと寝かせて差し上げたいのですが……我慢できなくてしまって……」

フゥリは照れたように笑うと男の身体にそっと覆い被さる

「ご主人様も私の匂い嗅いでみませんか?そうすればおあいこですよね?」

男はフゥリの首筋の香りを嗅ぎ、さらにそこから少しずつ下へと顔をうずめていく

「ふふ、くすぐったいです……ご主人様は甘えん坊さんですね」

フゥリは男の頭を優しく撫でると、そのまま自分ごと男を抱き締める

「お好きなだけ私を嗅いで下さいね。今日は一日中一緒ですから……ずっとこうしていましょうね」

それから二人はベッドの上で穏やかな時間を過ごした

「失礼します。旦那様、奥様。朝食をご用意いたしました」

メイド服を身に纏ったシトリスが食事を持って現れた

「シトリス様……そんなわざわざ、申し訳ありません」

「いえ、これが私の務めですのでお気になさらず。お二人の仲が睦まじくあるように努めること、それが今の私の使命です」

シトリスは男とフゥリの夫婦としての関係性を尊重し自身はまるで彼らの召使いのように振る舞う

フゥリはそんな彼女に申し訳なさを感じるも、彼女の気遣いをありがたく受け取ることにしていた

男とフゥリの関係性は順風満帆ではなかった

当初は共通の話題はそう多くないうえに共通の趣味も無いことに加えてフゥリは舞と男への奉仕以外の知識や経験に乏しくあまり会話が弾まない

好きなときに呼んで好きなときに交わっていた頃には発生しなかった問題

その悩みを男はシトリスに相談すると彼女はこう答えた

「だったらあなたが教えてあげたらいいのよ。あなたが楽しいと思うことならフゥリはきっと喜ぶわ」

シトリスに言われた通り、男は自分が楽しいと思うことを伝えるとフゥリはそれに興味を抱き、一緒にやってみようということになった

その結果様々な体験を共有したことで二人の絆はより深まりフゥリから男への愛情はより深くなっていき、男はただ欲望のままに悦楽を貪るだけではなくフゥリにも幸せになってほしいと願うようになった

「ご主人様と出会えて、愛し合うことができて……私はこれまで以上に幸せです。ご主人様と結婚できて本当によかったです」

フゥリは男の胸に顔を埋めて嬉しそうに微笑む

男は優しくフゥリを抱き締めると、二人はそのまま口付けを交わす

だが、フゥリは気づけなかった

男の表情が一瞬だけ悲しげであったことに

死刑囚はいつその刑が執行されて最期を迎えるかを知ることはできない

なぜなら終わりがわからない恐怖を含めて罰であるとされているから

故にシトリスからその命と引き換えに溢れんばかりの幸福を与えられた男にはそれを知ることができた

だからこそ男はその日のために悔いのない道を選びフゥリとの夫婦生活を存分に楽しんだ

これまでシトリスは死への恐怖と未来への不安を幸福によって塗りつぶしてきた

「ご主人様、とうとうこの日が来ましたね

……」

男は短く返事をすると、フゥリは男をぎゅっと抱き締める

「最期の時まで、どうかお側にいさせてください」

フゥリはこれまで幾度も幸福に満たされた最期を迎えられたものとその裏で自身と違い幸福を理解できなかったがために悲しい結末を迎え存在を知っている

だからこそフゥリにとってこの日はなによりも特別なものであり、その最期を共に過ごす権利を得ることは彼女の中で至上の幸福となっていた

「私は旦那様にお仕えできて幸せでした。旦那様の行く先が安らかであることを心よりお祈りしております」

シトリスは男に深々と頭を下げる

彼女はこのときまであくまでメイドとして振る舞うらしい

「旦那様は最期の日に誰と過ごしたいですか?」

シトリスの問いかけに、男はフゥリをちらりと見つめる

フゥリはそれにゆっくりと頷く

だが次の瞬間予想だにしないことがおこる

「旦那様……本当に私でよろしいのですか?」

男はシトリスを選び、シトリスは口調を変えないまた驚いた様子をみせる

「えっ……」

フゥリはハッとなり咄嗟に口を塞ぐと笑顔を取り繕う

この世界では決して珍しくない媚びて生き残るための作り笑いを自身が浮かべることは想像だにしていなかった

フゥリは頭に浮かんだ多くの疑問を口にすることなく飲み込んでいく

シトリスが作り上げた世界では男の意思が絶対であるためシトリスと男に忠誠を誓うフゥリはそれに逆らうことはできない

フゥリの中で様々な疑問が浮かんでいく

なぜ自分ではないのか?

自分になにか非があったのか?

なぜ伝えてくれなかったのか?

なぜお願いを守ってくれなかったのか?

なぜ今になってそれを破ったのか?

男のこれまではすべて嘘だったのか?

グルグルと思考しながらその答えを探していく

シトリスは男を幸福へと導いたかけがえない存在でありこれは最期の時は自分よりも彼女への恩返しを優先したのだと無理矢理結論づけるもそれを受け入れきれないもう一つの心がフゥリの中でせめぎ合っていた

だがそんな葛藤をよそに時はフゥリの心をよそに残酷に流れていく
「旦那様、奥様がみていらっしゃるのに……」

シトリスは戸惑う素振りを見せつつも決して男の指示へは逆らわず

ゆっくりとメイド服を脱いでいく

少し野暮ったいメイド服からは白い肌

と豊満な肉体が露わになり男の目を釘付けにする

男は遠慮なくグニグニと乳房を揉んだ

「あっ……旦那様、そんなに乱暴にされては困ります……あっ、ああ引っ張っては……奥様、ふしだらな召使いをお許しください、もう旦那様には逆らえそうにありません」

「………」

フゥリはなにも言えなかった

なにか気の利いたことを言ったほうが盛り上がると頭でわかっていても

シトリスは嬌声をあげながらピンと勃った乳首を引っ張られるとそこから母乳蜜が垂れて男をさらに誘惑する

「あの……旦那様、ミルクは飲みますか?私、頑張って搾りますから……あっ……」

シトリスの母乳が男の顔にかかり男はそれを舐めとっていく

「んっ……味の方はどうですか?旦那様が喜んでくださる味にできていれば嬉しいのですけれど……」

男はシトリスの乳首に口をつけ母乳を吸い取っていく

「あんっ……ふふ、かわいい」

シトリスは愛おしそうに男の頭を撫でるとより強く母乳を搾り男の口へと運ぶ

「んっ……あぁっ、そう……もっと吸ってください……」

シトリスの母乳を吸いながら男は股間から屹立した肉棒を取り出してシトリスに扱かせはじめるとすぐにそれは大きく勃起していく

「もうこんなに大きくして……そんなに私のおっぱいが気に入ったのですね」

シトリスは男の胸に手を這わせて男の乳首にも手を伸ばすと優しく刺激を与えていく すると次第に男の顔からは余裕が消え蕩けた表情を浮かべる

「………」

そこでフゥリはあることに気づく

男がフゥリに視線も関心も寄せないことに

最期なのだから恨みがあるのならぶつければいい

自分をシトリスを引き立てるダシにしたいなら罵ればいい

罪悪感や背徳感を得たいならこっちを見ればいい

男から負の感情すら向けられないことにフゥリは心がひどくかき乱される

「旦那様、私のおっぱいで挟んで差し上げます」

シトリスは肉棒を乳房で包み込むと上下に動かし始める

「んっ……どうですか?気持ちいいですか?」

シトリスのパイズリに男はたまらず声をあげるとすぐに絶頂に達して大量の精液が吐き出される
「なんて量の精液……でも、まだ硬いままでございますね」
シトリスも男のフゥリに関心がないことに気づいたのかその存在に触れることはない
フゥリはまるで自分が世界に取り残されたような気分になる

「ひゃおお……これだめです。奥まできて……だめえぇ」

男がシトリスに挿入し一心不乱に腰を振るとシトリスもそれに呼応するように激しく淫らに喘いでいく

「ああんっ……旦那様、私もイきますぅ……イク、イックウゥ」

男はシトリスの子宮に大量の精を注ぎ込むと同時にシトリスも身体を大きく痙攣させ絶頂を迎える

「ふふ、旦那様のがお腹のなかにいっぱい……」

シトリスは恍惚とした表情で余韻に浸っていると男のものが再び勃起する

「あっ、また大きくなって……旦那様すごい」

やがて永遠かのようにフゥリに見せつけられた二人による交わりは終わりを迎える

男は全てを出し尽くしてそのままシトリスの胸に倒れこみシトリスはそんな男の頭を撫でる

「ありがとう。いままで楽しかったわ」

シトリスが本来の口調に戻ると男はゆっくりと頷いて安らかに眠るように目を閉じシトリスに養分を奪われてその生涯を終える

「シトリス様……どうして?」

男が幸福な最期を遂げる

それは予定調和であるはずなのにフゥリはそれを素直に受け止められなかった

「お疲れ様フゥリ。それは後で二人きりで話しましょう」

「はい……」

シトリスは事後処理を行うとフゥリを呼び寄せる

「ご主人様は私のことが嫌いだったのでしょうか?」

フゥリが不安げに尋ねるとシトリスは首を振る

「それは違うと思うわ。だってそうだったらあなたの提案を受け入れたり、他の子に合わなかったりはしないでしょう?」

「だからこそわからないんです。どうしてこうなったのかを……」

ちゃんと愛していたし、愛されている自覚もあった、 だがそれがなぜ今日になって……

それがフゥリの胸の内でしこりとなって残り続ける

「幸福に対してのジレンマとでも言うのかしら」

「なんですかそれは?」

フゥリは首をかしげる

「私はお医者様ではないからはっきりとわ言えないけれど。あの子は本当にフゥリが好きだったと思うわ。でもね……」

フゥリはシトリスの言葉に息を呑む

「幸せだからこそ考えてしまうのよその終わりを」

生物はいずれ死ぬ

寿命で、病で、事故で、あるいは何者かの手にかかって

それはどれだけ幸福を積んだとしても決して逃れることはできない

「ご主人様は終わりがいつかを知っています。だったらなにも恐ろしいものはないのではないですか?」

「だからこそなのよ。未来がわかっているからこそ怖くなったの。自分のものではなくてフゥリの未来を」

「私の……未来?」

フゥリの未来

男の幸せな末路を見届けてキープであるため生き残り新たに自身の所有者となったものに愛を尽くす、それがフゥリの未来

「あの子はフゥリが他の誰かのものになるのを恐れた。フゥリに裏切られると思ったのね」

「………」

「だから自分で壊した。わからない未来に怯えるくらいならそのほうが幸せだから。だから最期にフゥリにいやがらせをした。少しでもフゥリに傷跡を残して自分を記憶の中で生かそうとしたのよ」

結婚

そんな重要な意味を持つ言葉を自分の自尊心のために利用したフゥリへの代償

「ではご主人様は幸せだったのですか?」

「そうよ。だってフゥリは苦しんでいるもの。顔を見なくても感じていたのよ。あなたの痛みを、だってあの子はフゥリの夫なんだもの」

「よくわかりました。私の過ちを……もう終わりにします。シトリス様、いままで……」

「諦めるの?幸せになることを?」

「えっ?ですが、私にそんな資格は……」
「はじめに言ったでしょう?難しいことなの。自分の幸せが誰かの幸せになるとは限らないから。でもね、あなたは感じていたはずよ。最後は納得がいかなかったかもしれないけれど、自分で選んだ未来も悪くはなかったでしょう」
「はい」
フゥリにとってここに至るまでの過程でなにも得られなかったかと言われれば嘘になる
「努力は必ず報われるわ。それが望む未来かはわからないけれど、きっとそれが幸せになるための道であると信じているわ。私だってこう見えて失敗してきたのよ。だからフゥリも諦めないで」
「そうなんですか?でも、私には……もう」
フゥリは気づいてしまった
シトリスが与える幸福と自身の求めるものの違いに
「わかっているわ。だから枷を外してあげる。ただしそれ以外の全部を私に頂戴」
シトリスの目が獲物を欲する捕食者のものへと変わる
だがフゥリは恐れない
たとえ彼女が悪辣な捕食者であろうと誠実さも持ち合わせていると信じているから
「お願いします」
その誓いと共にフゥリは人ならざるものになった
そしてフゥリであったものはシトリスの糧となる
「シトリス様、おいしかったですか?」
「ええ、とっても。ここまで揺さぶった甲斐があったわ。私を神みたいに崇めて滑稽だったもの。だからあんまり信じちゃダメよ。蟲惑魔も人間も嘘つきだから」
「わかりました。だからもうシトリス様を信じません。シトリス様は誰がなんと言おうと私を救ってくれた神様ですから」
フゥリは蟲惑魔としての第一歩を踏み出した

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