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作者:ベリーメロン




 キッカケはなんだったか。
 定期的に皆で集まっても決してウィンダの目の前には現れないエリアル。
 その理由を察していながら、ウィンダはエリアルの住む里外れの家に訪れていた。
 脳裏を行き交う迷いを打ち捨てて呼び鈴を鳴らすと、ギィと軋んだ音と共に扉が開く。そこから覗いてきた青い髪と、怯えたような青紫の瞳。

「だ、だれ……ってウィンダ!?」

 ウィンダの来訪を知り、慌てて扉を閉めようとするエリアル。それを許さずに、ウィンダは扉が閉まらぬように足を滑り込ませた。

「エリアル……」

 ウィンダは続く言葉を紡ごうとする。しかし扉から飛び引いたエリアルは頭を押さえて蹲っていた。
 うわごとのように繰り返す。

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」

 小さな背を震わせて、自分へと呪詛を向けるようにウィンダに謝罪を続けるエリアル。しかしそれが自身に向けられているわけじゃないことをウィンダは知っているのだ。
 本当なら大丈夫、自分は気にしてないから……エリアルは悪くないから……と声をかけなければならない。
 しかしウィンダの心のうちに湧いた感情は、そのまま本心とは別のものを吐き出させていた。

「なら、エリアルは何をしなきゃいけないか、わかるよね……?」

 自分は何を言っているのだろう。
 ウィンダ自身でさえ、自身の口から出てきたその言葉に混乱していた。
 しかし、震える少女の背中が。自分の中に燻る憎悪の欠片が。抑えてきた孤独感が。それにより人肌を求めてしまう性が。ウィンダのセーフティを外してしまう。
 ゆっくりと踏み込み、ウィンダの言葉に固まったエリアルの手を取る。顔を上げさせれば虚ろな瞳に怯えた光を滲ませている。真っ正面から見つめあったのはいつ以来だろうか。

「……っ!」

 ハッとして身をよじらせるエリアルだが、ウィンダはその手を強く握ったまま離さない。そのまま強引に引き寄せると、エリアルの小さな唇を奪った。

「んぅ……!むぐぅ!!」

 驚きと抵抗に顔を振ろうとするエリアルだが、普段から家に閉じ籠り研究ばかりの彼女がウィンダを振り払えるわけもない。
 口内に侵入してくる生暖かい舌の感覚に身を震わせるエリアルだったが、やがて諦めたのか徐々に身体の力を抜いていく。そしてウィンダもそれに合わせるように優しくエリアルを抱き寄せた。
 そのまま二人はもつれ合うようにしてベッドへ倒れ込む。

「ぁっ……」

 エリアルの掠れた声に、ウィンダは喉を鳴らす。そのまま着流したままの彼女の衣服をずらし、華奢なその肢体を露にさせていく。
 白く透き通るような素肌と、控えめながら女性らしい膨らみをもつ身体つき。男が見れば獣欲のままに壊すまで犯してしまいそうな儚さだった。
 それを前にして、女同士だというのにウィンダは息を荒くする。今更になって理性が警鐘を鳴らし始めるがもう遅い。
 エリアルは抵抗をやめたまま、ただ小さく首を横に振るだけ。その姿がより一層ウィンダの中の嗜虐心を煽っていく。

「ごめんね……エリアル……」

 耳元で囁かれる謝罪の言葉を聞きながらも、エリアルは何も答えなかった。ただ潤んだ瞳のまま静かに目を瞑って受け入れようとしている。エリアルにとって、自分は罰を受けるべき人間だという図式が出来上がっているのだろう。
 そんな彼女を見てウィンダは胸の奥底から沸き上がる何かを感じていた。それは怒りにも似た衝動。欲望というにはあまりにドス黒いもの。
 気づけばエリアルの首筋に歯を立てていた。

「っぅ……!」

 エリアルが小さく悲鳴をあげるが、構わずに強く噛み付くと血が滲んでくる。それを舐めとりつつ、囁いた。

「これが、消えるまでエリアルは私のモノだよ」

 エリアルはウィンダの囁きに頷くことしかできない。怯えた瞳を向けられて、なおも熱を抱くウィンダは手を這わせてエリアルの胸に指を沈めていった。

「ひぅっ……」

 エリアルが小さく声を上げるが、それでもウィンダは止めない。乱暴に揉みしだいてはエリアルの反応を楽しむ。

「あっ……やっ……」

 痛みと羞恥に頬を染めるエリアル。同性愛者じゃない彼女にとっては混乱する事態だろう。
 しかしウィンダはお構いなしに続ける。そうしてエリアルが反応を示し始めた頃を見計らい、ウィンダはエリアルの秘所へと手を伸ばして触れた。

「あぅっ……」

 突然の刺激に思わず声を上げて腰を引くエリアル。しかしウィンダはそれを許さず、むしろ逃がさないようにとエリアルの太ももの間に自らの足を差し込んで押さえつけた。
 そのまま愛撫を続ければ、エリアルは快楽に悶えはじめる。
 同時にウィンダは自らも服を脱ぎ捨てて裸になると、エリアルのその手を胸に這わさせた。
 痩せて成長に乏しいエリアルのものと比べると、女性的に程よく成長したウィンダの乳房。
 それを触らせたまま、もう片方の手でエリアルの手を取って己の下腹部へと導いていく。

「私も気持ち良くしてよ、エリアル……」
「…………うん」

 消え入りそうな声で返事をしたエリアルは、言われるままにウィンダのそこに触れる。
 戸惑うエリアルに自分が普段してる時みたいにやってみるようウィンダは囁いた。おずおずとエリアルの指がウィンダの乳房を優しく揉み、先端を転がす。秘裂を指先で撫で擦られ感覚に、ウィンダは小さく喘いだ。

「んんっ……」

 女の子同士でこんなことをしている。それも強引に彼女を誘導して。
 本当はこんなこといけない。やめなくてはいけない。脅すような関係なんて以ての外。
 それなのにエリアルの普段の自慰を愛撫として自身にしている。その背徳感と征服感が、ウィンダの思考を酔わせていく。
 エリアルに弄らせ、ウィンダもまたエリアルの身体を指で弄ぶ。
 再び唇が重なりだしたのは間もなくだった。
 舌と舌を絡ませ合い、唾液を交換する。その間も互いの手は止まらない。
 エリアルの手はウィンダの胸の先端を強く摘まむ。ウィンダの手はエリアルの秘部へ深く沈んでいく。

「んんぅ……♡」
「ふぅっ……んっ……♡」

 二人は鼻にかかる甘い声をあげながら身体を寄せ合った。
 互いの体温を感じながら、二人はそのまま絶頂を迎える。
 身体を大きく跳ねさせて、二人は互いに寄り添いながら脱力した。
 しばらく荒くなった呼吸を整える。

「これで、おわり……?」

 落ち着いて一息つこうとしたウィンダに、エリアルは掠れた声でそう囁いた。
 行為が終わったのを確認するための発言だったのだろう。されどウィンダはそれを都合良く解釈してしまう。

「まだ、足りないかな……」

 ぎゅっと抱き寄せて、そう囁けばエリアルの小さな身体が強ばる。
 その様子に再び顔を出す黒い感情に、ウィンダは抗えない。

「もっと、しようか……エリアル……」

 その言葉に、エリアルはただ震えることしか出来なかった。
 それから、ウィンダはエリアルに何度も自分の身体を重ね合わせていく。







 一度崩れた均衡は、修繕されることもなく歪に続いていく。

「ん、ぁっ……はぁ、はぁ……」

 エリアルの身体へ、ウィンダは手を這わせていく。
 あの日から、ウィンダとエリアルは幾度もその関係を続け、さらに過激さを増していた。

「あっ……」

 エリアルの手を引き寄せて、薬指にを口に含む。そのまま歯を立てて強めに噛めば、彼女の細く白い指に傷がつき血が溢れてきた。ソレを咀嚼するようにウィンダは飲み干していく。
 行為を始める時はいつもこうしてエリアルの身体にアカシを付けるのだ。

「今日はエリアルのために、色々用意したんだー♪」

 取り出したのは一見すれば意味のわからないオモチャの数々。洗濯バサミのようなものまで置いてあって、エリアルはそのラインナップに静かに震えた。
 されどウィンダに反抗はせず、何も言い返すことはしない。ただされるがまま、エリアルは受け入れるだけ。
 そんな彼女に、ウィンダはより一層嗜虐心を煽られて興奮する。

「まずはコレからね……」

 そう言ってウィンダが手に取ったのは洗濯バサミとローターの一体型のモノ。それをエリアルの乳首に挟んで固定する。

「っ……」
「大丈夫だよ、エリアル。痛くないはずだし、ちゃんと気持ちよくなれるよ……」

 不安げに見つめてくるエリアルを安心させるように頭を撫でると、ウィンダはスイッチを入れた。
 途端に振動しだすそれに、エリアルはビクッと身体を震わせる。

「ほら、気持ちいいでしょ?ここも、もう濡れてるもんね」

 ウィンダはエリアルの秘所に手を伸ばすと、下着越しに割れ目をなぞり上げた。そのまま指先を沈めては離してを繰り返す。

「んんっ……あっ……や、あっ……」
「かわいい……かわいいよ、エリアル……」

 それだけでも、エリアルの口からは艶やかな声が漏れ出た。そのまましばし続けられれば、エリアルの身体は軽く痙攣する。

「もうイっちゃったね?」

 囁けばエリアルは赤面する。ウィンダはその様子が愉しくて仕方がない。
 そのまま唇を奪ってやれば、エリアルは抵抗せずに受け入れてくれる。なぶられるだけだったエリアルが舌を伸ばしてくるようになれば、さらに深く貪っていく。舌と舌を絡ませあい、唾液を交換しあう長く甘いディープキス。
 やがてウィンダがエリアルの舌を噛んだところで、長いキスは終わった。互いに血の味を感じつつ、唇を離す。

「ん、はぁ、はぁ……」

 蕩けた瞳を向けてくるエリアル。未だに乳首はオモチャに苛められ続けているのもあるのだろうか。自分だけにしか見せたことのないだろう表情に、ウィンダは歓喜してしまう。

「ひうっ……」

 首に舌を這わせればエリアルは敏感に震えて見せた。すっかり薄くなった先日の傷痕を舌先でなぞりつつ、上書きするように歯を立てる。
 いつしかウィンダはエリアルの華奢な身体を強く抱き締めていた。
 強く抱き締められ、エリアルは苦しそうな声をあげる。だが、それでも彼女は逃げようとしないし、拒絶もしない。ウィンダに求められるままに身体を許し、ウィンダを受け入れ続ける。
 痛いほどに抱き締められても、ウィンダが新たなアカシを付け始めても、エリアルは受け入れてしまう。

「エリアル……」

 首に新しい噛み傷を作っても、ウィンダは止まらない。エリアルの細い肩にも歯形をつけて、さらにアカシを増やしていく。
 エリアルの白い肌に自分の痕跡を残す度に、ウィンダは満たされる。
 同時に、もっと欲してしまう。

「ウィンダ……」

 涙の膜が浮かんだ瞳でエリアルが見つめてくる。それがウィンダの黒い感情をさらな刺激するともしらずに。
 もっと彼女を自分のものにしたい。もっと彼女を支配したい。
 歪んだ独占欲が、ウィンダの中で渦巻いていた。

 これまでウィンダの歪んだ欲望はどんどんエスカレートしていった。
 ある日は、エリアルの両手首を縛って動けなくしてから行為に及んだこともあった。
 また別の日は、目隠しをして視界を奪った状態でしたことも。
 他にも、外に連れ出し木陰で何度もイカせたり、様々な方法でエリアルを犯した。
 そしてその度、エリアルは従順にそれを受け入れるのだ。
 そのせいで、さらにウィンダの中の歪んだ欲求は増していくばかりだ。
 当初は人肌を欲して襲い、彼女への罰だという言い分でしてきた。
 されど今ではこの子は自分のものだ。誰にも渡さない。そんな考えが脳内を埋め尽くすようになっている。
 エリアルが嫌がることをするのは、もうお約束になっていた。最近ではもう、何をしても拒むことをしなくなった気がする。
 それが嬉しくもあり、どこか寂しい気もする。
 だから、今日こそは拒否されるかもしれないと思った行為がある。

「それ、なに……?」

 エリアルが困惑した様子でウィンダの取り出したそれを見つめていた。
 それは棒だった。Uの字に折れ曲がった長く太いソレは両極端に男性器を模している。先端の膨らみから根元まで全てがリアルに作られているソレを見て、何をするのかを悟ってしまう。

「ダメだよ、ウィンダ……」
「何がダメなのかな……?」

 ウィンダは棒にヌルヌルとしたローションを塗りたくる。そしてそのまま自らの秘部に宛がって、ゆっくりと沈めていく。

「っ、あ、あっ……」

 自分の中に異物が入っていく感覚。それが最高潮になれば、確かな激痛がウィンダを襲った。

「あは、ははは……オモチャで処女捨てちゃった……」

 痛い。けれど今からすることを考えれば、些細な問題だ。
 まるで自分に肉棒が生えたような錯覚に陥りつつ、反対側をエリアルの秘部に押し当てる。

「いいよね?」

 我ながらズルいことを聞いていたとウィンダは思う。先に処女を捨てて後戻りできなくしたのだから。

「…………」

 怯えた瞳で無言で見つめてくる。ゆっくりとディルドを進めても嫌とは言わない。

「いいよね?」
「…………っ」

 返事の代わりにギュッと目を瞑られた。それを肯定と捉えて、ウィンダはさらに奥へと進めていく。

「あっ……んんっ……!」

 痛みに耐えかねてか、エリアルの口から艶っぽい声が漏れ出る。
 エリアルも処女だったがこれまでさんざん痛みに慣らされ、開発されてきた故にそこまで痛むことはなかったのだろう。

「んっ……はぁはぁ……♡」
「いた、い……のに、なんで……」

 互いのナカに両頭のディルドが収まって、一息をつく。互いに初めての体験に、戸惑いと不安と快楽が入り混じった複雑な表情を浮かべている。

「動くよ……我慢してね?」
「え、待っ―――ひぅっ!?」
「くぅっ!ふっ、ああぁっ♡」

 ウィンダは躊躇うことなく、腰を動かし始める。エリアルに覆い被さるようにしながら、激しく動き続ける。互いのナカでディルドが膣肉を抉り、擦りあげてくる。最初は苦痛しか感じなかったのに、いつの間にか気持ちよくなっていた。

「ウィン、ダ……ウィンダぁっ、やだ、こんな、ボク、おかしく……ひぁっ♡」
「おかしく、なっちゃお、いっしょにっ……♡」
「ひうっっ♡やっ、だめぇ……」

 エリアルの悲鳴にも似た喘ぎ声を聞きながら、ウィンダはひたすらに腰を振る。互いに互いを犯し合うような行為に、次第に快感が増していく。

「あっ、んんっ……♡ウィンダぁ……あうっ、んっ、ボク、もう……」
「んぅっ、あっ♡イキそう?じゃあ、いっしょに……イこ?」

 ラストスパートをかけるように、さらに速度を上げる。肌がぶつかりあう音が激しくなり、水音が響き渡る。ディルドの先端が互いの最奥を捉えて、早まる腰の動きに合わせて突き立てた。

「「〜〜〜〜っ♡♡」」

 絶頂を迎え、二人揃って仰け反る。ディルドを引き抜けば、同時に血混じりの愛液が流れ出した。

「あ、うぅ……はぁはぁ……」
「はぁはぁ……エリアル、かわいい……」

 荒くなった呼吸を整えつつ、ウィンダはエリアルを抱き締める。そして、キスをする。舌を絡めて唾液を交換し合い、唇を離せば銀糸が引かれて切れる。

「ごめんね、エリアル……大好き……」
「……うん」

 エリアルは抵抗しない。肯定するだけだ。ただ静かに受け入れてくれる。
 きっと、彼女はわかっているのだ。こうすれば、ウィンダが救われると。だから、どんなことだって受け入れる。
 それが、エリアルにとって最大の贖罪だと知っているから。
 ウィンダの愛の囁きが歪んだ黒い感情によるものだとしても、エリアルは静かに受け入れていく。
 傷を舐め合うように、埋めるようにただひたすらに。

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