筆者がダルク関連のcpを投稿したくて作りました。ダルクのcpなら健全、R-18問わずにどうぞご利用ください。いつか霊使いss保管庫になるかも? 今のところはダルク×霊使い関連に絞ってお願いします。

 魔法都市エンディミオン、その大通りの、あたしが普段は絶対に入らないようなおしゃれな喫茶店のテラス席で、ぶらぶらと足を揺らす。
 よく晴れた休日だからか、元々人通りの多いこの通りは様々な存在で溢れかえっていた。
 机の上に突っ伏して、ここを指定した本人が人通りから来ないかと視線をさまよわさせても、目に映るのは知らない使い魔や魔法使い、あとは観光客らしき人だけ。
 自分で勝手に緊張して、くるくる走り回る禰須三破鳴比のように時間も見ずに待ち合わせ場所に来てしまったせいで、待ち合わせの時間まではまだまだある。
 普段なら何もせず待つだけの時間、しかもこんな浮いてるとしか思えない場所で一人きりなんて大嫌いだけど、今は相手に早く来てほしいような、あまり来てほしく無いような、そんな曖昧な感じだ。
 いつのまにか、ため息をついてしまう。
 こんなの、あたしらしくないとは思いつつも、重い気分はなかなか晴れてくれない。
 こんなにも晴れてるんだから私のちっちゃなモヤモヤも晴れたって良いだろうに、なんて思っていたら、人混みの中に白い髪が見えた。
「ヒータちゃん! ごめん、待たせた!?」
「いや、そんなに待ってないから大丈夫。ライナこそ随分早かったな」
「うん、依頼が予定より早く終わったから」
 そう言ってライナが私の向かいの席に座る。
 光霊使いのライナ、闇霊使いのダルクの幼馴染で、ダルクと一緒に数年前から私達と過ごすようになった女の子だ。
 白くて透き通るような肌に、丸くてキラキラした目、アウスみたいにすごくでかいってわけじゃないけど、あたしみたいに薄っぺらいわけじゃない、ちゃんと膨らみのある体つき。可愛いものが好きで、オシャレにも気をつかって、明るい笑顔をよく浮かべる、あたしよりもずっと可愛くて、女の子らしい女の子。
「ヒータちゃん、どうしたの? 顔暗いよ?」
「あ、いや、ごめん、なんでもないから大丈夫!」
「それなら良いけど……。疲れてたりしたらちゃんと言ってね?」
「ああ、ありがと。ほんと大丈夫だから気にしないでくれ」
 考えこんでしまっていたら、ライナに心配されてしまった。
 慌ててごまかすと、ライナはそれ以上の追求はしないで、店のメニューの方に注意を移してくれた。
 メニューに視線を落としているライナの長いまつ毛を見つめる。
 一人で場違いな場所にいるという居心地の悪さは薄れてくれたけど、劣等感も含んだ心の澱みはより広がってしまった。
 ライナは今では、というか結構最初の頃からあたし達のグループに馴染んで、大切な仲間になっているし、あたし自身もエリア達と同じくらい大切な友達だと思ってる。
 だから、今あたしが感じてるモヤモヤは本当に一方的で、自分勝手なものだ。
 ライナ達のためにも、あたしのためにも、とっとと振り払ってしまいたいのに、なかなかにしつこいそれはまとわりついて離れてくれない。
 ほんとに、あたしらしくない。
 またため息が出そうになるのを噛み殺して、我慢する。ライナに無駄に心配をかけるのは本意じゃない。
「ヒータちゃん、メニュー見る?」
「ん、いや、あたしはもう先に見てたから」
「そっか。すみませーん!」
 頼むものを決めたらしいライナが店員さんに声をかける。
 あたしはコーヒーを頼んで、ライナは最近流行っていると言う甘いミルクティーにもちもちの粒が入ったものを頼んだ。あたしは正直、この店のメニューを見ても、長ったらしくてよくわからないものしかなかったから、見慣れたメニューを頼んだだけだった。
 普段は気にしないようなことなのに、なんだかちくちくしてしまう。
「ところで、あたしと話したいことがあるんだろ?」
「あ、そうそう!」
 あたしの内面から目を逸らしたくて、ライナに話を振る。
 そもそも今日はライナに『ヒータちゃんとお話したいことがあるから、一緒にお出かけしたいんだけど、大丈夫かな?』と言われたのがきっかけだった。
 わざわざ二人きりで何を話したいんだろうと思いはしたけど、あたしの思いがライナに知られてるわけじゃないし、ただ友達を誘っただけなんだろうと判断したけど。
「ヒータちゃんってさ、ダルくんのこと好きでしょ」
「コヒュッ」
 心臓が飛び出るかと思うくらい驚いた。というか今まで聞いたことのない呼吸音が出た。
 肺が痛くて、思わず咳き込む。
「わっ! ヒータちゃん大丈夫!?」
「エホッ、ゲホッ、だいじょ、ってかなんで、しって」
 いきなり核心をロケットアローで轢き潰してきたライナの言葉に頭が混乱し続けている。
 なんで、とか、どうしよう、とか、知られちゃダメだったのに、とか、そういう言葉がたくさん浮かんでくるけど、この状況に対処できるような考えは彼方まで吹き飛んだのか全く出てこない。
「いや、結構ヒータちゃんわかりやすいよ。なんなら私以外も結構気づいてると思うよ」
「コフッ」
 凄まじい追い打ちにまた言葉が詰まる。
 というか、めちゃくちゃ混乱した時の咳はかなり喉にダメージが来ることを初めて知った。
「ヒータちゃん、ほんとに大丈夫?」
「だい、じょうぶ、だから、ちょっと、おちつかせて」
「うん」
 何度も深呼吸をして、サービスとして貰ってたお水を飲んで、多分数分経ってようやく落ち着いてくる。
 ライナの方を見ると、ただ、心配そうな顔をしていた。
 そこに、他の感情があるようには、私には見えなかった。
「落ち着けた?」
「ああ、うん、ありがと。その──」
「お待たせしました」
 あたしがどうにか言葉を捻り出そうとした瞬間、接客用ゴーレムが注文した商品を運んできた。
 言葉を無理やり区切られた中、それぞれ頼んだ飲み物を受け取ると『ご注文の品はお揃いですか』とか、定型文を言い終えたゴーレムが去っていく。
 深刻な話をしなきゃいけないはずなのに、なんだか間が抜けてしまった。
「ヒータちゃん、さっき何か言いかけてたけど」
 ライナが透明な容器に入れられた黒いつぶつぶの入ったミルクティーに、太いストローで口をつける。
 こっちを見つめてる目はどうしたの、と言いたげだ。
「いや、その、ごめん」
 手元のコーヒーに視線を逃して、言葉を口にする。タイミング最悪ゴーレムでも、罪悪感までは持っていってくれなかった。
「? 何が?」
「えっ?」
 けれど、ライナからの返事は予想もしてなかったもので、あたしも思わず顔を上げてしまった。
 ライナは本当に不思議そうな顔をしている。
 え、話の流れ的にあたしが謝ることなんて一つしかないと思うんだけど。まさかゴーレムのことについて謝ってるとでも思ったのだろうか?
「いや、だから、あたしがダルクのこと好きになっちゃったから」
「え、それ私に何か関係ある?」
 今度こそあたしの脳が固まる。
 ライナも混乱してるみたいだ。
 お互いに首を傾げる。
「え、だって、ライナってダルクとこいび……好き、同士なんじゃ……?」
 ダイレクトに関係を表現する言葉恥ずかしくなって、なんだか遠回しな言い方になってしまった。
 私の言葉を聞いたライナが少し固まった後、大きな声を出した。
「あー! あははっ! なるほどね! 違う違う、私とダルくんはそんなんじゃないから!」
「そっ、そんなに笑うことないだろぉ!」
 くすくすと涙まで出しながら笑うライナに、思わず抗議の声を上げる。
「いやー、確かにダルくんのことは好きだけど、恋愛的な感じではみたことないなぁ」
「え、二人で良く話したり、くっついたりしてたのは!?」
「あー、まあ確かに距離は近かったかもだけど、正直ダルくんとは誇張抜きで生まれた時から一緒だから、お兄ちゃんみたいな感じなんだよね。だから、言ってみれば兄妹のスキンシップみたいな感じかな?」
「ええ〜……」
 いや、それにしては距離が近すぎないかとか、そういうもんなのかとか思考がぐるぐるするけど、異性としての好き同士の距離感も兄妹の距離感も知らないあたしには、結局そういうものなのだと無理やり受け入れるしかなかった。
「な、んだよ、それ〜」
 体の力が思いっきり抜けて、テーブルに突っぷす。
「いや〜、最近避けられ気味かなぁって思ってたけど、そういうことだったんだぁ。ヒータちゃんかわいい〜」
 にやにやとした笑みを浮かべたあたしの頭をつんつんと突っつく。
 というか避けてたのまで気づかれてた……。
「どうせ、あたしは勘違い猪突猛進女だよ」
「ごめんごめん、そんな拗ねないで? でも最近避けられてるの、なんでなのかなぁって私もずっと気になってたからさ」
「う、それは、ごめん」
 ライナからしたら、なんの覚えも無いのに、あたしに勝手に避けられてたわけだから、嫌な気持ちにさせただろう。
 さっきまでとは別の罪悪感が湧いてくる。
「んーん、気にしないで良いよ? 私もそんなに嫌な気持ちになったわけじゃないし、なんか事情があるんだろうなーとは思ってたしね」
「……ん、ありがと」
 ライナは軽いかんじで返事をしてくれた。
 きっと、あたしに気をつかわせないためだろう。
 本当に、あたしの友達はみんな優しい。最初っから相談してればこんな面倒なことにもなってなかったのかもな、なんて思っていたら。
「でもぉ、かわりと言っちゃうとなんなんだけどぉ」
「うぇ、ラ、ライナ?」
 何故かやけにねっとりとした口調で喋るライナが、あたしの肩を掴んだ。異様に目が輝いてるし、目が据わっている。
「ダルくんのことをどういうふうに好きになっていったのか、たっぷり聞かせてほしいなぁ?」
「へっ? いや」
「だって、今日ヒータちゃん呼び出したの、それが聞きたかったからなんだからね〜」
 あ、これあれだ、アウスが知らない魔術について聞く時の目だ。つまり、全部話すまで、逃げられない。
「いや、好きになった経緯って言っても……」
 少しぬるくなったコーヒーのカップを手で包んで、目を泳がせる。
 流石に肩からは手を離してもらった。ちょっと痛かったし。
「少しずつで良いよ〜。今日この後の家事とかヒータちゃんの分含めて全部終わらせておいたから時間はいっぱいあるし」
 ライナは相変わらず目が据わったままで、テーブルに肘をつけて組んだ手を口の前に持ってきている。何故かやけに威圧感がある。
 というか、家事とかのくだり初耳もいいとこなんだけど。
 これは本当に話さないと帰れなさそう、というか多分帰ってからも聞かれる。
 だから、観念する事にはしたけど……めちゃくちゃ恥ずかしい。
「そう、まずはきっかけからとか、どう?」
「いや、そのきっかけは、力仕事とか代わってくれたこと、かな」
「ほほーう? でもヒータちゃんって仕事取られるのとかあんまり好きじゃなかったような?」
 ライナに相槌を打たれながら、ポツポツと話していく。
 でも、やっぱり凄く恥ずかしい。
 あと、ライナの聞き方が尋問か何かみたいでちょっとおっかない。
 もう、とにかく勢いで喋ってしまおう。
「まあ、そうだけど、ダルクはそこら辺考えてて、やってる仕事を交代しよって声かけてくるんだよ。今やってるのより力仕事の方が得意だから、みたいな感じで」
「あー、ダルくん、ちゃんとそういうところ気にするよね」
 わかったように頷くライナにちょっとムッとするけど抑える。というか区切ったりしたら恥ずかしさで再開できなくなる。
「うん、最初はずいぶんと苦手な事が多い奴だなって思ったけど、何回かそんなのがあるうちに気づかいされてるって気づいてさ。あたしに代わってって言うのも、火起こしとか、あたしが得意な事ばっかだったし」
「ヒータちゃん、だいぶ鈍感だね」
「う、うるさい! ちゃんと気づいたから!」
「いや、普通一回か二回で気づくと思う」
 茶化してくるライナを無視して話を続ける。眼光鋭いまんまだから茶化してるのかわかんないけど。
「それで、ダルクにあたし聞いたんだよ。別に気をつかわないでもらってもできるって」
「ふむ、そしたら?」
「『ごめん、女の子扱いしたとかじゃなくて、ただ僕が女の子だけに力仕事させるのが嫌だったからなんだ』って」
「うっわぁ〜、キザァ〜」
 ライナが呆れたような声を出すから慌てて言葉を繋げる。
「いや、でも、多分それもあたしを気遣って、あたしが嫌な思いしないで、ただこいつがやりたがってるだけなんだって思えるように言ったんだろうし。それに……」
 そこまで言って口を閉じる。
「ふむ、それに?」
 ダルクが悪いと思われたくなくて、喋りすぎた。けど、ライナの目は獲物を見つけた肉食獣みたいになってて、話すまで逃さんぞと言ってきている。
「……それに……、女の子として見られるのなんて、初めてだったから……」
 ダルクが来るまでは、あたしはエリア達と比べて力があったし、性格も男勝りだと自他共に認めてて、基本的に男の子みたいだねって言われる事はあっても、可愛いとか、女の子らしいとかは言われたことが無かった。
 あたしもそう思ってたから、別に気を悪くしてたわけじゃない。むしろ嬉しく思ってたくらいだった。
 けど、時々、本当にたまにだけど、あたしも女の子だって、思うこともあって。
 初めて、女の子として見てくれたのが、ダルクだった。
 言ってしまってから、耳まで熱が来て、顔が真っ赤になってるのを感じる。
 ライナはヒューと口笛を吹いて、何故か拍手をしている。
「ブラボー」
 何がブラボーなのか何もわからない。というか、こんなのあたしが知ってるライナじゃない……。
「いや、ほんとに素晴らしい」
 なに? なんの目線なの?
「も、もう良いだろ! もう全部話した!」
 顔をばっと上げて、ライナを睨みつける。
 もう、ほとんどのことは話し終えた。
 これで、この地獄から解放されるはず。
「いや、まだだよ」
 そう、静かな声でライナが告げる。
 静かなのに、凄く威圧感がある。戦闘技術ではあたしの方がライナより上のはずなのに、あたしはびくりと怯えてしまった。
「一ヶ月前のダルくんとの討伐依頼。そこで決定的なことがあったでしょう?」
「な、なんで、知って……」
 ピタリと言い当てられたことに、頭が混乱する。
 光霊術ってマインドスキャンできたっけ?
「そのあたりから態度が露骨になったからね。子供でもわかる推測だよ?」
 だからどういうキャラ? いや、ほんとに怖い。
 威圧されてしまったあたしは、ただ話すことしかできず、ポツポツと話し始めた。
「その、討伐依頼の時に、私がトドメを刺し損ねてて」
「うん」
「それで、ダルクに庇われて、その、姿が、かっこよくて……」


 一ヶ月前の討伐依頼は、かつて倒された下位のドラゴンがゾンビ化して復活したものの討伐だった。
 毒のブレスや巨体からの攻撃は確かに脅威だったが、動きは遅く、特に危険のない相手だった。
 だから、あたしが稲荷火と一緒に出した火霊術で全身を燃やした時、もう倒したものだと思っていた。
 けど、ゾンビ化したドラゴンは思ったよりも丈夫で、後ろを向いていたあたしに、毒のブレスを吐き出してきた。
『ヒータ、危ない!』
 そう言われた時はもう毒のブレスが目の前に迫っていて、あたしは稲荷火を抱き抱えて守ろうとするくらいしかできなくて。
『ナポレオン!』
 死んだと思ったのに、痛みも何もなくて、目を開けたら、影の手でダルクがブレスを防いでいた。
 ダルクがそのままそばにいるナポレオンに魔力を注いで、ナポレオンの目から打ち出された黒い光線が燃え上がっているドラゴンゾンビを貫いて、ようやく炭になっていって。
『ヒータ! 大丈夫だった!?』
 ダルクはあんなに強い術を連続で使って、魔力切れで辛いはずなのに、そんな様子、全く見せないで、あたしに手を伸ばしてくれて。
 その姿が凄く、カッコいいと思ったんだ。


 その時のダルクが頭の中に浮かんで、なんでか凄く恥ずかしくなって、ライナへの言葉は尻すぼみになってしまった。
 ライナは何故か両手を挙げて、目を閉じて感慨深そうな顔をしてる。
 あたしの中のライナが今日だけでめちゃくちゃになったけどもう考えない事にする。
 突然、ライナが手を振り下ろしてテーブルを叩いた。バンっという音がして注目が集まる。
「ラ、ライナ?」
「ヒータちゃん、告白、しよう!」
「へ、は、こく、はく!?」
 またとんでもない方向にぶっ飛んできたライナの発現にもう思考が追いつけなくなる。
 というか周りの人が見てる中でそんな宣言しないでほしい!
「そう、告白! すぐに!」
「い、いや何で今すぐ!? ダルク今こいび、好き同士の人居ないんだろ!? だったらすぐにじゃなくても」
 何とかライナが宣言した事態から逃げ出したくて、回らない頭でも思いついた言葉を放つ。
 それを聞いたライナは大きなため息をついて首を横に振った。
「いーい? ダルくんはなんだかんだ言ってかなりモテます。何せヒータちゃんへの気づかいのムーブを老若男女問わずやるからです。さらに闇霊術っていう珍しい術を使えます。これは一般の人にはちょっとマイナス気味かもだけど魔法使いにとっては大体プラスです。で、闇霊術に関連して、闇霊術使いの仕事は結構色々あるので収入も安泰です。そんな優良物件放置されるはずもありません。何? ヒータちゃんは横からかっさらわれて、負け犬になって泣き寝入りしたいの?」
「いや、負け犬って……」
 ライナの剣幕に圧倒されて、言葉が詰まる。
 でも……。
「……でも、ダルクだって、こんな可愛くない女、好きじゃないだろうし……」
 周りからずっと男の子みたいだと言われて、時折交流のあった同年代の男の子にもからかわれた。
 からかった相手はボコボコにしてきたけど、言ってしまえば、あたしはガサツで、おしゃれにも興味もない、可愛げなんて何もない女なんだ。
 ダルクだってそんな女と付き合うのは嫌に決まってる。
 ライナから、盛大なため息が聞こえてきた。
「良い? 聞いてください」
「え、何を……?」
「いいから黙って聞いて」
「はい」
 立ち上がったライナにまた肩を掴まれて、言われるがままに黙り込む。
「ヒータちゃんは可愛いです」
「はい? えっ、なに」
「おとなしく聞きなさい。ヒータちゃんはすごく可愛い女の子です。可愛げのないとか言った奴はただの見る目がないアホです。OK?」
「お、OK」
 あまりの勢いにただ頷く。
「私はヒータちゃんのことが大好きです。霊使いのみんなそうです。ダルくんも含めてです。そして私はヒータちゃんが失恋して泣くところを見たくないです。というわけで、ヒータちゃんは自信を持ってください。ヒータちゃんさえ一歩踏み出せばヒータちゃんの恋は上手くいきます。私が絶対って保証します」
 一息で言い終えたライナは流石に息を切らしていた。けれど、すぐにニッコリと笑う。
「だから、大丈夫」
 そう、ライナに力強く言われると、本当に上手くいくような気がしてしまう。
 でも、そんなすぐには、自分を変えられないくて、「でも」って口に出てしまう。
 ライナの何かが切れる音がした。
「で・も・じゃ・なーい!!」
「ひいっ」
 初めてこんなに情けない声が出た。
 そんなあたしを無視してライナがハッピー・ラヴァーを呼び寄せて、何か伝えると空に放った。
「今、ダルくんにヒータちゃんが話があるので、夜にヒータちゃんの部屋に行ってあげてと伝言しました」
「えっ、はっ、ちょ!?」
 打って変わって静かな声があたしに宣告する。
「ヒータちゃん頑張ってね。逃げたらもう私から伝えるから」
 ニコニコとした笑みを浮かべるライナ。
 いつもの表情のはずなのに、あたしはただただ恐ろしかった。
 そして今日から、あたしの中の恐怖ランキングは恋愛関係のライナが一番上になった。

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