永遠の夢を見せてくれ
最終更新：ID:d2nh3AVkag 2020年07月07日(火) 01:34:35履歴
「お前は“魔王”だ」
剣を交えながら、二人のロッシュは退くことを否定し、剣を握る事を選んだ。
互いの存在を懸け、刃と生命を削り合う。
一合、二合。数度の交錯を経て、“絶望”はいきなり言葉をぶつけてきた。
視線はロッシュに強く向けられ、どこか切羽詰まった緊迫感が表情に浮かんでいる。
「“天空の勇者”なんて称号はお前に似合わない。その称号は生贄に贈られる呪いのようなものだからね」
まさか“絶望”の化身である彼から言われるとは思っていなかったのか。
がしがしと頭を掻きながら、ロッシュは苦笑しつつ、言葉を返す。
「お前は生贄じゃないよ。世界を救う高潔さもないし」
「散々に言ってくれるね。他ならぬ自分自身から罵倒されるなんてありえないんだけど」
最初の交わし合いは張り詰めた空気とは裏腹に穏やかなものだった。
だが、お互いの顔に貼り付けられた形は百八十度違っている。
無表情の鉄仮面と薄く浮かべた笑み。そこに、親愛はない。
「自分のエゴを叶える過程で世界を救っただけなのに、お前は英雄扱いだ」
「今更の話だね。救われる側なんてそんな理屈、どうだっていいって思ってるよ」
数秒間、沈黙が続く。鉄面皮な顔の彼が放った言葉には情感がこもっていたけれど、薄笑顔の彼の言葉には何も込められていない。
何かに急かされているかのように――“絶望”は前を向く。
同じ存在であるというのに。ロッシュの中に渦巻いている想いは底知れぬ怪異を想起させる。
その有り様は奇怪で、恐ろしい。
「救われればそれでいい。僕の内面がどうであろうとも、結果が自分達の利に繋がるなら何も言わないだろう？」
そう言って、にこやかな笑みを浮かべるロッシュを、“絶望”は訝しみながらも頷くしかなかった。
ここで無理矢理に否定することは出来る。だが、そんな後先のない行いをする程、馬鹿ではない。
加えて、彼の言うことは利にはかなっている。
“絶望”の勝利条件はロッシュを完膚なきまでに叩き折ることだ。
今はまだ、雌伏の時。
「頑張って頑張って君達のことを本当に想っています！ けれど、魔王は倒せず世界は救えませんでした〜。
それで、人々は満足すると思うかい？ 僕達の世界がそんな優しさで詰まっているとでも？」
一瞬のすれ違いに交わした言葉は甘く揺らめいたものではなかった。
数度の死闘を繰り広げた剣筋は、言葉の一つや二つで埋められないし、譲らない。
“魔王”と“絶望”。同じ立ち位置にいるはずの彼らが顔を向き合うには余りにも血を流し過ぎた。
故に、今はまだ交差するだけ。
「あははっ、世界は確かに優しい想いも孕んでいるけどさぁ、同時にとっても残酷なものも含んでいるんだ。
表裏一体だよ、“僕”」
この反応も“絶望”からしたら予測していたものだった。
もう一人の自分がやってきたことも、悔恨と不屈の二つが今の彼を動かしていることも。
何かの拍子でタガか外れたら、自分は為す術もなく倒される。
「そういえば、君はさっき言ったね。奪えるものなら奪ってみろ。傷つけられるなら傷つけてみろ」
凪いだ剣筋は銀光を煌めかせ、“絶望”へと肉薄する。
大丈夫、彼は自分を傷つけることはしないはずだ。
大切な妹の夢を内包していると言ったのだ。彼はどうあってでも攻撃はできない。
「そこまで言うならさぁ。遠慮無く、全てを奪わせてもらうよ」
瞬間、強烈な蹴撃が腹部に突き刺さり“絶望”は血反吐を吐きながら吹き飛んだ。
何故、と。顔にありったけの疑問を貼り付け、地面を転がっていく。
「その代わり、僕の感情のうねりも奪っていいよ？ 美味しいんじゃないかな、たっぷり熟成の食べごろさ。
どうしたんだい、早く受け取りなよ。人の夢を糧にする“絶望”様なんだからさ、思いのままに歪めてみなよ」
「お前、どうして……！ 私はお前の大切な妹の願いを……！」
狼狽する“絶望”に対して、ロッシュは表情を変えずに言葉を紡ぐ。
「だーかーらーさー、最初から僕は言ってるじゃないか」
何てことない、気軽に挨拶をするかのように。
「壊れた願いは、全部元通りにしてやり直すって」
ロッシュはどこまでも真っ直ぐで、揺らがない。
その双眸に込められたのは漆黒。
願いに殉じる覚悟など、とうにできている。
「あるがままに、やりたいように。僕はそうして生きてきた。今までも、そしてこれからも」
故に、“絶望”はしていない。
諦めなければ夢は叶うと信じているが為に。
「……はっ、ははっ！ 冗談じゃない、このままやられてたまるか！」
化け物だ。濁りもない真っ直ぐな想いは狂気そのものだ。
当然、このまま放置していては自分など容易く飲み込まれてしまうだろう。
痛みが残る身体を無理矢理に動かし、立ち上がる。
喚き散らしながらも“絶望”の動きには澱みがなかった。
蹴撃のダメージなんてないかのように再び接近。
銀光が交差し、甲高い金属音が連続してかき鳴らされる。
上下左右に剣が振り切り、ぶつかり、鍔迫り合う。
「だから、言っただろう？ 君では僕に勝てない。君は余計なものを抱え込み過ぎている」
「黙れ、黙れっ！」
「そして、停滞している。現状に満足し、揺蕩った君じゃあ勝てない」
「だま、れ――――！」
彼と“絶望”には致命的なズレがある。
元は同じ存在だったのに、分離してからは別人に変わってしまった。
一つのひだまりにいた彼らには、埋まられない溝があった。
辿った道は途中までは一緒だった。けれど、結末は違っていた。
「結局さ。妥協しているんだよ、君は。世界を覆うならしたらいい。欲望のままに歪めてしまえばいい。
そう言っておきながら、君は体裁を保っている。調和を求めているんだ」
貪欲に、諦めずに。終わってなお、それでもその終わりを認めない。
ロッシュの根源ともいえる風穴は喪ったものを取り戻さなければ永遠に開いたままだ。
その穴を放置したまま生きていける程、現実的な考え方をロッシュは出来なかった。
「詰め込めるだけ詰め込んで消化して、全てをこの掌に収めて更なる渇望を〜ぐらい、言えないの？」
だから、その穴を埋めにいく。
その為に今まで戦ってきたし、生きてきた。
誰に何を言われようが曲がらない。
どんな汚い手を使おうとも、蔑まれようとも、ロッシュはもう一度取り戻す。
この世界で消えていったバーバラ、夢の泡沫に沈んでいったターニア。
彼女達を仕方がないと諦めるのは――絶対に許さないし認めない。
「君が描いた絶望は確かにすごいよ。こんな大規模に幾つもの世界をごちゃ混ぜにするだけはある」
思えば、長い道のりだった。
捨てきれない残滓がロッシュの頭にこびりつき、足を引き止める。
この戦いに巻き込まれなければ、茫洋と日々を過ごしていただろう。
偽りの笑顔、妥協した結末、彼女達のいない日常を最良と捉えていたかもしれない。
「けれど、けれど。君の器如きで、僕を収めきれると思うな」
きっと、それは優しい終わり方ではあったが、ロッシュが望む最良の終わり方ではない。
彼女達を諦めて生きていくなど、今となっては到底納得出来ない。
だから、ロッシュはもう迷わないし違えない。
この先は一本道だ、彼女達を救う唯一人の人間で在り続ける為に。
「もう、終わらせよう。君の“絶望”は、僕が奪うよ」
叫び声を上げながら迫る“絶望”の剣は酷く散漫で、遅かった。
まるで、時間が止まっているかのようだ。
ゆっくりと、しかし確実に。
ロッシュの腹部へと一直線に吸い込まれようとしている。
――この身は誰かを救えぬ手なれど。
煌めく剣閃が、眩しい。
しかし、こんなにも輝けるのに、自分には届かない。
煌めきには更なる煌めきで。
たった一つのエゴは世界を凌駕する。
「全てを、取り戻す」
嗚呼、それはなんて浅ましい願い事だろう。
穿たれた剣閃を薙ぎ払い、ロッシュの想いが蓄えられた剣は“絶望”へと突き刺さる。
崩壊していく“絶望”の頭を掴み、無理矢理に自分へと収めていく。
最後の言葉を言う暇もなく、光の泡となって吸い込まれていくのを見て、ロッシュはただ――哀れだと感じた。
末期に何を想ったのか。自分本位であるロッシュには預かり知れぬことだ、その有り様は一様に蔑まれるものではないはずだ。
だからといって、情けをかけるつもりはないけれど。
「赦しは乞わないよ。僕は諦めない、それだけなんだ」
“魔王”は“絶望”を飲み込み、一歩を踏み出した。
光も闇も内包し途方も無い夢がある。
培った絆、生まれた心、果てのない怒り、今も燻っている嘆き、死んでなお残る憎悪。
それらを総じて一括りに、ロッシュは押し込めた。
大事なモノだとか喪ってはならない美徳だとか曖昧にしてはならない現実だとか、全部の理屈が下らない。
そんな客観的な観点はロッシュの願いの過程では邪魔でしかない。
「ここから先は、僕だけの道だ。君の出番はもう終わったんだよ」
掌に押し込めた“不要物”を含んだ手を天高く伸ばす。
それは“彼ら” との決別の印。
もう振り向かないと誓う始まりの合図。
染み込んだ夢はやがて、ロッシュの想いに蝕まれ消えていく。
残るのは大まかな力のみ。
彼が望む夢の再構築を成す階段になるだけだ。
「さぁ、行こうか」
喪ったモノを嘘にする。
嘘を重ねて、何重にも貼り付けて、喪失を塗り替えてしまおう。
そして、夢の最果てを掴みに行く。
絆も、夢も、全てを抱えた上で――ロッシュは諦めない。
だから、聞き届けてほしい。
もう一度。再誕の時よ、此処に在れ。
【"ロッシュ"であり、"ターニア"＠DQBR2nd 掌握】
【"夢"】
【ロッシュ＠DQ6】
[状態]：健康、“絶望”を掌握
[装備]：銀河の剣＠DQ9、トルナードの盾@DQ7、星降る腕輪@DQ3
[道具]：支給品一式
[思考]：諦めない。夢を、かなえるために。
――――――――やぁ、最初に立ち塞がるのはやっぱり、君なんだね……“カイン”。
剣を交えながら、二人のロッシュは退くことを否定し、剣を握る事を選んだ。
互いの存在を懸け、刃と生命を削り合う。
一合、二合。数度の交錯を経て、“絶望”はいきなり言葉をぶつけてきた。
視線はロッシュに強く向けられ、どこか切羽詰まった緊迫感が表情に浮かんでいる。
「“天空の勇者”なんて称号はお前に似合わない。その称号は生贄に贈られる呪いのようなものだからね」
まさか“絶望”の化身である彼から言われるとは思っていなかったのか。
がしがしと頭を掻きながら、ロッシュは苦笑しつつ、言葉を返す。
「お前は生贄じゃないよ。世界を救う高潔さもないし」
「散々に言ってくれるね。他ならぬ自分自身から罵倒されるなんてありえないんだけど」
最初の交わし合いは張り詰めた空気とは裏腹に穏やかなものだった。
だが、お互いの顔に貼り付けられた形は百八十度違っている。
無表情の鉄仮面と薄く浮かべた笑み。そこに、親愛はない。
「自分のエゴを叶える過程で世界を救っただけなのに、お前は英雄扱いだ」
「今更の話だね。救われる側なんてそんな理屈、どうだっていいって思ってるよ」
数秒間、沈黙が続く。鉄面皮な顔の彼が放った言葉には情感がこもっていたけれど、薄笑顔の彼の言葉には何も込められていない。
何かに急かされているかのように――“絶望”は前を向く。
同じ存在であるというのに。ロッシュの中に渦巻いている想いは底知れぬ怪異を想起させる。
その有り様は奇怪で、恐ろしい。
「救われればそれでいい。僕の内面がどうであろうとも、結果が自分達の利に繋がるなら何も言わないだろう？」
そう言って、にこやかな笑みを浮かべるロッシュを、“絶望”は訝しみながらも頷くしかなかった。
ここで無理矢理に否定することは出来る。だが、そんな後先のない行いをする程、馬鹿ではない。
加えて、彼の言うことは利にはかなっている。
“絶望”の勝利条件はロッシュを完膚なきまでに叩き折ることだ。
今はまだ、雌伏の時。
「頑張って頑張って君達のことを本当に想っています！ けれど、魔王は倒せず世界は救えませんでした〜。
それで、人々は満足すると思うかい？ 僕達の世界がそんな優しさで詰まっているとでも？」
一瞬のすれ違いに交わした言葉は甘く揺らめいたものではなかった。
数度の死闘を繰り広げた剣筋は、言葉の一つや二つで埋められないし、譲らない。
“魔王”と“絶望”。同じ立ち位置にいるはずの彼らが顔を向き合うには余りにも血を流し過ぎた。
故に、今はまだ交差するだけ。
「あははっ、世界は確かに優しい想いも孕んでいるけどさぁ、同時にとっても残酷なものも含んでいるんだ。
表裏一体だよ、“僕”」
この反応も“絶望”からしたら予測していたものだった。
もう一人の自分がやってきたことも、悔恨と不屈の二つが今の彼を動かしていることも。
何かの拍子でタガか外れたら、自分は為す術もなく倒される。
「そういえば、君はさっき言ったね。奪えるものなら奪ってみろ。傷つけられるなら傷つけてみろ」
凪いだ剣筋は銀光を煌めかせ、“絶望”へと肉薄する。
大丈夫、彼は自分を傷つけることはしないはずだ。
大切な妹の夢を内包していると言ったのだ。彼はどうあってでも攻撃はできない。
「そこまで言うならさぁ。遠慮無く、全てを奪わせてもらうよ」
瞬間、強烈な蹴撃が腹部に突き刺さり“絶望”は血反吐を吐きながら吹き飛んだ。
何故、と。顔にありったけの疑問を貼り付け、地面を転がっていく。
「その代わり、僕の感情のうねりも奪っていいよ？ 美味しいんじゃないかな、たっぷり熟成の食べごろさ。
どうしたんだい、早く受け取りなよ。人の夢を糧にする“絶望”様なんだからさ、思いのままに歪めてみなよ」
「お前、どうして……！ 私はお前の大切な妹の願いを……！」
狼狽する“絶望”に対して、ロッシュは表情を変えずに言葉を紡ぐ。
「だーかーらーさー、最初から僕は言ってるじゃないか」
何てことない、気軽に挨拶をするかのように。
「壊れた願いは、全部元通りにしてやり直すって」
ロッシュはどこまでも真っ直ぐで、揺らがない。
その双眸に込められたのは漆黒。
願いに殉じる覚悟など、とうにできている。
「あるがままに、やりたいように。僕はそうして生きてきた。今までも、そしてこれからも」
故に、“絶望”はしていない。
諦めなければ夢は叶うと信じているが為に。
「……はっ、ははっ！ 冗談じゃない、このままやられてたまるか！」
化け物だ。濁りもない真っ直ぐな想いは狂気そのものだ。
当然、このまま放置していては自分など容易く飲み込まれてしまうだろう。
痛みが残る身体を無理矢理に動かし、立ち上がる。
喚き散らしながらも“絶望”の動きには澱みがなかった。
蹴撃のダメージなんてないかのように再び接近。
銀光が交差し、甲高い金属音が連続してかき鳴らされる。
上下左右に剣が振り切り、ぶつかり、鍔迫り合う。
「だから、言っただろう？ 君では僕に勝てない。君は余計なものを抱え込み過ぎている」
「黙れ、黙れっ！」
「そして、停滞している。現状に満足し、揺蕩った君じゃあ勝てない」
「だま、れ――――！」
彼と“絶望”には致命的なズレがある。
元は同じ存在だったのに、分離してからは別人に変わってしまった。
一つのひだまりにいた彼らには、埋まられない溝があった。
辿った道は途中までは一緒だった。けれど、結末は違っていた。
「結局さ。妥協しているんだよ、君は。世界を覆うならしたらいい。欲望のままに歪めてしまえばいい。
そう言っておきながら、君は体裁を保っている。調和を求めているんだ」
貪欲に、諦めずに。終わってなお、それでもその終わりを認めない。
ロッシュの根源ともいえる風穴は喪ったものを取り戻さなければ永遠に開いたままだ。
その穴を放置したまま生きていける程、現実的な考え方をロッシュは出来なかった。
「詰め込めるだけ詰め込んで消化して、全てをこの掌に収めて更なる渇望を〜ぐらい、言えないの？」
だから、その穴を埋めにいく。
その為に今まで戦ってきたし、生きてきた。
誰に何を言われようが曲がらない。
どんな汚い手を使おうとも、蔑まれようとも、ロッシュはもう一度取り戻す。
この世界で消えていったバーバラ、夢の泡沫に沈んでいったターニア。
彼女達を仕方がないと諦めるのは――絶対に許さないし認めない。
「君が描いた絶望は確かにすごいよ。こんな大規模に幾つもの世界をごちゃ混ぜにするだけはある」
思えば、長い道のりだった。
捨てきれない残滓がロッシュの頭にこびりつき、足を引き止める。
この戦いに巻き込まれなければ、茫洋と日々を過ごしていただろう。
偽りの笑顔、妥協した結末、彼女達のいない日常を最良と捉えていたかもしれない。
「けれど、けれど。君の器如きで、僕を収めきれると思うな」
きっと、それは優しい終わり方ではあったが、ロッシュが望む最良の終わり方ではない。
彼女達を諦めて生きていくなど、今となっては到底納得出来ない。
だから、ロッシュはもう迷わないし違えない。
この先は一本道だ、彼女達を救う唯一人の人間で在り続ける為に。
「もう、終わらせよう。君の“絶望”は、僕が奪うよ」
叫び声を上げながら迫る“絶望”の剣は酷く散漫で、遅かった。
まるで、時間が止まっているかのようだ。
ゆっくりと、しかし確実に。
ロッシュの腹部へと一直線に吸い込まれようとしている。
――この身は誰かを救えぬ手なれど。
煌めく剣閃が、眩しい。
しかし、こんなにも輝けるのに、自分には届かない。
煌めきには更なる煌めきで。
たった一つのエゴは世界を凌駕する。
「全てを、取り戻す」
嗚呼、それはなんて浅ましい願い事だろう。
穿たれた剣閃を薙ぎ払い、ロッシュの想いが蓄えられた剣は“絶望”へと突き刺さる。
崩壊していく“絶望”の頭を掴み、無理矢理に自分へと収めていく。
最後の言葉を言う暇もなく、光の泡となって吸い込まれていくのを見て、ロッシュはただ――哀れだと感じた。
末期に何を想ったのか。自分本位であるロッシュには預かり知れぬことだ、その有り様は一様に蔑まれるものではないはずだ。
だからといって、情けをかけるつもりはないけれど。
「赦しは乞わないよ。僕は諦めない、それだけなんだ」
“魔王”は“絶望”を飲み込み、一歩を踏み出した。
光も闇も内包し途方も無い夢がある。
培った絆、生まれた心、果てのない怒り、今も燻っている嘆き、死んでなお残る憎悪。
それらを総じて一括りに、ロッシュは押し込めた。
大事なモノだとか喪ってはならない美徳だとか曖昧にしてはならない現実だとか、全部の理屈が下らない。
そんな客観的な観点はロッシュの願いの過程では邪魔でしかない。
「ここから先は、僕だけの道だ。君の出番はもう終わったんだよ」
掌に押し込めた“不要物”を含んだ手を天高く伸ばす。
それは“彼ら” との決別の印。
もう振り向かないと誓う始まりの合図。
染み込んだ夢はやがて、ロッシュの想いに蝕まれ消えていく。
残るのは大まかな力のみ。
彼が望む夢の再構築を成す階段になるだけだ。
「さぁ、行こうか」
喪ったモノを嘘にする。
嘘を重ねて、何重にも貼り付けて、喪失を塗り替えてしまおう。
そして、夢の最果てを掴みに行く。
絆も、夢も、全てを抱えた上で――ロッシュは諦めない。
だから、聞き届けてほしい。
もう一度。再誕の時よ、此処に在れ。
【"ロッシュ"であり、"ターニア"＠DQBR2nd 掌握】
【"夢"】
【ロッシュ＠DQ6】
[状態]：健康、“絶望”を掌握
[装備]：銀河の剣＠DQ9、トルナードの盾@DQ7、星降る腕輪@DQ3
[道具]：支給品一式
[思考]：諦めない。夢を、かなえるために。
――――――――やぁ、最初に立ち塞がるのはやっぱり、君なんだね……“カイン”。
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