俺ロワ・トキワ荘で行われているリレー小説「孤島の実験記録」のまとめWikiです。

顔を上げる、太陽が輝いている。
直視すればまぶしいから、手で隠す。
光を感じ、光を隠す。

二度と出来ないと思っていたはずのことを、何度も確かめるように繰り返す。

差し込んでくる日の光は、間違いなく太陽から降り注いでいる。
そして、その光を自分の両目で認識することも出来ている。
伸ばす手の感覚も、折り畳む拳の感覚も、自分のモノ。

「どういうこと、なのかしら」

さも意味ありげに、彼女は呟く。
まるで今生きているのが"おかしい"と言うように。
人々が何気なく過ごしている"当たり前"に、感動している。

二上門地下、そこに巣くう悪魔の退治。
大したことなんて無いはずの仕事だった。
いつも通りの武器と力、向かう悪魔を屠りながら進む。

予想通り、仕事は大したことは無かった。
最下層と思わしき場所に巣くっていた悪魔も大したことはなく、特に苦労はしなかった。
つまらない仕事、と思いながらも帰ろうとしたときだった。

気づいた。
全てが遅すぎたことに。
今、自分が何をしてしまったかということに。

だが、その時には既に遅く。
無くなっていく空気にもがくことしか出来ず。
とてもあっけなく、死んでしまった。

そう、死んだはずなのに。

どうして、自分は再び日光を浴びることが出来ているのだろうか。

「死後の世界、って訳でも無さそうね」

人は、迎えるべき死の後、三途の川を渡り次なる命へと転生すると聞く。
黄金の川を渡った覚えもないし、ここがそうだというのならあまりにも殺風景すぎる。
第一、"毒を盛る"なんて七面倒なこともしなくて良いはずだ。

理屈はともかく、自分は何らかの手段によって再び蘇らされた。
時限爆弾の代わりのように、"毒"を盛られて。
目的など、当然読むことは出来ない。

ふぅ、と溜息を一つこぼし、両手を構える。
胸の前で交差させた後、目を閉じたまますぅっと息を吸い込む。
それと同時に、体全体が、奥底から澄み渡っていくような感覚が広がる。

自身が得意としていた術式、ソーマ神権現。
神樹ソーマをその身に宿すことで、自分の傷を癒していく。
この術式も、滞りなく使うことが出来た。

「……これでどうにかなるとは、思っていないけれど」

そう呟いて、再び手を伸ばす。
疑り深いわけではないが、事態が飲み込めない今は全てを疑っていくべきだ。
空に登る太陽も、作り物かもしれないのだから。

だが、そんなことはなく。
自分の体の感覚も、嘘でも何でもない本当のコト。
記憶も、体も、あの時のまま。

わからない、わからないまま時が過ぎる。

「そうね……精々、楽しもうかしら」

考えても仕方がないので、手を軽く叩き彼女は歩き出す。
思わぬ形で手にした第二の人生なのだ。
死が約束されているとしても、その時までは全力で楽しむのが一番だろう。

やりたいことをする、そのために歩き出す。
そういえば、自分のやりたいコトってなんだったっけ?
ふと浮かんだ疑問への答えは、当分出そうにはない。

【E-10/1日目-朝】

【ナオミ@デビルサマナー ソウルハッカーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考-状況]
基本:何しようかな
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005:View & Me
時系列順
007:死せる"餓狼"の自由を
投下順
はじまり
ナオミ
031:ばいばい

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