俺ロワ・トキワ荘で行われているリレー小説「孤島の実験記録」のまとめWikiです。


それを初めて理解したのは、もう何十年も前になる。
いくら呼んでも、いくら揺すっても、一人の男は答えてもくれないし、目も開けてくれない。
雨の中でずぶ濡れになりながら、自分は隣にいた義弟と名前を呼び続けた。
けれども、とうとう返事が返ってくることは無かった。
次第に冷たくなっていく人間の体に初めて触れた、あの雨の日に理解したのかもしれない。

次に理解したのは、十年ほど前か。
そう、初めて自分にそれ突きつけた、忌々しき存在。
訪れた復讐の時、怒り狂いながらも冷静にそれと戦っていた。
熾烈な攻めと堅牢な守り、ぶつかる拳と拳が拮抗する。
永遠とも思えるほど長く続いたそれの果て、男二人はにらみ合う。
もう、互いに守る力も残っていない。
ならば、全力で攻めをぶつけるだけ。
自分のはなった力と、男が放った力がぶつかり合う。
気と気、弾けあうそれらが生み出すエネルギー。
それに耐えきれなかったのは、男の方だった。
柵を突き破り、大きく吹き飛んでいく。
遙か上空、落ちればひとたまりもない高さから。
今にも落ちていってしまいそうな男の手を、掴んだ。
そんな体力がどこに残っていたのかと、今でも不思議に思う。
ましてや、自分が殺してやりたいと思っていた復讐すべき相手の命を救うために、手を差し出したなどと。
本当に、何を考えていたのだろうか。
自分も、その手を払って落ちていった男も。



「……死ぬ、っていうのは」

この世で最も恐ろしいことを、ゆっくりと語る。
それが真実だとは、思っていないが。
少なくとも、答えの一つではある。

「この世に、満足することさ」

ぽかん、とした顔のまま、少女は動かない。
まあ、当然のリアクションかもしれない。
正直自分でも、まだ納得できていないところはある。
けれども、投げかけられた問いに今の自分が出せる精一杯は、その答えだけだった。

「メアリは、どうだい」

テリーもまた、問いかけていく。
目の前の少女が、今に満足しているかどうか。
"死ぬ"のが怖いかどうかは、それで決まると思っているから。

「私、は」

目を伏せ、言葉を切る。
焦点の合わない両目は空を見つめ、半開きの口からは、魂がこぼれているようで。
作られた、という俄には信じ難いことを理解させるのに十分な要素となっている。

「すみません、わかりません」

長い硬直から放たれたのは、当然の答えだった。
むしろ、そう返ってこなければどうしようかと思っていたくらいで。
心の中でひっそりと安堵した後、テリーは少女に手をさしのべる。

「なら、やりたいことを探しに行こうぜ」

さしのべられた手を取り、少女はゆっくりと立ち上がる。
呆けた顔のまま、抗う事もなく。

「誰かに押しつけられた運命を、はね飛ばせるくらい。
 どこまでも行っても満足できない、大きなものを、さ」

手を差し伸べてきた男に、引かれるように。
その足を進め、動かしていく。

向かう先は、死。
そしてその先にある、生へ。
一歩ずつ、一歩ずつ、ゆっくりと進んでいく。

【G-10/1日目-午前】
【メアリ@ソウルハッカーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(未確認)
[思考-状況]
基本:やりたいことを探す

【テリー・ボガード@餓狼 MARK OF THE WOLVES】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(未確認)
[思考-状況]
基本:運命を跳ね飛ばす
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036
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035:さばき
時系列順
028:とりひき
投下順
037:[[]]
021:しらない
テリー・ボガード
000:[[]]
メアリ
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  ィ<´ {ゝ-(__,ハヘ
    \ゝ _にノ ノノ
      ` ーヘ´`′

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