俺ロワ・トキワ荘で行われているリレー小説「孤島の実験記録」のまとめWikiです。

「ただ一つの解毒剤、か」
流れるような金の長髪、ピシッと決まった白のスーツ。
手からは蒼い炎を操る男の正体は、かのサウスタウンを牛耳る男、カイン・R・ハインライン。
一通りの情報を手にした上で、彼は。
「フッ、何も問題はない」
笑った。
その椅子がたった一つしかないのならば、奪い取ればいい。
かつての自身が、今の地位に上り詰めたときのように。
手にした力と、使える全てを使って、上り詰めれば良い。
そう、たった一人を除き、ここにいる人間は支配されるのだ。
"死"にゆく、"恐怖"に。
かつ、かつ、と歩みを進めていく。
自分が何をすべきかは決まったのだから、あとはそれを為すだけ。
深く、考え込む必要など無いのだ。

「……おや?」
そう意を決して歩き始めたとき。
少し年下の女が、一心不乱にペンを走らせていた。
その姿は、この上無く無防備に見える。
自分が今ここで不意打ちでも仕掛ければ、簡単に命が刈り取れてしまうくらい。
近づいても近づいても手を止める気配のない女に、カインは思わず声をかけてしまう。
「何をしてる」
「レポート」
「何?」
淡々とした回答に、カインは思わず面食らってしまう。
見たところ、力も何もないただの女のように見えるのに、何故そこまで落ち着いていられるのか?
得も言われぬ感覚を覚えながらも、会話を続ける。
「こんな状況、滅多にないから。ちゃんとまとめて提出しようと思って」
「死が迫っているというのに?」
「だからこそ、だよ」
自分が死ぬ、とわかっているからこそ、記録を認めなければいけないと言う。
生き残るよりも、優先されること。
彼女を突き動かす、何かが、そうさせているのだろう。
「……生きなければ、その記録も残らないだろう」
「それは大丈夫、生き残る人にお願いするから」
そう、既に彼女は自分の命を捨て去っているのだ。
自分は、死人同然だと、自分自身で認識しているのだ。
ならば、そんな死人につきあっている時間はない。
限られた時間を無駄にしないよう、その場から立ち去ろうとしたとき、背後から声をかけられる。
「ついていっていい?」
「……私にか?」
「うん、レポート、充実させたいから。
 大丈夫、私は見てるだけ。貴方に干渉するつもりはないよ」
そう言いながら、彼女はペンを走らせる。
"死"を突きつけられた人間たちの、末路と、その行動の全て。
確かに、興味深いレポートかもしれない。
「好きにしたまえ」
同行を快く許可し、彼女を自分の後ろについて行かせることにした。
特に荷物になるわけでもない、そこまでの覚悟があるのだから、きっと自衛の手段くらいはあるのだろう。
居るのも、居ないのも同じ、そう、彼女は死人だから。
「君、名前は」
そんな死人に、名前を問う。
不思議な感覚だが、これもまた面白い。
「蒔子」
「カインだ、よろしく頼むよ」
「うん」
そんな短いやりとりの後、スーツを翻して先へ進みだした。
生き残るのは決まっている、この自分だ。
その暁には――――彼女のレポートを受け取り、世間に公表しても良いだろう。
そんなことを、考えていた。

【F-6/道/1日目-朝】
【カイン・R・ハインライン@餓狼 MARK OF THE WOLVES】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考-状況]
基本:どんな手を使っても生き残る

【蒔子=グレゴリー@変ゼミ】
[状態]:健康
[装備]:レポート用紙@現実
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜1)
[思考-状況]
基本:まとめる
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001:うわさのあのこ
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003:やせがまん
投下順
はじまり
カイン・R・ハインライン
034:わがまま
蒔子=グレゴリー

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