最終更新:ID:n4q5Iu8Qcg 2013年10月28日(月) 00:18:17履歴
「ただ一つの解毒剤、か」
流れるような金の長髪、ピシッと決まった白のスーツ。
手からは蒼い炎を操る男の正体は、かのサウスタウンを牛耳る男、カイン・R・ハインライン。
一通りの情報を手にした上で、彼は。
「フッ、何も問題はない」
笑った。
その椅子がたった一つしかないのならば、奪い取ればいい。
かつての自身が、今の地位に上り詰めたときのように。
手にした力と、使える全てを使って、上り詰めれば良い。
そう、たった一人を除き、ここにいる人間は支配されるのだ。
"死"にゆく、"恐怖"に。
かつ、かつ、と歩みを進めていく。
自分が何をすべきかは決まったのだから、あとはそれを為すだけ。
深く、考え込む必要など無いのだ。
「……おや?」
そう意を決して歩き始めたとき。
少し年下の女が、一心不乱にペンを走らせていた。
その姿は、この上無く無防備に見える。
自分が今ここで不意打ちでも仕掛ければ、簡単に命が刈り取れてしまうくらい。
近づいても近づいても手を止める気配のない女に、カインは思わず声をかけてしまう。
「何をしてる」
「レポート」
「何?」
淡々とした回答に、カインは思わず面食らってしまう。
見たところ、力も何もないただの女のように見えるのに、何故そこまで落ち着いていられるのか?
得も言われぬ感覚を覚えながらも、会話を続ける。
「こんな状況、滅多にないから。ちゃんとまとめて提出しようと思って」
「死が迫っているというのに?」
「だからこそ、だよ」
自分が死ぬ、とわかっているからこそ、記録を認めなければいけないと言う。
生き残るよりも、優先されること。
彼女を突き動かす、何かが、そうさせているのだろう。
「……生きなければ、その記録も残らないだろう」
「それは大丈夫、生き残る人にお願いするから」
そう、既に彼女は自分の命を捨て去っているのだ。
自分は、死人同然だと、自分自身で認識しているのだ。
ならば、そんな死人につきあっている時間はない。
限られた時間を無駄にしないよう、その場から立ち去ろうとしたとき、背後から声をかけられる。
「ついていっていい?」
「……私にか?」
「うん、レポート、充実させたいから。
大丈夫、私は見てるだけ。貴方に干渉するつもりはないよ」
そう言いながら、彼女はペンを走らせる。
"死"を突きつけられた人間たちの、末路と、その行動の全て。
確かに、興味深いレポートかもしれない。
「好きにしたまえ」
同行を快く許可し、彼女を自分の後ろについて行かせることにした。
特に荷物になるわけでもない、そこまでの覚悟があるのだから、きっと自衛の手段くらいはあるのだろう。
居るのも、居ないのも同じ、そう、彼女は死人だから。
「君、名前は」
そんな死人に、名前を問う。
不思議な感覚だが、これもまた面白い。
「蒔子」
「カインだ、よろしく頼むよ」
「うん」
そんな短いやりとりの後、スーツを翻して先へ進みだした。
生き残るのは決まっている、この自分だ。
その暁には――――彼女のレポートを受け取り、世間に公表しても良いだろう。
そんなことを、考えていた。
【F-6/道/1日目-朝】
【カイン・R・ハインライン@餓狼 MARK OF THE WOLVES】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考-状況]
基本:どんな手を使っても生き残る
【蒔子=グレゴリー@変ゼミ】
[状態]:健康
[装備]:レポート用紙@現実
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜1)
[思考-状況]
基本:まとめる
流れるような金の長髪、ピシッと決まった白のスーツ。
手からは蒼い炎を操る男の正体は、かのサウスタウンを牛耳る男、カイン・R・ハインライン。
一通りの情報を手にした上で、彼は。
「フッ、何も問題はない」
笑った。
その椅子がたった一つしかないのならば、奪い取ればいい。
かつての自身が、今の地位に上り詰めたときのように。
手にした力と、使える全てを使って、上り詰めれば良い。
そう、たった一人を除き、ここにいる人間は支配されるのだ。
"死"にゆく、"恐怖"に。
かつ、かつ、と歩みを進めていく。
自分が何をすべきかは決まったのだから、あとはそれを為すだけ。
深く、考え込む必要など無いのだ。
「……おや?」
そう意を決して歩き始めたとき。
少し年下の女が、一心不乱にペンを走らせていた。
その姿は、この上無く無防備に見える。
自分が今ここで不意打ちでも仕掛ければ、簡単に命が刈り取れてしまうくらい。
近づいても近づいても手を止める気配のない女に、カインは思わず声をかけてしまう。
「何をしてる」
「レポート」
「何?」
淡々とした回答に、カインは思わず面食らってしまう。
見たところ、力も何もないただの女のように見えるのに、何故そこまで落ち着いていられるのか?
得も言われぬ感覚を覚えながらも、会話を続ける。
「こんな状況、滅多にないから。ちゃんとまとめて提出しようと思って」
「死が迫っているというのに?」
「だからこそ、だよ」
自分が死ぬ、とわかっているからこそ、記録を認めなければいけないと言う。
生き残るよりも、優先されること。
彼女を突き動かす、何かが、そうさせているのだろう。
「……生きなければ、その記録も残らないだろう」
「それは大丈夫、生き残る人にお願いするから」
そう、既に彼女は自分の命を捨て去っているのだ。
自分は、死人同然だと、自分自身で認識しているのだ。
ならば、そんな死人につきあっている時間はない。
限られた時間を無駄にしないよう、その場から立ち去ろうとしたとき、背後から声をかけられる。
「ついていっていい?」
「……私にか?」
「うん、レポート、充実させたいから。
大丈夫、私は見てるだけ。貴方に干渉するつもりはないよ」
そう言いながら、彼女はペンを走らせる。
"死"を突きつけられた人間たちの、末路と、その行動の全て。
確かに、興味深いレポートかもしれない。
「好きにしたまえ」
同行を快く許可し、彼女を自分の後ろについて行かせることにした。
特に荷物になるわけでもない、そこまでの覚悟があるのだから、きっと自衛の手段くらいはあるのだろう。
居るのも、居ないのも同じ、そう、彼女は死人だから。
「君、名前は」
そんな死人に、名前を問う。
不思議な感覚だが、これもまた面白い。
「蒔子」
「カインだ、よろしく頼むよ」
「うん」
そんな短いやりとりの後、スーツを翻して先へ進みだした。
生き残るのは決まっている、この自分だ。
その暁には――――彼女のレポートを受け取り、世間に公表しても良いだろう。
そんなことを、考えていた。
【F-6/道/1日目-朝】
【カイン・R・ハインライン@餓狼 MARK OF THE WOLVES】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考-状況]
基本:どんな手を使っても生き残る
【蒔子=グレゴリー@変ゼミ】
[状態]:健康
[装備]:レポート用紙@現実
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜1)
[思考-状況]
基本:まとめる
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