最終更新: fferoparo1 2011年07月02日(土) 11:26:07履歴
サスーン城右の塔の最上階。
サラ姫の居室であるそこは、観光名所「おひめさまのベッド」で有名な部屋である。
広くも華美でもないが、実用的ではあるその内装は、部屋の主の人となりをよく表しているといえよう。
その部屋のテーブルに、二人の男女が向き合って座っていた。
一人は無論部屋の主であるサラ、もう一人は最近旅から戻った兵士、イングズだ。
「ねぇイングズ」
「何でしょうか、サラ姫」
「……私達何してるのかしら」
「チェスです」
ちなみにイングズの五勝十敗。時にはわざと負けるのも従者の嗜みだ。
「そうじゃなくて」
かぶりを振り、駒を置いて目の前の男を見つめる。
見つめ返す目は実直ではあるが、主に対するそれでしかない。
「イングズ」
「はい」
「私はあなたが好きよ」
「光栄です。私も貴女をお慕い申し上げております、姫」
「ありがとう」
ふぅ、と息を吐く。
こうして部屋に呼び出すのは今日が初めてというわけではない。むしろ毎日と言っていいぐらいだ。だというのに。
「……不健全だわ」
「いえ、チェスは古代から伝わる極めて健全な遊戯です、姫」
「思い合っている男女が二人きりで健全な遊びをしているのが不健全だと言ってるの!」
盤面を叩いて立ち上がり、王族らしからぬ軽やかな動きで指を突き付けた。
「……は、しかし姫」
「枯れているわけじゃないのよね。ちゃんと私の谷間をちらちら見てくれてるし」
「も、申し訳ございません!」
「いいのよ、見せてるんだから」
不機嫌そうに自分の大きく開いた胸元を見下ろす。
その豊かさと形に自信がある、というのもあるが、何より朴念仁な思い人への誘惑としての意味合いが大きい。
「なのにあなたときたら、下着姿で狸寝入りしている私にも布団をかけるぐらいしかしないんだから」
「わ、私は所詮一兵士でありますゆえ」
「ああもうっ」
はしたなく両腕を振り下ろし、頬を膨らませる。
「私はあなたに抱かれたいって言ってるの。あなたはそれに応えてくれるの? くれないの?」
「はっ……ご、ご命令とあらば」
「もう!」
サラは猛然と踵を返し、大きなベッドの上に腰を下ろす。
髪や肌を飾り付けるアクセサリーを外し、冷や汗を流すイングズを睨み付けた。
「そんなに命令が好きなら命令してあげる。
ここの上では『サスーン国のサラ姫』じゃなくて『サラ・アルテニー』って一人の生身の女として私を扱いなさい」
「し、しかし人が来ては……」
「今までも誰も来ないようにしてたの、気付かなかった? いつでも私は準備万端だったのよ」
ドレスを纏うのみの姿になり、白く長い脚を組んだ。
悪戯っぽく、小さく舌を出す。
「『はやくきて、じらさないで……』って言うのが礼儀だったかしら?」
イングズの喉がゴクリと鳴った。
軽装とはいえ無骨な鎧を傍らに置き、平服のみとなったイングズがサラのベッドに腰掛ける。
「……いかがいたしましょう」
「なに? 命令されないと愛情表現もできないの?」
「いえ、そうではなく……女性の身体をどう扱ったものかと」
「ああ、そういうこと」
立てた眉を下ろし、クスリと笑う。
世界を救いまでした英雄の一人が、女一人に狼狽え、緊張している。
「可愛い」
およそ兵士に対する形容としては相応しくない言葉を呟き、サラはイングズをそっと抱き寄せた。
イングズの顔が豊かな乳房に埋もれる。
零れそうなほど開いた胸元の谷間は、ドレスを着けたままでも顔を挟み込んで余りある。
突然の柔らかな肉の感触に、イングズは珍しく取り乱した声を漏らした。
「ひ、姫……!」
「喋るとくすぐったいわ」
笑みを含んだ声を耳元に囁かれると、声どころか息さえ止めた。
「いやね、胸で窒息されたりしたら笑われるわよ?」
その言葉に恐る恐るといった風に息を吐き、吸う。
微かな汗の匂いと香水の匂い。それらが混ざり合った女の匂いが、狙い澄ましたように官能を刺激する。
「……どう?」
「はい、その……柔らかく、いい匂いです」
「良かった」
幾分硬い髪の毛を撫で、さらに強く抱き締める。
サラが体を擦り付けると、柔らかな谷間はイングズの顔の形に合わせて歪み、たわむ。
イングズも腕をサラの背に回し、膨らみの覆い被さってくる鼻から何度も息を吸った。
「……嗅ぐだけ?」
僅かに艶の混ざった声で試すように問う。
イングズはそれに舌を這わせることで応じた。
「んっ……!」
想像以上の鋭い感触に両腕が緩む。
抱擁の戒めが解けた途端、イングズは貪るように乳房を舐め回した。
谷間の底から、左右の乳房の内側、上部から鎖骨へと粘液の跡を残し、再び乳房へと舌を伸ばす。
汗ばんだ肌の塩の味、頬に吸い付くような柔らかな乳房の感触が、燃料のように欲望に火を点ける。
抵抗ともリードともつかないサラの体の動きに、両者は軽く揉み合うような形になる。
ただでさえ露わだった胸元は簡単にはだけ、布に押さえつけられていた乳房が大きく揺れながら露出した。
目に鮮やかな桃色の先端に、イングズは微かに息を飲んだ。
「……いいわよ」
「何が、ですか?」
「女にそれを言わせるの?」
こめかみを軽く指で押され、濡れ光る豊かな胸を眺めた後、イングズは目の前の乳首を口に含んだ。
本能に突き動かされるように舌を絡め、ごく優しく吸う。
「……赤ん坊みたいね」
それこそ母親のような暖かな声で、そう言った。
加減がわからないのか啄むように吸い続けるイングズの腕を、サラはそっと取った。
そのままもう片方の乳房に導き、指が食い込むほど強く押し付けさせた。
二度三度こねさせ、熱の混じった声を耳朶に囁く。
「胸はそんな簡単に壊れないんだから、もっとあなたの好きなようにしてちょうだい」
頷く代わりに、一吸いごとに段々と強く吸っていった。
同時に手の平に触れた、快感を感じるほどに柔らかな塊を強く握る。
玉のように浮いた汗に手が滑り、指先が乳首を掻く。
「っ……!」
「申し訳ございません!」
「いいって言ってるでしょ。もっと強くしてくれないと私が気持ちよくなれないんだから」
上げた顔にまた胸を押し付ける。
濃い匂いと絡み付く柔肌にたちまちイングズの自制が崩れた。
息を一杯に吸い、固く痼った先端を乳輪ごと咥え、手を乳房を潰すように強く押し付ける。
「きゃぅっ! いいわ、もっと……!」
頬を紅潮させ、胸を自らイングズの顔面になすり付ける。
イングズの大きな手の平にも収まらない乳房は何度も五指から逃れ、敏感な先端を掻かせた。
密着して擦れ合う肌が汗を噴き出させ、それが触れ合いの実感として互いの肌を汚す。
そうして蒸気のように立ち上る匂いが理性を溶かす。
拙い前戯ながら、欲望を剥き出しにするという役割は十分に果たしていた。
心ゆくまで吸い終えると、イングズは谷間に顔を埋めて両手でゆっくり両胸を揉んだ。
顔に早い鼓動を感じる。自分の顔の血管ではなく、触れ合うサラの胸からだ。
谷間から見上げれば、狭い視界の中、サラが熱っぽい微笑みを浮かべて見下ろしている。
肌に馴染んだ汗と唾液が摩擦を生み、ごつごつした手の平と乳首が擦れ合う。
「んっ……もう少しぬるぬるした方が気持ちいい、かも……」
「ではどうしますか?」
「……あなた分かってて聞いてるでしょ」
拗ねた声音に苦笑し、量感のある乳房を端から、舌によく唾液を絡ませて舐め上げる。
舌で押すだけでふるふると揺れ、舐めた部分は怪しい光沢を持って誘惑してくる。
ゆっくりとした舐め上げに、サラは目を閉じて小さく長い喘ぎを漏らし続けた。
光沢が全域に広がったとき、イングズは尋ねるまでもなく濡れた乳房を両手で掴んだ。
ぐじゅ、と唾液が泡立つ音がし、摩擦の少ない手の中で乳房は好き勝手に変形する。
「ふっ…ぁぁ……! 自分で舐めて揉むより、気持ちいい……」
「ご自分で……舐めるのですか?」
「ふふ、興味ある? 今度見せてあげる…あっ……」
悪戯っぽい笑みが喘ぎに消される。
肉の間で唾液が粘る音ばかりがやけに大きく部屋に響いている。
ただ揉むよりも汚しているという実感が湧き、イングズは乳房の奥の奥まで指を食い込ませていった。
「……先に気持ちよくなって、いい?」
切なげな吐息ばかりになった頃、サラはぽつりと尋ねた。
真っ赤に染まった顔を見ても、達しようとしていることは明らかだった。
やけに乾く喉を唾液で潤おし、イングズは何とか声を出した。
「このまま揉みますか?」
「んっ……それより、その……」
この状況でさえ言うのが恥ずかしいのか、言葉尻が掠れて消える。
鮮やかな色の唇を耳に寄せ、空気にさえ聞かせまいとするように囁いた。
「……乳首、思いっきり抓って」
「し、しかし……」
「しかしじゃないの。抓って。思いっきり」
一度囁くのが精一杯だったのか、繰り返す言葉は泣きそうなほど頼りなかった。
イングズは頷き、手の平を滑らかな曲面から離した。
幾筋も糸が引き、ドレスの裾に垂れた。
「それでは……」
人差し指の関節と親指の腹で、存在を主張している乳頭を摘む。
それだけで喘ぎを漏らすサラに躊躇いを感じ、しかし念を押されたことを思い出す。
搾るように強く乳首を抓る。
「っくぅ……ん……」
痛みの割合の大きい感覚に首を縮め、しかしイングズの目を見てサラは頷く。
さらに力を込める。唾液に滑り、指が行き違って弾けた。
「ひんっ……! ぅぅぅっ……!!」
強い痛みにイングズへもたれ掛かり、だというのにサラは全身を震わせて達した。
抱き締められたまま黙り込まれ、イングズはしどろもどろに抱き返した。
目の前には長く美しい髪が広がっている。
肌よりも香りの乗りやすい髪は、何かの花の芳しい香りを纏っていた。
「……気持ちよかった」
息を整えていたらしいサラの声が耳に響く。
肩を振り向くと、サラもイングズの方を向いており、顔と顔がほとんど距離もなく向かい合う。
特にどちらからということもなく唇を合わせた。
鼻からの乱れた息がくすぐったかった。
「ね、イングズ。正直に答えて」
「何でしょうか」
「あなた、私とこういう風にいやらしいことする想像したことある?」
硬直した。
気力の戻ったらしいサラは興味津々といった風に目を輝かせている。
「そ、それは……多少は」
「多少しか想像してくれてないの?」
「……相当な回数です」
「じゃあ想像の中でどんなことしてる?」
間髪入れず追撃を加えられ、今度こそ完全に硬直した。
「口じゃ言えないようなこと?」
「……恐れながら」
「じゃ、いいわ。口じゃなくて私の身体で実際にやってみて。胸ばっかり弄らせちゃったし」
満面の笑みでそう言った。
「それでは……失礼いたします」
「はい、失礼されます」
不器用にドレスを脱がされながらもサラは楽しげだった。
ただでさえタイトなドレスが、汗で随分と脱ぎづらくなっている。
脱皮をするように皺を作りながらドレスが崩れ落ち、上側から脚を抜いた。
裸身に下着を穿いたのみの姿となっても、その気品に揺らぐところはない。
「感想は?」
「……この美しさを形容する言葉を、私は持ち合わせていません」
「言えてるじゃない」
くすりと微笑み、礼とばかりに口づけをする。
「言っておくけど、私だってあなたで凄い妄想してきたんだから、大抵のことは許すわよ」
「一体どのようなことを」
「今度無理矢理にでもさせてあげる」
挑戦的に囁いて顔を離すと、迎えるように両腕を広げた。
「さ、お好きにどうぞ」
もはや躊躇いは失礼に値すると理解し、イングズはサラの首筋に口づけた。
「んっ……」
血管の集中した敏感な部位にざらついた舌が這う。
命を握られたような本能的な感覚に、背筋が粟立つ。
「……舐めるの、好き?」
返答は耳たぶへの甘噛み、そして鎖骨をなぞる舌の動きだった。
「姫、腕を上げてください」
言われるままに頭の後ろで腕を組んだサラの、露わになった腋にもイングズは口を付けた。
「そ、そこはさすがに……恥ずかしいかも」
「ならば止めましょうか?」
「……ううん。恥ずかしいのも嫌いじゃないし」
むだ毛のない白い腋のくぼみに溜まった汗を舌先で舐め取る。
サラにも分かるように強く息を吸い込む。
他の箇所よりも濃い汗の香りにも興奮しか感じられない。
そこから脇腹、腹へと唇を進めながら、退屈した手を先ほど存分に揉んだ胸へと置く。
じっくりと柔らかさを感じつつ、口は鳩尾、続いてへそを啄んでいく。
「むずむずする……」
こまめに身体をくねらせ、サラが呟く。
下腹へと達したイングズは、布地を避けて次は肉付きのいい腿へ吸い付いた。
二度三度、汗が唾液へと置き換えられる。
くすぐったさに対する身悶えは、次の瞬間強張りに代わった。
「……つっ!」
強く吸われた部分に血が集まり、目立つキスマークが腿に刻まれた。
「……腿を出す服は着られないわね」
「申し訳ございません。しかしあまり表に出していい箇所でもないかと」
「そうね。じゃあ代わりにイングズにしっかり見てもらわなくちゃ」
そう言って、撫でるようにもう片方の腿をイングズの頭に擦り付けた。
豪奢な下着は中心がぐっしょりと濡れ、内の形をうっすらと浮かばせていた。
その張り付くような感触も気持ち悪いとは思わない。
「そろそろ、しましょうか」
再び胸へと吸い付いていたイングズの頭を撫で、サラは緊張を含んだ声でそう言った。
イングズの背が微かに跳ね、顔が上がる。
「じゃ、あなたの服は私が脱がせないとね」
「サラ姫、少しお待ちを……」
「四の五の言わない」
半ば無理矢理に上着を剥ぎ取り、ズボンを脱がせる。
この期に及んで抵抗するイングズに違和感は覚えたが、下着を脱がせるという大事の前には些事だった。
「えい」
悪戯のように下げた下着の中、イングズの性器は濡れたまま萎んでいた。
「……私って魅力ない?」
不安げに首を傾げるサラにイングズは激しく首を振った。
「違います! その、興奮はしているのですが、緊張で……」
明らかな失態に声も震えている。
その初々しさに、サラはむしろ安堵すら覚えた。
「……そうね、私の身体ばっかり触らせて、私からは何もしてなかったものね」
下着を抜き取り、一拍鼓舞するように息を吐いた後、サラは萎えた男根を握った。
「姫!?」
「これを大きくするのは私の役目よね?」
興味を隠そうともせずに先端を指で撫でた。
根元を指で挟み、ぶらぶらと遊ぶように揺らす。
「触っても駄目なら、やっぱりこうかしら?」
倒れ込むように勢い良く頭を下げると、ごく気軽に性器を咥え込んだ。
「姫、そこまでしなくとも、その……」
「むー」
咥えたまま上目遣いで唸る。文句を言うな、というところだろう。
溜めた唾液もろともに口の中で柔らかい男根を掻き混ぜ、舌でつつき回す。
技巧など何もない、唾液を絡めるだけのフェラチオだったが、少なくとも見た目と音は十分すぎるほど卑猥だった。
口の中で泡立ち弾ける音がするたび、サラが息苦しそうに眉間に皺を寄せるたび、イングズのモノが固さを取り戻していく。
サラの口を押し広げんばかりに膨らみ、歯に触れる頻度がだんだんと増えていく。
含んだままでは難しいと思ったか、サラは唇を押し付けながら男根を抜いた。
そそり立つ赤黒い棒をじっと見つめ、抜くとき溢れた涎を手の甲で拭う。
「もうちょっと触ってもいい?」
「で」
「やっぱり好奇心を満たさないと集中できないから勝手に触るわね」
否定しようとした言葉をあっさり切って捨て、右から左からべたべたと撫で回した。
「ふぅん、本当にこんなに固くなるのね……なんかやらしい」
血管の浮き出る根元を味見するようにべろりと舐め上げる。
「結構匂いキツいわね……嗅がれるの恥ずかしい?」
また萎えるのではないかというほど赤面し頷くイングズに、サラは笑顔で頷き返した。
「じゃ、嗅ごっと」
唾液にまみれた亀頭を撫でながら鼻をひくつかせ、頬の朱色を濃くした。
手の平に大量の透明な液体がへばりついているのに気付き、サラは舌と鼻を止めた。
「これはその……最後に出る白いのじゃないわよね? する前に出しちゃ駄目なんだからね」
直接的な表現は恥ずかしいのか口ごもり、紛らわすようにその液体を舐めた。
「しょっぱい」
もう少し変な味を期待していたのか残念そうに言い、身体を起こす。
「……じゃあ、その……」
「はい。それでは失礼ながら下着を」
「ええ、脱がせて」
仰向けに寝そべり、腰を浮かした。その下着をイングズは両手で慎重に脱がせる。
「……」
「どうしたの?」
「いえ、その……下着との間に糸が引いて」
「まじまじと見ないでよそんなのっ」
裸足を顔面に押し付けて自分の指で糸を絡め取った。
濡れそぼった下着もなくなり、完全な裸となったサラは気恥ずかしげにイングズを見上げる。
「……うわ」
突然転がって俯せになり、淡い茂みを手で隠した。
「どうされました?」
「顔、見られるの凄く恥ずかしいから……こっち向きじゃ駄目?」
普段隠れて目立たないながら、肉付きのよく美しい尻を掲げて尋ねた。
強張った身体をこまめに揺すりながら、サラは尻越しにイングズの顔を見上げる。
「こんな犬みたいな格好のお姫様なんて、失望する?」
「いえ、ですが……」
咳払いをし、イングズは言葉を選ぶように言い淀む。
「……私は、サラ姫のお顔をよく拝見したく思います」
「……それは嬉しいけど、でも恥ずかしすぎる……」
「では緊張をほぐすためもう少しお身体に触れてもよろしいでしょうか」
「そ」
「やはり姫は緊張しすぎているように見受けられますので、勝手ながら」
仕返しとばかりに言葉を遮り、なだらかな曲線を描く尻に手を置いた。
胸とは違った、しっかりと体重を支えられる肉づきながら、手触りは驚くほどに滑らかだった。
背中に近い部分から脚の付け根へ、ゆっくりと手を這わせる。
「痴漢みたい……」
それでも細胞の一つ一つが触られていることに反応し、悶えるように尻が震える。
性感とも違う、純粋な触覚としてサラはそれを心地よいと感じた。
震えるたびに中心の窄まりがひくりと締まる。
それを見て好奇心が湧く程度に、イングズは落ち着きを取り戻していた。
そっと顔を寄せ、窄まりに舌を当てる。
「ひゃっ……きゃぁぁっ!!」
不意を突かれ、サラはベッドが軋むほどに身悶えした。
「駄目そこは駄目ほんとに駄目っ!」
仰向けになろうとするも、腰をしっかり押さえられて動けない。
当然見ることすらできず、肛門に走る濡れた感触だけでしか事態を知れなかった。
それでも皺をなぞるような丁寧な舐め方は、イングズの動きを逐一伝えてくる。
「汚いから! そんなとこ汚いからぁ!」
念のため、本当に万が一億が一の事態に備えて綺麗にしてはいるが、そんなことも関係ない。
排泄器官を舐められてるというだけでひどく惨めな気分になる。
身悶えを功を奏したか、舌の動きが止まる。
息を吐き、サラは上半身を弛緩させてシーツに頬を乗せる。
ところで今、舐めていた部分にイングズが人差し指を挿入した。
「やぁぁぁっ!!」
よく湿った肛門は、ぞっとするほどスムーズに指を受け入れていった。
内臓に触れられるような直接的な感覚は、考えるより先に脊椎反射で身体を動かした。
意思と関係なく締まった肛門が、よりはっきりと指の存在を感じ取る。
締めているのに締まりきらないという事態にパニックを起こしかける。
「お尻の穴は駄目っ、ぬ、抜いてぇ……!」
ぐりぐりと中でねじられる感覚はあるが、抜ける気配はない。そもそも抜く気がないのか。
「姫、そんなに締め付けては抜こうにも抜けません。開いてください」
「ひ、開くって……」
見られるだけで恥ずかしい部分を、自ら開くなど拷問に等しい。
それでも背に腹は代えられず、痺れに似た感覚を受けながらゆっくり体の末端に力を入れた。
指への締め付けが甘くなったことを確認したイングズは、そのまま中指も挿入した。
「んぁっ……! ああっ!!」
口の端から涎が垂れるのにも構わず、サラは悲鳴を吐いた。
「う、嘘つき! ぅく……お尻が変、へんっ……!」
「心中お察ししますが、大抵のことは許すとおっしゃいました」
そう嘯き、羞恥に赤みの差した尻を撫で回した。
異常な事態に敏感になった触覚がそれを拾い、ますます身体を震わせる。
イングズとしても、もはや遠慮より興奮が勝っていた。
腋と同じく汗の溜まった膝の裏を味覚と嗅覚で楽しみ、ますます男根を固くする。
二本の指への締め付けも、性交のそれを連想させて興奮を促進させる。
指の隙間から唾液を流し込み、ほとんど動くスペースのない穴の内壁を擦り回した。
「はぁ…ぅ……おしり、だめぇ……!」
顔が汚れるのを気にする余裕もなく、サラは涎に濡れたシーツに顔を擦り付ける。
本来触れることのない部位がぐちゅぐちゅと汚らしい音を立てている。
気持ち悪いのであればはっきり拒絶できるのに、肉体は勝手に火照る一方だった。
死ぬほど恥ずかしいだけで、嫌ではない。
それを自覚してサラは悶え、ベッドに胸が擦れてさらに悶えた。
抵抗もなくなり、サラはぐったりと弄られるままになった。
やりすぎたか、とふと思ったイングズは二本の指を一息に抜いた。
また意思と関係なく突然に肛門が収縮する感覚がサラの背筋を上る。
「ひぁぁぁぁぁん!!」
小動物のように身体を縮め、絶頂のように全身を微かに痙攣させた。
あるいは達していたのかもしれないが、それはサラ自身が認めないだろう。
「……死んじゃうかと思った」
「……緊張は解けましたか?」
「ええ、ええ、これ以上ないぐらい解かされたわよ。イングズのバカ!」
涙さえ浮かべ、手で尻を隠す。
たしかに、少なくとも身体が強張っているということはもうない。
「……後で覚えてなさいよ。絶対後悔させてあげるんだから」
復讐の言葉も、涎にまみれた顔ではいまいち締まらない。
せめてもの反抗とばかりに、傍にあったイングズの動きでごしごしと顔を拭く。
「あの、それは……」
「顔見ながらしたいんでしょ? じゃあ綺麗にしないと駄目じゃない」
「……仰るとおりです」
「よろしい」
服を投げ捨ててごろんと仰向けになり、脚をゆっくりと両側に開く。
整った陰毛の中、分泌された液にまみれた性器が中心でほころんでいる。
「……お尻よりは恥ずかしくないし、もう大丈夫」
自分に言い聞かせるように呟きはしたが、荒い呼吸が胸を早いペースで上下させている。
「……大丈夫だから、その……イングズの、頂戴」
「……はい」
腰を掴んだ。
過剰なほど濡れた割れ目は、先端だけは簡単に受け入れた。
これ以上ないほど粘膜の存在を自覚される感触に、お互い赤面して押し黙る。
ゆっくりと腰を進めるにつれ、次第に狭くきつくなっていく。
「だんだん痛くなっていくの嫌だから、一気に挿れてくれる?」
「分かりました」
伸ばされたサラの手を掴み、安心させるように握ると、一気に貫いた。
「くぅっ……!!」
下腹を襲う堪えようのない鈍痛に背中が跳ねる。
瞼を固く閉じ、唇を噛み締め、それでも目尻から涙がこぼれるのを止められない。
「大丈夫、ですか?」
「……痛いわよ、すっごく痛い。でも動いて。それと……」
指で涙を拭う。
「……敬語はやめて、サラって呼んでほしい」
「わかりまし……わかった、サラ」
躊躇いがちにそう言って、ごくゆっくりと腰を動かした。
透明な液体に赤色が混ざり、ごく少量ベッドに垂れ落ちる。
腰を引き、押し付け、締め付けるまでもなく狭い穴から搾り取られるような性感を受ける。
「ぅぅ…はぁ……イングズ……」
疲労の混じった声を漏らしながら、痛みを紛らわそうというのか自らの胸に手を当てる。
イングズはそれを制すと、上体を覆い被さるように倒し、サラの胸に触れた。
苦笑し、首を傾げる。
「……紛らわすためなんだから、力一杯してくれないと嫌よ?」
「もちろんで……だ」
言い直すイングズを、サラは涙を浮かべたまま幸せそうに微笑んで見上げた。
繋がったままの体勢のため、胸を掴んだ手に思わず体重がかかる。
それでも頷くサラを信じ、強くこね回すように乳房を揉みしだく。
「ふぁ…ん……」
痛みに歪んでいた表情に僅かな艶が混じる。
生乾きの胸のべたついた感触が面白く、ごしごしと手の平で表面を擦る。
血でやや粘ついていた膣の内壁から、新しく液体が分泌されるのが分かった。
「痛くて気持ちよくて、なんだかよくわかんない……」
困ったように眉を下げ、搾られる感触にまた喘ぎを漏らす。
「サラ……は、胸が濡れていた方がいいのか?」
「……ええ」
羞恥を堪えてなんとか目を見返し、頷く。
腰を止めないままイングズはさらに身体を倒して胸に顔を近づける。
そうして、胸の真上から直に唾液を垂らし、塗りつけた。
「あっ…んっ……やっぱりこっちの方が、気持ちい……!」
乱暴な揉み方に、胸がにちゃにちゃと高い音を立てる。
滑る胸に苦戦しながらイングズが左右の乳首同士を擦り合わせると、またサラの背中が跳ねた。
「ひんっ……! すごい、もっと……!」
サラが快感に震えるたび、イングズの男根もきつく締め付けられる。
より強い刺激を求めて腰の動きを速め、サラは痛みに眉根を寄せ、乳首を抓られてベッドを掻きむしる。
言葉もなく、息遣いと喘ぎと肉を打ち付け合う音ばかりが部屋に響く。
「はぁっ、はぁ、あっ! 痛っ……んん!」
痛みと快感が間断なく押し寄せ、サラは汗を飛沫として散らしながら身体をくねらせる。
音を立てて潰れ、寄せられ、搾られる自分の乳房を見るのが気恥ずかしく、そうしている相手を見上げる。
涙で曇った視界でも、熱っぽく真摯に見返す男の顔は何故だかよく見えた。
性器の奥深くを突き上げられ、痛みに痛みが重ねられても視線は外さない。
おぼろげに見上げるその表情を、イングズは美しいと感じた。
触れている乳房も広がる髪も美しく、同時に雄としての本能を異常なほど刺激してくる。
容赦ない締め付けとサラの中の熱さに強い射精感がこみ上げてくる。
「っ……サラ、そろそろ……」
性器を抜き取ろうとして、腰がある地点から後ろに動かないことに気付く。
サラの脚が回され、がっしりと腰の後ろで組まれている。
「……抜いちゃ嫌」
はっきりとした視線でそう言い切り、両腕を広げてほんの少しだけ上体を浮かせる。
それの意味するところを悟り、イングズは胸から手をどけてサラの背に手を回した。
サラの手も脇腹を握る程度にイングズの背に回される。
もはや鈍痛しか感じない中でサラは何とか微笑み、喉を震わせた。
「はぁ……イングズ、好き……」
膣全体が収縮し、イングズに最後の一押しをした。
「私もです、サラ姫……!」
思わず元の口調に戻ったイングズに、サラは少しだけ爪を立てた。
「……しょうがない人」
微笑み、膣にどろどろした粘液が吐き出される感覚に目を閉じた。
サラの性器から溢れる、色々なものが混じり合った液体を丁寧に拭き取った。
触れた瞬間に僅かに反応したが、後は素直に拭かれるままだ。
「……申し訳ございません」
「中に出したこと? いいわよ、この私がイングズ以外の誰にそんなこと許すと思うの?」
言外にせっかくの雰囲気を壊すなと言うように口を尖らせた。
「……私のような者の子を孕んではサラ姫に迷惑がかかるのではと」
「イングズなら赤魔道師だし国的にも問題ないでしょ。……それとも、もし子供出来たら責任逃れするつもり?」
「い、いえ、決してそのような……」
「ならよし」
気怠そうに身体を起こし、唇を重ねる。
そして押し倒すように倒れ込み、横になったまま軽い口づけを繰り返した。
このまま一緒に昼寝しても罰は当たるまいと思ったところで、サラは腿に妙な感触を覚えた。
「……イングズ、まだ大きい」
一度出したにも関わらず衰えていない男根が、密着したサラの腿に当たっていた。
「その、サラ姫のお身体があまりに魅力的なもので」
「それは悪い気はしないけど……そうね、私の身体でどこが一番いやらしいと思う?」
また答えにくい質問が来たことにイングズは当惑したが、答え自体は考えるまでもなかった。
「……そのご立派な胸かと」
恐らくわざとだろうが腕に押し付けられている胸は豊満で形も良く、何より感じやすい。
「うん、じゃあ決まりね」
ケアルでもかけたのか復活したサラが、男根をそっと撫でる。
「今度は胸で気持ちよくしてあげるわね」
「どういう姿勢がやりやすいのかしらね」
「いや、しかし……」
「もう今更恥ずかしがることなんてないでしょ。……あ、自分の涎で汚れた胸じゃしてほしくない?」
否定しようとして、確かにそれは少し嫌だと思い当たった。
拭いてくれるのならその方がいいだろう。
「そう、ですね」
「じゃあちょっと待っててね。“洗う”から」
悪戯っぽい言い方が気になりはしたが、わざわざシャワーでも浴びるのだろうかと首を傾げた。
イングズの見ている前で、サラは豊かな胸を下から持ち上げると、垂らされた唾液の跡を舌でなぞった。
「姫、洗うというのは……」
「後で見せるって約束したしね。黙って見てなさい」
ぴしゃりと遮り、微かに手の跡の残る球面をぺろぺろと舐めていく。
乳輪を舌で弄り、持ち上げた乳首を吸う。
「ん……おいし……」
口の届く範囲を丁寧に舐め尽くすと、少し赤面して躊躇した後、胸へと大量の唾液を吐き出した。
それはアメーバのように様々な方向へと枝分かれし流れ落ちていく。
「ん……」
それこそ石鹸で洗うような気軽さでよくなすり付け、さらに上から垂らす唾液で流す。
左右の胸を擦り合わせて谷間を洗い、よく馴染ませる。
谷間に涎の小さな池ができ、顔を下げて直接それを啜り、別の場所に吐き出す。
「ぅん……凄い匂い……」
いっそ嬉しそうにそう呟き、とどめとばかりによく溜めた唾液を注いだ。
鎖骨から乳房が、膜のように隙間無く粘液に覆われた。
大小さまざまな糸が垂れて腿を汚している。
「胸重くなっちゃった……これって綺麗になったと思う? 汚れたと思う?」
照明の揺らぎに合わせて怪しく光る乳房の淫靡さに、イングズは答えることもできなかった。
「……そうだ、挟む前に」
ずりずりとイングズの真正面に来たサラは、膝で立って胸の高さをイングズの顔に合わせた。
「勝手に私のお尻虐めた仕返し」
上体を振り、乳房でイングズの頬を叩いた。
濡れた音が響き、唾液の飛沫がきらきらと光りながら飛び散る。
「……痛くない?」
「痛くは、ありませんが……」
柔らかすぎる感触と、された行為自体の異常さに口ごもる。
反対の頬も乳房で叩き、そのまま最初のときのように胸を顔面に押し付ける。
ぬめった肌触りと、サラの唾液や汗の匂いが一気に襲い掛かる。
「ね、イングズの固いの、どんどん固くなってる気がするんだけど気のせい?」
「……気のせいではありません」
「どうして? こんなに涎だらけの胸を押し付けられてるのに」
「…………」
イングズが照れていることに満足し、先ほどの“洗濯”で汚れた手でぐしぐしと硬い髪を撫でる。
「やらしいのね」
「……姫ほどではございません」
「イングズほどじゃないわよ」
笑って胸を離し、挿れたときより大きく見える男根を見つめた。
「挟んでほしい?」
「はい」
「じゃ、ベッドの端に座って」
自らはベッドから下り、サラはもう一度唾液を垂らした。
腰を下ろしたイングズの脚の間に入り込み、サラはそそり立つ男根に乳房を押し付けた。
十分すぎる潤滑液により、それはぬるりと谷間の奥へと飲み込まれていった。
体温と粘り気がイングズに直に伝わる。
「どう?」
「まるで口の中のようです」
「そうでしょうね」
あっさり肯定し、サラは両サイドから胸を圧迫した。
内側の乳房が滑りながら男根に絡み付く。
「っ……!」
「気持ちよさそう」
楽しそうに笑い、身体を揺すって扱く。
根元まで乳房を押し付けると、谷間から亀頭が僅かに覗いた。
顔を胸に突っ込み、頬を汚しながら舌を伸ばしてそれに触れる。
先ほど味わった塩味が今度は直に舌に広がる。
「ふふ、今度はすぐ出しちゃいそうね」
「……はい」
胸をリズミカルに上下させ、口でしたときよりも水気の多い音を響かせる。
サラ自身も、内側から伝わる熱と硬い感触に少なからず興奮していた。
頬を紅潮させ、自慰の時より強く内側へ押し付け、口に溜まる端から唾液を流し込んでいく。
「んん……早く出さないと、私の方がイッちゃいそう」
半分は本気でそう言った矢先、見下ろしていた先端から白い液体が噴き出た。
「きゃっ……!?」
勢い良く吐き出された精液は、間近にあったサラの顔面に次々とこびりつく。
頬に額に、そして開いた口の中が白く汚れていく。
驚いて顔を離したときにはもう、最後の一塊が鼻に浴びせられたところだった。
「うわ、臭くて生っぽい……もう、出すなら出すって言ってよ」
サラは口の中の精液を慎重に転がし、恐る恐る嚥下した。
「も、申し訳ございません」
気持ちよすぎて何も考えられなかったとは言えず、本日何度目かの謝罪を口にした。
慌てて顔を拭こうとし、
「……イングズ」
呆れたようなサラの声に、心中を見透かされたことを覚悟した。
白濁液で汚し尽くされたサラの顔を見て、イングズの性器はまた固さを取り戻していた。
「もう、私は一回しかイッてないのに何度もこんな催促するなんて我慢が効かないんだから」
「……では互いに気持ちよくなればよろしいのですね?」
「……何だかあなたのしようとしてることが分かったんだけど、私はここでじっとしてればいい?」
「はい」
期待と呆れが半々混じった表情のサラが腕を後ろで組み、胸を突き出してくる。
その先端を、イングズは亀頭で押し潰した。
「んっ……」
無理矢理作った窪みの中、乳首が男根でこね回される。
胸での奉仕で快感の受け入れ準備ができていた身体が、じわじわと熱くなっていく。
さらに強く押し付けられると、たっぷり残っている唾液に滑った亀頭が勢い良く反対側の乳首を掠める。
「ひゃん!」
嬌声が漏れ、身体が大きく痙攣する。
掠めた乳首に再び赤黒い男根がねじ込まれ、ぐりぐりと今度は乳房全体を蹂躙する。
十分な肉付きの胸は限界まで突っ込んだ男根全体を柔らかく包み込み、快感に快感を返す。
胸元から上がってくる熱気に当てられ、サラはむず痒そうに身体をよじる。
「はぁ……気持ちいい……」
「……私もです」
バットのように乳房の側面へ軽く打ち付け、たわむ様子に興奮してまた打ち付ける。
惚けた目でそれを追うサラの様子を見るに、限界は近いようだった。
「失礼します、姫」
サラの肩を掴むと、性交のように積極的に腰を動かした。
ぐちゃぐちゃという、先走りと唾液が混ざり合う音にサラの喘ぎがシンクロする。
「はぁ、ぅ……また胸、でっ……あっ、もう、だめ……!!」
痛みを感じるほど乳首を押し込まれ、サラの背中が大きく反り、震える。
「っく……!」
それに合わせ、イングズもまたサラの胸へと三度目の射精を行った。
サラの身体がイングズの腿に倒れ込む。
満たされた気分を噛み締めながら、イングズはその髪を指で梳いた。
互いの身体をじゃれるように拭き合った後、二人は並んでベッドに倒れ込んだ。
あらゆる体液で汚れたシーツだが、今更そんなことが気になるような状態でもない。
大きくない部屋だ。部屋中に行為の残り香が篭もり、寝ているだけでまだ性交を続けているような錯覚に陥る。
「……もう。初めてなのにこんなにいっぱい変態っぽいことして……」
「半分は姫ご自身からおやりになったことです」
「もう半分はあなたよ」
こつんと額を打ち付ける。
もちろん、そのまま唇も重ねた。
触れるだけのキスを長く続けた後、サラは上目遣いに尋ねた。
「続きは明日?」
「……連日なさるおつもりですか」
「ええもちろん。あ、男の人は白いのを溜めないと性欲湧かないんだったかしら」
「そういう問題ではありません」
溜息をつくイングズにまた妙な可愛さを感じ、今度はただ普通に抱き締め、片手だけ手を握る。
「イングズ、私のこと好き?」
「先ほどから何度も申し上げています」
「私の『好き』への返答じゃなくて、あなたから言ってほしいの」
この言葉に、イングズはこの日最大の赤面をし、何度も咳払いをした後にとうとう口にした。
「……愛しています、サラ姫」
「はい、よくできました。私もよ」
背中を撫で、心地よい疲労に身を委ねる。
このまま少し眠るだろう。
起きたときもきっとイングズは寄り添っていてくれるだろう。
その幸せを味わうため、サラは眠気への抵抗をやめた。
二人が夢に落ちた後も、その手は繋がったままだった。
サラ姫の居室であるそこは、観光名所「おひめさまのベッド」で有名な部屋である。
広くも華美でもないが、実用的ではあるその内装は、部屋の主の人となりをよく表しているといえよう。
その部屋のテーブルに、二人の男女が向き合って座っていた。
一人は無論部屋の主であるサラ、もう一人は最近旅から戻った兵士、イングズだ。
「ねぇイングズ」
「何でしょうか、サラ姫」
「……私達何してるのかしら」
「チェスです」
ちなみにイングズの五勝十敗。時にはわざと負けるのも従者の嗜みだ。
「そうじゃなくて」
かぶりを振り、駒を置いて目の前の男を見つめる。
見つめ返す目は実直ではあるが、主に対するそれでしかない。
「イングズ」
「はい」
「私はあなたが好きよ」
「光栄です。私も貴女をお慕い申し上げております、姫」
「ありがとう」
ふぅ、と息を吐く。
こうして部屋に呼び出すのは今日が初めてというわけではない。むしろ毎日と言っていいぐらいだ。だというのに。
「……不健全だわ」
「いえ、チェスは古代から伝わる極めて健全な遊戯です、姫」
「思い合っている男女が二人きりで健全な遊びをしているのが不健全だと言ってるの!」
盤面を叩いて立ち上がり、王族らしからぬ軽やかな動きで指を突き付けた。
「……は、しかし姫」
「枯れているわけじゃないのよね。ちゃんと私の谷間をちらちら見てくれてるし」
「も、申し訳ございません!」
「いいのよ、見せてるんだから」
不機嫌そうに自分の大きく開いた胸元を見下ろす。
その豊かさと形に自信がある、というのもあるが、何より朴念仁な思い人への誘惑としての意味合いが大きい。
「なのにあなたときたら、下着姿で狸寝入りしている私にも布団をかけるぐらいしかしないんだから」
「わ、私は所詮一兵士でありますゆえ」
「ああもうっ」
はしたなく両腕を振り下ろし、頬を膨らませる。
「私はあなたに抱かれたいって言ってるの。あなたはそれに応えてくれるの? くれないの?」
「はっ……ご、ご命令とあらば」
「もう!」
サラは猛然と踵を返し、大きなベッドの上に腰を下ろす。
髪や肌を飾り付けるアクセサリーを外し、冷や汗を流すイングズを睨み付けた。
「そんなに命令が好きなら命令してあげる。
ここの上では『サスーン国のサラ姫』じゃなくて『サラ・アルテニー』って一人の生身の女として私を扱いなさい」
「し、しかし人が来ては……」
「今までも誰も来ないようにしてたの、気付かなかった? いつでも私は準備万端だったのよ」
ドレスを纏うのみの姿になり、白く長い脚を組んだ。
悪戯っぽく、小さく舌を出す。
「『はやくきて、じらさないで……』って言うのが礼儀だったかしら?」
イングズの喉がゴクリと鳴った。
軽装とはいえ無骨な鎧を傍らに置き、平服のみとなったイングズがサラのベッドに腰掛ける。
「……いかがいたしましょう」
「なに? 命令されないと愛情表現もできないの?」
「いえ、そうではなく……女性の身体をどう扱ったものかと」
「ああ、そういうこと」
立てた眉を下ろし、クスリと笑う。
世界を救いまでした英雄の一人が、女一人に狼狽え、緊張している。
「可愛い」
およそ兵士に対する形容としては相応しくない言葉を呟き、サラはイングズをそっと抱き寄せた。
イングズの顔が豊かな乳房に埋もれる。
零れそうなほど開いた胸元の谷間は、ドレスを着けたままでも顔を挟み込んで余りある。
突然の柔らかな肉の感触に、イングズは珍しく取り乱した声を漏らした。
「ひ、姫……!」
「喋るとくすぐったいわ」
笑みを含んだ声を耳元に囁かれると、声どころか息さえ止めた。
「いやね、胸で窒息されたりしたら笑われるわよ?」
その言葉に恐る恐るといった風に息を吐き、吸う。
微かな汗の匂いと香水の匂い。それらが混ざり合った女の匂いが、狙い澄ましたように官能を刺激する。
「……どう?」
「はい、その……柔らかく、いい匂いです」
「良かった」
幾分硬い髪の毛を撫で、さらに強く抱き締める。
サラが体を擦り付けると、柔らかな谷間はイングズの顔の形に合わせて歪み、たわむ。
イングズも腕をサラの背に回し、膨らみの覆い被さってくる鼻から何度も息を吸った。
「……嗅ぐだけ?」
僅かに艶の混ざった声で試すように問う。
イングズはそれに舌を這わせることで応じた。
「んっ……!」
想像以上の鋭い感触に両腕が緩む。
抱擁の戒めが解けた途端、イングズは貪るように乳房を舐め回した。
谷間の底から、左右の乳房の内側、上部から鎖骨へと粘液の跡を残し、再び乳房へと舌を伸ばす。
汗ばんだ肌の塩の味、頬に吸い付くような柔らかな乳房の感触が、燃料のように欲望に火を点ける。
抵抗ともリードともつかないサラの体の動きに、両者は軽く揉み合うような形になる。
ただでさえ露わだった胸元は簡単にはだけ、布に押さえつけられていた乳房が大きく揺れながら露出した。
目に鮮やかな桃色の先端に、イングズは微かに息を飲んだ。
「……いいわよ」
「何が、ですか?」
「女にそれを言わせるの?」
こめかみを軽く指で押され、濡れ光る豊かな胸を眺めた後、イングズは目の前の乳首を口に含んだ。
本能に突き動かされるように舌を絡め、ごく優しく吸う。
「……赤ん坊みたいね」
それこそ母親のような暖かな声で、そう言った。
加減がわからないのか啄むように吸い続けるイングズの腕を、サラはそっと取った。
そのままもう片方の乳房に導き、指が食い込むほど強く押し付けさせた。
二度三度こねさせ、熱の混じった声を耳朶に囁く。
「胸はそんな簡単に壊れないんだから、もっとあなたの好きなようにしてちょうだい」
頷く代わりに、一吸いごとに段々と強く吸っていった。
同時に手の平に触れた、快感を感じるほどに柔らかな塊を強く握る。
玉のように浮いた汗に手が滑り、指先が乳首を掻く。
「っ……!」
「申し訳ございません!」
「いいって言ってるでしょ。もっと強くしてくれないと私が気持ちよくなれないんだから」
上げた顔にまた胸を押し付ける。
濃い匂いと絡み付く柔肌にたちまちイングズの自制が崩れた。
息を一杯に吸い、固く痼った先端を乳輪ごと咥え、手を乳房を潰すように強く押し付ける。
「きゃぅっ! いいわ、もっと……!」
頬を紅潮させ、胸を自らイングズの顔面になすり付ける。
イングズの大きな手の平にも収まらない乳房は何度も五指から逃れ、敏感な先端を掻かせた。
密着して擦れ合う肌が汗を噴き出させ、それが触れ合いの実感として互いの肌を汚す。
そうして蒸気のように立ち上る匂いが理性を溶かす。
拙い前戯ながら、欲望を剥き出しにするという役割は十分に果たしていた。
心ゆくまで吸い終えると、イングズは谷間に顔を埋めて両手でゆっくり両胸を揉んだ。
顔に早い鼓動を感じる。自分の顔の血管ではなく、触れ合うサラの胸からだ。
谷間から見上げれば、狭い視界の中、サラが熱っぽい微笑みを浮かべて見下ろしている。
肌に馴染んだ汗と唾液が摩擦を生み、ごつごつした手の平と乳首が擦れ合う。
「んっ……もう少しぬるぬるした方が気持ちいい、かも……」
「ではどうしますか?」
「……あなた分かってて聞いてるでしょ」
拗ねた声音に苦笑し、量感のある乳房を端から、舌によく唾液を絡ませて舐め上げる。
舌で押すだけでふるふると揺れ、舐めた部分は怪しい光沢を持って誘惑してくる。
ゆっくりとした舐め上げに、サラは目を閉じて小さく長い喘ぎを漏らし続けた。
光沢が全域に広がったとき、イングズは尋ねるまでもなく濡れた乳房を両手で掴んだ。
ぐじゅ、と唾液が泡立つ音がし、摩擦の少ない手の中で乳房は好き勝手に変形する。
「ふっ…ぁぁ……! 自分で舐めて揉むより、気持ちいい……」
「ご自分で……舐めるのですか?」
「ふふ、興味ある? 今度見せてあげる…あっ……」
悪戯っぽい笑みが喘ぎに消される。
肉の間で唾液が粘る音ばかりがやけに大きく部屋に響いている。
ただ揉むよりも汚しているという実感が湧き、イングズは乳房の奥の奥まで指を食い込ませていった。
「……先に気持ちよくなって、いい?」
切なげな吐息ばかりになった頃、サラはぽつりと尋ねた。
真っ赤に染まった顔を見ても、達しようとしていることは明らかだった。
やけに乾く喉を唾液で潤おし、イングズは何とか声を出した。
「このまま揉みますか?」
「んっ……それより、その……」
この状況でさえ言うのが恥ずかしいのか、言葉尻が掠れて消える。
鮮やかな色の唇を耳に寄せ、空気にさえ聞かせまいとするように囁いた。
「……乳首、思いっきり抓って」
「し、しかし……」
「しかしじゃないの。抓って。思いっきり」
一度囁くのが精一杯だったのか、繰り返す言葉は泣きそうなほど頼りなかった。
イングズは頷き、手の平を滑らかな曲面から離した。
幾筋も糸が引き、ドレスの裾に垂れた。
「それでは……」
人差し指の関節と親指の腹で、存在を主張している乳頭を摘む。
それだけで喘ぎを漏らすサラに躊躇いを感じ、しかし念を押されたことを思い出す。
搾るように強く乳首を抓る。
「っくぅ……ん……」
痛みの割合の大きい感覚に首を縮め、しかしイングズの目を見てサラは頷く。
さらに力を込める。唾液に滑り、指が行き違って弾けた。
「ひんっ……! ぅぅぅっ……!!」
強い痛みにイングズへもたれ掛かり、だというのにサラは全身を震わせて達した。
抱き締められたまま黙り込まれ、イングズはしどろもどろに抱き返した。
目の前には長く美しい髪が広がっている。
肌よりも香りの乗りやすい髪は、何かの花の芳しい香りを纏っていた。
「……気持ちよかった」
息を整えていたらしいサラの声が耳に響く。
肩を振り向くと、サラもイングズの方を向いており、顔と顔がほとんど距離もなく向かい合う。
特にどちらからということもなく唇を合わせた。
鼻からの乱れた息がくすぐったかった。
「ね、イングズ。正直に答えて」
「何でしょうか」
「あなた、私とこういう風にいやらしいことする想像したことある?」
硬直した。
気力の戻ったらしいサラは興味津々といった風に目を輝かせている。
「そ、それは……多少は」
「多少しか想像してくれてないの?」
「……相当な回数です」
「じゃあ想像の中でどんなことしてる?」
間髪入れず追撃を加えられ、今度こそ完全に硬直した。
「口じゃ言えないようなこと?」
「……恐れながら」
「じゃ、いいわ。口じゃなくて私の身体で実際にやってみて。胸ばっかり弄らせちゃったし」
満面の笑みでそう言った。
「それでは……失礼いたします」
「はい、失礼されます」
不器用にドレスを脱がされながらもサラは楽しげだった。
ただでさえタイトなドレスが、汗で随分と脱ぎづらくなっている。
脱皮をするように皺を作りながらドレスが崩れ落ち、上側から脚を抜いた。
裸身に下着を穿いたのみの姿となっても、その気品に揺らぐところはない。
「感想は?」
「……この美しさを形容する言葉を、私は持ち合わせていません」
「言えてるじゃない」
くすりと微笑み、礼とばかりに口づけをする。
「言っておくけど、私だってあなたで凄い妄想してきたんだから、大抵のことは許すわよ」
「一体どのようなことを」
「今度無理矢理にでもさせてあげる」
挑戦的に囁いて顔を離すと、迎えるように両腕を広げた。
「さ、お好きにどうぞ」
もはや躊躇いは失礼に値すると理解し、イングズはサラの首筋に口づけた。
「んっ……」
血管の集中した敏感な部位にざらついた舌が這う。
命を握られたような本能的な感覚に、背筋が粟立つ。
「……舐めるの、好き?」
返答は耳たぶへの甘噛み、そして鎖骨をなぞる舌の動きだった。
「姫、腕を上げてください」
言われるままに頭の後ろで腕を組んだサラの、露わになった腋にもイングズは口を付けた。
「そ、そこはさすがに……恥ずかしいかも」
「ならば止めましょうか?」
「……ううん。恥ずかしいのも嫌いじゃないし」
むだ毛のない白い腋のくぼみに溜まった汗を舌先で舐め取る。
サラにも分かるように強く息を吸い込む。
他の箇所よりも濃い汗の香りにも興奮しか感じられない。
そこから脇腹、腹へと唇を進めながら、退屈した手を先ほど存分に揉んだ胸へと置く。
じっくりと柔らかさを感じつつ、口は鳩尾、続いてへそを啄んでいく。
「むずむずする……」
こまめに身体をくねらせ、サラが呟く。
下腹へと達したイングズは、布地を避けて次は肉付きのいい腿へ吸い付いた。
二度三度、汗が唾液へと置き換えられる。
くすぐったさに対する身悶えは、次の瞬間強張りに代わった。
「……つっ!」
強く吸われた部分に血が集まり、目立つキスマークが腿に刻まれた。
「……腿を出す服は着られないわね」
「申し訳ございません。しかしあまり表に出していい箇所でもないかと」
「そうね。じゃあ代わりにイングズにしっかり見てもらわなくちゃ」
そう言って、撫でるようにもう片方の腿をイングズの頭に擦り付けた。
豪奢な下着は中心がぐっしょりと濡れ、内の形をうっすらと浮かばせていた。
その張り付くような感触も気持ち悪いとは思わない。
「そろそろ、しましょうか」
再び胸へと吸い付いていたイングズの頭を撫で、サラは緊張を含んだ声でそう言った。
イングズの背が微かに跳ね、顔が上がる。
「じゃ、あなたの服は私が脱がせないとね」
「サラ姫、少しお待ちを……」
「四の五の言わない」
半ば無理矢理に上着を剥ぎ取り、ズボンを脱がせる。
この期に及んで抵抗するイングズに違和感は覚えたが、下着を脱がせるという大事の前には些事だった。
「えい」
悪戯のように下げた下着の中、イングズの性器は濡れたまま萎んでいた。
「……私って魅力ない?」
不安げに首を傾げるサラにイングズは激しく首を振った。
「違います! その、興奮はしているのですが、緊張で……」
明らかな失態に声も震えている。
その初々しさに、サラはむしろ安堵すら覚えた。
「……そうね、私の身体ばっかり触らせて、私からは何もしてなかったものね」
下着を抜き取り、一拍鼓舞するように息を吐いた後、サラは萎えた男根を握った。
「姫!?」
「これを大きくするのは私の役目よね?」
興味を隠そうともせずに先端を指で撫でた。
根元を指で挟み、ぶらぶらと遊ぶように揺らす。
「触っても駄目なら、やっぱりこうかしら?」
倒れ込むように勢い良く頭を下げると、ごく気軽に性器を咥え込んだ。
「姫、そこまでしなくとも、その……」
「むー」
咥えたまま上目遣いで唸る。文句を言うな、というところだろう。
溜めた唾液もろともに口の中で柔らかい男根を掻き混ぜ、舌でつつき回す。
技巧など何もない、唾液を絡めるだけのフェラチオだったが、少なくとも見た目と音は十分すぎるほど卑猥だった。
口の中で泡立ち弾ける音がするたび、サラが息苦しそうに眉間に皺を寄せるたび、イングズのモノが固さを取り戻していく。
サラの口を押し広げんばかりに膨らみ、歯に触れる頻度がだんだんと増えていく。
含んだままでは難しいと思ったか、サラは唇を押し付けながら男根を抜いた。
そそり立つ赤黒い棒をじっと見つめ、抜くとき溢れた涎を手の甲で拭う。
「もうちょっと触ってもいい?」
「で」
「やっぱり好奇心を満たさないと集中できないから勝手に触るわね」
否定しようとした言葉をあっさり切って捨て、右から左からべたべたと撫で回した。
「ふぅん、本当にこんなに固くなるのね……なんかやらしい」
血管の浮き出る根元を味見するようにべろりと舐め上げる。
「結構匂いキツいわね……嗅がれるの恥ずかしい?」
また萎えるのではないかというほど赤面し頷くイングズに、サラは笑顔で頷き返した。
「じゃ、嗅ごっと」
唾液にまみれた亀頭を撫でながら鼻をひくつかせ、頬の朱色を濃くした。
手の平に大量の透明な液体がへばりついているのに気付き、サラは舌と鼻を止めた。
「これはその……最後に出る白いのじゃないわよね? する前に出しちゃ駄目なんだからね」
直接的な表現は恥ずかしいのか口ごもり、紛らわすようにその液体を舐めた。
「しょっぱい」
もう少し変な味を期待していたのか残念そうに言い、身体を起こす。
「……じゃあ、その……」
「はい。それでは失礼ながら下着を」
「ええ、脱がせて」
仰向けに寝そべり、腰を浮かした。その下着をイングズは両手で慎重に脱がせる。
「……」
「どうしたの?」
「いえ、その……下着との間に糸が引いて」
「まじまじと見ないでよそんなのっ」
裸足を顔面に押し付けて自分の指で糸を絡め取った。
濡れそぼった下着もなくなり、完全な裸となったサラは気恥ずかしげにイングズを見上げる。
「……うわ」
突然転がって俯せになり、淡い茂みを手で隠した。
「どうされました?」
「顔、見られるの凄く恥ずかしいから……こっち向きじゃ駄目?」
普段隠れて目立たないながら、肉付きのよく美しい尻を掲げて尋ねた。
強張った身体をこまめに揺すりながら、サラは尻越しにイングズの顔を見上げる。
「こんな犬みたいな格好のお姫様なんて、失望する?」
「いえ、ですが……」
咳払いをし、イングズは言葉を選ぶように言い淀む。
「……私は、サラ姫のお顔をよく拝見したく思います」
「……それは嬉しいけど、でも恥ずかしすぎる……」
「では緊張をほぐすためもう少しお身体に触れてもよろしいでしょうか」
「そ」
「やはり姫は緊張しすぎているように見受けられますので、勝手ながら」
仕返しとばかりに言葉を遮り、なだらかな曲線を描く尻に手を置いた。
胸とは違った、しっかりと体重を支えられる肉づきながら、手触りは驚くほどに滑らかだった。
背中に近い部分から脚の付け根へ、ゆっくりと手を這わせる。
「痴漢みたい……」
それでも細胞の一つ一つが触られていることに反応し、悶えるように尻が震える。
性感とも違う、純粋な触覚としてサラはそれを心地よいと感じた。
震えるたびに中心の窄まりがひくりと締まる。
それを見て好奇心が湧く程度に、イングズは落ち着きを取り戻していた。
そっと顔を寄せ、窄まりに舌を当てる。
「ひゃっ……きゃぁぁっ!!」
不意を突かれ、サラはベッドが軋むほどに身悶えした。
「駄目そこは駄目ほんとに駄目っ!」
仰向けになろうとするも、腰をしっかり押さえられて動けない。
当然見ることすらできず、肛門に走る濡れた感触だけでしか事態を知れなかった。
それでも皺をなぞるような丁寧な舐め方は、イングズの動きを逐一伝えてくる。
「汚いから! そんなとこ汚いからぁ!」
念のため、本当に万が一億が一の事態に備えて綺麗にしてはいるが、そんなことも関係ない。
排泄器官を舐められてるというだけでひどく惨めな気分になる。
身悶えを功を奏したか、舌の動きが止まる。
息を吐き、サラは上半身を弛緩させてシーツに頬を乗せる。
ところで今、舐めていた部分にイングズが人差し指を挿入した。
「やぁぁぁっ!!」
よく湿った肛門は、ぞっとするほどスムーズに指を受け入れていった。
内臓に触れられるような直接的な感覚は、考えるより先に脊椎反射で身体を動かした。
意思と関係なく締まった肛門が、よりはっきりと指の存在を感じ取る。
締めているのに締まりきらないという事態にパニックを起こしかける。
「お尻の穴は駄目っ、ぬ、抜いてぇ……!」
ぐりぐりと中でねじられる感覚はあるが、抜ける気配はない。そもそも抜く気がないのか。
「姫、そんなに締め付けては抜こうにも抜けません。開いてください」
「ひ、開くって……」
見られるだけで恥ずかしい部分を、自ら開くなど拷問に等しい。
それでも背に腹は代えられず、痺れに似た感覚を受けながらゆっくり体の末端に力を入れた。
指への締め付けが甘くなったことを確認したイングズは、そのまま中指も挿入した。
「んぁっ……! ああっ!!」
口の端から涎が垂れるのにも構わず、サラは悲鳴を吐いた。
「う、嘘つき! ぅく……お尻が変、へんっ……!」
「心中お察ししますが、大抵のことは許すとおっしゃいました」
そう嘯き、羞恥に赤みの差した尻を撫で回した。
異常な事態に敏感になった触覚がそれを拾い、ますます身体を震わせる。
イングズとしても、もはや遠慮より興奮が勝っていた。
腋と同じく汗の溜まった膝の裏を味覚と嗅覚で楽しみ、ますます男根を固くする。
二本の指への締め付けも、性交のそれを連想させて興奮を促進させる。
指の隙間から唾液を流し込み、ほとんど動くスペースのない穴の内壁を擦り回した。
「はぁ…ぅ……おしり、だめぇ……!」
顔が汚れるのを気にする余裕もなく、サラは涎に濡れたシーツに顔を擦り付ける。
本来触れることのない部位がぐちゅぐちゅと汚らしい音を立てている。
気持ち悪いのであればはっきり拒絶できるのに、肉体は勝手に火照る一方だった。
死ぬほど恥ずかしいだけで、嫌ではない。
それを自覚してサラは悶え、ベッドに胸が擦れてさらに悶えた。
抵抗もなくなり、サラはぐったりと弄られるままになった。
やりすぎたか、とふと思ったイングズは二本の指を一息に抜いた。
また意思と関係なく突然に肛門が収縮する感覚がサラの背筋を上る。
「ひぁぁぁぁぁん!!」
小動物のように身体を縮め、絶頂のように全身を微かに痙攣させた。
あるいは達していたのかもしれないが、それはサラ自身が認めないだろう。
「……死んじゃうかと思った」
「……緊張は解けましたか?」
「ええ、ええ、これ以上ないぐらい解かされたわよ。イングズのバカ!」
涙さえ浮かべ、手で尻を隠す。
たしかに、少なくとも身体が強張っているということはもうない。
「……後で覚えてなさいよ。絶対後悔させてあげるんだから」
復讐の言葉も、涎にまみれた顔ではいまいち締まらない。
せめてもの反抗とばかりに、傍にあったイングズの動きでごしごしと顔を拭く。
「あの、それは……」
「顔見ながらしたいんでしょ? じゃあ綺麗にしないと駄目じゃない」
「……仰るとおりです」
「よろしい」
服を投げ捨ててごろんと仰向けになり、脚をゆっくりと両側に開く。
整った陰毛の中、分泌された液にまみれた性器が中心でほころんでいる。
「……お尻よりは恥ずかしくないし、もう大丈夫」
自分に言い聞かせるように呟きはしたが、荒い呼吸が胸を早いペースで上下させている。
「……大丈夫だから、その……イングズの、頂戴」
「……はい」
腰を掴んだ。
過剰なほど濡れた割れ目は、先端だけは簡単に受け入れた。
これ以上ないほど粘膜の存在を自覚される感触に、お互い赤面して押し黙る。
ゆっくりと腰を進めるにつれ、次第に狭くきつくなっていく。
「だんだん痛くなっていくの嫌だから、一気に挿れてくれる?」
「分かりました」
伸ばされたサラの手を掴み、安心させるように握ると、一気に貫いた。
「くぅっ……!!」
下腹を襲う堪えようのない鈍痛に背中が跳ねる。
瞼を固く閉じ、唇を噛み締め、それでも目尻から涙がこぼれるのを止められない。
「大丈夫、ですか?」
「……痛いわよ、すっごく痛い。でも動いて。それと……」
指で涙を拭う。
「……敬語はやめて、サラって呼んでほしい」
「わかりまし……わかった、サラ」
躊躇いがちにそう言って、ごくゆっくりと腰を動かした。
透明な液体に赤色が混ざり、ごく少量ベッドに垂れ落ちる。
腰を引き、押し付け、締め付けるまでもなく狭い穴から搾り取られるような性感を受ける。
「ぅぅ…はぁ……イングズ……」
疲労の混じった声を漏らしながら、痛みを紛らわそうというのか自らの胸に手を当てる。
イングズはそれを制すと、上体を覆い被さるように倒し、サラの胸に触れた。
苦笑し、首を傾げる。
「……紛らわすためなんだから、力一杯してくれないと嫌よ?」
「もちろんで……だ」
言い直すイングズを、サラは涙を浮かべたまま幸せそうに微笑んで見上げた。
繋がったままの体勢のため、胸を掴んだ手に思わず体重がかかる。
それでも頷くサラを信じ、強くこね回すように乳房を揉みしだく。
「ふぁ…ん……」
痛みに歪んでいた表情に僅かな艶が混じる。
生乾きの胸のべたついた感触が面白く、ごしごしと手の平で表面を擦る。
血でやや粘ついていた膣の内壁から、新しく液体が分泌されるのが分かった。
「痛くて気持ちよくて、なんだかよくわかんない……」
困ったように眉を下げ、搾られる感触にまた喘ぎを漏らす。
「サラ……は、胸が濡れていた方がいいのか?」
「……ええ」
羞恥を堪えてなんとか目を見返し、頷く。
腰を止めないままイングズはさらに身体を倒して胸に顔を近づける。
そうして、胸の真上から直に唾液を垂らし、塗りつけた。
「あっ…んっ……やっぱりこっちの方が、気持ちい……!」
乱暴な揉み方に、胸がにちゃにちゃと高い音を立てる。
滑る胸に苦戦しながらイングズが左右の乳首同士を擦り合わせると、またサラの背中が跳ねた。
「ひんっ……! すごい、もっと……!」
サラが快感に震えるたび、イングズの男根もきつく締め付けられる。
より強い刺激を求めて腰の動きを速め、サラは痛みに眉根を寄せ、乳首を抓られてベッドを掻きむしる。
言葉もなく、息遣いと喘ぎと肉を打ち付け合う音ばかりが部屋に響く。
「はぁっ、はぁ、あっ! 痛っ……んん!」
痛みと快感が間断なく押し寄せ、サラは汗を飛沫として散らしながら身体をくねらせる。
音を立てて潰れ、寄せられ、搾られる自分の乳房を見るのが気恥ずかしく、そうしている相手を見上げる。
涙で曇った視界でも、熱っぽく真摯に見返す男の顔は何故だかよく見えた。
性器の奥深くを突き上げられ、痛みに痛みが重ねられても視線は外さない。
おぼろげに見上げるその表情を、イングズは美しいと感じた。
触れている乳房も広がる髪も美しく、同時に雄としての本能を異常なほど刺激してくる。
容赦ない締め付けとサラの中の熱さに強い射精感がこみ上げてくる。
「っ……サラ、そろそろ……」
性器を抜き取ろうとして、腰がある地点から後ろに動かないことに気付く。
サラの脚が回され、がっしりと腰の後ろで組まれている。
「……抜いちゃ嫌」
はっきりとした視線でそう言い切り、両腕を広げてほんの少しだけ上体を浮かせる。
それの意味するところを悟り、イングズは胸から手をどけてサラの背に手を回した。
サラの手も脇腹を握る程度にイングズの背に回される。
もはや鈍痛しか感じない中でサラは何とか微笑み、喉を震わせた。
「はぁ……イングズ、好き……」
膣全体が収縮し、イングズに最後の一押しをした。
「私もです、サラ姫……!」
思わず元の口調に戻ったイングズに、サラは少しだけ爪を立てた。
「……しょうがない人」
微笑み、膣にどろどろした粘液が吐き出される感覚に目を閉じた。
サラの性器から溢れる、色々なものが混じり合った液体を丁寧に拭き取った。
触れた瞬間に僅かに反応したが、後は素直に拭かれるままだ。
「……申し訳ございません」
「中に出したこと? いいわよ、この私がイングズ以外の誰にそんなこと許すと思うの?」
言外にせっかくの雰囲気を壊すなと言うように口を尖らせた。
「……私のような者の子を孕んではサラ姫に迷惑がかかるのではと」
「イングズなら赤魔道師だし国的にも問題ないでしょ。……それとも、もし子供出来たら責任逃れするつもり?」
「い、いえ、決してそのような……」
「ならよし」
気怠そうに身体を起こし、唇を重ねる。
そして押し倒すように倒れ込み、横になったまま軽い口づけを繰り返した。
このまま一緒に昼寝しても罰は当たるまいと思ったところで、サラは腿に妙な感触を覚えた。
「……イングズ、まだ大きい」
一度出したにも関わらず衰えていない男根が、密着したサラの腿に当たっていた。
「その、サラ姫のお身体があまりに魅力的なもので」
「それは悪い気はしないけど……そうね、私の身体でどこが一番いやらしいと思う?」
また答えにくい質問が来たことにイングズは当惑したが、答え自体は考えるまでもなかった。
「……そのご立派な胸かと」
恐らくわざとだろうが腕に押し付けられている胸は豊満で形も良く、何より感じやすい。
「うん、じゃあ決まりね」
ケアルでもかけたのか復活したサラが、男根をそっと撫でる。
「今度は胸で気持ちよくしてあげるわね」
「どういう姿勢がやりやすいのかしらね」
「いや、しかし……」
「もう今更恥ずかしがることなんてないでしょ。……あ、自分の涎で汚れた胸じゃしてほしくない?」
否定しようとして、確かにそれは少し嫌だと思い当たった。
拭いてくれるのならその方がいいだろう。
「そう、ですね」
「じゃあちょっと待っててね。“洗う”から」
悪戯っぽい言い方が気になりはしたが、わざわざシャワーでも浴びるのだろうかと首を傾げた。
イングズの見ている前で、サラは豊かな胸を下から持ち上げると、垂らされた唾液の跡を舌でなぞった。
「姫、洗うというのは……」
「後で見せるって約束したしね。黙って見てなさい」
ぴしゃりと遮り、微かに手の跡の残る球面をぺろぺろと舐めていく。
乳輪を舌で弄り、持ち上げた乳首を吸う。
「ん……おいし……」
口の届く範囲を丁寧に舐め尽くすと、少し赤面して躊躇した後、胸へと大量の唾液を吐き出した。
それはアメーバのように様々な方向へと枝分かれし流れ落ちていく。
「ん……」
それこそ石鹸で洗うような気軽さでよくなすり付け、さらに上から垂らす唾液で流す。
左右の胸を擦り合わせて谷間を洗い、よく馴染ませる。
谷間に涎の小さな池ができ、顔を下げて直接それを啜り、別の場所に吐き出す。
「ぅん……凄い匂い……」
いっそ嬉しそうにそう呟き、とどめとばかりによく溜めた唾液を注いだ。
鎖骨から乳房が、膜のように隙間無く粘液に覆われた。
大小さまざまな糸が垂れて腿を汚している。
「胸重くなっちゃった……これって綺麗になったと思う? 汚れたと思う?」
照明の揺らぎに合わせて怪しく光る乳房の淫靡さに、イングズは答えることもできなかった。
「……そうだ、挟む前に」
ずりずりとイングズの真正面に来たサラは、膝で立って胸の高さをイングズの顔に合わせた。
「勝手に私のお尻虐めた仕返し」
上体を振り、乳房でイングズの頬を叩いた。
濡れた音が響き、唾液の飛沫がきらきらと光りながら飛び散る。
「……痛くない?」
「痛くは、ありませんが……」
柔らかすぎる感触と、された行為自体の異常さに口ごもる。
反対の頬も乳房で叩き、そのまま最初のときのように胸を顔面に押し付ける。
ぬめった肌触りと、サラの唾液や汗の匂いが一気に襲い掛かる。
「ね、イングズの固いの、どんどん固くなってる気がするんだけど気のせい?」
「……気のせいではありません」
「どうして? こんなに涎だらけの胸を押し付けられてるのに」
「…………」
イングズが照れていることに満足し、先ほどの“洗濯”で汚れた手でぐしぐしと硬い髪を撫でる。
「やらしいのね」
「……姫ほどではございません」
「イングズほどじゃないわよ」
笑って胸を離し、挿れたときより大きく見える男根を見つめた。
「挟んでほしい?」
「はい」
「じゃ、ベッドの端に座って」
自らはベッドから下り、サラはもう一度唾液を垂らした。
腰を下ろしたイングズの脚の間に入り込み、サラはそそり立つ男根に乳房を押し付けた。
十分すぎる潤滑液により、それはぬるりと谷間の奥へと飲み込まれていった。
体温と粘り気がイングズに直に伝わる。
「どう?」
「まるで口の中のようです」
「そうでしょうね」
あっさり肯定し、サラは両サイドから胸を圧迫した。
内側の乳房が滑りながら男根に絡み付く。
「っ……!」
「気持ちよさそう」
楽しそうに笑い、身体を揺すって扱く。
根元まで乳房を押し付けると、谷間から亀頭が僅かに覗いた。
顔を胸に突っ込み、頬を汚しながら舌を伸ばしてそれに触れる。
先ほど味わった塩味が今度は直に舌に広がる。
「ふふ、今度はすぐ出しちゃいそうね」
「……はい」
胸をリズミカルに上下させ、口でしたときよりも水気の多い音を響かせる。
サラ自身も、内側から伝わる熱と硬い感触に少なからず興奮していた。
頬を紅潮させ、自慰の時より強く内側へ押し付け、口に溜まる端から唾液を流し込んでいく。
「んん……早く出さないと、私の方がイッちゃいそう」
半分は本気でそう言った矢先、見下ろしていた先端から白い液体が噴き出た。
「きゃっ……!?」
勢い良く吐き出された精液は、間近にあったサラの顔面に次々とこびりつく。
頬に額に、そして開いた口の中が白く汚れていく。
驚いて顔を離したときにはもう、最後の一塊が鼻に浴びせられたところだった。
「うわ、臭くて生っぽい……もう、出すなら出すって言ってよ」
サラは口の中の精液を慎重に転がし、恐る恐る嚥下した。
「も、申し訳ございません」
気持ちよすぎて何も考えられなかったとは言えず、本日何度目かの謝罪を口にした。
慌てて顔を拭こうとし、
「……イングズ」
呆れたようなサラの声に、心中を見透かされたことを覚悟した。
白濁液で汚し尽くされたサラの顔を見て、イングズの性器はまた固さを取り戻していた。
「もう、私は一回しかイッてないのに何度もこんな催促するなんて我慢が効かないんだから」
「……では互いに気持ちよくなればよろしいのですね?」
「……何だかあなたのしようとしてることが分かったんだけど、私はここでじっとしてればいい?」
「はい」
期待と呆れが半々混じった表情のサラが腕を後ろで組み、胸を突き出してくる。
その先端を、イングズは亀頭で押し潰した。
「んっ……」
無理矢理作った窪みの中、乳首が男根でこね回される。
胸での奉仕で快感の受け入れ準備ができていた身体が、じわじわと熱くなっていく。
さらに強く押し付けられると、たっぷり残っている唾液に滑った亀頭が勢い良く反対側の乳首を掠める。
「ひゃん!」
嬌声が漏れ、身体が大きく痙攣する。
掠めた乳首に再び赤黒い男根がねじ込まれ、ぐりぐりと今度は乳房全体を蹂躙する。
十分な肉付きの胸は限界まで突っ込んだ男根全体を柔らかく包み込み、快感に快感を返す。
胸元から上がってくる熱気に当てられ、サラはむず痒そうに身体をよじる。
「はぁ……気持ちいい……」
「……私もです」
バットのように乳房の側面へ軽く打ち付け、たわむ様子に興奮してまた打ち付ける。
惚けた目でそれを追うサラの様子を見るに、限界は近いようだった。
「失礼します、姫」
サラの肩を掴むと、性交のように積極的に腰を動かした。
ぐちゃぐちゃという、先走りと唾液が混ざり合う音にサラの喘ぎがシンクロする。
「はぁ、ぅ……また胸、でっ……あっ、もう、だめ……!!」
痛みを感じるほど乳首を押し込まれ、サラの背中が大きく反り、震える。
「っく……!」
それに合わせ、イングズもまたサラの胸へと三度目の射精を行った。
サラの身体がイングズの腿に倒れ込む。
満たされた気分を噛み締めながら、イングズはその髪を指で梳いた。
互いの身体をじゃれるように拭き合った後、二人は並んでベッドに倒れ込んだ。
あらゆる体液で汚れたシーツだが、今更そんなことが気になるような状態でもない。
大きくない部屋だ。部屋中に行為の残り香が篭もり、寝ているだけでまだ性交を続けているような錯覚に陥る。
「……もう。初めてなのにこんなにいっぱい変態っぽいことして……」
「半分は姫ご自身からおやりになったことです」
「もう半分はあなたよ」
こつんと額を打ち付ける。
もちろん、そのまま唇も重ねた。
触れるだけのキスを長く続けた後、サラは上目遣いに尋ねた。
「続きは明日?」
「……連日なさるおつもりですか」
「ええもちろん。あ、男の人は白いのを溜めないと性欲湧かないんだったかしら」
「そういう問題ではありません」
溜息をつくイングズにまた妙な可愛さを感じ、今度はただ普通に抱き締め、片手だけ手を握る。
「イングズ、私のこと好き?」
「先ほどから何度も申し上げています」
「私の『好き』への返答じゃなくて、あなたから言ってほしいの」
この言葉に、イングズはこの日最大の赤面をし、何度も咳払いをした後にとうとう口にした。
「……愛しています、サラ姫」
「はい、よくできました。私もよ」
背中を撫で、心地よい疲労に身を委ねる。
このまま少し眠るだろう。
起きたときもきっとイングズは寄り添っていてくれるだろう。
その幸せを味わうため、サラは眠気への抵抗をやめた。
二人が夢に落ちた後も、その手は繋がったままだった。
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