FFシリーズ総合エロパロスレのまとめ

抗いがたい妖気に飲み込まれないように男は
刀を握り締める手に力を込めた。

完全に廃墟と化したこのザナルカンド。
火の気などなく肌寒さを感じる気温でも、
鍛え抜かれたこの男には些細な障害にもなっていない。
優美な美貌を持つ死の女王に対して大刀をかまえながら
この男―アーロン―はうめいた。

「どういうことだ……」
わずかな反響を残して場を沈黙が包んだ。
一歩、歩みを進め女王へと近づく。
シャリ…っとそのわずかな足音ですら高く響く。
かつては綺麗にタイルが敷かれたこの部屋は、
かつて栄華を誇った時代のザナルカンドであれば
女王への謁見の間、だったかもしれない。
しかし、栄光の時代から1000年を経た今では無残にどのタイルにもひびが入り
汚れ、苔むしている。

沈黙する麗しく妖艶な女王に刀を構えたまま、
再びアーロンはややおさえながら詰問した。
「答えろ…ユウナレスカっ……」
真っ赤な口紅を引いた唇がようやく開いた。
「答えろ……とは……?」
アーロンの眉間のしわが深くなる。
柔らかなそうなユウナレスカの赤い唇から紡がれたのがわずかそれだけだったことに
怒りはますます増幅されていた。
「究極召喚を使って『シン』を倒しても…結局『シン』は復活してしまうっ……」
大刀を握り締める手にますます力がこもる。
すさまじい重量のこの刀は斬り払うというより、
重量で叩き潰す、というほうがふさわしい代物だ。
手首、そして腕の筋力、さらには強大な握力を持つ鍛えられた男のみに扱える、
強力な武器である。
その刀の先がわずかに震えている。

「究極召喚とは…一体何だったんだ!?」
「希望……です。」
右手を広げたユウナレスカに合わせて
その艶やかな銀糸のような長い髪が揺れる。
アーロンの焦燥した表情がわずかに歪んだ。
―何が…何が希望なものか……―
その視線を受けてユウナレスカはさらに続けた。
「『シン』は不滅です。
『シン』を倒した究極召喚獣が新たな『シン』となりかわり、
必ずや…復活を遂げます。」
アーロンは怒りが爆発しそうになるのを歯をぎりぎりと食いしばることで
懸命に耐えた。
妖艶な美貌はわずかな表情をも浮かべることはなく
言葉を紡ぎだしている。
「『シン』はスピラが背負った運命……」

なおも話そうとするのをアーロンはいらだちもあらわに遮った。
「では、無駄だったというのか!
ジェクトの…死も……ブラスカの……死もっ!」
二人の笑顔が脳裏をよぎった。
そう、これはアーロン、一人の問題ではない。
最高の親友である二人とともに。
スピラにおける最高権威ともいえるユウナレスカの前で
ともすれば押されがちだったアーロンの気持ちに、
脳裏によぎったふたりが再び力をあたえてくれたような気がした。
「いいえ。無駄ではありません。さだめ…です。」
なおも淡々と語るユウナレスカ。
「彼らの死こそ希望。『シン』に立ち向かう、という希望。
そして…希望は慰め。
悲しいさだめも諦めて、受け入れるための力となる……」
「ふざけるなっ!」
アーロンはこらえきれずに吼えた。
「ただの気休めではないか!
ブラスカは教えを信じて命を捨てた!
ジェクトは…ブラスカを信じて犠牲になった!」
怒りに打ち震えるアーロン。
ユウナレスカは先ほどから全く変わることない口調、そして表情のまま
冷酷に宣告した。
「信じていたから…自ら死んでいけたのですよ。」

「うわぁぁぁあっ!!!」
アーロンは大刀構えた大刀を振りかぶって跳躍した。
何かを考えていたわけではない。
この、スピラの女神とされる女性にかなうとも思っていなかった。
ただ感情のままに動いたのだ。
ユウナレスカはそこまでになっても顔色一つ変えず
わずかに目を細めてすらりとした細い腕を頭上にかざす。
今では忌まわしきエボンの紋章が浮かぶとそこに結界が生まれる。
アーロンがすぐに間近まで接近し、振りおろそうとした刹那。
結界が刃へと姿を変えたのをみて
アーロンは反射的に身を避けようとした。
しかし間に合わず、大量の血を噴き出し、もんどりうって倒れ込む。
右目に強烈な痛み、そして鼻や口が右目付近から流れる鮮血で濡れる。
(クソっ……)
その間にユウナレスカはかざした手を優雅に振り下ろすと、
奥へとゆっくり歩みを進めた。
しかし、歩みが突如として止まった。
「まだ…命を落としてはいないようです。」
その女神のつぶやきはあまりに低く、
痛みと絶望が思考を占領していたアーロンの耳には届かなかった…

左腕の感覚がなくなっている。
効き腕ではなかったのが不幸中の幸いだな、とチラっと思ったが
すぐにそんな考えを激痛が呑みこんだ。
右目は深く斬られたのか、痛みとともに血が止まらない。
血の生温かさと生臭さがあたりを包んでいる。
ふとアーロンの左しかなくなった視界に幻光虫が飛び込んできた。
鈍い光を受けて飛ぶそれは禍々しさを感じさせる。
やがて幻光虫は一つではなく二つ、そしてそれ以上にいくつも飛び、
心なしか光も鈍いものから、やや明るい黄色がかったものへと変化していった。
右手に力を込めて身体を起こしてあおむけに態勢を変えるアーロン。
そこにスピラの元凶ともいえる女がアーロンを見下ろしていた。
床まで届く艶やかな銀髪。
隠す部分より、露出する部分のほうがはるかに多い布をまとい
全く表情を変えることなく見下ろす。
アーロンは何か言葉を発しようとしたが、言葉にならない。
その動作で目の傷からは、どくりと、血の塊が流れ落ちた。
考えが考えにならず、意識が渦を巻く。
ユウナレスカはその細身の肢体をアーロンの倒れ込むすぐそばへと下ろした。
アーロンは声を絞り出した。
「ど……どういうっ……つもりだ……」
ちょうど正座するような姿勢で腰を下ろすユウナレスカ。
甘く華やかな香りが血の匂いを打ち消すようにあたりに広がった。
間近で見るユウナレスカは肌は雪のよう白く、
その華奢な身体はスピラの英雄という称号とは思えぬほど細く、
そして美しい。
しかし、アーロンにはわからない。
なぜ彼女がここでこうしているのか。
やられた相手の苦しむさまを見て楽しもうと言うのか。
それとも…とどめをさそうというつもりか。
整ったユウナレスカの顔にわずかに赤みが差し、
表情もわずかに緩んだような気がしたアーロンは
自分に向って手をかざしたユウナレスカのこれからする行動を止めるすべも、止められるだけの体力も持っていない。
シャラ……とユウナレスカの腕輪が高鳴った。

(やられるっ……)
とどめをさされると思ったアーロンは、目を閉じて唇をかんだ。
(ジェクト……ブラスカ……すまん……
俺は約束を果たせなかった……)

熱を感じると、目の痛みが緩和された。
そして左腕にもわずかながら感触を感じる。
こころなしか体力も多少戻ったようだ。
「これはっ……」
アーロンはユウナレスカを見つめた。
華やかな芳香が強く周りを包んでいる。
「どういう……」
「簡単に……死なせてもらえる……とでも思ったのですか?」
妖しく、そして美しく、妖艶に。
ユウナレスカの初めて見せた表情にアーロンは血も凍るような恐怖で
その秀麗な顔を見つめた。
「私に、ここまで、まっすぐな感情を向けてきた男の人はいなかった。
だから、少しだけ、つきあってもらうわ。
そう、あなたの命が消えるまで。」
意外なほど穏やかな声で語りかけると、乱れたアーロンの髪を、そっと片手でかきあげた。
「ふ・・ふざけるな!」
「少しだけ、私も疲れました・・・」
必死にかき立てた怒りが、ユウナレスカの言葉に、かきみだされた。
「ここにやってくるのは、命を捨てて、一時の平和を願うものたち・・・
私の愛したスピラを愛し、守ってくれようとしている戦士達・・・・
その人達に、私は、命を捨てる方法を教えることしかできない。」

そして、長い長いため息をついた。
唖然とするアーロンの胸に・・・そう、衝撃と魔力の暴走で、衣装もぼろぼろに
なった、裸の胸に・・・柔らかく右手を置いた。
その手が一瞬、柔らかく青く輝くと、アーロンの全身の激痛が、嘘のように消失した。
切り裂かれた片目は、その視界を取り戻せはしなかったが・・・
「痛みを、少しの間忘れさせただけ。そう、私の方法と同じく、一時しのぎでしかない。」
「・・・・・」
事態の推移を理解できないアーロンに、ユウナレスカは静かに言葉を続けた。

「長い長い間、私は、その役目を果たしてきました。
体が無くなっても、夫と会えなくても・・・・
ずっと、一人で。」
悲しそうに、微笑んで見せた。
「そして、長い長い時の狭間・・・時たま訪ねてくれる人たちには・・・
命を捨てて、ひとときのナギ節をもたらす方法を伝えなければならない・・・
そして、時には・・・その、勇敢な戦士と戦わなければいけない。そして、
殺してしまわなければいけない・・・」
「・・・・」
「誰を恨みようもない、誰でもない、私が決めたことです。
でも、私も、少し、疲れました。」
「・・・・・・・」
そう、ユウナレスカも、好きでこんな「役目」をしているわけではない。
それ以外に、「シン」を止める方法が思いつかなかったから。
それ以外に、愛するスピラを、ひとときでも守る方法が無かったから。

ならば・・・それ以外の方法を思いつかず、ブラスカも、ジェクトも止められなかった自分は、
同罪ではないか。
ユウカレスカ一人に、スピラの死の螺旋の矛盾を押しつけ・・・自分の感情の爆発先を
求めていたのではなかったか。
「だから・・・貴方には悪いけど、少しだけ、話し相手に。恨み言でも、かまわないから。」
これまでの超然とした話し方ではなく、外見相応の女性の口調で、ユウナレスカは
微笑んだ。
「・・・ユウナレスカ・・・様・・・」
「私を、まだ、そう呼んでくれるのかしら?」
アーロンは、ユウナレスカの手を、できるだけ優しく握った。
「それ以外の・・・方法を・・・思いつけず・・・仲間を止められなかった自分も、
同罪です・・・・」

アーロンのつぶやきに、ユウナレスカは、驚愕したように瞬きをすると、穏やかに
微笑んで見せた。
「変わった人・・・仲間を奪って、自分の命も奪いかけた相手に、そんなことを言うなんて・・・」
「必ず・・・必ず、貴方の永遠の孤独を・・・スピラの死の螺旋を・・・断ち切るもの達が
あらわれます・・・どうか、そう、貴方の言う「希望」を捨てないで・・・下さい・・・」
今度こそ、ユウナレスカは絶句した。
仲間を奪い、自分を殺そうとした相手に向かって、この青年は・・・
希望を与え、元気づけようとしている!
気がついたときには、そっとその顔を、自分の胸に抱きしめていた。
「変で・・・優しい人。でも、残酷な人。
あの人に、ゼイオンによく似てるわ。
私の好意を獲得して、そして、すぐにいなくなってしまう・・・ところまで。」

「ユ、ユウナレスカ様?」
こちらは別の意味であわてだしたアーロン。
「覚悟してもらうわよ、青年・・・こんな・・・こんな幸せで・・・こんなにつらくて・・・
こんなに切ない気持ちになったのは・・・どれぐらいぶりでしょう・・・」
熱っぽくうるんだ視線で、アーロンの一つしかない瞳をみつめた。
「ゆ、ユウナレスカ様、あの・・・」
ユウナレスカは、その口を、そっと指でふさいだ。
「もはや、語りません、でしょ?」
反論しようとしたアーロンの唇を、今度は、柔らかくて、しっとりとしたもの・・・
ユウナレスカの唇が、ふさいでいた。
アーロンの一つしかない瞳が、驚愕の限界まで見開かれる。

もしかして・・・もしかして自分は・・・伝説の英雄に・・・
しかも、そのまま・・・もうこの世の住人では無いとは信じられないぐらい、
熱くて、柔らかなもの・・・ユウナレスカの舌が、自分の口の中に進入してきた。
「んっ・・・・む・・・くっ・・・・」
「・・ふぅ・・・っ・・・」
しばらくの後、二つの顔が、名残惜しそうに離れた。ぽっと上気したユウナレスカの
顔を、ぼぉっとした頭のまま、アーロンは、信じられない思いで見た。

「そんな・・・そんな・・・・」
「あら、私は、一応、人妻よ?こういったことも、当然知ってます。
ずっとずっと長い間、忘れていたけど・・・」
かわいらしく首をかしげると、
「誰かのせいで、少しだけ思い出してしまったわ・・・・
責任は、とってもらわないと。」
(馬鹿な!こんな、こんなことって・・・・)
と、そこで、体勢を入れ替えて、ユウナレスカが、優しく覆い被さってきた。
(うっ!!)
秋口に咲く花のような甘い香りと、やはり死人とは信じられないようなみずみずしい肌の感触。
それらを感じた瞬間、自分の体が反応してしまったことに気づいて、顔を真っ赤にして背ける
アーロン。

「あら、貴方も、乗り気ね?」
そして、不審そうにちょっと首をかしげると、耳元でささやいた。
「貴方・・・もしかして、初めて・・・なの?」
アーロンは、ますます顔を赤らめてぼそっとつぶやいた。
「俺は・・・僧兵でした。常に、スピラの民の規範として、規律ある生活を心がけていました。
それからは、ガードとなりましたから・・・」
上司に勧められた縁談を蹴飛ばしたのも、妻帯したくなかったという理由もあったからなのだが・・・
「嬉しい・・・じゃあ、私に任せて。前も言ったけど、一応、人妻ですから。」
「うう・・・・ゼイオン様、申し訳ありません・・・」
そこで、ふっと笑って、ユウナレスカが言った。
「あの人には、私を置いて先に逝ってしまった罰です。
それに、もし・・・私の退屈を慰めてくれたなら、貴方に、誓いを果たす、いい方法を教えてあげます。」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ、だから・・・」
ユウナレスカの手が、ぼろぼろになった自分の衣装をほどいていくのを感じながら、
アーロンはついに「観念」した。
複雑な・・・一種幸福でもあったかもしれない・・・・感情に満たされたまま、
アーロンは、暴風のような時間に身を任せた。

ユウナレスカの方法とは、ユウナレスカと同様の方法で、時間を過ごすこと。
死人となり、ユウナは信頼できるものに預け・・・死人にしか踏み込めない異世界、
シンの体内に行き、ジェクトの子供を見守ること。
そして、ジェクトの生き様を教えること。
そして・・・・いつか、この死の螺旋を断ち切ること。
幸福そうに、つやつやした顔で、別れを告げるユウナレスカ。
反対に、げっそりと頬の落ちた顔で(当然、怪我と疲労のせいだけではない)別れを返すアーロン。
「いつか・・・また。」
「そう、そのときは、この憂鬱な永遠を・・・終わりにするときです・・・」

そして・・・・ユウナレスカの魔法が切れ・・・・必死にガガセト山を下ったアーロンは、
そこでキマリに出会い、ユウナの将来を託し・・・自分は、死人として、シンへ・・・祈り子達の
ザナルカンドへと向かった。
友との約束を、果たすために。
友を奪ったものとの、約束を、果たすために。

「お前の、物語だ!!!」
ティーダの驚愕の顔から始まる、彼らの、そしてもう一つのアーロンの物語。

時は流れ、いくつもの出会いと別れを経て。
・・・・何度目かの、ユウナレスカの待つ部屋。
(これで、やっと、また一つ、約束が果たせる・・・)
アーロンは、愛刀を右肩に、その部屋へと足を踏み入れた。                 
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